裏庭が裏ダンジョンでした@完結

まっど↑きみはる

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魔人

魔人 4

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「私達はキエーウを追うためにイタガの街へ滞在していました」

 目を閉じて思い出すとアシノは語りだす。

「そこで人々が山賊に襲われるという話を聞き、討伐に向かったのですが。そこに居たのはトロールの群れでした」

 近衛兵長カミトと魔法使いのイズミは、アシノの言葉一字一句を聞き逃すまいと真剣な眼差しで話を聞く。

「そのトロールは先程の魔人ギュウドーが操るもので、突如その場に現れたギュウドーは我々に宣戦布告をしました」

 アシノはそこで区切って、続けて言う。

「明日トロールの群れで街を襲うと。ちょうど今、この時の様に」

「なるほど……」

 イズミはあの魔人のことを思い出しながら言った。

「そして、治安維持部隊と冒険者ギルドの皆さんの協力もあり、なんとか退けることができました」

「私達が治安維持部隊から受けた報告とほぼ同じですね」

 カミトがそう話すと、アシノは頷く。

「えぇ、治安維持部隊には全てをお話したので、申し訳ありませんが、改めて私からお教えすることの出来る情報は無いかと思われます」

「左様ですか……。1つどうしてもお聞きしたい事があるのですが」

「何でしょうか?」

 アシノとルーは直感的に嫌な予感がした。

「治安維持部隊からの報告と、冒険者での噂になっている通称『青い鎧の冒険者』をご存知でしょうか?」

「えぇ、私達も彼…… いや、彼女…… どちらかすら分かりませんが、正体を知りたいと思っています」

 カミトの言葉による動揺を悟られないようにアシノは会話をする。

「青い鎧の冒険者が居なければ、正直あの戦いは厳しいものでした」

「やはり、相当な実力者だったのですか?」

「そうですね、見る限りでは。ですが」

 ふぅーっとカミトはため息をついて頭をかいた。

「勇者の皆様が居れば充分に心強いのですが、戦力は大いに越したことはありません。素性が分かれば協力を要請したいのですがね……」

「私も同じ気持ちです」

 あくまでしらを切るアシノはカミトにそう返した。

「お時間を頂いて申し訳ありません。アシノ様達も今は休み、体力を温存して下さい。我々も城の警備へと戻ります」

「承知しました。ご武運を」

 アシノは立ち上がり、それを見てムツヤ達も席を立つ。

 そして、先程居た部屋へと戻る。

「あの、本当の事を言った方が良いんじゃないですか?」

 部屋に戻るなりムツヤが言った。皆がムツヤの方を振り返る。

「それだけはダメだ。やるとしても本当に最後の最後の手段だ」

 ふぅーっと息を吐いた後アシノは続けた。

「確かにお前の力と道具があれば戦局は有利に進むだろうが、王の目に止まればお前も道具も戦争の手段になる」

 アシノにまた同じことを言われてムツヤは下を向く。

「ムツヤっちには多分また『青い鎧の冒険者』になって暴れてもらうことになるわ。その時にも正体がバレることだけは絶対に避けてね」

「はい……」

「まぁ、そう難しく考えんな。お前が本気で走り去るだけで、誰も追いつけるやつなんざ居ないからな」

 その後は夕食の時間までそれぞれ道具の手入れをしたり、ウトウト仮眠をしたり、取り留めもない話をしたりして時間を潰した。

 こんな非常事態だと言うのに夕食は豪華だ。食堂ではなく部屋で食べることにはなったが、流石は城と言ったところか。

「さぁ、考えてても仕方ないし寝るわよー」

「そうですね」

 ルーがあくびをして言うとユモトが相槌を打つ。今日も1日色んな事があって疲れていた。

「私達着替えたいからムツヤっちとユモトちゃんは部屋の外に出ててねー。まぁどうしても出たくないってんなら出なくても良いけど?」

「ルー殿!?」

「冗談よ冗談」

 夜は何事もなく過ぎていき、朝を迎えることが出来た。

 朝日が差し込んでユモトは目を覚ます。静かで綺麗な青空だったが、それが何だか不気味に感じた。

 隣のベッドではムツヤとヨーリィが眠っている。

「ふわーあ、よく寝たぁ」

 ルーも目を覚ましたらしい。ユモトは立ち上がって挨拶をする。

「おはようございます、ルーさん」

 そこには一糸まとわぬルーが布団に包まっていた。

「やーんエッチー!!」

「だ、だから何で服を着ないんですか!? っていうか着てましたよね!?」

 ユモトの声で皆が起き始める。

「朝からうるさいな……」

「あっ、すみませんアシノさん」

「うーん…… 何かあったのか?」

 アシノとモモが目を覚まし、ムツヤとヨーリィもむくりと起き上がった。

「おはようございまず……」

「む、ムツヤさんあっちを見ちゃダメです!!」

 その言葉で気付いたアシノがルーを見る。

「ルー、お前は何で服を脱いで寝るんだ!!」

「えー、だって脱いで寝ると気持ちいいんだよ? アシノも試してみたら癖になるわよー?」

「このバカちんが!! さっさと着替えろ!!」

 この人達は緊張感が無いなぁと思うユモトであった。
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