スカーレット、君は絶対に僕のもの

meishino

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第53話 彼女へのお話と胸中

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 レッドクラスの寮のマリーの部屋の前に着いた僕は、思いっきり呼び鈴のボタンを押した。少しの間の後に部屋着姿のマリーが玄関の扉を開けて僕を迎えてくれた。

「あ、家森先生……どうぞ」

「いえ……」

 この場で結構、と言おうとしたが周りに僕とマリーの様子を伺うレッドクラスの生徒達が集まってきてしまったので、僕は彼女の部屋の中に入って話をすることにした。と言っても玄関までだ。誤解されたくないのでドアに足を挟んだ状態のままで話す事にした。

「ここで話を。」

「その……ちょっと挟まった状態でですか?」

「はい、あまり誤解されたくはないので。」

「は、はあ。」

 キャミソールにショートパンツのラフな服装で、僕の前に立つマリーは首を傾げた。

「マリーにお話があります。」

「えっ家森先生……」

 キラキラとした目で僕を見てきた。違う違う、そうじゃない。

「正直申すと、僕はもうヒイロに決めています。」

 彼女はハッと心に衝撃を受けた表情をして黙ってしまった。それもそうなのかもしれないが。

「あなたはさとい方です。僕が何故それをわざわざ言いにここまで来たのか、僕の言いたいことを理解していますね?そういうことです。」

 マリーは俯いた。眉間に深くしわを寄せているあたり、ヒーたんのことでも考えているのかもしれない。

「……どういうことか、分かりません。」

 全く。

「何を。ヒイロへの発言、僕に近づけないようにしたこと、認めませんか?リサとリュウのことを持ち出したことも。」

 はあ、とため息を彼女が吐いて額を片手で押さえた。

「……ヒイロが家森先生に話したんですか?そうなんですね。そうなんですか!?」

 急に声を荒らげてしまった。その調子で話されると廊下に筒抜けになってしまうと感じた僕は、一時的にマリーの部屋に入ることにして扉を閉めた。しかし玄関までだ。

「様子のおかしい彼女に僕が詰問しました。彼女のせいではありません。あなたは自分のしたことを棚に上げますか?」

「棚に上げてる訳では……確かに私はそう言いました。家森先生とヒイロがデートするって聞いて、私の方が仲良いのにって思いました。どうして家森先生はヒイロを選ぶのでしょうか?私は?」

 真剣な表情で聞いてきたマリーに、僕はドアにもたれながら真剣な表情のまま応える。

「彼女を選ぶ理由は、僕が彼女を好きだからです。」

「どうしてヒイロが好きなのですか?」

「……うん、その存在すべてを僕は愛おしく思っています。一緒に話していて楽しい、また彼女の前だと素で居られる、それも大きいと思います。」

「私のことを好きと言ったのは……どういうことですか?」

 ああなるほど。そうか。

「それは生徒としてです、申し訳ない。」

 誤解を招くのなら、もうこの言葉は軽々しく使わないようにしなければ。まだ僕には学ぶことがたくさんあるものだ。

 伏し目がちのマリーが、ぎゅっと変色するぐらいに拳を握っているのが見えた。

「マリー、怒っていますか?」

「え、ああ……家森先生に対してではありません。」

 それは聞き捨てならない。

「……もし、彼女をこれ以上苦しめるような真似をするのなら、僕は許しません。いいですね?」

 ぽろっと涙を流したマリーがドアにもたれかかる僕に向かって走ってきて、僕に抱きついてきた。彼女からふわっと香るバラの匂い……それも違うと瞬時に僕の脳は判断した。僕が嗅ぎたいのはヒーたんのヨモギの香りだ……

 彼女の部屋でシャワーを浴びているときに理解したが、彼女からいつも漂うその香りの正体は売店で購入した安いシャンプーらしく、彼女のシャワールームでそのポンプを押すと、強烈な勢いで彼女の香りが出てきて思わずくらっとしてしまったものだ。

 その謎なヨモギの香りも今となっては一番好きな香りになってしまった。おかげでここ数日は彼女に会えなかった分、売店で弁当の他にヨモギ団子ばかり買ってしまった。ああまたヒーたんの頭を嗅ぎたくなってきた……ヨモギ

「うっ……家森先生、抱きしめて、くれない」

 ああしまった、つい他に意識が。しかし抱きしめ返しはしない。僕に抱きつく彼女の肩を掴んで僕から離し始めると、彼女は悲しそうな瞳で涙を流しながら僕を見つめてきた。

「すみません、僕は、もう誤解されたくないのです。」

「……もうヒイロとお付き合いしているのですか?」

 ……。

 ……ぐっ。

 え?もしや?という類の、希望のこもった表情をマリーがし始めた。これはいけない。

「……時間の問題です。仲はとても良いですから。とにかく僕が言いたいのは、もうヒイロに構わないで頂きたいということです。理解しましたか?」

「……でも、私だって、家森先生が好きです。」

「はい、ならば僕が幸せになることを応援してはくれませんか……どうか。」

 軽く頭を下げた。マリーにはそうしてもらうしかない。
 彼女は辛そうにグッと目を閉じて、涙をぽろぽろと床に落とした。

「……っ、そ、そんなの、出来ません!酷いです!」

 マリーが僕を睨んだ。

「大体、どうしてヒイロなんですか!?あんな、顔だってそんなに可愛くないし、別にいつもぼーっとして何にも考えてなさそうな頭して……いくら記憶無くしたからって、家森先生はヒイロに優しくしすぎです!大体ヒイロはグリーンクラスじゃないですか!あんな普通に生活も出来ないような出来損ないの集団にいる女、将来だって高が知れてるわ……私があんなのに負ける、その意味が分かりません!」

 ふう!と思いっきり息を吐いて僕は怒りの感情を鎮める。生徒相手に下手なことをしたくない……もし彼女がそこらの女だったら状況は違っていたが。

 僕の我慢をよそに、彼女はまたも話し続けた。

「髪の毛だって、あんな赤い髪の人間見たことありますか!?よくタライ先輩だってあんなのと一緒に街を歩けると思っておりましたわ。注目され放題じゃないですか。そんなのと一緒に歩いては家森先生のイメージだって、あまりよく思われなくなります。家森先生は……その、ふさわしい女性と一緒に街を歩くべきです。クイーンのイメージにもつながりますわ!……あっ」

 マリーが怯んだ。それもそうだろう。僕はきっと今、酷い顔をしている。

 それに……普段は眠ったままの僕の光属性が、この時ばかりは右にギリギリと音を立てて握られた拳からヒビとなって、ぞわぞわ顔にまで到達しているのが分かる。僕は今、どんな顔をしているのか、マリーの怖気付いた表情から何となく理解出来る。しかしそれくらいに僕は今、怒っている。

「……あまり、僕の前でヒイロことを侮辱しないほうがいい。僕にとっては彼女は高嶺の花です。その崇高すうこうたる存在を僕の前でけなしますか。度胸だけは認めますが、賢明な判断ではないとうかがえる。」

「……。」

 なんとか心を落ち着かせてヒビを鎮める。ふうと何回もため息を吐いて、僕はやっと元通りに戻れた。

「それに僕のことをクイーンと絡めて見るような人間に僕のそばにいて欲しくないですね。」

「で、でもそれは!例えばの話で……」

 僕はドアノブに手をかけた。

「もうあなたの話は分かりました。価値観が違いすぎるようですから、これ以上話しても無駄になると判断しました。それにこれ以上彼女のことを悪く言われては僕も我慢の限界です。とにかく僕が言いたいのは、もうヒイロには迷惑をかけないこと、いいですか?これは僕個人としても、教師としてもあなたに言っているつもりです。」

 玄関から出て、悔しそうな表情で涙を流すマリーをじっと見つめていると彼女がドアノブを掴んで閉めながら言った。

「……時間ください」

 バタン

 ああ、逃げられたか。

 まあ当分はヒーたんに何もしてこないだろう。

「やれやれ……次はリサですか。」

 思ったよりも長くかかりそうだ。僕は食堂で待っている彼女のことを気にしつつ、レッド寮の階段を降りてリサの部屋に向かった。


 そしてリサの部屋でも一連の出来事と今後もリュウとの交際を続けるように頼んだ僕は校舎の裏口へ向かった。彼女は意外にもすんなりと分かりましたと了承してくれたので、早くことを済ませられたのだった。

 もう既に夜だが食堂はまだ生徒の数も多いと判断して、ヒーたんを裏口にメールで呼んでいた。僕が外から裏口へ近づいて行くと、彼女が壁にもたれかかりながら携帯を操作しているのが見えた。

「メールですか?」

「え?ああ……ちょっとタライさんと連絡してました。明日コーンスープパーティしないかって言われて。まあ明日は水曜日ですし、会う日じゃないからいいですよね?」

 ニコッと笑いかけてきた……まあ、いいと言うしかない。か。

「いいと思いますよ。では行きましょうか……あ、持ちます。」

 ヒーたんがパンパンに膨らんだリュックを背負っている。食堂で今日の夜の食材を買ってくれたからだ。お買い物を頼むのを忘れたが、買っててくれてよかった。その重そうなリュックを僕が受け取ろうとすると何故か彼女は僕から遠ざかった。

「あ!今日は私が持っていきます!」

「しかし食材入っていますし、重たいでしょう?」

「今日はいいんです!行きましょ!」

 僕の背中を彼女が押してきた。ま、まあそれなら仕方ないが重くはないだろうか……少し心配のまま前を進み始めた。

 背を押されながら歩いていると前方の砂利道から人影が見えてきた。あのシルエット、白衣、彼しかいない。

「あ!ウェイン先生!」

 ヒーたんの声に我々に気づいたウェインが驚いた表情をした。

「あっ!ヒイロ!ゲッ!家森先輩」

 ゲッとは何だ……。僕がため息を吐いていると、こちらに近づいてきたウェインが何故かヒーたんに対してウィンクしたのだ。

 ……何をしている?

「ちょっとヒイロさ、後でメールするから!大事な頼みごとがあるんだ!はは。だから職員の権限でアドレス調べてもいいだろ?」

 ……。

「まあ別にいいですけど……大事な用事ですか?何ですか?」

 ……ほう?僕の前で彼女を誘うつもりか?

 僕の顔色を見たウェインが額から汗を垂らしながら訳を話し始めた。

「ほ、ほら!別に変なことじゃ無いですよ?最近栄養取れてるか確認しようと思ってたんですよ!はは」

 明らかに目が泳いでいるが……まあいい。僕は彼に言った。

「栄養は取れてると思います、最近は互いに過ごす時間が多かったのですが、これからも彼女がお弁当を作ったり、一緒に食事したりしますから。それにそのチェックは僕がしておくと言う話ではありませんでしたか?頭の検査と共に定期的に行うと先日もお約束したではありませんか。」

「あ、ああ……そうでしたね、そうだった!家森先輩に任せておけば間違い無いですもんね!あはは!じゃ、じゃあな!」

 手を振りながらウェインが走って去って行った。何なんだアレは。じっとウェインの背中を見つめているとヒーたんが僕の腕を掴んで引っ張った。

「まあ私のことが心配だったんですかね?行きましょ行きましょ。」

「あ、ああはい……。」

 今度は彼女が先行して林の中に入って行った。暗い夜の林の中、僕は携帯のライトをつけて足元を照らしながら彼女と共に歩いている。

「そう言えば、結構時間が経ちましたけど、どこに行っていたんですか?」

「ああ、マリーとリサの部屋に。」

「えええええ!?なんて!?なんて言ったんですか!?」

 ヒーたんが驚いて立ち止まったので、今度は僕は彼女の背中を押しながら説明することにした。

「釘さしました。まあ大丈夫ですよ。マリーは時間が欲しいと言ってましたが、リサはリュウと付き合い続けるようでしたから。」

「そ、そうなんだ……。」

 考え事をして歩みが遅くなるヒーたんの背中をさらに力を入れて押しながら僕は職員寮へ向かった。早く彼女と二人きりになりたい。その思いで僕の歩み足は自然と速くなっていく。

 遂に僕の部屋に着き、ポケットから出した懐中時計で玄関のロックを解除して、彼女の背中をもう一度押して部屋の中に入れた。

 そして玄関の扉を閉めたと同時に彼女にキスをした。

 ああ、この感触。

「うわぁ……急に」

「ふふ、すみません。我慢しきれなくて。さあ上がって。」

 綺麗に掃除してあるリビングの床に彼女がリュックを置いた。それを手に取っていつものように僕が食材を冷蔵庫に入れていく。ニンジンに白菜、キノコ、鶏のひき肉、豆腐か。

「今日はお鍋にしようと思って……いいですか?」

「ああいいですね!なら僕はお肉を切ります……が」

 そう、まずは彼女に僕が揃えた調理器具一式を見てもらいたい。僕が売店で取り寄せた、一流メーカーのものだ。シンク下の引き出しを開けると彼女は目を丸くして近づいてきた。

「え!?え!?なに……この赤いの可愛い~!」

 ヒーたんはお鍋とフライパンを手に取り喜んでいる。良かったと僕もつい微笑んでしまった。

「これって売店では見かけたこと無い種類ですけど……?ウワァ可愛い!」

「ええ。普段は。しかし僕が売店のおばさまに取り寄せるように頼みました。ふふ、勿論包丁やまな板もありますし、ピーラーや木ベラも、それから……アゥ」

 彼女に見てもらおうとしゃがんでシンクからホイホイと道具を出していたところを、突然後ろからヒーたんに抱きしめられてつい変な声が出てしまった……タイムマシンがあるなら取り消したい。

「家森先生……ありがとうございます。」

「いえいえ。土鍋もありますからそれで今日は一緒に作りましょう。」

 一緒に立ち上がって僕は彼女にハグをした。ああ、匂う……ヨモギの香り。僕に胸の高鳴りと安心感を同時に与えてくれる、これが欲しかった。

「そうですね!……ちなみにこのフライパンっておいくらで?」

「何を……」

「おいくらで?」

 ぎゅっと強めに抱きしめられた。言え、ということか。ふふ。

「……そうですね、フライパンで大体3万ぐらいだと思います。」

 バッ

 彼女が僕から離れて目も口もあんぐりと開けている。

「さ……っ!?さ!?」

「はい。しかし良いものは長持ちしますから。ね?」

「じゃ、じゃあこのトータルで?」

「ふふ、それは内緒です……まあ大丈夫ですよ、あなたが喜んでくれて僕は嬉しいですから。」

「グエエ……」

「変な声出さないで……ふふっ」

 いつもいつも、変なショックの受け方をする彼女は見てて面白い。僕は人参を渡した。

「作りますか?」

「あ。はい。作ります。こんなにたくさんありがとうございます!よっし作りましょ!」

 ルンルンでおニューの土鍋をコンロにセットしたヒーたんの横で、僕はまな板の上に人参を乗せて皮を剥き始めた。

 ヒーたんも同じまな板の上で手慣れた様子でキノコを切ったり豆腐を切ったりしていく。一緒に料理を作りながら他愛のないお話をして、僕はとても楽しい気分で満たされた。やはりあのドラマの真似をしてみて正解だった。

 出来上がったお鍋はホカホカと美味しそうな湯気を出している。テーブルに座り、真ん中にどんと置かれた土鍋を二人でつつくことにした。いただきます、と同時に言ってから塩味のお鍋を口の中に入れる。

 ああ……うまい。

「ああ~美味しいですね!夏前だからちょっと暑いかなと思いましたけど、それよりも美味しい!」

 頬張るヒーたんを微笑ましく見つめながら僕もクリスタルリキッドをごくっと飲んで、お肉を頬張る。ああ……うまい。

「本当に、美味しいです。ここは地上に比べると少し気温が低いですし、27度でも湿度も高くなく快適ですから、鍋もちょうど良いです。それに二人で作ったから美味しい。」

「そうですね、二人で作ったから」

 ふふ、と頬を染めて微笑むヒーたんを衝動的に襲いそうになったが酒をごくっと飲んで堪えた。危ない危ない……こうして彼女と過ごせるのが久しぶりだからといって、がっつくのは良い案だとは思わない。

 こういう時も平常心でいられる男に、女性は安心感を抱くだろうから。

 それからも僕とヒーたんは他愛のない話、主に学園の人間関係についてを話しながらお鍋を二人で食べ切ってしまった。

「ああ、美味しかった!ごちそうさまでした!」

「ごちそうさまでした……いやぁ食べました。」

 お腹を何度もさする僕を見て彼女が笑った。動いて消化を促進したいと食器を片付け始めると、彼女も手伝ってくれた。

 一通り片付け終わって彼女がシャワーを浴びに行ったので、僕はPCをリビングに持ってきて少し明日の作業をすることにした。

 たまに手を止めては、リビングの床に置いてある彼女の赤いリュックを見つめる。あれが毎日ここにあれば良いなんてそんな考え、まだ時期早々だと自分を戒める。

 当たり前だ。ヒーたんは僕の彼女ではない。そうしたいが彼女の記憶がはっきりとするまでは前に進めないだろう……。彼女の記憶か。深淵の地、やはり行ってみるべきか。しかしあの地は内戦が去年終わったばかり、あまり治安は良くないだろう。ならば衛兵をつけて……

 ガチャ

「ああ、さっぱりしました~作業してました?」

「え、ええはい。では僕も軽くシャワーを浴びてきます。ちょっと歩いて汗かいたので。」

 頭にタオルを巻いた部屋着姿のヒーたんをチラッと見た僕は、PCを閉じて寝室から部屋着をとってリビングに戻ると、リビングの真ん中で立っている彼女が僕に質問してきた。

「軽くってどれくらいですか?」

「え?」

 どういう意味の質問だ……?時間の話か?
 僕は髪の毛をかき上げながら答えた。

「そうですね、大体10分くらいだと思います……何故?」

 ブンブンと彼女が首を振り始めた……何だ?

「いやいやいや!別に……じゃあ待ってます……ちょっと待ちきれないなって思って……はは」

「うっ……」

 な、なるほど……そういう意味だったか。そ、それは可愛らしいと思ってしまった。きっと今の僕は顔が紅いだろうから、急いで風呂場へ向かうことにした。彼女にはもう勝てない。

 ……待ちきれないなんて、思ってくれたか。僕だってもう、待ちきれない。早く彼女を抱きしめたい。そうやってヒーたんと愛を感じたい。これが真実の愛なのか、じっくりゆっくりと関係を深めて確かめていきたい。こんな確かな想いを持てているのは生まれて初めてのことだった。

 速攻でシャワーを浴び終えた僕は急いで部屋着に着替えてリビングに戻り、濡れた髪のままリビングの真ん中でヨガのポーズをしていた彼女を後ろから抱きしめてしまった。

 僕の方をぐるりと向いてくれたヒイロは髪が濡れていることに気づくと、僕の腕の中にいながらも僕の肩にかかっているタオルで濡れた頭を拭いてくれた。何と心地のいい……。

 僕はついたまらず、彼女にキスをした。これが欲しかった。

 ヒイロにこう出来なかったこの数日間、僕は抜け殻だった。

「ふふ……今日は縛らないんですね。」

「ははっ……たまにはこうしてゆっくり二人で感じあうのもいいかと。」

「その強弱はやばい」

 ……小さい声で放たれた言葉、確かにそう聞こえた。僕のこれもいいと思ってくれたか。嬉しい気持ちで彼女にまたキスをした。
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