裏庭が裏ダンジョンでした@完結

まっど↑きみはる

文字の大きさ
448 / 574
飲みに行こう(大人のお店)

飲みに行こう(大人のお店)1

しおりを挟む
 鳥を呼び出すジョンのシルクハットを取り戻した後も、ムツヤ達は散らばった裏の道具を数個回収して、探知盤の石を埋めている。

「今日はユモトちゃんがナンパされてデートしちゃった宿場町でお泊りしましょうよ!」

 ユモトは恥ずかしい過去を言われてしまいあわあわとしている。

「あ、あれは違うんです!!」

「はいはい、わかったわかった」

 楽しそうな荷台の会話を聞いてモモはクスクスと笑っていた。隣にはヨーリィが座っている。

 なんと言うか、ヨーリィは何を考えているのか未だにわからないが、自由で、動物に例えるなら気ままな猫みたいだなとモモは思っていた。

 途中で運転をムツヤに変わってもらいながら、宿場町に着く。

 流石に人を泊めることを生業としている街なだけあって、夕暮れの後も賑やかだった。

 適当な宿屋に予約を取り、部屋に集まるとルーが何か企んだ笑顔で提案をする。

「もうキエーウも魔人も居ないことだし? 今日の夜は自由行動って感じでどうかしら?」

 なるほど、悪くない提案だとアシノは思った。たまには羽根を伸ばすことも必要だ。

「大丈夫ですか? 危険では?」

 モモが言うと、アシノは答える。

「まだキエーウの残党は居るかもしれんが、強襲出来る範囲に裏の道具持ちは居ないし、裏の道具持ちじゃなければお前達と衛兵でどうとでもなるだろう」

 そういう事でしたらとモモは納得した。

「まぁ、その前に連絡でも入れておくか」

 遠距離用の連絡石で、人を映し出す赤い玉が使えるか確認を取ると、すぐに返事が来たので、いつも通り壁にぶつける。

「だからー、アシノ先輩連絡は毎日って言ってるじゃないですか!!」

「うっさい。そっちはどうなんだ?」

 サツキに呆れながらアシノは話す。

「そうですねー、王都では魔人の残した武具の噂でいっぱいですね。国からはそれらを隠して所持した場合投獄、最悪処刑と重い罰になることが決まりました」

「まぁ、そうして貰った方が今の所はありがたいな」

「それで、魔人の残した武具は冒険者ギルドでの回収が始まっていて、一つ二十万バレシと交換らしいです」

 翼竜の討伐で百万バレシ、それも何十人規模で行って死ぬ危険もあり、報酬は分配ということを考えると、道具一つでその値段は破格だ。

「私もアシノ先輩と一緒に冒険したいです!! 暇なんですもん!!」

「はいはい、それじゃあな」

「ちょ、ちょっとま」

 アシノが赤い石を剥がすと、サツキの声は途切れてしまった。次はイタヤだ。

「おーアシノさん。どうもどうも」

「冒険者ギルドや冒険者たちの様子はどうですか?」

「そうだなー。皆、魔人の残した武具を見つけて一発当ててやろうと意気込んでるよ」

「それは良かったです。今の所どの様な裏の道具を回収しました?」

 アシノが聞くと、イタヤはうーんと言って思い出す。

「物凄く重くなる剣や、どこまでも伸びる槍、無詠唱で最大級の雷魔法を打てる杖なんかもありましたね」

「そうですか、引き続きよろしくお願いします」

「かしこまり!!」

 他の勇者達との会話を終えて、アシノは「さて」っと言い部屋を見渡す。

「それじゃあ私とモモちゃんのお酒つよつよさんチームはたくさん飲みに行きましょう!!」

 名前を呼ばれてモモは驚く。

「え、私ですか?」

「何? モモちゃん嫌なの? 私じゃダメなの!?」

 ルーは潤んだ瞳でモモを見つめていた。

「い、いえ、そういうわけでは……」

「やっぱムツヤっちの方が良いってわけ!? 私は遊びだったのね!!」

 そんな調子で騒ぎ出してモモは思わずあたふたとする。

「そ、そういうわけではありませんルー殿!! っていうか遊びってなんですか!?」

「モモ、だからソイツの言うことはまともに取り合うな」

 見かねたアシノがため息交じりに言う。

「やー!!」

 子供のように駄々こねるルーに、モモは言った。

「わかりました、ルー殿。お付き合いします」

「やったー!!! アシノはお酒よわよわさんチームだからどっかで飲んでてね」

「聞き捨てならんな……。いつ出発する? 私も同行する」

 アシノの言葉にルーは思い切りバカにした顔をする。

「お酒弱いのに無理して大丈夫でちゅかー?」

「うるせぇ!!」

 アシノがルーの頭をひっぱたくと「ぶべらっ」と言って縮こまった。

「私は留守番している」

「んー、ヨーリィちゃん連れて行きたい所なんだけど……。この街、夜に子供が歩いていると衛兵がうるさいから……。ごめんね!!!」

「気にしないで」

「お土産いっぱい買ってくるからねー!!!」

 そう言ってルーはヨーリィを抱きしめた。無表情のままグラグラと揺られている。

 モモとルー、アシノは夜の街へ消えていき、残ったムツヤとユモトはどうしようかと考えていた。

「僕達もせっかく街に来たんですし、どこか観光でもしましょうよ!」

 ユモトが珍しく積極的に誘ってきたので、ムツヤも乗り気になる。

「そうでずね!! ヨーリィ行ってくるね」

「いってらっしゃい」

 こうして2人は街を観光することにした。夜だと言うのに人がたくさん歩いていて活気がある。

 しばらく歩くとユモトがムツヤに話しかけた。

「何だか人が多くて疲れちゃいますねー」

「そうですね、人が少ない所にでも行きましょうか」

 そうして2人は路地裏に入る。抜けた先も明るかったが、何だか雰囲気が違う感じがした。なんと言うか、照明がピンク色だらけだ。

「おにいさーん、お店どうですかー?」

 突然声を掛けられてムツヤはビクッとした。振り返ると正装をした男がいた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...