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しおりを挟む「夢の中?」
「そ、夢の中。二回も言わせないで頂戴。」
少女はそれだけ言うと、また目線を下げ本を読み始めた。
「夢……そうか、夢なのか……。はは……だよな、でなきゃありえない。そうだよな……」
夢ならば、醒めれば全て元どおりなんだ。
ホッとすると、足の力が抜け、思わず俺はその場に座り込んだ。
そしてちらりと本を読んでいる少女に再び目を向ける。
……まさか俺は心の奥底で知らぬうちにこんな感じの少女に出会いたい等の願望を抱いたりしてたのか?
夢にまで見るって……うーん、……相当ヤバくね?
銀髪少女とかそーゆー系の少女が出てくるアニメやらラノベやらを見たことない、と言ったら嘘になるけど……いや、まさか……
「……貴方、本当に煩いわねぇ。思ったことをいちいち口にしないで頂戴」
「え……あ、……ごめん」
いつのまにか考えていたことを口に出していたみたいだ。
少女がジト目でこっちを見てきている。
「貴方が現世で何を考えてるかなんて私には知ったこっちゃないけれど。大丈夫よ、多分私は貴方の想像上の人物ではないから」
「うつしよ……?てか、想像上の人物じゃないって?」
本当に全部聞かれていて正直穴があったら入りたいぐらいだったが、とりあえず聞いてみる。
大丈夫、これは夢なんだ。
少々恥をかいても俺の脳内の出来事なんだ、……多分。
読書を妨げてまた怒られるかもしれないと思ったが、少女は本にしおりを挟み丁寧に説明してくれた。
「現世はね、貴方が普段生活を営んでる場所のことよ。私達はその世界をそう呼ぶの。」
「達……?」
「いーい?ここは夢の中って言ったでしょう?現世は貴方達、人間の住処で、夢は私達、夢魔の住処なの。理解出来るかしら?」
「いや、全く」
ハァ、とまた溜息をする音が響く。
「私はね、貴方の作り出した架空の人物ではなくて、夢魔、という種族の一人なの」
「……はぁ」
「まだ理解できないのね。……バカなのかしら?」
「いや、急に夢魔とかよく分からない単語を出されて理解できる方がおかしいだろ!」
というか、それだけでバカ呼ばわりするな!
「ふぅん……最近の人間はアニメとかラノベとかいう、非日常な物語を好むと聞いていたからこういうのはすぐ理解できるものだと思っていたわ」
「それは偏見だろ……」
「あら、そうなのね、悪かったわ。それは知らなかったわ。良い情報をありがとう」
俺の不満気な呟きを聞いて少女は素直に考えを正し、ついでに傍らに置いてあった手帳にメモをし始めた。
「え、えぇ……?あ、いや……うん」
メモを取り終わったらしく、また少女が向き直る。
「何?……メモを取ったらおかしいのかしら?続けるわよ。……私達夢魔はね、それぞれ 縄張りを持ってるの。で、貴方達は寝ている間にそこに訪れる事があるワケ」
成る程。
少しだけ分かってきた気がする。
「つまり俺は今お前の縄張りにいるわけだな?」
「そ。この屋敷全体が私の縄張りよ。他の夢魔が入ってくると煩いからいつもこの部屋の扉は隠してるわ。」
「へぇ……どうりで出入り口が見当たらないわけだ」
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