醒めない夢の中で

こひなた ひまり

文字の大きさ
1 / 6

1

しおりを挟む
俺の名前は朝日田 夢二あさひだゆめじ

多分、ごく普通の高校一年生だ。

今日もいつものように学校に行き、授業を受け、放課後は部活に励み、家に帰ってご飯を食べ、風呂に入って、寝た。

何もおかしい事は無かったはずだ。

なのに……目を開くと見知らぬ図書館、これはどういうことなんだ?


……
…………


呆然とし、その場に突っ立って約5分。

ずっと立ちっぱなしでも意味がない。

ひとまずここがどこか把握しなければ。

よって俺はとりあえずこの図書館内を見て回ることにした。


「……にしても凄い本の量だな……」


辺りに人の気配はなく、静まっている。

本の表紙を見ると、殆どが読めない文字のものばかりで、たまに読めそうな文字を見つけても、「○○○○理論について」とか、「*****説は正しいのか」とか、難しそうな内容のものばかりだった。


「うーーん…………」


結局ここはどこなんだ?

ぐるりと部屋を一周したところで俺は一度足を止めた。

ここがダメなら一旦外に出て……、と考えたのだ。

だが、扉がないかと探して気がついた。

……ここには


「マジかよ……!おい、誰か居ねぇのか?」


焦ってしまい、思わず叫ぶ。

すると、意外にも返事が返ってきた。


「……煩いわねぇ。少し、静かにしてくれない?」


部屋の片隅にある机。

その机の端にある椅子に、10~12歳ほどの(?)少女が腰掛けていた。

人がいないと思っていたが、端の席を見逃していたらしい。

俺は目を疑った。

綺麗な銀髪に紅の瞳。

紅のフリフリドレスを身に纏い、髪の後ろにも紅の大きなリボンをつけている。

現実ではありえない……まるで人形のような容姿だ。


「……黙ったのは褒めてあげるわ。でも、ジロジロ見られては本に集中できないのよ。さっさと私の前から消えてくれないかしら?」


分厚い本をめくりながら、俺には全く興味ない、と行った様子で毒を吐いてくる。


「……お前、見た目に反して可愛くないこと言うんだな。こっちは出たくても出られないっていうのに……」


思わず呟くと、少女は何を思ったかいきなり顔を上げた。

……もしかして可愛くないって言ったのに怒ったか?


「あ、いや……その、すまん、失礼だったか……?あの……」


慌てていると、少女がハァ、と溜息をついた。


「なんだ……貴方、人間じゃない。そうならそうと言ってもらわなきゃ分からなかったわ」


「は?」


「ここは……そう、夢の中。……仕方ないわね、目覚めるまで好き勝手してゆくがいいわ。私に迷惑をかけない程度に、ね」





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

処理中です...