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魔人と少女
魔人と少女 1
しおりを挟む(イラスト:佳川先生)
目覚めたばかりだが、今回もあっさり上手く行った。
人間も亜人も何故こうも非力で愚かなのだろうか。
ムツヤが攫われる前、城の上空に現れたラメルは魅了の魔法を使い、ものの数秒でその場を占領してしまった。
「さーて、冒険でもしようかなー」
堂々と正面から入ったラメルを使用人達は深々と頭を下げて出迎える。
その時、ラメルは気配を感じ取った。自分の魅了の魔法が利いていない者が居る。
今日も目が覚めてしまった。また死ねなかった。
体中の傷が痛む。
自分は何のために生きているのだろうか。
重い地下室のドアが開いて、光が差し込む。
憎い憎い城主様がやって来る。そして今日も拷問の始まりだ。
足音が城主様と違う事に少女は気付いた。暗闇の中、敏感になった耳が捉えたのはヒールのコツコツという音だ。
「こーんな所に隠れてたんだー」
そう言うと目の前の人影はパチンと音を鳴らす。同時に眩しい光が辺りを照らした。
その光の中から現れたのは、優しい笑顔をした美しい女性だ。一瞬女神にさえ見えた。
ドレスを着ているので城主様と同じ貴族なのだろうか。
「あなたは……」
「私は、ラメル・キャ。魔人よ」
貴族でも女神でも魔人でも何でもいい。少女の願いは1つだけだった。
「お願いです……」
「お願いです!! わだじを!! わだしを殺して下さい!!!!!」
ラメルは、ぽかんとした表情で少女を見つめた。
「殺して?」
助けての聞き間違いかと思ったが、聞き返すと少女は食い気味にまた言葉を放つ。
「お願いです!! 殺して下さい!!」
うーんと上を見上げてラメルは何かを考えていた。
「キミ、不思議ね、魅了も効かないし、助けてじゃなくて殺してって」
伸ばした右手にオレンジ色の光を溜め、少女に向かってかざした。
少女は目を瞑って歯を食いしばる。やっと楽になれそうだが、やはり怖いものは怖い。
「やーめた。何で私が亜人の命令を聞かなきゃいけないの」
ラメルは少女に近付いて、飴細工を壊すかのように手で鎖をパキパキと割った。
「それに、魅了が効かない原因も知りたいし。いいわ、あなたこの城を案内してよ」
手足が自由になった茶髪の少女は、頭の上の狼のような耳を倒して言う。
「あ、案内って言っても……、私、ここから出た事が無くて」
「じゃあ、私と一緒に探検しましょ? キミ、名前は」
「ミシロ、です」
「ふーん。それじゃ行こうか」
ラメルは光の射す方へ歩いて行く。ミシロも後を付いて行く。
何年ぶりかの光をミシロは浴びた。それと同時に涙が出てしゃがんで泣いてしまう。
「何で泣いているの?」
不思議そうな顔をするラメルにミシロは答えた。
「やっと、やっと出られた、やっと……」
しかし、次の瞬間。ミシロは全身に氷水を浴びたような気持ちになる。
「ラメル様」
その声は間違いない。城主様の声だ。
ミシロの体はガタガタと震えた。過呼吸が起きて立っていられない。
「何? こいつが恐いの?」
ラメルはミシロに問う。それに対して首を大きく降って肯定した。
「じゃあ、殺しちゃえば?」
ラメルは飾られていた剣の前までスタスタと歩くと、手に取ってミシロへ投げてよこした。
(イラスト:餅田いずみ先生)
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