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05 最終決戦
25 決戦
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指令室で警報が鳴り響いた。
フランツは顔を上げる。
「敵が動き出したのか?」
オペレーターが緊張した面持ちで答える。
「いえ、基地内で異常が発生しました。CCKの一機が予定外の移動を開始! こちらの通信を受け付けません!」
「くそっ、警備が薄くなった隙をつかれたか! ……いや待て、なんで残っているんだ? 私は全部出せと言ったぞ?」
「……故障で動かないため、と報告があります」
「動いてるだろうが! 誰だ、そんな報告した奴は!」
フランツは怒って叫ぶ。
「それはたぶんマルヴァジタ案件だ。報告を出した者を監視しておいた方がいい」
いつの間にか、指令室の中に来ていたプロトが言う。
フランツは振り返り、睨みつける。
「なんでおまえがここにいる? いつからいた?」
「入室できる権限は持っている。入った時に声はかけたが?」
「……まあいい。それで? 監視しておくと何かいいことでもあるのか?」
「はっきり言うと、似たような状況は何度も確認されているが、有意義な痕跡が残っていたことは一度もない」
「ダメじゃないか……」
愕然とするフランツ。
追い打ちをかけるようにもう一度警報が鳴る。
「汚染洗浄車両一台が奪われました」
メインモニターに、装甲バスのような車が走っている姿が映し出される。
「CCKと共に基地から出ていきます……っ! あいつら、壁を……」
道が混んでいる正門前を避けるためか、壁を破壊して、車がいない横手から強引に出ていった。
やることが無茶苦茶だ。
メインモニターに基地内の監視カメラからの映像が表示される。
「……屋根の上に人がいますね」
「バカな! 仮にダイルデサントの攻撃を防ぐためだとしても、今の時点で乗ってるのはおかしいだろ! 落ちたら危ないとか考えないのか?」
フランツは、額の血管がブチ切れそうな勢いで叫ぶ。
車の屋根の上に乗っているのはシューマッハだった。
プロトは額を押さえる。
「あいつ、もう邪魔してやがる……」
〇〇〇
ミーナは暗い空間で待っていた。
恐れはなかった。フーベルトは必ず来るし、必ず成功すると確信があった。
どこからか、エルミーヌの声が響く。
『諦めて屈しなさい。そうすれば楽になるのに……』
「私は絶対に屈しない、フーベルトさんは、あんたなんかに負けたりしない」
『不思議ね。何があなたに希望を与えているのかしら? スマホのほかにも何か持っているのかしら?』
スマホはさっき壊された。それでも、まだ何か持っているのかと疑っているのだ。
「あなたが私から奪えるものは、もうないわ」
不意に空間が明るくなった。
エルミーヌが中を見ているのだろうか。
白い球体。ミーナがいる空間はその内側のようだった。
腐敗泥にも似た、黒と赤の入り混じったような液体が、半分ほどまで溜まっている。
だが、ミーナの心臓は緊張でバクバクと音を立て始めた。
ずっと、腰までつかるような液体の中に閉じ込められていて、上には注意を払っていなかった。
この空間の天井に当たる位置に、巨大な袋があるのに気づいた。
それは一定のリズムで膨らんだりしぼんだりしている。
ミーナの知る限り、心臓か何かに似ている。
ミーナは考える。もしこれを破壊したら、エルミーヌは死ぬのか? と。
エルミーヌがミーナから奇跡を奪ったのは、これを壊されたくなかったからなのかもしれない。
きっと、エルミーヌは今も恐れている。
ミーナがこの可能性に気づくことを。
そしてミーナが自分の意志で奇跡を発動できるようになる可能性を。
内側からなら、破壊できる?
ミーナは試してみたかったが……できそうな気がしない。
『ああ、来たわね』
明かりが消えた。
その代わり、壁がガラスのように透明になった。
外は夜明けが近い。
暗い街の中を、何か変な物が走ってくる。
ミーナもニュース映像で見たことがある。CCKだ。
「来た! フーベルトさんだ!」
『だからどうした! あんなガラクタみたいなロボットで、この私に勝てるわけがない!』
〇〇〇
CCKは全高六メートルの人型兵器。無骨なだ。
だがその戦闘力は、人類が今までに作り上げどんな兵器よりも強い。
フーベルトの操るCCKは、無数のエンジェルデサントを蹴散らしながら進む。
『チェーンガンの弾を使いすぎるな。到着する前に三割以上消費したら、肝心な時に足りなくなるぞ』
エディーが無線で忠告してくる。
「多分足りるさ……」
表示はすでに弾の半分がなくなったことを示していた。
どうでもいい。
セベクノート体を相手にしたら、何の効果もない豆鉄砲だ。
このCCKに搭載されている武器は七つ。
チェーンガン、クイックカノン、対空ミサイル、鞭、ワイヤーアンカー、ヒートブレード、爆砕ハンマー
その殆どが、ダイルデサント、あるいは第四段階まで成長したダイル体と戦うための装備だ。
第五段階のセベクノート体と戦うのは、CCKの本来の運用ではない。
正面から突っ込んでも勝ち目は薄いだろう。
だが、他にいい案もない。
フーベルトとしてはせめて、横か後ろ、と思われる側に回り込んでから接近したかったが……
セベクノート体が旋回した。
外から見ている分にはどの方向も同じように見えるが、向こうにとっては前後ろがあるらしい。
「エディー、補足された、建物を盾にして、適当なところに隠れていろ」
『オーケー、幸運を祈る!』
「ビルを三つは挟めよ!」
フーベルトは言いながら、自分はCCKをわざと目立つように大通りを直進する。
ガリガリと音を立てて、天使が変形した。
七つの球体が縦に四つ並び、残り二つは、上から二番目の球体の左右に配置される。
垂れ流されている布のような物は全てそこから出ているようだ。最後の一つは背中に移動した。
上から、頭、胸と両手、腹、足、と言った感じか。
背中の球体はよくわからないから考慮しないとして、雑な人型をしているように見えなくもない。
「ミーアはどこだ? 下から二番目か……」
フーベルトは、なぜかそこにいると確信した。
それなら他の所を破壊するだけだ。
まずはチェーンガン。一秒間掃射してみたが、奇跡で弾丸は弾かれる。
使う前から無理だろうと思っていた。
次に対空ミサイル。これは奇跡の障壁を無効化しながら進む。
全弾が敵の胸部に直撃したが、爆風が晴れるとほぼ無傷だ。
クイックカノン。奇跡の障壁を無効化して貫通する特殊弾を速射、弾丸は着弾と同時に爆発する。
アヌビス拳銃の拡大版だ。
何発か撃ってみた。
命中、天使の表面に傷はついているようだが、致命傷という風には見えない。
「これも効かないとなると、ちょっとまずいな……」
鞭、ヒートブレード、爆砕ハンマー。どれも便利な武器だが、下からではそもそも届かない。
あとはワイヤーアンカーが刺さることに掛けるしかないが……。
「ん?」
ふと、フーベルトは、一番下にぶら下がっている球体に目玉のような円形の孔があるのに気付いた。
眼球にしては大きすぎる。
「まさか……」
ギュガアァァァァァッ
一番下の球体が残忍な光を発する。力を溜めるような数秒の間を挟んで、ビームを放ってきた。
フーベルトはCCKの左腕の盾で防御するが、光の圧力で足を止められる。
「くぅっ!」
その場でひっくり返りそうになる衝撃を、どうにか右に左に受け流す。
CCKが立っている路面が赤熱し、熔けていく。
余波で近くのビルが崩れ始めたころ、ようやくビームが収まった。
思い出したように鳴り響く無数のアラート。
盾は熱で変形していた。これはあと何発か撃たれたら壊れるかもしれない。
「なんだこの威力、四年前はこんなやついなかっただろ……」
CCKのAIは撤退を推奨していた。
だが、今こそがチャンスだとフーベルトは思った。
この攻撃を連発できるなら、すぐに二発目を撃つはず。
そうしないのはチャージに時間がかかるからに違いない。
フーベルトはCCKをセベクノート体の真下まで進ませ、ワイヤーアンカーを撃つ。
障壁を突き破ったアンカーの先端は、一番下の球体に突き刺さった。
「よし!」
本来なら、これは飛んでいるダイルデサントを地面に引きずりおろすような使い方をする物だ。
だが、ワイヤーもそれを巻き取るウィンチも、CCK自体を持ち上げるだけの強度と出力がある。
これで空中のセベクノート体まで肉薄し近接攻撃を放つ、それしか勝機がない。
だが、半分ほどまで上がった時、再び球体が光を放つ。
「しまった……」
ノンチャージで撃ったのか、威力は低かった。
だが、ワイヤーを切断するにはその程度で十分だった。
CCKは墜落し、アスファルトを削りながら十メートルほど滑ってから止まった。
ミーナの悲鳴が聞こえた気がした。
フランツは顔を上げる。
「敵が動き出したのか?」
オペレーターが緊張した面持ちで答える。
「いえ、基地内で異常が発生しました。CCKの一機が予定外の移動を開始! こちらの通信を受け付けません!」
「くそっ、警備が薄くなった隙をつかれたか! ……いや待て、なんで残っているんだ? 私は全部出せと言ったぞ?」
「……故障で動かないため、と報告があります」
「動いてるだろうが! 誰だ、そんな報告した奴は!」
フランツは怒って叫ぶ。
「それはたぶんマルヴァジタ案件だ。報告を出した者を監視しておいた方がいい」
いつの間にか、指令室の中に来ていたプロトが言う。
フランツは振り返り、睨みつける。
「なんでおまえがここにいる? いつからいた?」
「入室できる権限は持っている。入った時に声はかけたが?」
「……まあいい。それで? 監視しておくと何かいいことでもあるのか?」
「はっきり言うと、似たような状況は何度も確認されているが、有意義な痕跡が残っていたことは一度もない」
「ダメじゃないか……」
愕然とするフランツ。
追い打ちをかけるようにもう一度警報が鳴る。
「汚染洗浄車両一台が奪われました」
メインモニターに、装甲バスのような車が走っている姿が映し出される。
「CCKと共に基地から出ていきます……っ! あいつら、壁を……」
道が混んでいる正門前を避けるためか、壁を破壊して、車がいない横手から強引に出ていった。
やることが無茶苦茶だ。
メインモニターに基地内の監視カメラからの映像が表示される。
「……屋根の上に人がいますね」
「バカな! 仮にダイルデサントの攻撃を防ぐためだとしても、今の時点で乗ってるのはおかしいだろ! 落ちたら危ないとか考えないのか?」
フランツは、額の血管がブチ切れそうな勢いで叫ぶ。
車の屋根の上に乗っているのはシューマッハだった。
プロトは額を押さえる。
「あいつ、もう邪魔してやがる……」
〇〇〇
ミーナは暗い空間で待っていた。
恐れはなかった。フーベルトは必ず来るし、必ず成功すると確信があった。
どこからか、エルミーヌの声が響く。
『諦めて屈しなさい。そうすれば楽になるのに……』
「私は絶対に屈しない、フーベルトさんは、あんたなんかに負けたりしない」
『不思議ね。何があなたに希望を与えているのかしら? スマホのほかにも何か持っているのかしら?』
スマホはさっき壊された。それでも、まだ何か持っているのかと疑っているのだ。
「あなたが私から奪えるものは、もうないわ」
不意に空間が明るくなった。
エルミーヌが中を見ているのだろうか。
白い球体。ミーナがいる空間はその内側のようだった。
腐敗泥にも似た、黒と赤の入り混じったような液体が、半分ほどまで溜まっている。
だが、ミーナの心臓は緊張でバクバクと音を立て始めた。
ずっと、腰までつかるような液体の中に閉じ込められていて、上には注意を払っていなかった。
この空間の天井に当たる位置に、巨大な袋があるのに気づいた。
それは一定のリズムで膨らんだりしぼんだりしている。
ミーナの知る限り、心臓か何かに似ている。
ミーナは考える。もしこれを破壊したら、エルミーヌは死ぬのか? と。
エルミーヌがミーナから奇跡を奪ったのは、これを壊されたくなかったからなのかもしれない。
きっと、エルミーヌは今も恐れている。
ミーナがこの可能性に気づくことを。
そしてミーナが自分の意志で奇跡を発動できるようになる可能性を。
内側からなら、破壊できる?
ミーナは試してみたかったが……できそうな気がしない。
『ああ、来たわね』
明かりが消えた。
その代わり、壁がガラスのように透明になった。
外は夜明けが近い。
暗い街の中を、何か変な物が走ってくる。
ミーナもニュース映像で見たことがある。CCKだ。
「来た! フーベルトさんだ!」
『だからどうした! あんなガラクタみたいなロボットで、この私に勝てるわけがない!』
〇〇〇
CCKは全高六メートルの人型兵器。無骨なだ。
だがその戦闘力は、人類が今までに作り上げどんな兵器よりも強い。
フーベルトの操るCCKは、無数のエンジェルデサントを蹴散らしながら進む。
『チェーンガンの弾を使いすぎるな。到着する前に三割以上消費したら、肝心な時に足りなくなるぞ』
エディーが無線で忠告してくる。
「多分足りるさ……」
表示はすでに弾の半分がなくなったことを示していた。
どうでもいい。
セベクノート体を相手にしたら、何の効果もない豆鉄砲だ。
このCCKに搭載されている武器は七つ。
チェーンガン、クイックカノン、対空ミサイル、鞭、ワイヤーアンカー、ヒートブレード、爆砕ハンマー
その殆どが、ダイルデサント、あるいは第四段階まで成長したダイル体と戦うための装備だ。
第五段階のセベクノート体と戦うのは、CCKの本来の運用ではない。
正面から突っ込んでも勝ち目は薄いだろう。
だが、他にいい案もない。
フーベルトとしてはせめて、横か後ろ、と思われる側に回り込んでから接近したかったが……
セベクノート体が旋回した。
外から見ている分にはどの方向も同じように見えるが、向こうにとっては前後ろがあるらしい。
「エディー、補足された、建物を盾にして、適当なところに隠れていろ」
『オーケー、幸運を祈る!』
「ビルを三つは挟めよ!」
フーベルトは言いながら、自分はCCKをわざと目立つように大通りを直進する。
ガリガリと音を立てて、天使が変形した。
七つの球体が縦に四つ並び、残り二つは、上から二番目の球体の左右に配置される。
垂れ流されている布のような物は全てそこから出ているようだ。最後の一つは背中に移動した。
上から、頭、胸と両手、腹、足、と言った感じか。
背中の球体はよくわからないから考慮しないとして、雑な人型をしているように見えなくもない。
「ミーアはどこだ? 下から二番目か……」
フーベルトは、なぜかそこにいると確信した。
それなら他の所を破壊するだけだ。
まずはチェーンガン。一秒間掃射してみたが、奇跡で弾丸は弾かれる。
使う前から無理だろうと思っていた。
次に対空ミサイル。これは奇跡の障壁を無効化しながら進む。
全弾が敵の胸部に直撃したが、爆風が晴れるとほぼ無傷だ。
クイックカノン。奇跡の障壁を無効化して貫通する特殊弾を速射、弾丸は着弾と同時に爆発する。
アヌビス拳銃の拡大版だ。
何発か撃ってみた。
命中、天使の表面に傷はついているようだが、致命傷という風には見えない。
「これも効かないとなると、ちょっとまずいな……」
鞭、ヒートブレード、爆砕ハンマー。どれも便利な武器だが、下からではそもそも届かない。
あとはワイヤーアンカーが刺さることに掛けるしかないが……。
「ん?」
ふと、フーベルトは、一番下にぶら下がっている球体に目玉のような円形の孔があるのに気付いた。
眼球にしては大きすぎる。
「まさか……」
ギュガアァァァァァッ
一番下の球体が残忍な光を発する。力を溜めるような数秒の間を挟んで、ビームを放ってきた。
フーベルトはCCKの左腕の盾で防御するが、光の圧力で足を止められる。
「くぅっ!」
その場でひっくり返りそうになる衝撃を、どうにか右に左に受け流す。
CCKが立っている路面が赤熱し、熔けていく。
余波で近くのビルが崩れ始めたころ、ようやくビームが収まった。
思い出したように鳴り響く無数のアラート。
盾は熱で変形していた。これはあと何発か撃たれたら壊れるかもしれない。
「なんだこの威力、四年前はこんなやついなかっただろ……」
CCKのAIは撤退を推奨していた。
だが、今こそがチャンスだとフーベルトは思った。
この攻撃を連発できるなら、すぐに二発目を撃つはず。
そうしないのはチャージに時間がかかるからに違いない。
フーベルトはCCKをセベクノート体の真下まで進ませ、ワイヤーアンカーを撃つ。
障壁を突き破ったアンカーの先端は、一番下の球体に突き刺さった。
「よし!」
本来なら、これは飛んでいるダイルデサントを地面に引きずりおろすような使い方をする物だ。
だが、ワイヤーもそれを巻き取るウィンチも、CCK自体を持ち上げるだけの強度と出力がある。
これで空中のセベクノート体まで肉薄し近接攻撃を放つ、それしか勝機がない。
だが、半分ほどまで上がった時、再び球体が光を放つ。
「しまった……」
ノンチャージで撃ったのか、威力は低かった。
だが、ワイヤーを切断するにはその程度で十分だった。
CCKは墜落し、アスファルトを削りながら十メートルほど滑ってから止まった。
ミーナの悲鳴が聞こえた気がした。
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