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meishino

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12 セレスティウムの件

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 キハシ君はすぐに去り、私はホカホカ湯気の放つピザを一口頬張ったが、ジェーンは真剣な表情で私の机に肘を置いて、私に聞いた。


「先程の続きです。道理で、その物質が公にされていなかった訳です。その発明に効果があったのならそれは量産されるべきです。なかなか無いとはいえ、それでも毎年何人かの闇属性の人間は魔力の暴走で命を落としていますから。」


「うん……そうなんだけど、」


「ええ。」とジェーンもピザを頬張った。私は彼に言った。


「後は触れることなかれ、そう言った教官の言いつけを守り私は卒業して騎士になった。量産されるのをただ待っていた。騎士になって一ヶ月ぐらいが経った時、衝撃的な情報が入ってきた。それはヴァレンタイン教官が凶悪化したマフィアとの戦闘に参加して……その時に発生した爆発で亡くなったと。」


「となると、そこでセレスティウムについての情報が断たれた訳ですか?しかし彼女の研究には他にも協力している人物がいたでしょうに。」


「私はそうであることを願ってルミネラ皇帝にお会いした。陛下は私を守るためだと言って詳細を教えてはくれなかった。量産は出来るのかどうかも聞いたけれど、知るべき必要のないことだとしか仰らなかった。でも気になった私は、騎士の時にヴァレンタイン教官の自宅を調べたことがある。」


 ジェーンが持っていたピザを置いて、真剣な瞳を私に向けながら、私の回答を待った。


「彼女の自宅に、何か情報は?」


「うーん。彼女の自宅は帝都の北にあった。当時の騎士団長の許可もあったからロックを外して、中に入った。一軒家だけど驚く程に家具が無くて、本当にここに住んでいるのか疑うくらい、なんていうの?ミニマリストだった。キッチンもお手洗いも全然使った様子が無くて、真新しかった。二階に行くとベッドがあって……他にも部屋はあったけど家具はそれだけで本棚だって一つも無い。物がないのでそれ以上調べようが無い。色々なツールを使って隠し扉や地下室が無いかと探っては見たが、それも無かった。本当に何も無かったよ。」


「成る程、そこは自宅でありながらも殆ど使っていなかったようですね。別の場所に彼女特有の拠点があり彼女はそこで生活をしていた。自宅はカモフラージュに過ぎなかったのかもしれません。となるとその拠点ですが……それがセクターR1かと思われます。その場所は、どこにありますか?」


「ジェーンは本当に知らないの?それもそうか。」


「それは……どういう意味です?」


「セクターへは、帝国研究所の地下通路から行けるらしい。」


「そ、それは確かですか?あの研究所に、地下通路……?」


 ジェーンが目を見開いて、ピザをもう一枚頬張った。私は説明を続けた。


「ジェーンが知らないってなると、多分セクターの存在を知っているのは、私と教官、ルミネラ皇帝に、それから当時の帝国研究所の所長だったミハイルさん、それから当時の騎士団長だったマテオ団長だけだ。私はセレスティウムの実験体第一号でもあった為に、その一件からはヴァレンタイン教官に気に入られていて、彼女からその場所への入り口が帝国研究所の地下にあることは教えてはもらっていたが、研究所のどこに地下通路があるのかまでは知らなくて、実際にセクターまでは行った事はない。これもまた私が騎士の時に、セクターを探して行こうとしたが、ミハイル所長に止められた。マテオ団長の捜査許可を期待したが、そこは現在自分の管轄内だと却下された。地下通路の入り口は見つかりづらいところにあるらしくて、細かい事は知らない。帝国研究所の敷地内のどこか……とまではわかるけど。」


「ならば、」とジェーンが次のピザに手を伸ばした。「ミハイルはもういませんから、マテオにセレスティウムの詳細を聞けばいいのです。彼なら、何らかの情報を持っている。更にセクターへの鍵も持っている可能性があります。セクターにはセレスティウムの情報がある事でしょう。」


「それがね、」私はため息をついた。「それから一年ぐらい経った時にマテオ団長が事故で亡くなり、数年後にはミハイル所長がこれまた事故で亡くなった。教官はもういないし、そして去年は陛下が……だからセレスティウムについて知っているのは、現在私しかいないと思っていた。」


「キルディアそれはいけません。」


「え?」


 ジェーンがいきなり立ち上がって急いだ様子でドアまで行くと、すぐにロックをかけた。私は驚いて、口が開けっぱなしになった。ジェーンはまたササっと移動をして私の隣に座ると、私の腕を掴んで真剣な顔をした。


「あなたの命が何者かに狙われています。因みに、マテオ団長とミハイル所長の死因はご存知ですか?」


「……団長は、確か……夜道で、帝都民の運転するブレイブホースと衝突して、それで。ミハイル所長は、倉庫内で物品を管理している時に、物が落下して下敷きに。」


「ミハイルは私の前任者です。事故死とは聞いていましたが、そのような前後関係があったとは。そして、あなたのウォッフォンにメールが届いた。それも亡くなったはずの教官から。しかし彼女は生きていた……マテオとミハイルが亡くなったのは、もしや彼女が原因では?その二つの死因は、事故に見せかけることが出来ます。」


「いやいやいやいやいや……」私は一気に食欲を無くした。「そんな、怖いこと言わないでよ……!だって死因が明らかなのに。それにもしそうだったら、もっと早い段階で、私にコンタクトしてきても良かったでしょ?どうして今なの?どうして今、教官は私に連絡してきた?しかもセクターに来いってさ……今まで、散々来るなって言ってたのに。」


「ですからもう一人誰か、それもヴァレンタイン教官のアドレスを掘り起こすという、相当なシステムスキルを持っている何者かが、あなたを狙っているのです!セレスティウムの事実を知っている人間を、この世から抹殺しようと企てているのでしょう。相当、危険な事ですよ。」


「じゃ、じゃあ!」私は立ち上がった。「じゃあジェーンに言わなきゃ良かった!だってこれでジェーンも狙われることになった!あーあ、言わなきゃ良かったよ!」


「ふふ、もう遅いです。いいではありませんか、我々は運命共同体です。」と、ジェーンがピザを一枚取って、頬張った。「兎に角、その誰かが誰なのかを特定する必要がありますね。それから、これは重要なことです。」


「何?」


「一秒たりとも、私の視界から居なくならないこと。分かりましたね?」


 私は苦笑いした。


「ずっとは無理じゃない?お互い、仕事があるし……。」


 すると立ち上がったジェーンが、もう一枚ピザを頬張って、ピザの箱を潰しながら言った。


「ならば、私の研究室に来てください。それならお互い作業が出来るでしょう?いつどこに、あなたを狙う誰かが潜んでいるか分かりません。もしやこの研究所内に犯人がいるやもしれない……。」


 私も立ち上がり、PCを閉じてから言った。


「だってそうなったら、迎撃システムが。」


「迎撃システムは、職員には反応しません。私の申す意味が分かりますね?」


「え……。じゃあ、職員であっても、ジェーン以外の人間は信じるなってこと?」


「そうするしかありません。この研究所の、特に研究開発部の人間は警戒の必要があります。」


「えええ!?こんなことになっちゃうとは……。セレスティウム。その存在は、知っていく人がいなくなっていく段階で、この世のどこかでしぼんでいったのかと思っていたよ。私が騎士団長の時だって帝国研究所を調べようとしたら、ミハイルさんに止められてさ、でも私が団長だからって強行しようとしたら、今度はルミネラ皇帝に止められた。なんかそれを考えると私はお邪魔虫だったから、すんなりと騎士団長を辞められたのかなって……となるとルミネラ皇帝が亡くなったのはネビリスが原因だけど、ネビリスはこのことを知っていたのかな。」


「彼は存じていなかったでしょう。もし知っていたのならセレスティウムは金の成る木です。ヴィノクールを襲ってネオキャビアを回収している場合では無かったでしょうね。」


「そうか、じゃあネビリスは知らず、ただ彼の欲望のままに行動してたんだね。金の成る木か、確かにそういう見方もあるね……私は馬鹿だから、ただ闇属性の人のことを考えていたけど。そうだね……そう思うと、私は狙われるのかも。」


「ええ、そうです。私はあなたを守ります。あなたのその純粋さも守りたい。さあ、私の研究室に行きましょう。そこで私は今日の所定の作業を終えてから、この件について調査をしたいと考えます。」


 うん、と私は頷いて、PCを脇に抱えた。するとジェーンが私と手を繋いで、歩き始めた。私は彼の背中に言った。


「分かった、二人で調査をしよう。それからピザ、殆どジェーンが食べちゃったね。」


「……ええ、予想よりも美味しかったので。」


 ちょっと笑った。また一緒にピザを食べたいと思った。



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