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アブロニの様子を見に行く

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 アノールは悩んだ末、アブロニの部屋を訪ねることにした。
 
 肉弾戦を好むアブロニは、死霊の類を苦手としており、幻覚魔術の使い手はもとい、催淫をかけてくる淫魔のようなやり口は特に嫌っている。
 宿に付く前に冗談めかして言ったことが本当だったとしたら?
 戦士としての矜持が高いアブロニは、おかしな呪いを貰っていても、おいそれと口に出せないのではないだろうか。
 一気に罪悪感がアノールの胸の内に広がっていく。
 ここで放っておくのが大人、かもしれない。
 だが、それでいいのだろうか。
 個人主義が集まるパーティーは、一見しがらみがなさそうに見えて、不信という火種が燻り続けているようなものだ。
 腹を割って話せる関係、それを今、作るべきじゃないのか!?
 段々と薄れゆく己の発言権を危ぶむ気持ちもあってか、アノールはお節介をすることに決めてしまった。



 部屋を出て、すぐ向かいの扉がアブロニの泊る部屋だ。
 アノールは少しためらったのち、扉をノックした。
 返事はない。
 もう一度、先ほどより強くノックする。
「俺だよ、開けてくれよ」
「……まず名乗れ」
「アノールだ。声で分かってくれよな」
 はあ、と扉越しに特大の溜め息が聞こえる。
 閂が抜かれ、わずかに扉が開いた。
「何だ。俺はもう寝る。夜遊びは独りでしろ」
 アブロニはどこか焦った様子で、さっさと扉を閉めようとした。
 だが、アノールは扉の隙間に足を挟んでそれを阻止する。
 そして、神妙な顔つきではったりを口にした。
「お前に起きていることは、全部分かっている。俺が力になるぞ」
「な……」
 アブロニの眼が大きく見開かれる。縦長の瞳孔が驚きで揺れていた。
「大丈夫、うってつけのモノも持ってるんだ」
「お前……本当に、いいのか」
 生唾を飲み込んだアブロニは、扉から手を離す。
「おう! 何でも言ってくれ!」
 明るく己の胸を叩くアノールを見て、アブロニは半信半疑になりつつも、来訪者を中へと引き入れた。

 アノールに充てがわれた個室と同じ狭い部屋で、アブロニはどっかりと寝台に腰を下ろした。
 そして、餌の前で待てを食らった狼犬のように、爛々とした目つきでアノールを見上げる。
「その、言いづらいのは分かるけど、無理は良くないぞ。俺も駆出しの頃、搾り取られて危なかったことがあってな」
 アノールはサキュバスに命も童貞も持っていかれそうになったことは伏せ、まるで玄人のように語りだした。
「俺には効かなかったけど、あのインキュバス、強かったんだよな? 男にも効くくらいだもんな」
「……」
 アブロニは答えない。ただ、アノールの言葉を待っている。
「俺もしばらくムラムラしっぱなしでさ、止まんなかったよ。右手じゃ満足出来なくてさあ」
「簡潔に言え」
 ドスの利いた声にアノールの顔が引きつる。
「短気だなあ、つまりだ! ギンギンになってても恥ずかしくて言えないお前のために、コレ貸してやろうってこと!」
 半ばヤケになりながら、アノールはズボンの右ポケットから小瓶を、左ポケットから青っぽい乾物を取り出した。
「何だそれは」
「スライムのミイラ。核を抜いて、日保ちするようになってる。こっちは精油、解毒作用もある、らしい!」
「一応聞くが、それでどうする?」
「水で戻すとな、あのぷるんぷるんに戻る。核んとこは空洞になるから……まだ聞く? ん?」
 ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべるアノールを見て、アブロニは頭を抱えたくなった。
 このニンゲンはつくづく見通しが甘い、間抜けである。
 そんなのに惹かれて付いてきてしまった自分もまた、大間抜けだと、アブロニは肩を落とすしかない。
 そのまま意気消沈出来ればよかったが、彼にはもう冷静を装う気力が残されていなかった。
「……そんなニンゲン用の玩具で足りるか」
「ん? 何?」
 アブロニの呟きを聞きそびれたアノールは、腰を落としてアブロニの方へ体を傾けた。
 それが、良くなかった。
 青い鱗で覆われた手と、寝台から垂れ落ちていた長い尾が、たちまちアノールの腕を捉えた。
 アノールは声を上げる間もなく、寝台の上へ転がされる。
 気づけば巨体に跨がられ、身動が出来なくなっていた。
「おっ、えっ!?」
 何が起きているのかさえ把握出来ず、目を白黒させるアノールに、アブロニは溜まっていたものを徐々に吐き出すかのように、口を開いた。
「何でも言えと言ったな」
「言ったけどっ」
「なら全部言うぞ。ニンゲンに聞かせるつもりは無かったが……いいか。万年サカってる淫魔やお前らと違ってな、蜥蜴人おれたちには、発情期がある」
「へ、へぇ」
「今、そのど真ん中だ」
 何かを察して藻掻き始めたアノールの身体を押し留めるように、その体を挟むアブロニの太腿に力が籠もる。
「何とかやり過ごしてたのに、どっかの馬鹿が背徳の遺跡に行くと騒ぎやがって、挙げ句に淫魔に囲まれて……こっちがどれだけ」
「ごめん本当にごめん、俺が悪いっ、俺が悪いから!」
「そんなことは分かってる」
「そうだ! 俺の分前やるからそれで娼か」
「いらん。俺は雄にしか興味がない」
 全く予想していなかった言葉に、アノールは衝撃を受けて固まった。
「特に、:鱗なし・・・が、好みだ。だから故郷くにを出て、いま、お前のお守りをしているんだ! 分かったかッ!」
 ぐい、と身体を倒し、アブロニはアノールに覆いかぶさった。
 アノールの手首がブロニの手によって布の上へ縫い付けられる。
 口先と鼻先が触れそうなほど、アブロニは顔を寄せてきた。
 アブロニの身体は催淫と発情で興奮が二乗され、本当なら今にでも猛った肉簿を穴という穴に突き挿れてやりたい衝動に駆られている。
 それを押さえつけながら、アブロニはアノールへ許しを求め始める。
「ニンゲンなら誰でもいい訳ではない。……今、これを鎮めてくれるのは、アノール、お前しか居ない」
 どこか苦しそうなアブロニに、アノールは言葉を詰まらせた。
 俺しかいない? 俺じゃないと嫌だってことは、つまり──
 いくら鈍臭いアノールでも、己に向けられた熱が性欲だけでは無いことは、察することができた。
「力になるというのは、噓だったのか」
「う」
 まるで他者の心を弄び、約束を反故にするろくでなしになってしまったかのようで、アノールはどうにも突っぱねることが出来ない。
 そして、閉じられた部屋の中、淫気に侵された者とくっついていれば、嫌でもそれが伝播していくことは明白だった。
 冷静さを欠いた二人には、もうある事柄しか、頭に浮かばなくなっていた。
「いっ一回だけだからなっ!」
 これがアノールの出した、最大限の答えだった。

 アブロニに服を剥ぎ取られたアノールは、素っ裸のまま寝台の上に座した。
 何故こんなことになっているのか。
 そう思うも、風邪をひいたときのように熱を持った頭では答えが出せない。脇の下にはうっすらと汗まで滲み始める。
 そして下穿きを脱いだアブロニも、同じように一糸まとわぬ姿になった。
 白くつるりとした股間部分は、綿でも詰めたかのように不自然に膨らんでいる。
 そういえば、リザードマンのチンポってどうなってるんだ?
 思えば連れ立って野小便をしたことがなかったと、アノールはまじまじとソコを見つめる。
 その不躾な視線さえ、今のアブロニにとっては燃料だった。
 自らの手でその膨らみを押し上げると、白い皮膚を割ってずるりと、大きなものがまろびでる。
 それを見た瞬間、アノールは思わず目を剥いた。
「裂けてる!?」
「元々こうだッ!」
 二本並んで聳え立つ肉棒を握りしめながら、アブロニもまた吠えていた。

「何で二本もあんだよ」
「何故お前達は一つしかない」
「一本で足りるだろ」
「一つ駄目になったらどうする」
「怖いこと言うな」
 赤黒い巨根一本だけでも驚きだが、それが並んでいる光景に、アノールは思わずしり込みをした。
「怖気づいたのか、情けない。……こっちに来い。いきなりブチ込むようなことはしないでやる」
 渋い顔をするアノールを膝立ちさせると、アブロニは寝台の隅に転がっていた精油の入った瓶を拾って手渡した。
「お前も勃ててみろ。そうしたらちょっとは良くしてやる」
 目の前で自慰をしろ、という命令にアノールは羞恥を覚え、また反発したくなった。だが、断ろうにも準備万端のアブロニから逃げきれる自信もない。この大きなリザードマンとは、身体の造りから何から何まで違う。
「お前って、結構変態だったんだな」
「うるさいぞ。さっさと手を動かせ」
 悔し紛れに悪態をつきながら、アノールは精油を掌に少し零すと、萎えたままぶら下がる肉棒を掴んだ。
 刀身を覆う皮を剥き、亀頭を露出させる。滑つく精油が肉棒を湿らせ、生温かい掌の温度が粘液を通して竿に移っていくようだ。
 五本の指で輪を作り、筒のようにして竿を握り込む。
 アノールは程よく肉棒を圧迫しながら、上下にそれを扱き始めた。
 ──見られている。こんなザマを。
 普段なら萎えて勃ちあがるどころではなかっただろう。
 だが、淫気に支配されたアノールは、知らず知らずのうちに、異種族の屈強な雄から淫らな命令をされ、嫌々・・それを受けるという被虐の悦びに目覚めつつあった。
 自らの手ながら、ぬるぬるとした温かな指で肉棒を擦られると、ぞくぞくと身体が震えるような刺激の波と共に、体温が上がっていくようだった。
 アノールの肉棒は、みるみるうちに膨らんで反り返るように天を向いた。
「勃たせてもそのくらいか。ニンゲンのは随分大人しいな」
 アノールの自慰を眺めつつ、自らの二刀も弄っていたアブロニは勝ち誇ったように顎を上げる。
「お前のと大差ないだろ」
 むっとしたアノールが反論すると、アブロニの長い尻尾がアノールの背に回された。
「なら比べてみるか」
「うわっ!?」
 アブロニは膝立ちになり、尻尾でアノールの身体を自らの方へと引き寄せた。
 正面から互いの股間を押し付ける恰好になる。
 血管の浮く極太肉棒二本の隙間に、アノールの竿が割り込むように触れた。
「どう見ても届いてないだろ」
 アノールの肉棒はアブロニのそれの三分の二ほどの長さであり、大きさだけで言えばアノールの完敗だ。
 アノールの肉棒も人間の雄としては見劣りしないものだったが、今は相手が悪かった。
「ちょっとデカいから何だ。ふにゃふにゃ棒なんかいくらあったって自慢にもならねぇぞ」
「何だと? 俺のが軟弱だと、そう言いたいのか?」
「うっ……」
 アブロニは大きな手でアノールの竿ごと肉棒を鷲掴みにすると、そのまま一緒に扱き上げた。
 精油でぬらつく怒張した人間肉棒の亀頭が、同じく硬く熱い肉棒の笠の下に擦りつけられる。
 敏感な先端を弄られ、アノールは思わず腰を浮かした。
「少し触っただけで反応するとはな。お前のモノの方が軟弱だな」
「そんなことっ……くぅっ」
 アノールを嘲りながら、アブロニは三本の肉棒の上に精油を垂らす。そして分厚い手のひらで全ての亀頭を包み込むと、円を描くようにして撫で始めた。
 ぬちゅぬちゅと先走り液と油とが混ざる卑猥な音が鳴る。
「あぁっ……」
 むず痒い痺れを凝縮したような快楽が肉棒の先端からアノールの身体へと広がる。
「どうした? この程度で声を漏らすなど、やはりニンゲンのブツの方が弱いな。俺のと比べても随分柔らかい」
「んなわけっ……」
「まだ認めないのか。なら証明してやる。そこに四つん這いになれ」
「なっ……」
「尻穴をズタズタにしたくなかったら、言うことを聞いた方が身のためだぞ」
 諭すような口調から、それがただの脅しではないではないことを察したアノールは、屈辱に顔を赤らめながらも従う他なかった。
 アノールは両腕をシーツの上につけ、尻穴をアブロニに晒す惨めな犬の格好になる。
「まさか、二本とも挿れるわけじゃないだろうなっ!?」
「ヤろうとしてもまだ入らんだろう」
 アブロニのゴツゴツとした中指が、くにくにと菊門の窄まりを押す。武器を握るために爪が切り削られていたことを、アノールは心の底から有り難く思った。
「俺は弱い者を虐げる趣味はないからな」
「言ってることとやってること違くねぇか?」
「そうか? まあいい。お前は俺のことを雄として認めていないようだからな。勝負といこう」
「勝負?」
「そうだ。俺との交尾で声も上げず、達しもしなかったら、お前の言う通り俺のはニンゲン以下の軟弱棒でいい」
「根に持つなぁ」
「その代わり、お前が情けない声を上げたり達した場合は、俺をお前より格上の雄と認め、番うことを誓え。わかったな」
「歯ァ食いしばってりゃいいんだろ。俺が蜥蜴フニャチンに負けるかよ」
「よく言った。お前は威勢だけが取り柄だからな」
「何だとっ……!?」
 アノールが反論しようとした矢先、尻穴の中心にぬらついた何かが押し当てられる。
「ん? これは指だぞ? 挿れる前から降参か?」
「うるせぇ。もうお前がイくまで喋ってやらねぇからなっ!」
 つい反応してしまった恥ずかしさから、アノールはそう吐き捨てると、シーツに口元を押し当てた。
「まったく。子供のようだな」
 からかいを含んだ言葉と共に、尻穴へ節くれ立った指が侵入し始めた。精油をたっぷり塗ったそれが、腸壁をゆっくりとこじ開けながら進んでゆく。
「……っ」
 尻穴の縁から溢れた精油が、ぬちゅっと音をさせながら、尻の谷間を伝って垂れ落ちていく。
 およそ今まで経験したことのなかった腸内への異物感が、ゾワゾワとアノールの毛穴を逆立てる。
「案外あっさり入ったな。お前、他の雄と交わったことがあるのか?」
「……」
 喋らないと言った手前、アノールはシーツに口元を押し付けて黙りこくっていた。
 うっかりすると妙な声を上げてしまいそうで、焦燥感がより一層アノールの身体を熱くする。
「ダンマリか。それがいつまで持つか、見ものだな」
 ぬぷっ、ぬぷっと肉穴を解すようにアブロニの太い指が抜き差しされる。
最初はただ場違いなモノが入ってくる感覚しか覚えなかったアノールだが、ある一点を固い指が押し撫でるたび、思わず腰を震わせてしまいそうな快感を覚えた。
 竿の付け根のずっと奥にあるソレの存在を、こんなにはっきり感じたのは初めてかもしれない。
 身を捩って逃げたいような、それでいてずっと感じていたくなるような、じんじんとした熱いものが尻奥から全身へと広がってゆく。
「んん……」
 アノールは気が付かぬうちに、時折びくびくと背や尻を震わせていた。
 アブロニは、アノールが男根で感じる雄の快楽ではなく、尻穴の鳴き処を犯される雌の快楽に身悶え始めたことを見て取った。その痴態はより一層凶悪な興奮となり、二本の肉棒をいきり勃たせる。
 指を引き抜くと、残った精油と腸液がぶぴゅ、と窄まりから溢れ、淫穴は物足りなさそうにひくついている。
 アブロニは怒張した二本のうち、左側の一本を穴へと押し当てた。先走り液でてらてらに濡れ、大きく膨らんだ亀頭が、すっかり弛んだ穴を押し拡げてゆく。
「……んっ!」
 指とは比べ物にならない質量のモノが、肉壁を割って侵入してきたことに、アノールは声を漏らしそうになった。
 淫魔の加護・・か、アブロニの手練か、アノールの尻穴は排泄器官ではなく交尾穴へと馴らされてしまった。痛みは何処かへ消え、その代わりに硬く熱いモノの感覚が、アノールの身体を火照らせた。
 心臓が早鐘を打ち、口元から漏れた吐息でシーツが蒸れていく。
 ──これが入ったら、さっきのよりスゴいのが、クる。
 その時、自分はどうなるのだろう。耐えられるのか。いや、耐えなくては……。
 アノールが汗ばむ掌でシーツを掴んだ、その時だった。
 アブロニの両手が、アノールの腰を強く掴む。
 そして、アブロニの腰が一気に突き出された。
「んほぉぉお゛ぉおぉ゛おおぉおぉおおぉおおぉおぉおぉぉおぉっっっ!!?!」
 ずちゅっ、とぬめる穴に昂った肉棒が深く入り込む。
 肉壁越しに笠の張ったカリで弱点を押され、アノールはたまらず無様な嬌声を上げてしまう。
「お前の敗けだぞ、アノール」
「お゛っ……」
 背を反らし、臀部をひくつかせるアノールに、アブロニは満足そうに声をかける。
 根元までずっぷりと肉棒を咥え込んだ締まりのいい肉壺は、猛ったそれを歓迎するように吸い付いている。
 スライム穴とは比べ物にならないくらいの具合の良さに、アブロニの口からも吐息が漏れた。
「何とか言ったら、どうなんだっ」
「お゛ほぉ゛っっっ!!?」
 そして欲望に突き動かされたアブロニは、激しい腰使いでアノールの尻穴を穿ちはじめた。
 ばちゅっ、 ばちゅっ、ばちゅっ、ばちゅっ、と肉棒が抜き差しされるたび、淫液まみれの肉棒がみっしりと閉じられた肉壁を掘削してゆく。
 アブロニの湿った肌が、アノールの汗の浮いた尻たぶにぶつかり、ぱんぱんと乾いた音を立てた。
 そしてもう片方の肉棒も反り返るくらいに勃ちあがっており、アブロニが腰を動かすたびに、鞭のようにアノールの尻を打っている。
 アノールは獣の恰好のまま、二本の肉棒で躾けを受けることになった。
「あぁぁっ! あっあっぁぁっ! ぁっあぁっ! ああ゛っっ!!」
 アブロニが強く腰を掴み、強引に引き寄せて肉棒を挿し入れる。そしてずるる、と亀頭が抜けるぎりぎりのところまで腰を引き、また一気に突き入れる。
激しく重い一撃の連続は快楽の雷を呼び寄せ、アノールの身体を屈服させるに相応しいものだった。
 アノールの頭は茹だってもやがかかったようになり、全身に広がった快楽の熱波が、繰り返し繰り返し雌絶頂を運んでくる。
 手淫で昂っていたとはいえ、もう直接の刺激を受けていないアノールの陰茎からは、たらたらと透明な我慢汁が垂れ、シーツの上に丸い染みを滲ませた。
 アブロニはアノールの背を包み込むようにして覆いかぶさる。
 汗まみれの背中に、リザードマン特有の滑らかな皮膚が貼りつき、互いに吸い付くような感覚を二人は味わった。
 犬のように息を荒げるアノールの耳元に、アブロニは口を寄せる。
「ヒトの言葉を、忘れたのか? 俺に言う事が、あるだろう?」
 自らも蕩けた穴がもたらす快楽に昂りつつも、アブロニは努めて冷静さを装いながら、アノールを詰問した。
「お゛っ、おれがっ……」
「何だ? よく聞こえん」
 ずんずんと腰を遣りながら、アブロニは右手でアノールの右乳首を摘まむ。硬くしこったそこを下へひっぱり、くりくりと捩じってもみせた。
「んひぃっ!?」
 びくっ、と跳ねるように顎を反らせ、アノールは裏返った鳴き声を上げた。
「情けない声だ。俺とお前、どちらが軟弱か、これでわかっただろう? なあ?」
 アブロニはアノールの身体をシーツの上に押tし付けると、そのまま身体を密着させ、その巨体の下敷きにした。
 弾力のある胸筋がアノールの背に載り、硬く太い腿が拘束具のように押さえつけてくる。
 そしてアブロニは、己に組み敷かれて鳴く人間を完全に支配するべく、最後の追い込みにかかった。
 精液がのぼりつつある感覚を覚えたアブロニは、上から突き刺すように、がむしゃらに腰を上下に振り始める。
「んお゛ぉっ! あ゛っあっあぁっ! ああっ! ひぐぅぅっ!!」
容赦ない責めにアノールは舌を突き出して藻掻くほかない。
 逃げ場を求めて伸ばした手も、アブロニの両手によって抑えられ、今はただみっともなく喘ぐ肉人形に成り果ててしまった。
 ずぷっ、ずぷっ、ずぷっ、ずぷっ極太肉棒が、完全に雄を受け入れて締め上げる淫穴と化したそこへみちみちに押し込まれ、膨れた亀頭が肉壁を裏返すくらいの勢いで抜かれていく。
 激しいピストンの度に、ごりゅごりゅと肉壁奥の膨れた鳴き処が刺激され、アノールはアブロニの下で下半身をがくがくと震わせた。既に目は虚ろで、涎まみれになりながら身もだえるアノールにはヒトの雄としての頼もしさはどこにもなかった。
 股間の内側から上り詰める溶岩の存在が、アブロニの腰を大きく引かせる。
 そして、今まで以上に勢いをつけて、どろどろの肉壺へ暴発寸前の極太肉棒を根元までねじ込んだ。
「おほぉお゛ぉおぉ゛おおぉおぉおおぉ!! イクぅぅっっいっっぐっっっっっっっっっ!!!!!」
 ごりゅごりゅと硬く逞しい肉槍を一気に奥まで咥えこまされたアノールは、シーツの間で擦りあわされていた肉棒から白いモノを吹き出し、そのまま絶頂に達した。
 雄の快楽と雌の快楽が交じり合って、アノールの身体を最大限に熱く震わせる。
「……子種を注いでやる。これでお前は、俺のだッ!」
「ま゛っ……!」
「くっ……」
 ぐりぐり、と最奥の門をこじ開けるようにねじ込まれた肉棒が震え、その先端からは勢いよく熱く粘ついた精液が発射された。
 ヒトとは比べ物にならないほどの射精は、もはや放尿に近い。
 熱い水流が腸壁を打ち、その感覚にアノールはぞくぞくと背を震わせた。 
 アノールの臀部を打ち、柔らかな肉を擦り続けていたもう一つの肉棒も白濁液をぞんぶんに噴射し、アノールの右腿をべったりと汚した。
 長い射精が終わり、アブロニは熱の引いた肉棒を引き抜く。
「お゛……ひぃ……」
 身体を退かしてみると、脚を肩幅まで開いてぴくぴくと痙攣するアノールの背中が見えた。
 尻の谷間からはどろどろと己の出した子種が溢れ出で、漏らしたかのような染みを拡げていた。 
 饐えた烏賊のような雄の臭いがほのかに漂ってくる。
 肉欲を解放したことで、アブロニに纏わりついていた淫気も霧散した。
 萎えた二本の槍を格納しながら、アブロニは段々と冷えていく頭で、眼下に突っ伏す大切な人間の姿を見て、しばらく頭を抱える羽目になった。



「淫魔のせいでおかしくなっていたから許せ、というのは虫が良すぎるだろう。お前の気のすむまで、痛めつけてくれて構わない」
 明け方、アノールが目覚めると、床に座していたアブロニが、なんと彼の愛刀を差し出してきた。
「え……?」
 下穿きだけを身に着けたアノールは、自分の尻に違和感を覚えながらも、そのまま寝台から降り立った。
「いや、その、俺もおかしくなってたし……正直途中から、あんま覚えてねぇし」
 アノールの脳裏には、曖昧ながら昨夜の記憶がよみがえってきている。
 そもそもアブロニの部屋へ押しかけたのも、身体を許すと発言したのも、全部自分から起こしたものだ。
「パーティーのいざこざを蒸し返すやつは、ケツの穴の小せぇ野郎だって、俺のじいちゃんが……」
「そうか……」
 出した例えが例えなだけに、二人の間に妙な気まずさが流れる。
「と、とにかくだな。懐のひろーいリーダーの俺は、お前を切ったりしないってこと!」
「だが」
 どうにもケジメを付けないと気が済まない様子のアブロニに、アノールは照れを隠すために顔を歪ませながら、口を開いた。
「お前と一緒で、誰だって許したわけじゃねぇ。お前が居なかったら、俺、三回くらい死んでただろうし」
 大した技量もなく、中々冒険者パーティーに加えてもらうことが出来なかったアノールにとって、アブロニはまさに守護神であった。
 どうも個人的な性癖で組んでくれたらしいが、出会いはどうあれ今は失い難い仲間だ。
 打算だ、打算。俺は冒険者パーティーの長として、合理的な判断をしてるんだ。
 そう思い込もうとしたアノールだが、ある光景が頭によぎる。
 たまに酒場で出くわす、男だらけのむさいパーティーだ。
 大抵、自分のように他の女冒険者や店員にヤる気満々で口説きに行って返り討ちにあうのだが、中にはこんな冗談を口にしながら仲睦まじく飲み明かしている一行もいる。
『お前にだったら抱かれてもいいな』
 今までは全く理解できない言葉だったが、今なら理解ってしまいそうな気がする。もうコトは済んでいるが。
「俺がインキュバスを拒めて、お前を受け入れたってのは、その、特別だったというか、お前なら」
 そこまで言って、アノールは言葉を切った。
 これじゃまるで告白だ。
 アノールは息を荒くしながら、アブロニを見た。
 向こうも驚いたような顔つきで、こちらを見ている。
 ──どうしよう。どうしたらいい? もう付き合うか? 掘られてるし、いいか? 俺より強いし、もう、そういうことか!?
 混乱したアノールが目を回しそうになった瞬間、部屋の戸がノックされた。



 宿のこじんまりとした食堂の卓で、妙にもじもじしながら言葉少なくパンを咀嚼する二人を、ラムエルは無機質な視線で観察していた。
 何があったかは明白である。
 アブロニの隣室だったラムエルには、一切合切が聞こえていたからだ。
「私一人で朝食を食べた方が、良かったようですね」
 無表情のラムエルが言い放った言葉に、二人は同時にむせ始める。
「おっお前さあ!」
「むう……」
 たじろぐ二人をよそに、ラムエルは野菜くずの浮いたスープに視線を落とし、美味そうにその水分を身体に取り込む。
 このままこの二人に加わっていれば、もっと面白いものが見られるだろうか。
 ラムエルはしばらく二の句が継げない二人を観察しながら、これからの旅路に思いをはせていた。

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