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尋問_1
「座れ」
「はい」
ギガンに腕を取られた暖馬は、自然と冷たい床の上に正座する形になった。
PCモニタに向き合っていたギガンはチェアを半回転させ、ふてぶてしく股を広げた格好で、デスクに肘を付きながら暖馬を見下ろす。
基礎的なパーソナルデータであれば、偽司令をしていたオクトールが抜いてきたもので把握している。
だが、そんなものは何の役にも立たない。
ギガンが知りたいのは、脆弱なニンゲンを瞬く間に超人的英雄に変身させる力の源だ。
それを知り、手中に収めることが出来ればギガンは何にも負けぬ存在になるだろう。
ギガンは室内履きのサンダルを脱いでその辺に蹴とばすと、正座をしている暖馬の股間の上に裸の足裏を軽く押し付けた。
急所の上に足を乗せられ、暖馬の身体がびくりと揺れる。
「俺の質問に嘘偽りなく答えろ。分かったな」
「はい」
ギガンが誠実さに欠けると判断するようなことを言えば、その時は容赦なく痛めつけるという無言の圧力が暖馬の雄竿と陰嚢へかけられていた。
既に精神汚染を受けた暖馬は、この状態を違和感なく受け入れている。
ただ、本当のことを嘘と思われないために、どんな言い回しをすればよいのかという不安が胸の内に広がりつつあった。
「……鉛暖馬、二十六歳。国際ヒーロー基地東京支部北東京拠点、怪人掃討部隊所属。スーツ適合者。実出撃回数、二回。間違いないか」
「間違いありません」
神妙な面持ちで暖馬は返答をする。
「二回。お前がヒーロースーツとやらを着て怪人の前に現れたのはたったの二回」
嘲るように二つの眼を細め、回数を強調するギガンに、暖馬は恥じ入るような表情を見せた。
「確か元素の力がどうのこうのという年にようやく適合者になれたみたいだな。何て名乗ってたんだ?」
「……エレメント・シルバーです」
「聞いたことねぇなあ」
ぐり、とギガンのつま先がハーフパンツの生地を擦るように詰る。
「本当です! 六人目として、そのヒーロー・ネームを使うよう言われました」
「六人目? 追加戦士が必要なほど俺等が押してた時があったとはな。しばらく寝てたから知らなかったぜ」
目を見開きながら顔の右半分を覆う機械の肌を指差し、ギガンは口元を吊り上げて笑う。
暖馬の一代前のヒーローに再起不能寸前まで追い込まれた怒り、そして戦士として復職することを許されなかった恨みが赤い虹彩に強い光を宿らせていた。
「それで? 折角投入したオールドルーキーが二回だけ登板して消えた理由は何だ?」
「それは」
「コレが関係あるのか?」
ギガンは器用にも足の指でTシャツの裾を挟むと、脚を上げて布地を鎖骨あたりまで捲りあげた。
一度素っ裸にして吊るしたので、既にそれの存在は確認していたが、なぜそれが出来たかまでは知りえない。
もしかしたら、そこにヒーロー攻略の、超人的パワーの謎を解明する糸口があるかもしれない。
ギガンは暖馬の腹部を両断するように走る縫い痕と、火傷痕を足裏で優しく摩る。
暖馬にとって触れるか触れないかの薄く撫でるようなその動きはじれったく、くすぐったい。
身を縮こませて顔を下げた暖馬の顎を、ギガンのつま先が押し上げる。
「誰が下向いていいと言った」
「申し訳ありません」
強制的に顎を上げさせられた暖馬は、縋るような目つきでギガンを見上げる。
洗脳前は険しい目つきで自分を睨み上げていたニンゲンが見せる従順な態度は、ギガンを一層愉快な心持ちにさせた。
「答えろ。この傷はどうやってついた? お前がろくに活動できなかったことと関連するか?」
「恐らくは……」
「歯切れが悪いな。何を隠してる。タマ潰されてぇのか」
暖馬の身体をなぞっていた足が、ぐっと股間へ押し付けられる。
「何も隠していませんっ! 本当に、自分でも、分からないんです……」
悲しげに揺れる暖馬の瞳に嘘の気配は見つからない。
ギガンはようやく足を放し、デスクの下に飛んでいたサンダルを爪先で引き寄せながら暖馬に尋ねた。
「順を追って話せ」
「はい」
暖馬は不安げに新たな主を見上げながら、躊躇いがちに口を開いた。
❖
ヒーロー基地は国内各地に存在しているが、基地ごとに何十何百といる職員のなかでも、ヒーローとして活動できるのは片手で数える程度だ。
異なる次元からやってきたディメンション・パトロール曰く、この次元でヒーロースーツを身に纏えるのは心技体、全てが鍛え上げられた者だけなのだという。
基本的に基地から怪人掃討部隊の隊員募集をかけ、面接を突破できた者だけがヒーロー候補生になれる。
候補生応募には年齢制限が設けられており、十代後半から二十代前半の者たちで構成される形だ。
彼らは基地内で訓練を受け、適合者は年に一度、春先に雲の上の存在である元祖英雄、ディメンション・パトロールから直々に呼び出されヒーロースーツを着る資格があると告げられる。
文武両道。才色兼備。どの角度から見ても非の打ち所がないような、一つ頭抜けた存在。
いつしかヒーローに選ばれるということは、最も優れたニンゲンであることの証明になりつつある。
何故か一年という短いサイクルでヒーローもメカも総取替になるのだが、その一年派手なバトルスーツを着る事が出来れば、ヒーロー基地を退職したとしても成功が約束されていた。
では、惜しくも選抜から漏れた者はどうなる?
あと一歩でヒーローになり損ねた者たちはどこへ行くのだろう。
数年不適合者であり続けた者には、基地からいくつかの選択肢が提示される。
一、退役。
二、基地職員。
三、候補生指導員補佐兼予備隊員。
数的に言えば一が多く、事務的スキルがあれば二への道を勧められることもそれなりにあるという。
そして三を提示されることは稀であり、また、ヒーロー候補生たちもあまりやりたがらなかった。
自分の手が届かなかったもの達の下に位置付けられ、ヒーロー達が気持ちよく戦えるよう身を削って戦うも、何の見返りもない日陰者と化すからだ。
だが、それでもわずかな可能性に賭けて戦う者、そしてどこにも行き場を見つけられなかった者は、隊員バッヂを外すことができなかった。
「──なるほどな。それでお前はヒーロースペアとして残っていたってわけか」
ギガンは腕組みをしながらばつの悪そうな顔をしている暖馬を見下ろす。
「はい。俺にはもう親族はいませんし、ヒーロー基金の支援で進学して、候補生にもなったので、他に行くあてもやりたいこともありませんでした。なので、少しでも隊員らしい事が出来れば、と」
「ほお。俺がニンゲンだったらお前の話を道徳の教科書にでも載せてたかもな。だが、お涙頂戴身の上話なんぞに興味はない」
「いや、そういうつもりで話したわけでは」
「なら何だ。俺に話して何になる」
「それは、博士に自分のことをもっと知ってもらいたいと思いまして……」
正座をしながら照れくさそうに視線を反らす暖馬を見て、ギガンはバトルスーツの洗脳効果が思っていたものより斜め上に効いていることを嫌でも勘づく羽目になった。
ギガンは白けた顔を作ってこれ見よがしに溜め息をつくと、顎をしゃくって続きを促した。
「俺が聞きたいのは雑魚の下等兵が一瞬だけでもヒーローに変身出来たかってことなんだよ。選ばれなかったんだろ、お前?」
この質問はギガンにとって重要だった。
ヒーロー共は優れたニンゲンだからスーツの着用を許されると言っているが、本当にそうだろうか?
今、ギガンが任されているのは、下級戦闘員の強化および量産だ。
既に足止めにもならなくなった生物兵器を改良し、人海戦術でヒーローの足元を掬わなくてはいけない。
そのためにもヒーロー側の持っている機密事項が欲しかった。
脆弱なニンゲンを一瞬にして人ならざるものへ変身させる技術。
その力の源さえ解析できれば、ギガンの願いは成就するだろう。
下級戦闘員のコピー元として攫って来たニンゲンは、ギガンの予想よりタフで、興味深い経歴の持ち主だ。
ギガンは己に運が向いてきたことをひしひしと感じていた。
「確かに年度ヒーロースーツ適合者には選ばれませんでした。でも、候補生の訓練を補助したり、怪人様方の手下を片付けていると、急に声がかかったんです」
「昇進試験とか、再チャレンジ制度とか、そういうのは無えのか」
「ありません。ディメンション・パトロールはいつでも我々を見守っていて、日ごろの行いですべてが決まると」
「まるで神気取りだな」
常々感じていることだが、ギガンにとってディメンション・パトロールは自らの創造主と同じくらい薄気味悪く得体の知れない存在だった。
「それで? どんな強化を受けたんだ? 具体的に言えよ」
「強化といいますか。急に決議の間に呼ばれまして、追加戦士が必要だからシルバーやってくれって」
「で?」
「チェンジブレスレットを渡されまして、シルバーになりました」
「お前……具体的に言えって言ったよなぁ? スーツ着用時の身体能力強化はどのようにして行われる? ヘルメット着用時にインプットされる情報は?」
「そんないっぺんに言われても。それに、よく分からないんです」
「はぁ?」
「なんか、気づいたら強くなってると言いますか、うわあ、今俺ヒーローだ! みたいな感じで熱くなって」
ヘラヘラしながら頬を掻く暖馬を見て、ギガンは頭を掻きむしりたくなった。
何が一番腹立たしいかというと、暖馬が本当のことしか話していないことが明らかであることだ。
吹き込んだ偽の記憶も相まって、既に仕えるべき主人はギガンであると上書きされている。
「……お前が相当のアホなのか、それとも精神プロテクトがかけられてんのか、どっちかだな」
下っ端の駒に預けるものは何もないのか。
ギガンは勢いよく立ち上がると、正座したままぽかんと口を開けている暖馬の襟元を掴んで立ち上がらせた。
「えっあのっ!?」
ギガンは不機嫌そうな表情で背を屈めると、暖馬の額に己の額がつくくらい顔を寄せる。
「ちんたら話すのはヤメだ。こうなったら直接頭ん中視てやるからな」
つづく
「はい」
ギガンに腕を取られた暖馬は、自然と冷たい床の上に正座する形になった。
PCモニタに向き合っていたギガンはチェアを半回転させ、ふてぶてしく股を広げた格好で、デスクに肘を付きながら暖馬を見下ろす。
基礎的なパーソナルデータであれば、偽司令をしていたオクトールが抜いてきたもので把握している。
だが、そんなものは何の役にも立たない。
ギガンが知りたいのは、脆弱なニンゲンを瞬く間に超人的英雄に変身させる力の源だ。
それを知り、手中に収めることが出来ればギガンは何にも負けぬ存在になるだろう。
ギガンは室内履きのサンダルを脱いでその辺に蹴とばすと、正座をしている暖馬の股間の上に裸の足裏を軽く押し付けた。
急所の上に足を乗せられ、暖馬の身体がびくりと揺れる。
「俺の質問に嘘偽りなく答えろ。分かったな」
「はい」
ギガンが誠実さに欠けると判断するようなことを言えば、その時は容赦なく痛めつけるという無言の圧力が暖馬の雄竿と陰嚢へかけられていた。
既に精神汚染を受けた暖馬は、この状態を違和感なく受け入れている。
ただ、本当のことを嘘と思われないために、どんな言い回しをすればよいのかという不安が胸の内に広がりつつあった。
「……鉛暖馬、二十六歳。国際ヒーロー基地東京支部北東京拠点、怪人掃討部隊所属。スーツ適合者。実出撃回数、二回。間違いないか」
「間違いありません」
神妙な面持ちで暖馬は返答をする。
「二回。お前がヒーロースーツとやらを着て怪人の前に現れたのはたったの二回」
嘲るように二つの眼を細め、回数を強調するギガンに、暖馬は恥じ入るような表情を見せた。
「確か元素の力がどうのこうのという年にようやく適合者になれたみたいだな。何て名乗ってたんだ?」
「……エレメント・シルバーです」
「聞いたことねぇなあ」
ぐり、とギガンのつま先がハーフパンツの生地を擦るように詰る。
「本当です! 六人目として、そのヒーロー・ネームを使うよう言われました」
「六人目? 追加戦士が必要なほど俺等が押してた時があったとはな。しばらく寝てたから知らなかったぜ」
目を見開きながら顔の右半分を覆う機械の肌を指差し、ギガンは口元を吊り上げて笑う。
暖馬の一代前のヒーローに再起不能寸前まで追い込まれた怒り、そして戦士として復職することを許されなかった恨みが赤い虹彩に強い光を宿らせていた。
「それで? 折角投入したオールドルーキーが二回だけ登板して消えた理由は何だ?」
「それは」
「コレが関係あるのか?」
ギガンは器用にも足の指でTシャツの裾を挟むと、脚を上げて布地を鎖骨あたりまで捲りあげた。
一度素っ裸にして吊るしたので、既にそれの存在は確認していたが、なぜそれが出来たかまでは知りえない。
もしかしたら、そこにヒーロー攻略の、超人的パワーの謎を解明する糸口があるかもしれない。
ギガンは暖馬の腹部を両断するように走る縫い痕と、火傷痕を足裏で優しく摩る。
暖馬にとって触れるか触れないかの薄く撫でるようなその動きはじれったく、くすぐったい。
身を縮こませて顔を下げた暖馬の顎を、ギガンのつま先が押し上げる。
「誰が下向いていいと言った」
「申し訳ありません」
強制的に顎を上げさせられた暖馬は、縋るような目つきでギガンを見上げる。
洗脳前は険しい目つきで自分を睨み上げていたニンゲンが見せる従順な態度は、ギガンを一層愉快な心持ちにさせた。
「答えろ。この傷はどうやってついた? お前がろくに活動できなかったことと関連するか?」
「恐らくは……」
「歯切れが悪いな。何を隠してる。タマ潰されてぇのか」
暖馬の身体をなぞっていた足が、ぐっと股間へ押し付けられる。
「何も隠していませんっ! 本当に、自分でも、分からないんです……」
悲しげに揺れる暖馬の瞳に嘘の気配は見つからない。
ギガンはようやく足を放し、デスクの下に飛んでいたサンダルを爪先で引き寄せながら暖馬に尋ねた。
「順を追って話せ」
「はい」
暖馬は不安げに新たな主を見上げながら、躊躇いがちに口を開いた。
❖
ヒーロー基地は国内各地に存在しているが、基地ごとに何十何百といる職員のなかでも、ヒーローとして活動できるのは片手で数える程度だ。
異なる次元からやってきたディメンション・パトロール曰く、この次元でヒーロースーツを身に纏えるのは心技体、全てが鍛え上げられた者だけなのだという。
基本的に基地から怪人掃討部隊の隊員募集をかけ、面接を突破できた者だけがヒーロー候補生になれる。
候補生応募には年齢制限が設けられており、十代後半から二十代前半の者たちで構成される形だ。
彼らは基地内で訓練を受け、適合者は年に一度、春先に雲の上の存在である元祖英雄、ディメンション・パトロールから直々に呼び出されヒーロースーツを着る資格があると告げられる。
文武両道。才色兼備。どの角度から見ても非の打ち所がないような、一つ頭抜けた存在。
いつしかヒーローに選ばれるということは、最も優れたニンゲンであることの証明になりつつある。
何故か一年という短いサイクルでヒーローもメカも総取替になるのだが、その一年派手なバトルスーツを着る事が出来れば、ヒーロー基地を退職したとしても成功が約束されていた。
では、惜しくも選抜から漏れた者はどうなる?
あと一歩でヒーローになり損ねた者たちはどこへ行くのだろう。
数年不適合者であり続けた者には、基地からいくつかの選択肢が提示される。
一、退役。
二、基地職員。
三、候補生指導員補佐兼予備隊員。
数的に言えば一が多く、事務的スキルがあれば二への道を勧められることもそれなりにあるという。
そして三を提示されることは稀であり、また、ヒーロー候補生たちもあまりやりたがらなかった。
自分の手が届かなかったもの達の下に位置付けられ、ヒーロー達が気持ちよく戦えるよう身を削って戦うも、何の見返りもない日陰者と化すからだ。
だが、それでもわずかな可能性に賭けて戦う者、そしてどこにも行き場を見つけられなかった者は、隊員バッヂを外すことができなかった。
「──なるほどな。それでお前はヒーロースペアとして残っていたってわけか」
ギガンは腕組みをしながらばつの悪そうな顔をしている暖馬を見下ろす。
「はい。俺にはもう親族はいませんし、ヒーロー基金の支援で進学して、候補生にもなったので、他に行くあてもやりたいこともありませんでした。なので、少しでも隊員らしい事が出来れば、と」
「ほお。俺がニンゲンだったらお前の話を道徳の教科書にでも載せてたかもな。だが、お涙頂戴身の上話なんぞに興味はない」
「いや、そういうつもりで話したわけでは」
「なら何だ。俺に話して何になる」
「それは、博士に自分のことをもっと知ってもらいたいと思いまして……」
正座をしながら照れくさそうに視線を反らす暖馬を見て、ギガンはバトルスーツの洗脳効果が思っていたものより斜め上に効いていることを嫌でも勘づく羽目になった。
ギガンは白けた顔を作ってこれ見よがしに溜め息をつくと、顎をしゃくって続きを促した。
「俺が聞きたいのは雑魚の下等兵が一瞬だけでもヒーローに変身出来たかってことなんだよ。選ばれなかったんだろ、お前?」
この質問はギガンにとって重要だった。
ヒーロー共は優れたニンゲンだからスーツの着用を許されると言っているが、本当にそうだろうか?
今、ギガンが任されているのは、下級戦闘員の強化および量産だ。
既に足止めにもならなくなった生物兵器を改良し、人海戦術でヒーローの足元を掬わなくてはいけない。
そのためにもヒーロー側の持っている機密事項が欲しかった。
脆弱なニンゲンを一瞬にして人ならざるものへ変身させる技術。
その力の源さえ解析できれば、ギガンの願いは成就するだろう。
下級戦闘員のコピー元として攫って来たニンゲンは、ギガンの予想よりタフで、興味深い経歴の持ち主だ。
ギガンは己に運が向いてきたことをひしひしと感じていた。
「確かに年度ヒーロースーツ適合者には選ばれませんでした。でも、候補生の訓練を補助したり、怪人様方の手下を片付けていると、急に声がかかったんです」
「昇進試験とか、再チャレンジ制度とか、そういうのは無えのか」
「ありません。ディメンション・パトロールはいつでも我々を見守っていて、日ごろの行いですべてが決まると」
「まるで神気取りだな」
常々感じていることだが、ギガンにとってディメンション・パトロールは自らの創造主と同じくらい薄気味悪く得体の知れない存在だった。
「それで? どんな強化を受けたんだ? 具体的に言えよ」
「強化といいますか。急に決議の間に呼ばれまして、追加戦士が必要だからシルバーやってくれって」
「で?」
「チェンジブレスレットを渡されまして、シルバーになりました」
「お前……具体的に言えって言ったよなぁ? スーツ着用時の身体能力強化はどのようにして行われる? ヘルメット着用時にインプットされる情報は?」
「そんないっぺんに言われても。それに、よく分からないんです」
「はぁ?」
「なんか、気づいたら強くなってると言いますか、うわあ、今俺ヒーローだ! みたいな感じで熱くなって」
ヘラヘラしながら頬を掻く暖馬を見て、ギガンは頭を掻きむしりたくなった。
何が一番腹立たしいかというと、暖馬が本当のことしか話していないことが明らかであることだ。
吹き込んだ偽の記憶も相まって、既に仕えるべき主人はギガンであると上書きされている。
「……お前が相当のアホなのか、それとも精神プロテクトがかけられてんのか、どっちかだな」
下っ端の駒に預けるものは何もないのか。
ギガンは勢いよく立ち上がると、正座したままぽかんと口を開けている暖馬の襟元を掴んで立ち上がらせた。
「えっあのっ!?」
ギガンは不機嫌そうな表情で背を屈めると、暖馬の額に己の額がつくくらい顔を寄せる。
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