5 / 27
第5話 こんな気持ち
しおりを挟む
「うう~、緊張する」
土曜日だというのに早起きした私は今、京王線で吉祥寺に向かっている。
早川君が吉祥寺に住んでいるからだ。
先日、図書館で早川君に官能小説を書いていることを知られてしまい、更には、私が官能シーンの描写で悩んでいることまで知られてしまった。
その時、彼から自分の部屋で一緒にアダルトビデオを観ないかと提案されたのだ。
ビデオを観る環境を持っていない私にとってはありがたい提案ではあったが、男の人の住む部屋に入るというのは不安がある。
それは、早川君が私を襲うかもしれないという不安ではなく、どう振る舞って良いのか分からないという、未経験に対する不安だ。
何せ、男の子の部屋へ遊びに行くなんて小学校低学年の時以来だ。
ましてや、相手は一人暮らしだ。一人暮らしの男の子の部屋に二人きり……。
早川君はきっと、私が迫りでもしない限り私に指一本触れないだろう。私に人を見る目があるとは自信をもって言えないが、彼は女性に乱暴なことはしない、それは間違いないと思った。
荷物は、いつも持ち歩いている身の回りのものとスマホ、そしてお土産に作ったクッキーだけだ。クッキーは百均で買った包装用のラップに、それらしく包んだ。
クッキーは出かける前にフライパンで作った。お金がない私は、おやつも自分で作るようにしている。簡単な材料とフライパンでできるので、私の得意料理のひとつだ。
きっと、早川君もロクなものは食べていないだろう。しかし……、
(早川君の口に合わなかったら、どうしよう、それに、エッチな動画を観て、どういうリアクションを取れば気まずくならないかな……)
次の明大前で京王井の頭線に乗り換えると、直ぐに吉祥寺に着く。
私のドキドキは、さらに増幅する。
電車が駅に止まる前に席を立ち、出入り口の前に立ち、ドアの窓ガラスに映る自分を改めて確認した。
ミディアムショートのボブは、家を出る前にドライヤーをあててふわりと仕上げてきた。相変わらずメガネは野暮ったいし、美人じゃないところは今更どう取り繕う事も出来ない。
ユニクロで買ったブラウスにミディアムのスカート、華やかではないけど清潔感はあると思う。
少し身体を捻り、斜めから自分を見直すとブラウスの胸の部分の盛り上がりが強調される。巨乳ではないけど、自分でもバランスが取れていると思う。
私が女性として唯一誇れるものがあるとしたら、このDカップの形の良い胸だけだ。
何度も身体を捻りながら、私はさっきまでの不安が何処かへ行ってしまい、妙に浮かれている自分に気付いた。
(はっ! デートでもないのに、わたしったら何を浮かれてるんだろう?)
窓に写った野暮ったい少女に向かって、『ばーか』と口を動かした。
明大前で井の頭線へ乗り換え、吉祥寺に到着したのは待ち合わせの10分前だった。
南口改札を抜け、人通りの少ない場所で早川君を待つことにする。
さっき、デートでもないのに浮かれている自分に気づいたのだが、男女が二人で会うってデートではないのだろうか?
だとすると、私にとって今日は初デートだ。そう思うと顔が赤くなる気がした。
(いやいや、早川君にその気はない。落ち着け、意識するな花音!)
慌てて否定する。
でも、これは収穫だ。きっとデートで待ち合わせする時の女の子の気持ちって、たぶん今の私の気持ちなのだ。これは今後の作品に活かせる。
暫くすると、公園の方の人ごみに頭ひとつ抜けた長身の早川君が歩いてくるのが見えた。こう言う時、背が高いって便利だ。
(わたしの事、気づくかな?)
小さく手を振ってみると、早川君も私に気づいたのか右手を大きく上げて応えてくれた。
(何だろう、これって、やっぱりデートみたいだ!)
この気持ちは何だろう? ドキドキともワクワクとも違う、こんな気持ち、初めてだ!
「ごめん、待たせちゃった?」
「ううん、少し早くきたから、早川くんは時間通りだよ」
「なんか、今日は感じがちがうね」
普段、私は学校ではトレーナーにジーンズで通っている。スカートを履くのも実に久しぶりかもしれない。
「休日だから、スカートにしたの。変……かな?」
そう言いながら、私は身体をひねってスカートをなびかせた。意識したわけではなかったが、電車の中でやったように胸を強調させてしまう。
やってしまって、自分が凄くあざとい事をしている気になって後ろめたさを感じた。
「あ、いや、凄く良いと思います」
(なぜ敬語?)とツッコミたかったが、私も「あ、ありがとうございます」とかしこまってしまった。
「早川君の家は、この近くなの?」私は照れくささを誤魔化すために話題を変える。
「うん、歩いて10分くらいかな。こっちだよ」と、早川君は公園の方へと歩き出した。
私も慌てて後を追う。長身の早川君とチビの私では歩幅が違いすぎる、早川君はゆっくり歩いているつもりでも、私は少し駆け足になってしまう。
必死について行き、早川君が「ここだよ」と立ち止まってくれた時には少し息があがっていた。
しかし、そんなことは直ぐにどうでもよくなった。
「え、ここ?」
(えええーー!!)私は心の中で叫んでしまった。
早川君が『ここだよ』と指し示した建物は、十階以上はありそうなマンションで、学生が住むには明らかに立派過ぎる。
「うん……、ついてきて、開けるから」
私が目を瞬いているのも構わず彼は中に入っていく。私は置いて行かれないように慌ててついて行った。
セキュリティーで区切られているのか中にはもう一つ入口があり、そこにはずらりと並ぶ郵便受けがあり、その先の窓ガラスで区切られた部屋はホテルのロビーみたいにソファー等が置かれていた。
分不相応な空間に、私は戸惑うばかりだった。
私の困惑を他所に、彼は入り口に設置されている装置を操作する。
土曜日だというのに早起きした私は今、京王線で吉祥寺に向かっている。
早川君が吉祥寺に住んでいるからだ。
先日、図書館で早川君に官能小説を書いていることを知られてしまい、更には、私が官能シーンの描写で悩んでいることまで知られてしまった。
その時、彼から自分の部屋で一緒にアダルトビデオを観ないかと提案されたのだ。
ビデオを観る環境を持っていない私にとってはありがたい提案ではあったが、男の人の住む部屋に入るというのは不安がある。
それは、早川君が私を襲うかもしれないという不安ではなく、どう振る舞って良いのか分からないという、未経験に対する不安だ。
何せ、男の子の部屋へ遊びに行くなんて小学校低学年の時以来だ。
ましてや、相手は一人暮らしだ。一人暮らしの男の子の部屋に二人きり……。
早川君はきっと、私が迫りでもしない限り私に指一本触れないだろう。私に人を見る目があるとは自信をもって言えないが、彼は女性に乱暴なことはしない、それは間違いないと思った。
荷物は、いつも持ち歩いている身の回りのものとスマホ、そしてお土産に作ったクッキーだけだ。クッキーは百均で買った包装用のラップに、それらしく包んだ。
クッキーは出かける前にフライパンで作った。お金がない私は、おやつも自分で作るようにしている。簡単な材料とフライパンでできるので、私の得意料理のひとつだ。
きっと、早川君もロクなものは食べていないだろう。しかし……、
(早川君の口に合わなかったら、どうしよう、それに、エッチな動画を観て、どういうリアクションを取れば気まずくならないかな……)
次の明大前で京王井の頭線に乗り換えると、直ぐに吉祥寺に着く。
私のドキドキは、さらに増幅する。
電車が駅に止まる前に席を立ち、出入り口の前に立ち、ドアの窓ガラスに映る自分を改めて確認した。
ミディアムショートのボブは、家を出る前にドライヤーをあててふわりと仕上げてきた。相変わらずメガネは野暮ったいし、美人じゃないところは今更どう取り繕う事も出来ない。
ユニクロで買ったブラウスにミディアムのスカート、華やかではないけど清潔感はあると思う。
少し身体を捻り、斜めから自分を見直すとブラウスの胸の部分の盛り上がりが強調される。巨乳ではないけど、自分でもバランスが取れていると思う。
私が女性として唯一誇れるものがあるとしたら、このDカップの形の良い胸だけだ。
何度も身体を捻りながら、私はさっきまでの不安が何処かへ行ってしまい、妙に浮かれている自分に気付いた。
(はっ! デートでもないのに、わたしったら何を浮かれてるんだろう?)
窓に写った野暮ったい少女に向かって、『ばーか』と口を動かした。
明大前で井の頭線へ乗り換え、吉祥寺に到着したのは待ち合わせの10分前だった。
南口改札を抜け、人通りの少ない場所で早川君を待つことにする。
さっき、デートでもないのに浮かれている自分に気づいたのだが、男女が二人で会うってデートではないのだろうか?
だとすると、私にとって今日は初デートだ。そう思うと顔が赤くなる気がした。
(いやいや、早川君にその気はない。落ち着け、意識するな花音!)
慌てて否定する。
でも、これは収穫だ。きっとデートで待ち合わせする時の女の子の気持ちって、たぶん今の私の気持ちなのだ。これは今後の作品に活かせる。
暫くすると、公園の方の人ごみに頭ひとつ抜けた長身の早川君が歩いてくるのが見えた。こう言う時、背が高いって便利だ。
(わたしの事、気づくかな?)
小さく手を振ってみると、早川君も私に気づいたのか右手を大きく上げて応えてくれた。
(何だろう、これって、やっぱりデートみたいだ!)
この気持ちは何だろう? ドキドキともワクワクとも違う、こんな気持ち、初めてだ!
「ごめん、待たせちゃった?」
「ううん、少し早くきたから、早川くんは時間通りだよ」
「なんか、今日は感じがちがうね」
普段、私は学校ではトレーナーにジーンズで通っている。スカートを履くのも実に久しぶりかもしれない。
「休日だから、スカートにしたの。変……かな?」
そう言いながら、私は身体をひねってスカートをなびかせた。意識したわけではなかったが、電車の中でやったように胸を強調させてしまう。
やってしまって、自分が凄くあざとい事をしている気になって後ろめたさを感じた。
「あ、いや、凄く良いと思います」
(なぜ敬語?)とツッコミたかったが、私も「あ、ありがとうございます」とかしこまってしまった。
「早川君の家は、この近くなの?」私は照れくささを誤魔化すために話題を変える。
「うん、歩いて10分くらいかな。こっちだよ」と、早川君は公園の方へと歩き出した。
私も慌てて後を追う。長身の早川君とチビの私では歩幅が違いすぎる、早川君はゆっくり歩いているつもりでも、私は少し駆け足になってしまう。
必死について行き、早川君が「ここだよ」と立ち止まってくれた時には少し息があがっていた。
しかし、そんなことは直ぐにどうでもよくなった。
「え、ここ?」
(えええーー!!)私は心の中で叫んでしまった。
早川君が『ここだよ』と指し示した建物は、十階以上はありそうなマンションで、学生が住むには明らかに立派過ぎる。
「うん……、ついてきて、開けるから」
私が目を瞬いているのも構わず彼は中に入っていく。私は置いて行かれないように慌ててついて行った。
セキュリティーで区切られているのか中にはもう一つ入口があり、そこにはずらりと並ぶ郵便受けがあり、その先の窓ガラスで区切られた部屋はホテルのロビーみたいにソファー等が置かれていた。
分不相応な空間に、私は戸惑うばかりだった。
私の困惑を他所に、彼は入り口に設置されている装置を操作する。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる