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第71話 宝物
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辺りも暗くなってきた頃。
世界樹の頂上、中央の「展望台」にて。
「それじゃみんな!」
フェンリルとスライムを迎え入れて初めて『王種』野菜を収穫したことから、突発的にパーティーを始めることになった。
「かんぱーい!」
「「「かんぱ~い!」」」
「「「クゥ~ン!」」」
「「「ポヨオオオ!」」」
「「「ニャンパ~イ!」」」
俺が音頭を取ると、色々なところから乾杯が聞こえてくる。
最後のはうちのペット達……?
いや、さすがに違うよな。
「しっかし、やすひろよお」
「ん?」
「いきなりパーティーとはまた良い提案だねえ。あ、ビールおかわり!」
「早えよ!」
えりとがいつものペースでビールを流し込む。
まあ、こいつらしくていいか。
「私もおかわりで!」
「目銅佐オーナーも!?」
まったく、この二人は……。
オーナーもこういうところは本当に変わらない。
「それにしても綺麗ですね~」
「本当に! 頑張ったから褒められると嬉しいよ」
美月ちゃんに言われて、後ろを振り返る。
そこには「四季のお花見ゾーン」だ。
季節は春。
木々からは桜や梅が顔を出し、新しい季節を思わせる。
だが今は、空も暗くなった夜。
「これを付けて良かったなあ」
「はい。すごく幻想的です……」
そこで、夜でも明るくできるよう、木々には提灯を付けた。
夜のライトアップ用だ。
現在は花に合うよう、薄暗いピンクや紫の光が灯り、夜限定で幻想的な風景が浮かび上がる。
なんとも素晴らしい「夜桜」というやつだね。
「お~? めどさん、俺とやろってのかい」
「えりとさんこそ。わたひは負けまへんよ~」
「「いざっ!」」
そんな景色には目もくれず、オーナーとえりとは飲み勝負をしているけれど。
「美月ちゃんはあんな大人になっちゃダメだよ」
「あはは。気を付けます」
後ろは放っておいて、俺たちはそのまま景色を楽しむことにした。
また、向こうの方も騒がしくなっている。
魔物たちが集まってる場所だね。
「ムームニャニャ♪」
「ワフ!」
「キュル!」
「プックー!」
「ぽ~ぽよよっ!」
うちのペット四匹に、ぽよちゃんを加えて演奏会を開いてるみたい。
エアギターもしてるし、イメージはバンドかな?
それにしては随分と可愛いけど。
「クォン!」
「ポヨッ、ポヨッ!」
お客さんはフェンリルとスライム達。
頭を上下に振るフェンリルや、その場でぽよぽよ跳ねるスライムがいて、盛り上がってるみたい。
「仲良くなったよなあ」
「うふふっ。そうですね」
今の両種族に距離は全くない。
中には、フェンリルの上に乗るスライム、反対にバランスボールのようにスライムに乗るフェンリルなども見られる。
「ポヨ」
「ウォフ」
いつまで険悪な雰囲気が続くかと心配したが、思ってたよりずっと早く距離は縮まった。
「って、また例のやってるし」
「可愛いじゃないですか」
さらに、最近ではすごい遊びまで流行り始めた。
「ウォフ」
「ポ……ウォ、ウォフ!」
並んでいるのは二匹のフェンリル……に見えるが、一体はスライムだ。
これが最近流行りの「どっちでしょうゲーム」。
スライムがフェンリルやうちのペット達に変身して、本物を当てるというルールらしい。
「ウォフ!」
「クォ~ン」
「ポ、ポヨオ……」
「ふふっ。当てられたみたいですね」
「騙せたことあるのかなあ」
これが広まり、両種族はお互いやうちのペット達ともさらに仲良くなった気がする。
今ではこれが日常化して、なんとも微笑ましい。
「ははっ」
「やすひろさん?」
「ああ、ごめん。ちょっと最近の事を思い返して」
「やすひろさん、幸せそうですよ」
「そうかなあ……うん、そうかも」
美月ちゃんにそう言われ、ふと最近の俺の暮らしを思い浮かべる。
朝起きて、「畑」ゾーンに生える野菜を食べ歩き方式で口にしながら、「里」へ顔を出す。
「里」では、モフったりポヨったり、野菜の様子を眺めたりするわけだ。
昼はえりとやオーナーと昼ごはんを食べながら、ペット達とのんびり過ごす。
夕方に配信で働いた後は安らぎの時間。
咲き乱れる四季折々の花を見上げながら、極楽の「温泉」を楽しむ。
たまに日本酒も混じえながらね。
もちろん、うちのモフモフや里のモフぷにと一緒に入ることも多々ある。
「恵まれてるなあ」
こんなのブラック社畜時代じゃ考えられなかった生活だろう。
それでお金にも余裕がある。
“『王種』野菜”に“配信”という、2大コンテンツを持っているわけだからな。
「でも、どちらもやすひろさんが頑張った甲斐あってですよ」
「そうかな」
フクマロ、モンブラン、ココア、タンポポ、ぽよちゃん。
えりと、美月ちゃん、目銅佐オーナー。
フェンリル、インフィニティスライム。
俺の周りにはたくさん仲間がいる。
美月ちゃんはこう言うけれど、俺がもらったものだってたくさんあるんだ。
「みんな、お互いに支え合ってるんだよ」
「……! うん。そうかもしれないです」
最強種族である四匹にしたってそう。
俺はフクマロを拾い、フクマロは俺を助けてくれた。
モンブランに懐かれて二匹目のペットに。
ココアを託されて迎え入れる決意を。
タンポポとは一緒に危険を超えて家族に。
みんなみんな、お互いに支え合っているんだ。
「わしらの戦いも止めてくれたしのう」
「本当だよね」
「里長さん、スライムさん!」
それは、最近一緒に暮らし始めた両種族にも言えるだろう。
「ここにいるみんな、俺の宝物だよ」
「やすひろさん……」
もちろん、美月ちゃんもね。
「さ、あっちに行こうか。俺もあいつらのライブを近くで見なきゃ!」
「はい!」
そうして、パーティーの熱気はさらに増していったとさ。
世界樹の頂上、中央の「展望台」にて。
「それじゃみんな!」
フェンリルとスライムを迎え入れて初めて『王種』野菜を収穫したことから、突発的にパーティーを始めることになった。
「かんぱーい!」
「「「かんぱ~い!」」」
「「「クゥ~ン!」」」
「「「ポヨオオオ!」」」
「「「ニャンパ~イ!」」」
俺が音頭を取ると、色々なところから乾杯が聞こえてくる。
最後のはうちのペット達……?
いや、さすがに違うよな。
「しっかし、やすひろよお」
「ん?」
「いきなりパーティーとはまた良い提案だねえ。あ、ビールおかわり!」
「早えよ!」
えりとがいつものペースでビールを流し込む。
まあ、こいつらしくていいか。
「私もおかわりで!」
「目銅佐オーナーも!?」
まったく、この二人は……。
オーナーもこういうところは本当に変わらない。
「それにしても綺麗ですね~」
「本当に! 頑張ったから褒められると嬉しいよ」
美月ちゃんに言われて、後ろを振り返る。
そこには「四季のお花見ゾーン」だ。
季節は春。
木々からは桜や梅が顔を出し、新しい季節を思わせる。
だが今は、空も暗くなった夜。
「これを付けて良かったなあ」
「はい。すごく幻想的です……」
そこで、夜でも明るくできるよう、木々には提灯を付けた。
夜のライトアップ用だ。
現在は花に合うよう、薄暗いピンクや紫の光が灯り、夜限定で幻想的な風景が浮かび上がる。
なんとも素晴らしい「夜桜」というやつだね。
「お~? めどさん、俺とやろってのかい」
「えりとさんこそ。わたひは負けまへんよ~」
「「いざっ!」」
そんな景色には目もくれず、オーナーとえりとは飲み勝負をしているけれど。
「美月ちゃんはあんな大人になっちゃダメだよ」
「あはは。気を付けます」
後ろは放っておいて、俺たちはそのまま景色を楽しむことにした。
また、向こうの方も騒がしくなっている。
魔物たちが集まってる場所だね。
「ムームニャニャ♪」
「ワフ!」
「キュル!」
「プックー!」
「ぽ~ぽよよっ!」
うちのペット四匹に、ぽよちゃんを加えて演奏会を開いてるみたい。
エアギターもしてるし、イメージはバンドかな?
それにしては随分と可愛いけど。
「クォン!」
「ポヨッ、ポヨッ!」
お客さんはフェンリルとスライム達。
頭を上下に振るフェンリルや、その場でぽよぽよ跳ねるスライムがいて、盛り上がってるみたい。
「仲良くなったよなあ」
「うふふっ。そうですね」
今の両種族に距離は全くない。
中には、フェンリルの上に乗るスライム、反対にバランスボールのようにスライムに乗るフェンリルなども見られる。
「ポヨ」
「ウォフ」
いつまで険悪な雰囲気が続くかと心配したが、思ってたよりずっと早く距離は縮まった。
「って、また例のやってるし」
「可愛いじゃないですか」
さらに、最近ではすごい遊びまで流行り始めた。
「ウォフ」
「ポ……ウォ、ウォフ!」
並んでいるのは二匹のフェンリル……に見えるが、一体はスライムだ。
これが最近流行りの「どっちでしょうゲーム」。
スライムがフェンリルやうちのペット達に変身して、本物を当てるというルールらしい。
「ウォフ!」
「クォ~ン」
「ポ、ポヨオ……」
「ふふっ。当てられたみたいですね」
「騙せたことあるのかなあ」
これが広まり、両種族はお互いやうちのペット達ともさらに仲良くなった気がする。
今ではこれが日常化して、なんとも微笑ましい。
「ははっ」
「やすひろさん?」
「ああ、ごめん。ちょっと最近の事を思い返して」
「やすひろさん、幸せそうですよ」
「そうかなあ……うん、そうかも」
美月ちゃんにそう言われ、ふと最近の俺の暮らしを思い浮かべる。
朝起きて、「畑」ゾーンに生える野菜を食べ歩き方式で口にしながら、「里」へ顔を出す。
「里」では、モフったりポヨったり、野菜の様子を眺めたりするわけだ。
昼はえりとやオーナーと昼ごはんを食べながら、ペット達とのんびり過ごす。
夕方に配信で働いた後は安らぎの時間。
咲き乱れる四季折々の花を見上げながら、極楽の「温泉」を楽しむ。
たまに日本酒も混じえながらね。
もちろん、うちのモフモフや里のモフぷにと一緒に入ることも多々ある。
「恵まれてるなあ」
こんなのブラック社畜時代じゃ考えられなかった生活だろう。
それでお金にも余裕がある。
“『王種』野菜”に“配信”という、2大コンテンツを持っているわけだからな。
「でも、どちらもやすひろさんが頑張った甲斐あってですよ」
「そうかな」
フクマロ、モンブラン、ココア、タンポポ、ぽよちゃん。
えりと、美月ちゃん、目銅佐オーナー。
フェンリル、インフィニティスライム。
俺の周りにはたくさん仲間がいる。
美月ちゃんはこう言うけれど、俺がもらったものだってたくさんあるんだ。
「みんな、お互いに支え合ってるんだよ」
「……! うん。そうかもしれないです」
最強種族である四匹にしたってそう。
俺はフクマロを拾い、フクマロは俺を助けてくれた。
モンブランに懐かれて二匹目のペットに。
ココアを託されて迎え入れる決意を。
タンポポとは一緒に危険を超えて家族に。
みんなみんな、お互いに支え合っているんだ。
「わしらの戦いも止めてくれたしのう」
「本当だよね」
「里長さん、スライムさん!」
それは、最近一緒に暮らし始めた両種族にも言えるだろう。
「ここにいるみんな、俺の宝物だよ」
「やすひろさん……」
もちろん、美月ちゃんもね。
「さ、あっちに行こうか。俺もあいつらのライブを近くで見なきゃ!」
「はい!」
そうして、パーティーの熱気はさらに増していったとさ。
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