【完結】小さなフェンリルを拾ったので、脱サラして配信者になります~強さも可愛さも無双するモフモフがバズりまくってます。目指せスローライフ!〜

むらくも航

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第58話 フェンリルの里

 ついに出会った野生のフェンリル。
 俺たちはその後を追っているところだ。

「緊張しますね……」
「うん……」

 俺と美月ちゃんはフクマロに乗りながら、奥へと進んで行く野生のフェンリルに付いて行く。
 
「フー……」

 フェンリルはただ静かに、音もなく一歩ずつ奥へと進んでいく。
 美月ちゃんの言う通り、緊張感があるこの雰囲気。

「キュル」
「プク」

 あの末っ子属性のココアとタンポポですら騒ごうとはしない。
 あるいは、同じ魔物としてフェンリルに何か感じているものがあるのかもしれない。

「道は想定通りなのか?」
『大体な。前に見つかったフェンリルの足跡の方向から、なんとなくこっちの方だとは予測していた』
「さすがだな」
『あのドラゴンだけは想定外だったけどな』

 あの図鑑にすら載っていなかったドラゴン。
 戦闘力を設定するなら、明らかにS、もしくはEX(規格外)で間違いないだろう。
 それを目付きだけで追い払うフェンリルには、さすがに驚かされた。
 
 あれがフクマロと同じ種族『フェンリル』なのか……。

「やすひろさん」
「ん?」

 そんな考え事をしていたところ、美月ちゃんに声を掛けられる。
 ふと気が付くと、フクマロも足を止めていた。

 それもそのはず、案内をしてくれているフェンリルが足を止め、こちらを見ていたのだ。

「フゥ」
「え?」

 
 だが、その先には何も無い。
 いや、続く道はあるんだけど、これまでとは一切変わらない奥へと続く森の景色だ。
 とても里があるように思えないけど……。

「フー」
「!?」

 だが、フェンリルが唐突に姿を消した。

「え!」
「どうなってるんだ!?」

 美月ちゃんと共に声を上げる。
 それほどに驚きの光景だったからだ。

 いや、冷静に振り返って見れば、ある木と木の間に踏み込んだ瞬間に姿を消したと思われる。

『あの木の間から、違う場所が繋がってんのか?』
「……!」
『何らかの方法で、外界と同じ光景にしているのかもしれない』
「まじか……」

 そんなことができるなんて。

 それに、あのえりとが「何らかの方法」だと不安げに言った。
 見れば大抵なんのことでも理解できるえりとからは、まず出てこない言葉だ。
 その事がさらに目の前の不思議な現象を物語っている。

「ワフ! ワフフ!」
「フクマロ?」
「ワフー!」

 戸惑っている俺たちとは反対に、右手を上げて「早く行こう」と言いたげなフクマロ。

「大丈夫なのかな……」
「ワフ!」

 その不思議なものを前にしても張り切るフクマロ。
 ここはフクマロを信頼してみるか。
 
「行くよ」
『分かった。この先はどうなってるか分からねえ。それに通信も途絶える可能性がある。気を付けて進めよ』
「了解」

 えりとに一言を告げ、フェンリルと同じ木と木の間の前に立つ。
 
「やすひろさん、せーのでいきましょう」
「そうだね」
「「せーのっ!」」

 思わず目をつむりながら、木と木の間へ踏み出す。

「うぐっ!」
「きゃっ!」

 途端に、瞑っている目すらも眩しい光に包まれる。
 だがそれも段々と引いていき、ふと目を開けた。

 するとそこには、

「……え!」
「すごい!」

 目の前に広がるは広大な“草原”。
 さっきまでの森林の景色とはまるで違い、足元までの小さな草が生い茂る。
 
 また、遠くの景色は“段々畑”のようになっており、赤、ピンク、黄……と色鮮やかな草がより光景を豊かにしていた。

「ワフ!」
「ムニャ!」
「キュル!」
「プクー!」
「ぽよー!」

 続いて入ってきたペット達も、この景色には大興奮。
 これが……『フェンリルの里』なのか?

『こいつはやべえな』
「うん! これがフェンリルの里ってことでいいんだよな?」
『ああ、東の下の方を見てみろ』
「……!」

 えりとに言われて視線を向けた先。
 周りを木の柵のようなもので囲った村のようなものがある。
 
「って、あれって!」
『ああ。フェンリルだ』

 その中に見えるは、白く気高い姿をしたフェンリル。
 しかもたくさん!
 
「ワフー!?」

 同種をたくさん見て興奮したのか、フクマロが声を上げる。

 そうして、

「フー……」
「あ」

 俺たちの前に、森の案内をしてくれたフェンリルが再び姿を現す。
 だけど、隣にはもう一匹。

 何をするのか様子をうかがっていると……

「ようこそお越し下さいました」
「!?」

 もう一匹のフェンリルは人の言葉を話した──。 
 
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