秘めやかな恋を王子達は甘く抱き締める

すいかちゃん

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敵国同士となった王子達は、絡めた指を離さない

砂漠の国・サンド。その名の通り、国の四方八方は美しい砂漠に覆われている。だが、カラカラに乾いているかといえばそうではない。所々にはオアシスがあり、国民や旅人が喉の乾きで悩まされることはほぼ皆無である。穏和でユニークなことが大好きな王は、年に一度大規模な舞踏会を開催する。各国の王族達は豪華絢爛な城内で、楽しい一時を過ごすのだ。だが、今年の舞踏会は少し違った。各国の姫達にとっては、特別な一夜になるかもしれないのだ。
「ねぇ。あそこにいらっしゃるのは、マルセール様じゃない?」
「まぁ、本当」
「なんてお美しいの」
姫達が溜め息を吐きながら見つめる相手。それは、次期王であるマルセール皇太子だ。銀色の髪に透き通るような青い瞳を持ち、その声は優しいそよ風のようだと評されている。男性とは思えないほどの美貌から、『歩く宝石』と言われていた。スミレ色のスカーフとくるぶしまである白い長衣、腕には金銀の宝飾品。マルセールが動くだけで、周囲の人々はうっとりとその姿に見惚れた。今年で18歳となるマルセールは、今だ決まった相手はいない。各国の姫達は、妃に選ばれようといつも以上に美しく着飾っていた。
「そういえば、アリーシャ国が来てないな」
誰かの発言に、周囲の空気が変わる。発言者が狼狽えていると、側にいた貴族らしい男が注意する。
「やめろ。その国の話題は禁句だ」
「なぜだ?友好国だろ?」
「知らないの?今や両国は敵同士なのよ」
「ええっ」
長年友好国だったサンドとアリーシャは、まさに一触即発の危機に直面しているのだ。その理由は、アリーシャの国王があまりにも強欲だったためだ。サンドが持つ豊富な資源を奪おうと画策していたことが、サンドの密偵により明るみに出てしまったのだ。サンド国王はこれに激しく激怒し、アリーシャを友好国の中から外してしまった。
「アリーシャのリュシオ様は、マルセール様の親友だったのに…」
「おかわいそうに」
コソコソと聞こえる陰口に、マルセールは形の良い唇を引き締めた。ほんの些細な一言が国の安定を揺るがす。マルセールが陰口に表情を変えれば、たちまち噂の種になるのだ。その種が国を危機に晒すかもしれない。
「すまない。マルセール」
暗く沈む心中を隠して穏やかな笑みを浮かべる息子に、サンド国王が慈愛の眼差しを向けた。
「私達のせいで、お前とリュシオの友情に亀裂を生じさせた」
「お止めください。父様」
謝罪しようとする父親を、マルセールが慌てて止めた。
「私のことは心配なさらないでください。それに、私とリュシオはとっくに友人ではないのです」
「…マルセール」
マルセールは優雅に一礼すると、踵を返して広間へと降りていった。たちまち歓声が上がり、あっという間に人だかりができる。
「マルセール様。踊っていただけませんか?」
「私も」
各国の姫達がワルツへと誘う。マルセールは笑みを浮かべると、その一人一人と手を取りステップを踏んだ。と、不意に誰かの視線を感じ足を止める。
「マルセール様?」
「すみません。ちょっと風に当たってきます」
マルセールは、視線を感じたバルコニーへと足早に急いだ。警備兵は配置しているものの、隙は必ずあるものだ。
「待てっ」
バルコニーに到着したマルセールは、角を曲がる黒衣の人物に声をかけた。先ほどまであのような者はいなかった。マルセールは全速力で後を追いかける。
(まさか…っ)
目の前でヒラヒラと翻る黒衣を、マルセールはなんとか掴もうと手を伸ばした。が、寸前でヒラリとかわされる。伸ばした手は、虚しく空をさまようだけだった。やがて、城の奥へと辿りく。そこは、今は使われていない倉庫。マルセールは、半開きのドアに誘われるように中へと入った。次の瞬間、黒いマントがマルセールの全身を覆った。
「な…っ」
驚く間もなく、マルセールの唇が塞がれる。暗闇で相手は見えないが、唇の感触はマルセールに安心感を与えた。なぜなら、相手はマルセールが待ち望んでいた人物だったからだ。
「会いたかった。リュシオ」
マルセールがマントを床に落とせば、そこには不適な笑みを浮かべて立つリュシオがいた。
漆黒の短い髪と褐色の肌に、エメラルド色の瞳が輝いていた。
「今夜は来ないと思った」
「そんなわけがないだろ」
リュシオの指がマルセールの顎を優しく掬い上げる。2人は引き寄せられるように唇を結び、互いの肌を求めた。リュシオの手がドアを閉め、静かに鍵をかける。これで、誰にも邪魔はされない。リュシオが床に落ちたマントを広げ、マルセールを寝かせる。言葉よりも、身体で愛を確かめ合いたかった。
「しかし、さっきの言葉は聞き捨てならないな」
「なんのことだ?」
互いの衣服を脱がせ合いながら、リュシオが不満そうな瞳を向ける。マルセールが小首を傾げた。
「俺達は友人ではないのか?」
リュシオの言葉に、マルセールがクスッと笑う。
「友人同士は、こんなことはしない」
「…確かにな」
リュシオもクスクス笑いながら、マルセールの肌に唇を寄せる。啄むような口づけを全身に受け、マルセールの息が静かに上がっていく。
幼い頃から友人として交流していた2人は、マルセールの15歳の誕生日の日。ここで恋人同士として結ばれた。
「あの日のことは、今でも忘れない」
マルセールの胸から臍へ唇を移動させながら、リュシオが熱っぽく囁く。絹よりも滑らかな白い肌に、リュシオは薄紅の花弁を咲かせていく。
互いの恋心に気付き始めた頃。マルセールの15歳の誕生日が開かれた。少女のような愛らしさから、各国の王子達が次々と手の甲にキスをしていく。ふざけてしたものだったが、その姿にリュシオは怒りを隠せなかった。

『リュシオ。どうしたんだ?』

急に不機嫌になったリュシオに、マルセールはひどく戸惑った。そんなマルセールを誰もいないこの部屋に連れてきて、リュシオは強引に身体を重ねた。最初は抵抗したマルセールだが、リュシオの熱く甘い言葉に身体を開いた。
「お前は、昔も今も強引だ…っ」
羞恥と期待に全身を甘く震わせながら、マルセールがリュシオの背中にしがみつく。リュシオに触れられた場所が、熱くて心地良い。ほんの少し肌が擦れただけなのに、マルセールは甘い快楽を感じた。
「お前の身体は、砂糖より甘いな」
乳首を柔らかく摘まみながら、リュシオの唇が下肢へと近づく。舌先に欲望の果実をなぞられ、マルセールは顎をのけぞらせた。リュシオの舌が、マルセールの形や味を確かめるようにゆっくりと動く。
「あ…っ、あぁっ、あ…っ」
何も知らなかったあの頃は、この行為がひどく怖かった。あまりにも強い快感に、このままどうにかなってしまいそうだったから…。リュシオの口内に囚われ、彼が赴くままに分身が愛される。その事実は、ひどく背徳的でより快楽を感じさせた。
「リュシオ…ッ、や…っ」
限界を感じて、マルセールがリュシオを離そうともがく。
「駄目だ。今夜は、このまま…」
「リュシオ…ッ。あ…っ、ああっ」
リュシオの大きな手が、マルセールの尻を左右から揉みしだく。前と後ろを激しく刺激され、マルセールはあっという間に果てた。ハァハァと薄く上下する胸板に、リュシオが顔を埋めた。
「お前の全てが欲しい」
「ん…っ、あぁっ」
黒い布に銀の髪はよく映えた。内側から発光しているかのような白い肌に、赤く艶やかな2つの果実。リュシオが果実を頬張れば、たちまち白い腕がしがみついてきた。
「今日は激しいな」
マルセールがクスクス笑う。優しくも激しい愛撫に喘ぎながら、マルセールは気付いていた。きっと、こんな風に抱き合える日はもうこない。リュシオは、なにかを決意している。
「…いつ、なんだ?」
リュシオがマルセールの両足を限界まで広げる。秘めやかな蕾は、これから訪れる快楽に震えていた。
リュシオは質問に答えず、自身の人差し指と中指を静かにマルセールの蕾へと埋めた。
「う…ぁっ」
中を優しくかき混ぜられ、そのもどかしさにマルセールの背中がのけぞる。欲しいのは、もっと激しい愛撫。指とは比べ物にならないぐらい太く熱いもので、奥の方まで満たして欲しい。マルセールの指先に力がこもる。が、リュシオはその願いに気付かないふりをした。
「…綺麗だ」
指が2本・3本と増やされる。その度にマルセールの身体は甘く震えた。甘い責め苦に耐えるマルセールを見つめながら、リュシオがうっとりと囁いた。そして、ゆっくりと屹立した自身を埋めていく。
「あ…ぅっ、あっ、はぁっ、あっ、そんなに一気に…っ」
「マルセール。もっと乱れてくれ。もっと…」
「はぁっ、いや…ぁっ」
マルセールの閉じた瞳から、ポロポロと大粒の涙が零れ落ちた。リュシオは涙の粒を舌先で掬い、その甘さに目を閉じた。
「お前は、涙さえも美しいのだな…」
このままずっと側にいられたらと願いながら、リュシオはマルセールを激しく抱き続けた。
「あの日も、こうしていたな…」
互いの衣服が床で皺だらけになるのも構わず、2人は抱き合っていた。
リュシオがマルセールの乱れた前髪をかきあげる。
まだ性行為に未熟で、マルセールは恥ずかしさと痛みに泣きじゃくっていた。そんなマルセールを慰めながら、リュシオは愛していると囁き続けたのだ。
「お前の腕は、昔も今も暖かいな」
マルセールが目を閉じてキスをねだる。リュシオはすぐにその願いを叶えると、愛しそうに背中を撫でた。
「マルセール。俺は、これから国を出る」
リュシオの言葉に、マルセールは黙って頷いた。
「…わかっていた」
いつもとはどこか違うリュシオの様子に、マルセールも気付いていた。激しく腰を突き入れた瞬間の、リュシオのやるせない表情が全てを物語っていた。
「父上の横暴は放っておけない。このままでは、お前まで…」
リュシオの父は、強欲な王として知られている。その手がマルセールへと伸びる可能性は否定できない。
「俺は父上を倒す」
「…失敗したら?」
「絶対に勝ってみせる」
リュシオの腕が強く抱き締める。マルセールは、声を出さないように泣いた。リュシオの覚悟を揺らがさないように、静かに…。
「俺がお前とこの国を守る」
「…リュシオ」
「だが、俺を待つ必要はない」
「待ってるっ。何年でも、何十年でも…っ」
「マルセール…」
2人は唇を深く結び、再び身体の奥で繋がった。離れている間、互いの熱を忘れないように…。
遠くからマルセールを探す声が聞こえたが、2人には関係ないことだった。

2年後。
王となったマルセールの前に、銀の甲冑に黒衣をまとったリュシオが現れた。サンドの新国王として…。
「サンド国の王として、マルセール様に忠誠を誓います」
マルセールは走り出すと、リュシオに抱きついた。
「俺と俺の国は、永遠にお前のものだ」
「リュシオ…」
「会いたかった」
恋人達は、やっと誰にも邪魔されない時間を手に入れたのだ。固く指を結び合い口づけを交わす2人に、国民達は暖かな拍手を送った。












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