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ほこほこ日和
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しおりを挟む上目遣いでうるうると期待のこもった瞳を向けるカワジに、大和は驚いた表情でカワジを見たがふっと笑みを浮かべた。
「ああ。また会えるんじゃない?」
「そっか。その時はまたたくさん話そうね」
「ああ。ただし、次に変なあだ名で呼ぶと無視するぞ」
「わかった。あと、今度はたくさん食べさせてね」
意地悪禁止だとまた先日のことを思い出し、ぷくぅっと頬を膨らませて言い募る。
「気が向いたらな」
その様子に、大和はにやっと笑みを浮かべまた意地悪を言う。
「絶対だよ」
「だから、気が向いたらって言ってるだろ」
「いいもん。勝手に食べるから」
「……勝手にしろ。じゃあな」
仕方がないなと肩を竦めた大和は、手をゆっくり上げるとカワジの頭をポンと叩いて、また神様の方向に深くお辞儀をすると踵を返しさっさと帰って行った。
その姿を、寂しいような楽しみのような複雑な気持ちでカワジは見送っていると、さっきよりも姿を大きくした神様の瞳がじわじわと輝きを増し目の前に立った。
「気に入ったようだな」
きゅっとカワジの鼻をつまむと、面白そうに口端を引いた。
「気に入ったというかわからないけど、話して楽しかったです。初めて会った時は怖かったけど、今日はほこほこしました」
「そうか」
武甕槌命様が密やかに笑う。それとともに、ふわっと風が舞い、カワジの二つくくりの髪も小さく揺れた。
その囁きだけで、カワジは大和との縁を祝福されたような気がした。ぽわっと胸に熱が灯る。小さく柔らかにカワジの中で温もりが広がり浸透する。
「それで、かくれんぼの続きはいつからですか?」
そわそわと今度は遊びの続きの催促。
まだまだお子様だと武甕槌命様は笑うと、またお姿を小さくした。
「なら、隠れるから30秒数えるがよい」
「やったぁ~」
「では、かくれるぞ」
そう告げた途端消えた神様。神様もしたくて仕方がなかったんだと思うと、わくわくわくと心が浮き立つ。
──絶対、見つけるぅ~!!
だってだって、互いに姿が見えてのかくれんぼ。これほど楽しいことはない。
カワジは目を瞑ると、ふぅっと息を吸い込んだ。
「い~ち、にぃ~、さぁ~ん、しぃ~、ごぉ~、…………さんじゅう~」
しっかり数を数えてそっと目を開く。さっきまでと場所は変わらないはずなのに、光と緑の景色、そして土の匂いが洪水のように押し寄せ、今ほど到着した気分になって気持ちが沸き立つ。
当然、先ほどいた石燈籠のところにはおられない。きょろっと一周視線をやって、二之鳥居のそばの祓戸神社の方へと視線を定めた。
「カワジ、いっきま~すっ!!」
神様に今から探しに行くことを報告し、ひょこひょことまた石燈籠を覗きながらかくれんぼを楽しんだ。
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