裏庭が裏ダンジョンでした@完結

まっど↑きみはる

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千年前の物語

千年前の物語 7

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 自軍も敵軍も疲弊しきっている。ソイローク達もその例に漏れず、肉体的にも精神的にも疲れ果てていた。

 襲撃が今日も始まる。ソイロークは淡々と敵を斬り伏せていった。

「敵の大部隊が二日後に到着する模様です」

 その報告を受けて、ソイロークはため息を付く。こちらも志願兵が集まっているが、金目当ての者も多い烏合の衆だ。

 勝算は薄いが、戦うしか無いだろう。





「二日後が決戦になるだろうな……」

 月明かりに照らされてソイロークは言った。今はニシナーもサズァンも居る。

 はつらつとしていた彼はもう見る影もなく、疲れ切って目も輝きを失っていた。

「ですが、それを耐えればきっと……」

 ニシナーに言われ「あぁ」と短く返事をする。

「言っておきたい事がある」

 そう前置きをして、ソイロークは一振りの剣を取り出した。

「それは!!」

 魔人エィノキが使っていた真っ黒な魔剣だ。

「もう、どうしようも無くなった時。俺はこの魔剣を使おうと思う」

「ソイローク様、いくら勇者とはいえ、魔剣に取り込まれてしまう可能性があります」

 サズァンは冷静に言ったが、ソイロークの覚悟は決まっているらしい。

「大丈夫だ、本当にどうしようも無くなった時の切り札だ」

 力なく笑って言う。

「もう休もう。決戦の日まで英気を養っておくぞ」




 そして、訪れる二日後。偵察隊の言った通り、大軍が押し寄せていた。

 今日もソイロークは無双の働きをし、敵の数を減らしていく。

 ニシナーとサズァンの援護もあり、ほぼ勇者一行だけで数百人近くの敵を殲滅していた。

 投石部隊と弓兵、敵の魔法使いが、ニシナー達の魔導部隊を狙う。

 ニシナーは魔法の防御壁を展開し、それらを防いだ。

 だが、いかんせん数が多すぎる。彼女は苦しそうな顔をして壁を張り続けていた。

 ソイロークが気付き、攻撃を止めさせようと突っ込むが、一足遅い。

 防御壁はひび割れ、崩れ落ち、ニシナーの体には無数の矢が刺さる。

「ニシナー!!!」

 ソイロークは叫んだ。

「ニシナー様!!」

 サズァンが駆け寄るが、既に事切れてしまっていた。

「う、うわあああああ!!!!」

 近くの敵を力任せに斬り散らかし、ソイロークは自陣へと戻り、魔剣を手にした。

「許さない、お前達は絶対に許さない!!!」

 魔剣を引き抜くと、力が全身にみなぎるのを感じた。

 そして、何処からともなく声が聞こえる。

「良いぞ勇者ソイローク。衝動のまま全てを壊してしまえ!!!」
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