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大家族の朝
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ぴぴぴぴ!
じりりり!
だんだん!
「うるさい優ちゃん!」
隣の部屋で寝ているはずの奏の怒声が聞こえる。ついでに騒音も。
「あ、そうだ。もう寝坊しないように目覚まし増やして最大の音量にしてたんだった」
「分かったから早く消して! 頭痛い!」
三つある目覚ましを順々に消していって部屋は静まりかえる。
「終わったよ」
「終わったよじゃないわよ! なんでこんな騒音の中で落ち着いてられるの!? ていうか目覚ましの一つにだんだんって音があったんだけどあれ何!?」
「目覚まし」
「嘘つけ!」
時計を見ると七時ちょっと過ぎ。余裕で間に合う時間。
「やっぱりいいね。目覚ましは」
「隣人を考えてよ優ちゃん」
ぶつくさ言いながら奏は再度自分の部屋へ戻っていった。パジャマ姿の奏なんて何日ぶりだろ。休みの時も私が起きるともう洋服に着替えてるし。
今日はオリエンテーションだから授業もガイダンスだけだし楽々。
「でも結局帰るまでに三時間くらい待ってなきゃいけないんだけどね」
オリエンテーションだからと言って昨日のように午前中で終わるわけではない。それは保育園と小学校、後講義がない大学生だけ。羨ましい。
あ、久しぶりだから忘れてたけど早く支度しないとこれ結局走ることになる。大家族だから。分かる?
「うわ凄いね洗面所の使用人数」
「四人でギリギリだもんね」
隣には同じように制服に着替えて洗面所に向かってきた奏。
そう。大家族だからこそのデメリットの一つ。皆同じ時間に起きて支度を始めるからそりゃあもう酷いくらいに混む。
トイレは二つあるけどそれ以外の生活必需品は全部一つだけ。
「ここにキザな人がいなくて良かったよね」
「何で?」
「だって考えてみてよ優ちゃん。毎日何時間もヘアセットとかメイクとかで洗面所占領するんだよ」
「奏もメイクとかするでしょ」
「するけど」
奏は何の飾りも付いていない黄色のゴムでおでこと平行になるように髪を上まで持ってきて十秒もかからずにポニーテールにしたらケープで固める。
それが終わると次は自分のメイクポーチを私に持たせて鏡を見ずにアイラインとかリップとか一寸の狂いもなくつけていった。
「器用だよね本当に。そのネイルさっきまで付けてなかったよね」
「部屋に戻った後全部付けたの。寝てる間なんか乾いて爪が傷つくし何より寝ぼけて誰か引っ掻いちゃうかもでしょ」
つくづく思う。この子やっぱりギャルに向いてないよね。この器用さと言い他人への気遣いと言い。
「あれ? それならなんで洗面所にいるの?」
「顔洗うから」
「メイク落ちるよね!?」
自分の妹ながら何考えてるのか分からん。
「ああ~やっと朝ごはんにあり付ける。あれ、悠ちゃんは?」
「悠なら澪にご飯持ってったわよ」
お母さんがテーブルに持っていけとばかりにご飯の乗ったお皿二枚を差し出してくる。
私達が住んでいるのは普通の一軒家では無い。結婚する前最強と呼ばれていたお母さんが何かの戦いの景品で貰ったとか噂されている飛行船の中に一軒家がある感じの家――家なのかな? ――で暮らしている。
飛行船だから勿論飛ぶ。しかもこれが馬鹿でかいから土地を買おうとするとそれはもう零が凄い数になるらしい。だからこの船が止まるのは門が開く一日四回三十分ずつ。
飛ぶから操縦士も必要。自動操縦もある。ならどうして操縦士が必要なのか? 答えは簡単。気候の変動があるから。
例えば突風なんか吹いた時、自動操縦にしてたら変なところに船が動いたりしてしまうし、何より着地ができない。なら誰が操縦士なのか。それが最初に言った一人だけ学校に行っていない本田家の長女。
彼女の話はまた追ってするとして――
「悠は澪と食べるらしいからこっちも食べちゃいましょう」
各々椅子に座って朝ご飯を食べ始める。
「優ちゃん、人参あげる」
「好き嫌いしてると大きくならないよ」
「うっ」
私のお皿に人参を入れようとした奏にすかさず痛い言葉を飛ばす。奏は平均身長だけど如何せん胸の辺りがね。
「お母さん! 僕は好き嫌いしてないから大きくなれるよね」
「そうね。結、よく噛んで食べるのよ」
「うん」
結はフォークを使ってお母さんの隣で食べている。純粋な子って本当にいいよね。剛も本田家の血筋的にいけば多分大きくなるんじゃないかな?
「そういえばお父さん。トイレにレポートか何か置いてあったけど」
「ああトイレか。失くしたと思って焦ってたんだ」
お父さんが新聞から目を離して奏に頷く。
「丈一郎さん。ご飯中に新聞読むのやめてって言ってるでしょ」
今度はお母さんが怒る。ちょっとさっきから忙しいな朝ご飯だけなのに。
新聞と言えば私の正面にあるそこのタブレットが気になる。
「修ちゃんそのタブレット何?」
「ん? ああごめん。邪魔だった?」
「ううん。気になっただけ」
本田家の長男であり、最年長でもある修ちゃんがコップを置いてタブレットをしまおうとする。
「大学?」
「そう。昨日研究の題材を決めて今日から本格的に始めるんだ」
「大変だね、まだ始まったばっかなのに」
「まあもう大学四年だから。世の中は就職活動だし」
修ちゃんはこのオー・タマールで評議員の仕事をしている。主にお父さんの補佐って言ってたかな。でも日本ではまだ二十一歳。体裁を保つために今も大学で研究発表とかしているらしい。
因みにお父さんは地球でもオー・タマールでも裁判官をしてる。だから普段は優しいけど規則のことになると厳しい。
「そろそろ泊める時間かしら。あ、そうだ。そろそろトイレットペーパーが切れそうなんだけど」
「買ってくるよ。奏、後で待ち合わせしよう」
「おっけー」
メモとお金を貰って私達は飛行船を降りるとまた学校がある地球への門をくぐった。
じりりり!
だんだん!
「うるさい優ちゃん!」
隣の部屋で寝ているはずの奏の怒声が聞こえる。ついでに騒音も。
「あ、そうだ。もう寝坊しないように目覚まし増やして最大の音量にしてたんだった」
「分かったから早く消して! 頭痛い!」
三つある目覚ましを順々に消していって部屋は静まりかえる。
「終わったよ」
「終わったよじゃないわよ! なんでこんな騒音の中で落ち着いてられるの!? ていうか目覚ましの一つにだんだんって音があったんだけどあれ何!?」
「目覚まし」
「嘘つけ!」
時計を見ると七時ちょっと過ぎ。余裕で間に合う時間。
「やっぱりいいね。目覚ましは」
「隣人を考えてよ優ちゃん」
ぶつくさ言いながら奏は再度自分の部屋へ戻っていった。パジャマ姿の奏なんて何日ぶりだろ。休みの時も私が起きるともう洋服に着替えてるし。
今日はオリエンテーションだから授業もガイダンスだけだし楽々。
「でも結局帰るまでに三時間くらい待ってなきゃいけないんだけどね」
オリエンテーションだからと言って昨日のように午前中で終わるわけではない。それは保育園と小学校、後講義がない大学生だけ。羨ましい。
あ、久しぶりだから忘れてたけど早く支度しないとこれ結局走ることになる。大家族だから。分かる?
「うわ凄いね洗面所の使用人数」
「四人でギリギリだもんね」
隣には同じように制服に着替えて洗面所に向かってきた奏。
そう。大家族だからこそのデメリットの一つ。皆同じ時間に起きて支度を始めるからそりゃあもう酷いくらいに混む。
トイレは二つあるけどそれ以外の生活必需品は全部一つだけ。
「ここにキザな人がいなくて良かったよね」
「何で?」
「だって考えてみてよ優ちゃん。毎日何時間もヘアセットとかメイクとかで洗面所占領するんだよ」
「奏もメイクとかするでしょ」
「するけど」
奏は何の飾りも付いていない黄色のゴムでおでこと平行になるように髪を上まで持ってきて十秒もかからずにポニーテールにしたらケープで固める。
それが終わると次は自分のメイクポーチを私に持たせて鏡を見ずにアイラインとかリップとか一寸の狂いもなくつけていった。
「器用だよね本当に。そのネイルさっきまで付けてなかったよね」
「部屋に戻った後全部付けたの。寝てる間なんか乾いて爪が傷つくし何より寝ぼけて誰か引っ掻いちゃうかもでしょ」
つくづく思う。この子やっぱりギャルに向いてないよね。この器用さと言い他人への気遣いと言い。
「あれ? それならなんで洗面所にいるの?」
「顔洗うから」
「メイク落ちるよね!?」
自分の妹ながら何考えてるのか分からん。
「ああ~やっと朝ごはんにあり付ける。あれ、悠ちゃんは?」
「悠なら澪にご飯持ってったわよ」
お母さんがテーブルに持っていけとばかりにご飯の乗ったお皿二枚を差し出してくる。
私達が住んでいるのは普通の一軒家では無い。結婚する前最強と呼ばれていたお母さんが何かの戦いの景品で貰ったとか噂されている飛行船の中に一軒家がある感じの家――家なのかな? ――で暮らしている。
飛行船だから勿論飛ぶ。しかもこれが馬鹿でかいから土地を買おうとするとそれはもう零が凄い数になるらしい。だからこの船が止まるのは門が開く一日四回三十分ずつ。
飛ぶから操縦士も必要。自動操縦もある。ならどうして操縦士が必要なのか? 答えは簡単。気候の変動があるから。
例えば突風なんか吹いた時、自動操縦にしてたら変なところに船が動いたりしてしまうし、何より着地ができない。なら誰が操縦士なのか。それが最初に言った一人だけ学校に行っていない本田家の長女。
彼女の話はまた追ってするとして――
「悠は澪と食べるらしいからこっちも食べちゃいましょう」
各々椅子に座って朝ご飯を食べ始める。
「優ちゃん、人参あげる」
「好き嫌いしてると大きくならないよ」
「うっ」
私のお皿に人参を入れようとした奏にすかさず痛い言葉を飛ばす。奏は平均身長だけど如何せん胸の辺りがね。
「お母さん! 僕は好き嫌いしてないから大きくなれるよね」
「そうね。結、よく噛んで食べるのよ」
「うん」
結はフォークを使ってお母さんの隣で食べている。純粋な子って本当にいいよね。剛も本田家の血筋的にいけば多分大きくなるんじゃないかな?
「そういえばお父さん。トイレにレポートか何か置いてあったけど」
「ああトイレか。失くしたと思って焦ってたんだ」
お父さんが新聞から目を離して奏に頷く。
「丈一郎さん。ご飯中に新聞読むのやめてって言ってるでしょ」
今度はお母さんが怒る。ちょっとさっきから忙しいな朝ご飯だけなのに。
新聞と言えば私の正面にあるそこのタブレットが気になる。
「修ちゃんそのタブレット何?」
「ん? ああごめん。邪魔だった?」
「ううん。気になっただけ」
本田家の長男であり、最年長でもある修ちゃんがコップを置いてタブレットをしまおうとする。
「大学?」
「そう。昨日研究の題材を決めて今日から本格的に始めるんだ」
「大変だね、まだ始まったばっかなのに」
「まあもう大学四年だから。世の中は就職活動だし」
修ちゃんはこのオー・タマールで評議員の仕事をしている。主にお父さんの補佐って言ってたかな。でも日本ではまだ二十一歳。体裁を保つために今も大学で研究発表とかしているらしい。
因みにお父さんは地球でもオー・タマールでも裁判官をしてる。だから普段は優しいけど規則のことになると厳しい。
「そろそろ泊める時間かしら。あ、そうだ。そろそろトイレットペーパーが切れそうなんだけど」
「買ってくるよ。奏、後で待ち合わせしよう」
「おっけー」
メモとお金を貰って私達は飛行船を降りるとまた学校がある地球への門をくぐった。
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