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05 最終決戦
26 クリティカルヒット
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洗浄車両は細い通りの途中に隠れるように停止していた。
周囲には、シューマッハが倒したダイルデサントの泥が数十体分は散らばっている。
本人も頭から派手に泥をかぶっていたが、汚れるのは諦めたのか顔を拭いただけで戦い続けていた。
今は、デサントの群れが一段落したところだった。
いくら巨大なセベクノート体でも、CCKと戦いながらデサントを生み出すほどの余裕はないようだ。
モルガナは特にすることもなく、洗浄車両の助手席でCCKとセベクノート体の戦いを眺めていた。
「なあ、一度後退した方がよくないか? 俺たちがこんな前に出る必要はないだろ……」
エディーが泣き言をいう。
「ダメだ。さっきプロトからメールが来た。日の出がタイムリミットらしい」
モルガナは白み始めた東の空を指さす。
あと十分かそこらで、爆撃機が来る。
「今退いたら、戻ってくる時間はない。最初で最後のチャンスだ」
セベクノート体の方では、ちょうどCCKがワイヤーで上に登ろうとしている所だった。
「やった! 登れ登れぇ……あー、ダメかー……」
洗浄車両の上でシューマッハが応援しているが、ビームでワイヤーを切られて、CCKは落ちた。
シューマッハは屋根の上から運転席の方を逆さまにのぞき込んでくる。
「ねえ、なんで? CCKの盾はすごいビームでも弾くのに、あのワイヤーは簡単に切れちゃったよ?」
「ワイヤー部分にはシールドが展開できないんだ」
エディーが答えると、シューマッハは顔をしかめる。
「えー、そういう所でケチるから勝てないんだよ!」
「ケチじゃねぇよ! 技術的に不可能なんだよ!」
二人の言い合いを聞きながら、モルガナは最下段の球体を見つめる。
「なんにせよ、あのビームを止めないと上に行けないのか……」
あの発射口のような穴は本当に穴なのだろうか、だとしたら……。
エディーに向かって訊く。
「おい、CCKの主砲……クイックカノンは、どれぐらいの精度だ?」
「精度? それなり、としか言えないだろ」
「移動中の射撃制度は? どれぐらいだ?」
「そんなのパイロットの手動だ。狙いが良ければ、当たるさ」
「動きながら? 当たるのか?」
「あんだけでかいんだ、外すもんか」
「私が聞きたいのはそう言うことじゃない。あのビームを撃ってくる球体の穴を正確に狙えるかと聞いてるんだ」
「いや、……それは厳しくないか? 無理だろ」
すると、逆さのまま、シューマッハが補足する。
「フーベルトってさ、拳銃の早撃ちはまあまあよかったけど、実は的当てが下手だったりしない?」
「いや、そんなことはないと思うが……」
エディーはそう言うが、モルガナは二人のどちらかを信じろと言われたらシューマッハを選ぶ。
フーベルトが自力でできないなら、こちらで何とかするしかない。
そのためにここまで来たのだから。
「車をアレの正面に回してくれ」
「は? 死ぬ気か?」
「作戦を思いついた。フーベルトにも連絡を入れろ」
〇〇〇
フーベルトは焦っていた。
アンカーは二つ。一つが破壊された今、チャンスはあと一回しかない。
だが、同じことをしてもダメだろう。
別の手段で上がるとしたら……時計塔の壁を駆け上るとか、あるいは球体から垂れ下がっている細い布のような物をよじ登るしかない。
どちらも非現実的だ。
『おい、フーベルト。聞こえるか』
洗浄車両の方から連絡が来た。
「なんだ、エディー」
『近くのビルに頭から突っ込んで、動けなくなったふりをしろ』
「は?」
意味のわからないアドバイス。そんなことをして、どうしようと言うのか。
『絶対成功させるとモルガナは言っている』
「何をだよ?」
通信している間も、セベクノート体は、細いビームを牽制のように何発も撃ってくる。
それを避けたり防いだりしながら、モルガナが立てたと言う作戦を聞いて、フーベルトはいよいよ末期だな、と思った。
だが、他にいい案もなさそうだ。
正確な位置を指示され、そこに向かって追い込まれる演技をしながら移動していく。
最後に、後ろを確認せずに全速力で180度ターンして、指定通りの場所で壁に突っ込んだ。
CCKの防御力でも、運動エネルギーまでは消せない。
フーベルトは前に放り出され、シートベルトに締め付けられ、エアバックに殴られる。
これで、しばらく動けないとしても、不自然はないだろう。
というか本当に動けない。
『位置についた。二十秒以内に撃つ』
モルガナがそう言って、沈黙する。
「頼むぞ……」
この状況で極太ビームを撃たれた場合、CCKが耐え切れず破壊される危険がある。
あるいはCCKが耐えたとしても、周囲の建物や、メガフロートの基盤が耐えられるとは限らない。
その場合、埋まるか、水没するか。どちらにしても戦闘不能だ。
チャンスは一回。
フーベルトはその時を待った。
〇〇〇
モルガナは道端に広がる腐敗泥の上を這っていた。
最適な狙撃ポイントが他になかった。
上空からの注意をひかないように細心の注意を払いながら狙撃ポイントに到着。
用意を始める。
作戦は単純、セベクノート体の最下部にある球体、ビーム発射装置の発射口を撃って内側に傷をつける。
それもビームを放とうとする直前にだ。
撃てなくなれば良し、爆発すればもっと良し。
「二十秒以内に撃つ」
ゆっくりとした呼吸で、体の振動を減らしていく。
距離は直線で百メートル未満。
だが標的は常にランダムに動いている直径二十センチ程度の穴。
真横に近いこの位置からは縦長の楕円か線に見える。
許される誤差は僅かだ。
しかも失敗した場合、カウンタースナイプどころか、この辺り一帯を吹き飛ばされるだろう。
チャンスは一回だ。
さらに、最大の効果を狙うなら、相手のタイミングで撃たなければいけない。
だから用意できる最高のエサを使う。
エサはフーベルトの乗ったCCKだ。
それが動けなくなったら、相手は必ず油断する。
油断しなくても無視できない。
このエサを見過ごすような者は、どちらにしろ勝てない。
果たして、エルミーヌはエサに食いついた。
壁にめり込んで動きを止めたCCKを最大威力のビームで破壊しようとしている。
モルガナは油断しない。
ゆっくりと息を吐きながら、一つの精密機械のように、静かにチャンスを待つ。
セラフノート体の最下部の球体が光を放った。
撃った。
〇〇〇
セラフノート体の最下部の球体が爆発し、火を噴いた。
悲鳴のような絶叫が響き渡る。
『ヒット! 今度は効果あり! すごいよ! 今の一撃は人類超えたよ!』
シューマッハが喝采している。
セベクノートに個人サイズの火器で被害を与えたのは、世界初かも知れない。
「感謝する! 後は俺の仕事だ!」
フーベルトは、建物を破壊しながら瓦礫の中から脱出する。
再度アンカーを発射。今度は上から二番目の球体に突き刺さった。
ミーナが閉じ込められている球体の真上でもある。都合がいい。
ウインチを巻くと、CCKの足が地面を離れた。
「ミーナ、あと少しだ……」
周囲には、シューマッハが倒したダイルデサントの泥が数十体分は散らばっている。
本人も頭から派手に泥をかぶっていたが、汚れるのは諦めたのか顔を拭いただけで戦い続けていた。
今は、デサントの群れが一段落したところだった。
いくら巨大なセベクノート体でも、CCKと戦いながらデサントを生み出すほどの余裕はないようだ。
モルガナは特にすることもなく、洗浄車両の助手席でCCKとセベクノート体の戦いを眺めていた。
「なあ、一度後退した方がよくないか? 俺たちがこんな前に出る必要はないだろ……」
エディーが泣き言をいう。
「ダメだ。さっきプロトからメールが来た。日の出がタイムリミットらしい」
モルガナは白み始めた東の空を指さす。
あと十分かそこらで、爆撃機が来る。
「今退いたら、戻ってくる時間はない。最初で最後のチャンスだ」
セベクノート体の方では、ちょうどCCKがワイヤーで上に登ろうとしている所だった。
「やった! 登れ登れぇ……あー、ダメかー……」
洗浄車両の上でシューマッハが応援しているが、ビームでワイヤーを切られて、CCKは落ちた。
シューマッハは屋根の上から運転席の方を逆さまにのぞき込んでくる。
「ねえ、なんで? CCKの盾はすごいビームでも弾くのに、あのワイヤーは簡単に切れちゃったよ?」
「ワイヤー部分にはシールドが展開できないんだ」
エディーが答えると、シューマッハは顔をしかめる。
「えー、そういう所でケチるから勝てないんだよ!」
「ケチじゃねぇよ! 技術的に不可能なんだよ!」
二人の言い合いを聞きながら、モルガナは最下段の球体を見つめる。
「なんにせよ、あのビームを止めないと上に行けないのか……」
あの発射口のような穴は本当に穴なのだろうか、だとしたら……。
エディーに向かって訊く。
「おい、CCKの主砲……クイックカノンは、どれぐらいの精度だ?」
「精度? それなり、としか言えないだろ」
「移動中の射撃制度は? どれぐらいだ?」
「そんなのパイロットの手動だ。狙いが良ければ、当たるさ」
「動きながら? 当たるのか?」
「あんだけでかいんだ、外すもんか」
「私が聞きたいのはそう言うことじゃない。あのビームを撃ってくる球体の穴を正確に狙えるかと聞いてるんだ」
「いや、……それは厳しくないか? 無理だろ」
すると、逆さのまま、シューマッハが補足する。
「フーベルトってさ、拳銃の早撃ちはまあまあよかったけど、実は的当てが下手だったりしない?」
「いや、そんなことはないと思うが……」
エディーはそう言うが、モルガナは二人のどちらかを信じろと言われたらシューマッハを選ぶ。
フーベルトが自力でできないなら、こちらで何とかするしかない。
そのためにここまで来たのだから。
「車をアレの正面に回してくれ」
「は? 死ぬ気か?」
「作戦を思いついた。フーベルトにも連絡を入れろ」
〇〇〇
フーベルトは焦っていた。
アンカーは二つ。一つが破壊された今、チャンスはあと一回しかない。
だが、同じことをしてもダメだろう。
別の手段で上がるとしたら……時計塔の壁を駆け上るとか、あるいは球体から垂れ下がっている細い布のような物をよじ登るしかない。
どちらも非現実的だ。
『おい、フーベルト。聞こえるか』
洗浄車両の方から連絡が来た。
「なんだ、エディー」
『近くのビルに頭から突っ込んで、動けなくなったふりをしろ』
「は?」
意味のわからないアドバイス。そんなことをして、どうしようと言うのか。
『絶対成功させるとモルガナは言っている』
「何をだよ?」
通信している間も、セベクノート体は、細いビームを牽制のように何発も撃ってくる。
それを避けたり防いだりしながら、モルガナが立てたと言う作戦を聞いて、フーベルトはいよいよ末期だな、と思った。
だが、他にいい案もなさそうだ。
正確な位置を指示され、そこに向かって追い込まれる演技をしながら移動していく。
最後に、後ろを確認せずに全速力で180度ターンして、指定通りの場所で壁に突っ込んだ。
CCKの防御力でも、運動エネルギーまでは消せない。
フーベルトは前に放り出され、シートベルトに締め付けられ、エアバックに殴られる。
これで、しばらく動けないとしても、不自然はないだろう。
というか本当に動けない。
『位置についた。二十秒以内に撃つ』
モルガナがそう言って、沈黙する。
「頼むぞ……」
この状況で極太ビームを撃たれた場合、CCKが耐え切れず破壊される危険がある。
あるいはCCKが耐えたとしても、周囲の建物や、メガフロートの基盤が耐えられるとは限らない。
その場合、埋まるか、水没するか。どちらにしても戦闘不能だ。
チャンスは一回。
フーベルトはその時を待った。
〇〇〇
モルガナは道端に広がる腐敗泥の上を這っていた。
最適な狙撃ポイントが他になかった。
上空からの注意をひかないように細心の注意を払いながら狙撃ポイントに到着。
用意を始める。
作戦は単純、セベクノート体の最下部にある球体、ビーム発射装置の発射口を撃って内側に傷をつける。
それもビームを放とうとする直前にだ。
撃てなくなれば良し、爆発すればもっと良し。
「二十秒以内に撃つ」
ゆっくりとした呼吸で、体の振動を減らしていく。
距離は直線で百メートル未満。
だが標的は常にランダムに動いている直径二十センチ程度の穴。
真横に近いこの位置からは縦長の楕円か線に見える。
許される誤差は僅かだ。
しかも失敗した場合、カウンタースナイプどころか、この辺り一帯を吹き飛ばされるだろう。
チャンスは一回だ。
さらに、最大の効果を狙うなら、相手のタイミングで撃たなければいけない。
だから用意できる最高のエサを使う。
エサはフーベルトの乗ったCCKだ。
それが動けなくなったら、相手は必ず油断する。
油断しなくても無視できない。
このエサを見過ごすような者は、どちらにしろ勝てない。
果たして、エルミーヌはエサに食いついた。
壁にめり込んで動きを止めたCCKを最大威力のビームで破壊しようとしている。
モルガナは油断しない。
ゆっくりと息を吐きながら、一つの精密機械のように、静かにチャンスを待つ。
セラフノート体の最下部の球体が光を放った。
撃った。
〇〇〇
セラフノート体の最下部の球体が爆発し、火を噴いた。
悲鳴のような絶叫が響き渡る。
『ヒット! 今度は効果あり! すごいよ! 今の一撃は人類超えたよ!』
シューマッハが喝采している。
セベクノートに個人サイズの火器で被害を与えたのは、世界初かも知れない。
「感謝する! 後は俺の仕事だ!」
フーベルトは、建物を破壊しながら瓦礫の中から脱出する。
再度アンカーを発射。今度は上から二番目の球体に突き刺さった。
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