42 / 66
第42話 高嶺すぎる花
しおりを挟む
「宮下社長、入力が終わりました」
愛莉が、パラメーターの入力を終えたみたいで、綾乃に声をかける。
「早かったのね。ちょっと待ってね、チェックするから」
綾乃のチェックが入る。
「ええ、問題なさそうね。このまま登録するから、川本さんはアプリをインストールして」
「川本さん、そのノートパソコンにQRコードがあるんです。そこからインストール先のURLにたどり着けます」
僕も以前、経験しているので愛莉に方法を教える。
「インストールできた? インストールしたら、こっちにきてくれる?」
愛莉は、言われた通り、綾乃のデスクの方へと向かう。
「これがあなたのアカウントと初期パスワード、初回ログインしたらパスワードを変えて」
綾乃は愛莉にメモを渡すと、また自分のパソコンへと向き直った。
「どう? アプリにログインできた?」パソコンに目を向けたまま、綾乃は言った。
「はい、できました」
「もうあなたのデータは登録されているから、生徒からは見えるようになっています。
あなたの事を気に入った生徒がいれば、ブックマークがつくから、何人が注目しているか分かるようになっているわ」
「ここなんだけど……、うわ! 凄い! もう10人くらいブックマークがついている」
僕は、愛莉のスマホを覗き込み、ブックマークの事を教えるつもりだったが、その多さに驚いた。
「理系の女の子の家庭教師は少ないから、需要が凄く高いの。それに、明媚の学生もなかなか人気が高いのよ」
「この分だと、川本さん、忙しくなりそうね。
分からない事は、チャット機能を使って聞いてね。クライアント用、運営用とあるから。
……ところで、お二人さん。私ももう上がるから、一緒に夕食でもどう?」
僕は、頭の中で財布の中身をチェックした。たしか五万円は入っているはずだ。それにクレカも作った。以前、綾乃と訪れたレストランに行ったとしても全額出せるくらいの財力が、今の僕にはある。
愛莉は、少し不安そうな表情を僕に向けていた。ここは、僕が彼女をリードしてあげなければならないと思った。
「せっかくだから、行きましょう。川本さん。」
「でも……」
「大丈夫です。僕に任せてください」
「うん」と言うと、また愛莉は腕を絡めてくる。
綾乃の視線が、僕の腕に絡めている愛莉の手に向けられた……。
~・~・~
予想通り、僕が初めて綾乃に会った時連れてこられたレストランに、僕たち三人はいた。
学生には敷居の高いお店だ。愛莉の反応も予想通りだった。
「心配しないで、好きなものを選んでね。ここは会社の経費で落とせるから」
「あ、でも、この間もご馳走していただいたし……」
「それは、今度、ちゃんと埋め合わせしてくれるんでしょ?」
綾乃はいたずらっぽく首を傾げながら笑った。
「埋め合わせって?」愛莉が訝しげに僕を見る。
「いや、大したことじゃないんです。ここは、宮下さん言葉に甘えましょう」
僕は、誤魔化して見せたが、愛莉はまだ何か言いたそうだった。
「私はワインをいただくけど、あななたちは?」
「ぼ、僕はジュースで」
「わたしは……」
「森岡君は、相変わらずお子様なのね、変なとこだけオトナになったみたいだけど 笑
川本さん、飲めるのだったら、付き合って」
「はい、では、わたしもワインをいただきます。」
料理が運ばれ、僕たちは乾杯をする。綾乃が白、愛莉が赤のワイン、僕はメロンジュースと三つのグラスがカチカチと鳴った。
「ところで、川本さん、あななたちって付き合っていないの?」
先ほども僕に確認していたが、まだ信用していないのか、今度は愛莉に尋ねる。
「ええ、わたしたち、会うのは二回目だし、そんなに親しくないです」
「そ……うなの、腕を組んでいたから、てっきり親しいのかと思ったわ」
「あれは、近くを歩くとき、ああした方が歩きやすいからです。それに、森岡君には好きな人がいるみたいだし、わたしの事を相手になんてしないと思いますよ」
愛莉が含みのある言い方をするが、僕には彼女が誰の事を言っているのか、見当もつかなかった。
「宮下社長の方が、ご存知じゃないんですか?」
「私が?」
「森岡君が好きな人の事を、です」
「よくわからないわ。私の知っている人? まさか、森岡君……、ゲイなの?」
「な、なんで、そうなるんですか!?」
僕は、思わずジュースを吹き出しそうになった。
「だって、私たちの共通の知人と言えば、岸本君くらいしかいないから」
僕たちの会話を聞いていた愛莉がクスクスと笑った。
「森岡君って、たぶん、宮下社長の事が好きですよ」
「冗談が過ぎるわ、川本さん」
綾乃は一笑に付した。
そう、綾乃は僕にとっては高嶺すぎる花だ。
愛莉が、パラメーターの入力を終えたみたいで、綾乃に声をかける。
「早かったのね。ちょっと待ってね、チェックするから」
綾乃のチェックが入る。
「ええ、問題なさそうね。このまま登録するから、川本さんはアプリをインストールして」
「川本さん、そのノートパソコンにQRコードがあるんです。そこからインストール先のURLにたどり着けます」
僕も以前、経験しているので愛莉に方法を教える。
「インストールできた? インストールしたら、こっちにきてくれる?」
愛莉は、言われた通り、綾乃のデスクの方へと向かう。
「これがあなたのアカウントと初期パスワード、初回ログインしたらパスワードを変えて」
綾乃は愛莉にメモを渡すと、また自分のパソコンへと向き直った。
「どう? アプリにログインできた?」パソコンに目を向けたまま、綾乃は言った。
「はい、できました」
「もうあなたのデータは登録されているから、生徒からは見えるようになっています。
あなたの事を気に入った生徒がいれば、ブックマークがつくから、何人が注目しているか分かるようになっているわ」
「ここなんだけど……、うわ! 凄い! もう10人くらいブックマークがついている」
僕は、愛莉のスマホを覗き込み、ブックマークの事を教えるつもりだったが、その多さに驚いた。
「理系の女の子の家庭教師は少ないから、需要が凄く高いの。それに、明媚の学生もなかなか人気が高いのよ」
「この分だと、川本さん、忙しくなりそうね。
分からない事は、チャット機能を使って聞いてね。クライアント用、運営用とあるから。
……ところで、お二人さん。私ももう上がるから、一緒に夕食でもどう?」
僕は、頭の中で財布の中身をチェックした。たしか五万円は入っているはずだ。それにクレカも作った。以前、綾乃と訪れたレストランに行ったとしても全額出せるくらいの財力が、今の僕にはある。
愛莉は、少し不安そうな表情を僕に向けていた。ここは、僕が彼女をリードしてあげなければならないと思った。
「せっかくだから、行きましょう。川本さん。」
「でも……」
「大丈夫です。僕に任せてください」
「うん」と言うと、また愛莉は腕を絡めてくる。
綾乃の視線が、僕の腕に絡めている愛莉の手に向けられた……。
~・~・~
予想通り、僕が初めて綾乃に会った時連れてこられたレストランに、僕たち三人はいた。
学生には敷居の高いお店だ。愛莉の反応も予想通りだった。
「心配しないで、好きなものを選んでね。ここは会社の経費で落とせるから」
「あ、でも、この間もご馳走していただいたし……」
「それは、今度、ちゃんと埋め合わせしてくれるんでしょ?」
綾乃はいたずらっぽく首を傾げながら笑った。
「埋め合わせって?」愛莉が訝しげに僕を見る。
「いや、大したことじゃないんです。ここは、宮下さん言葉に甘えましょう」
僕は、誤魔化して見せたが、愛莉はまだ何か言いたそうだった。
「私はワインをいただくけど、あななたちは?」
「ぼ、僕はジュースで」
「わたしは……」
「森岡君は、相変わらずお子様なのね、変なとこだけオトナになったみたいだけど 笑
川本さん、飲めるのだったら、付き合って」
「はい、では、わたしもワインをいただきます。」
料理が運ばれ、僕たちは乾杯をする。綾乃が白、愛莉が赤のワイン、僕はメロンジュースと三つのグラスがカチカチと鳴った。
「ところで、川本さん、あななたちって付き合っていないの?」
先ほども僕に確認していたが、まだ信用していないのか、今度は愛莉に尋ねる。
「ええ、わたしたち、会うのは二回目だし、そんなに親しくないです」
「そ……うなの、腕を組んでいたから、てっきり親しいのかと思ったわ」
「あれは、近くを歩くとき、ああした方が歩きやすいからです。それに、森岡君には好きな人がいるみたいだし、わたしの事を相手になんてしないと思いますよ」
愛莉が含みのある言い方をするが、僕には彼女が誰の事を言っているのか、見当もつかなかった。
「宮下社長の方が、ご存知じゃないんですか?」
「私が?」
「森岡君が好きな人の事を、です」
「よくわからないわ。私の知っている人? まさか、森岡君……、ゲイなの?」
「な、なんで、そうなるんですか!?」
僕は、思わずジュースを吹き出しそうになった。
「だって、私たちの共通の知人と言えば、岸本君くらいしかいないから」
僕たちの会話を聞いていた愛莉がクスクスと笑った。
「森岡君って、たぶん、宮下社長の事が好きですよ」
「冗談が過ぎるわ、川本さん」
綾乃は一笑に付した。
そう、綾乃は僕にとっては高嶺すぎる花だ。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる