地味子が官能小説を書いたら

むかいぬこ

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第27話 年下の男の子

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週明けの月曜日は二限目からの講義だ。

私は千佳を伴っての通学となったのだが、明大前の乗り換えで早くも千佳が音を上げた。

八王子からは始発なので座っていられるが、井の頭線に乗り換えるとそうはいかない。通勤ラッシュには及ばないものの車内は結構混雑した状態になる。



「ちょっと、カノン、お願い。ワタシから離れないで!」

人の波に埋もれそうになり、千佳は私にしがみついていた。



渋谷駅に着いてからも、猛スピードで歩いていく人の波に揉まれて、ようやく地上に出て一息つく。



「カノン、毎日こんな思いをして通ってるの?」

「そうだよ、東京では通勤通学は戦場なんだよ!

曹長のくせに、弱音ばっかりでダメじゃない」



「ごめん、今はそのノリについていけない……、

て、なんだか視線を感じるんだけど、ワタシって、やっぱり田舎者――お上りさんに見える?」



「あ、いや……、そうじゃないと思う」



通勤通学途中のサラリーマンや学生がチラチラと千佳を見ているのは、千佳がアイドル並みに可愛いからだ。



だけど、千佳にその自覚はない。



「そうかな? だと良いけど、さ、落ち着いたから敵に一矢報いに行くよ!」



ようやく落ち着いたのか、千佳はいつもの元気を取り戻し、スタスタと歩き出した。

学校とは違う方向へ……。



「千佳、そっちじゃないよ、こっち!」

方向音痴のくせに千佳は先頭切って歩き出す癖がある。私は千佳の手を取り引き留めると「さ、こっちよ」と学校の方へ向き直させた。



10分程の道のりを歩いて、私たちは学校へとたどり着いた。

正門に隣接して守衛室はあるが、特にIDを見せることなく中に入れる。

千佳を伴い、私は普段通りに正門を潜ったのだが、少し歩いていると呼び止められてしまった。




「ちょ、ちょっと君!」



まさかバレたのかと恐る恐る振り返ると男子学生が二人、愛想笑いを浮かべながら近づいてくる。



「あ、あの……、何か?」

「あ、いや、君じゃなくて、そっちの子なんだけど」



男の子に話しかけられて千佳は直立不動で固まっていた。千佳は極度の男性免疫不全症候群なのだ。しかも、相手は全く見知らぬ男の子なのだから余計に千佳は対応できないでいる。



「すごい、可愛いね。見かけない顔だけど1年生?

何処かのサークルに入ってる? よかったらメッセージ交換しない?」



これは……、ナンパだ。

私も初めて見るが、全く知らない女の子にこんなに馴れ馴れしく話しかけてくるなんて、自分が声をかけられた訳でもないのに、間近で見ると不快感すら覚える。



だが、私は千佳の事を心配しなければならない。案の定、千佳は男の子の問いかけにプイっと横を向いて相手の顔をまともに見ようともしない。



「ちょっと、君さぁ。失礼じゃない? その態度」

「なんだよ、ちょっと可愛いからってお高く留まってんのか? ふざけんなよ!」



千佳が全く相手にしていないと分かると、男の子たちは先ほどまでの紳士的な態度を豹変させ言葉を荒げた。



私も何か言い返さないとと思うが、怖くて声が出せないでいた。

こんな時に美鈴が居てくれたら一喝して追い返してくれるのにと他人を当てにしてしまう。



その時……。




「どうかしたっすか?」

別の男子学生が声をかけてきた。

ぼさぼさの茶髪に、お洒落な学生が多いこの学校では珍しく少しヨレっとした身なりをしている。



「なんだよ、お前には関係ないだろ」

そう言うとナンパしてきた男子学生が茶髪の男の子の胸を押した。



「やめてくださいよ。彼女たちも困ってるじゃないっすか。

先輩、3年生? 4年生?

良いんっすか、もめ事起こして就職に影響しますよ」



茶髪の子が動じることなく飄々とした態度で言い返すものだから、ナンパ男子は「ちぇっ」というと「こっちだって暇じゃないんだ、行こうぜ。気分悪い」と捨て台詞を吐いた。

そして、何故か私の方を見ながら「ブスのくせに!」とを浴びせながら去って行った。



「大丈夫っすか?」

唖然としていると茶髪の子が気遣ってくれた。よく見ると愛嬌のある顔をしている。

制服を着ていれば高校生に見えるかもしれない。もしかしたら年下なのではないだろうか。



「あ、大丈夫です。

あの……、ありがとうございました」



「いや、何もしてないし、それにしても失礼な人達っすね」

「あ、気にしてませんから、慣れてるし。ああいう風に言われるの……」



「あはは……、そちらの方も大丈夫っすか?」

茶髪男子に声をかけられて、千佳が我に返ってビクっと反応した。



「あ、ありがとうございました……」

相変わらず横を向いたままだが、千佳にしては珍しく男子の問いかけに応答した。

茶髪男子は、千佳がそっぽを向いているので少し戸惑っているようだった。




「こらー! ナガル!」

「ひっ!?」



その時、聞き覚えのある声がその茶髪男子を一括した。

美鈴だった。



「わ、わ、美鈴先輩、なんすか? いきなり」

「『なんすか?』じゃないわよ、カノンに何してるの?

それに、一緒に居る子が怯えてるじゃないの、アンタまさか、こんな所でナンパ?」



どうやら美鈴は茶髪男子に私たちがナンパされて困っていると勘違いしたようだ。それにしても、茶髪男子の事を呼び捨てにして、彼も美鈴に敬語を使っているところから、おそらく下級生――1年生なのかもしれない。



「あ、ミリン違うの。この人は私たちが他の男子に絡まれていたところを助けてくれたの。でも、この人ってミリンの知り合いなの?」



「あ、コイツは『電研』っていうオタクサークルの1年生で堂本流留どうもとながるって言うの。電研の部長が私の高校時代の先輩なんだ。それでサークルにもたまに顔を出してるんだけど、まあ、ワタシの舎弟みたいなものね 笑」



そう言うと美鈴は「ウシシッ」と笑った。



「『オタクサークル』は酷いな~。

あ、名のらず行こうと思ったんすが、俺、経済学部1年の堂本流留といいます」

「わたしは、綾瀬花音、文学部の2年生です。こっちはわたしの友人で村松千佳、同じ2年生です(別の大学だけど……)」



「カノン、その子って……、前にも話してくれた地元の友達?」



(まずい! 千佳の事がバレてしまう)

小心者の私は部外者を校内へ入れてしまった事がバレると思うと、直ぐにでもその場を立ち去らねばと慌てた。



「あの、堂本君。助けてくれてありがとう。

わたし達、講義が始まるから行きます。

ミリン、急ごう!」



挨拶もそこそこに、私は千佳と美鈴の手を取り駆け出した。




あっけにとられた堂本君を残して。




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