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初めましてシードロヴァ博士編
4 七つの孤島の隕石
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彼が秘書になってから一週間。彼、ジェーンは瞬く間に、研究開発部の他の職員に受け入れられ、推薦されて、めでたく部長になった。そして私の秘書業務を、完璧に遂行し始めたのだ。
ありがたい、ありがたいと感じていたのは最初の三日間で、その辺りから、彼の癖のある部分、いや彼の何か……面倒くさい部分が見えてきたのだ。人間誰しも面倒臭い部分がある。しかし彼の場合は特に、私に対してのものだった。もしかしたら、それはきっと私が、彼のボスであるからかもしれないが。
彼は私に細やかな報・連・相を求めてくる様になった。それが何よりも辛い。
昼休みは、いつもの崖っぷちに座り込んで、青空を眺めてる大好きな時間だけど、最近は、ほっと一息つけなくなってしまった。何故なら、ここに座っていると、手首に装着してある、腕時計型携帯電話ウォッフォン~ホログラムによる動画観覧もビデオ通話も出来ます~が、ピピンピピンと着信音を鳴らすからだ。出ずとも相手は決まっている……例の秘書だ。最初の方は、お昼休みに着信なんてどうしたのか、何かあったのでは?と思って、すぐに連絡に出ていた。
しかしそれは杞憂で、何も重要なことなど起きてはいないし、些細な謎めく質問……例えば「今どこに居ますか?」だとか、「その場所は危険です。」だとか、そういった要件ばかりで、重要なことは何一つない。そんなやりとりは友人や恋人にすればいいのにと、何度も喉から出そうになった言葉を、彼にこの職場に居て欲しいからという理由で、何度も飲み込んだ。
そのうちに、自然と私は電話に出る気が失せてしまった。でも放っては置けない、青空の下、ピロピロ鳴り続けるウォッフォンをそのままにして、平穏な気持ちになる事は不可能だと悟り、しぶしぶ応答ボタンを押した。ウォッフォンは装着しているだけで、ホログラムを自分の周りの好きな位置に動かすことが出来るので、私は指でスライドさせて、画面を視界の端に置いた。画面が黄緑色に変化して、その画面からスピーカーで彼の声が聞こえてきた。
『キリー、その場所は危険だと何度も申したはずです。高所から眺めたいのなら、研究所のロビーから海を眺めればいい。あなたはお気づきではないかも知れませんが、研究所は断崖絶壁の中に建てられていて、ロビーの窓の景色は最高で……』
ああ、この人、自身の得意分野である位置測定機能を使って、私の居場所を正確に把握してくるのだ。先週、早速彼に、位置測定機の改良研究を許可してしまった自分を、結構殴りたい。
ため息をつきつつ、ただ無感情で青空を見つめて、彼に返事をした。そう、彼を雇ったのは、私なのである。
「落ちやしませんよ……もう二年以上も調査部として体を鍛えていたんです。それに、もし落ちたとしても体術を習得していますから大丈夫ですって。」
『ふむ、そういった慢心が大きな事故につながるのです。あなたがいなくなれば、この研究所はどうなりますか?研究開発部の皆の話を聞けば、あなたがこの組織を引っ張っているから、業務に励むことが出来ていると、口を揃えております。あなたがいなくなれば、誰がこの組織を纏めるのでしょうか?』
「そ、そうなの?研究開発の皆が、そう思ってくれてるなら良かったけど……でも、もし私がいなくなったらシードロヴァ博士が、この組織を纏めればいいじゃないですか。」
私は草むらに寝っ転がりながら、雲ひとつない空を眺めた。ふわっと生暖かい草の匂いの風が、体の上を通っていった。そしてため息をついた。このため息も、さっきのため息も、ウォッフォンの向こう側の相手に聞こえているだろうに、どうしてこうも彼はめげずに話し続けるのだろうか。
『言ったはずです。私はもうトップには立ちたくないと。それにあなたが所長であるから、私は付き従っているのです。何かあっては困りますから早く帰ってきなさい。』
何故だろう。どうして私に命令をしてくるのだろう。いつから歯車は狂い出したのだろう。このお母さん的な発言をする絶世のイケメンに、何故彼女がいないのか、理解した気さえする。
『まだ後二十分程、休憩時間があります。あなたがいるその場所からこの研究所まで、十二分もあれば戻れます。』
確かに博士の言う通り、この場所から研究所までは、リゾート観光地でもあるユークアイランドの街を通り抜けて、海岸の崖上まで登って行けば、小さな物置のような建物がある。その中に入ると、断崖絶壁の洞窟の形を利用した作りである、研究所の入口へ繋がっているエスカレーターがあるが……それは壊れていて動かないので階段と化していて、時折、研究所に来た依頼者を困惑させている。立地のおかげで、晴れの日、ロビーの窓一面からは、キラキラと輝く青い海が一望出来るし(ジェーンが先程それを見ればいいと言っていたが)、夕方になれば、サンセットに染まる美しい風景を見ることが出来る。
因みに、ロビーの真ん中にある円形のカウンターに、いつもあの総務部の二人が作業をしていて、入って右の通路は訓練場や調査部のオフィスに繋がっていて、左の通路は研究開発部の博士たちの研究室が何部屋かある。そしてその奥に医務室があり、二つの通路の真ん中に私のオフィスのドアがある。彼の言った通り、オフィスには十二分もあれば、余裕で辿り着けるだろう。
しかし、この従業員が十人程しかいない、本当にこじんまりとした研究所だ。緊急を要して呼ばれることなど、流星群を見ることが出来ること以上に稀なことだし、何も休憩時間ぐらい……ちょっと散歩したっていいじゃないか。大体、研究所にいる時は、ずっと私のそばにいる。秘書業務の時は当たり前だが、それ以外の研究している時だって、私のそばにいるようになったのだ……私のオフィスで研究するから。
一体彼が何故、私のオフィスで研究の作業をするようになったのか。それは今、研究室は満室で、アドラー博士……彼女はまだ十四歳だが立派に大学院を卒業して、研究開発部でも活躍をしている……彼女の研究室に、比較的スペースが空いていたので、ジェーンは共同で、そこを使うようにしてもらった。しかし彼は、その研究室に機械や設計図などの物を置くだけで、基本的な研究は何故か、私のオフィスでするようになったのだ。最初は秘書の業務もあるから利便性を考えて許可していたが、今となってはその頃の自分のことも、結構殴りたい。
『無言ですか。まあ仕方ありませんか。いえ実は、折り入って話したいことがあります。』
「話したいこと?」
いつになく真剣な声に、思わず体を起こしてウォッフォンに耳を傾けた。
『ええ、なるべく二人で、直接お話ししたいのです。あなただけに。』
「な、何それ。」
最近たまにジェーンが私を揶揄うようになったのは、親しいと思い始めてくれたからなのか、それとも舐められているのか定かではない。また、今日のこの発言だって、私をからかっているに違いない。そんな、二人だけと限定してくるのも。
『あ、そう言う意味ではありませんよ。嫌ですね、色めき立っちゃって。ふふ。』
「うん。後十分したら帰るし、それで間に合うでしょ?話だったら業務中に聞くからまたね。」
『あ』ピッ
これくらいの扱いが彼にとっては丁度良いのかもしれない。青空を眺めて、酸素を胸いっぱいに吸い込んでから、まあ、五分前には帰ってやろうと思った。
お気に入りの崖っぷちから研究所のロビーに戻って来ると、カウンターのところでキハシ君とリン、それに研究開発部のアドラー博士、名をアリスという女の子が立っていた。アリスは医務室勤務の医師、ケイト先生の年の離れた妹で、小さい頃はよく、ケイト先生が忙しい時なんかにお世話をしていたこともあり、家族のように親しい。姉に似てかなりの才女で、十歳の頃には魔工学の論文を出して、それが帝都でも話題になっていた。
立派だ。この歳で、もう立派に研究所で勤務出来ているのも納得出来る。お姉さんとお揃いの、くりっとした灰色の目と、セミロングで癖っ毛の銀色の髪を持ち、背は小さい方で、性格は昔から天真爛漫で明るい部分と、ずる賢い部分の両方がある。
そして何やら三人は、アリスの手にするファイルを見て、興奮した様子で盛り上がっていた。何があったのだろうと近づいているうちに、アリスに気づかれて手招かれ、私は小走りで向かうと、彼女がファイルを私に見せてくれた。アリスが持っていたのは、新聞の記事のスクラップファイルだった。アリスが指差した先には『謎の巨大隕石 七つの孤島に落下する』と書かれていた。ちょっと前に発生した、隕石落下事件の記事だ。
「ああ、この事件ね。それがどうしたの?」
アリスはくねくねと、おねだりのような仕草をしながら答えた。
「ふふーん。ねえキリー、この隕石の正体を調べてみたいの!私は魔工学専門だから、この件に関しては専門外だけど、やけに気になっちゃって……依頼書を私が書くから、調査部を七つの孤島に派遣しようよ~お願い!」
私はアリスの集めた新聞の記事をよく見ることにした。三年前の事件で、未だにその謎は解明出来ていない。それもそのはず、隕石が衝突した痕跡はあったが、肝心の隕石がまるっと消えてしまっていたらしく、正体が掴めないままなのだ。孤島の調査を担当した、帝国研究所の結論もまだ出ていない。あの帝国研究所が、そんなにもたつくなんて珍しいことだし、この話題はニュースだけでなく、よく番組でも未解決事件として特集が組まれているのを見たことがあるから、この事件はよく知っている。
「アリス、これが気になるんだ。この事件を調べたいの?」
「はいはい!だって帝国研究所でも、正体が分からなかったんだよ?だったら 私たちで解明して、ソーライ研究所この帝国にあり!ってことを世に知らめようよ~!そうすれば依頼も増えて、利益だって増える。そしたら給料だって……フフッ。」
たまに、このアリスという子が恐ろしく感じる時がある。前の所長が消えた時も、彼女が大きく関わっていたというのを風の噂で聞いたことがあってから、私は彼女を刺激しないように努めている。まあ、帝国研究所が、この件を正式に保留にしたのなら、我々にも調査権が発生しているだろう。研究所の名声の為に、許可しようかなと考えながらファイルを見ていると、後ろから、例の声が聞こえてきた。
「何でしょうかそれは?」
ありがたい、ありがたいと感じていたのは最初の三日間で、その辺りから、彼の癖のある部分、いや彼の何か……面倒くさい部分が見えてきたのだ。人間誰しも面倒臭い部分がある。しかし彼の場合は特に、私に対してのものだった。もしかしたら、それはきっと私が、彼のボスであるからかもしれないが。
彼は私に細やかな報・連・相を求めてくる様になった。それが何よりも辛い。
昼休みは、いつもの崖っぷちに座り込んで、青空を眺めてる大好きな時間だけど、最近は、ほっと一息つけなくなってしまった。何故なら、ここに座っていると、手首に装着してある、腕時計型携帯電話ウォッフォン~ホログラムによる動画観覧もビデオ通話も出来ます~が、ピピンピピンと着信音を鳴らすからだ。出ずとも相手は決まっている……例の秘書だ。最初の方は、お昼休みに着信なんてどうしたのか、何かあったのでは?と思って、すぐに連絡に出ていた。
しかしそれは杞憂で、何も重要なことなど起きてはいないし、些細な謎めく質問……例えば「今どこに居ますか?」だとか、「その場所は危険です。」だとか、そういった要件ばかりで、重要なことは何一つない。そんなやりとりは友人や恋人にすればいいのにと、何度も喉から出そうになった言葉を、彼にこの職場に居て欲しいからという理由で、何度も飲み込んだ。
そのうちに、自然と私は電話に出る気が失せてしまった。でも放っては置けない、青空の下、ピロピロ鳴り続けるウォッフォンをそのままにして、平穏な気持ちになる事は不可能だと悟り、しぶしぶ応答ボタンを押した。ウォッフォンは装着しているだけで、ホログラムを自分の周りの好きな位置に動かすことが出来るので、私は指でスライドさせて、画面を視界の端に置いた。画面が黄緑色に変化して、その画面からスピーカーで彼の声が聞こえてきた。
『キリー、その場所は危険だと何度も申したはずです。高所から眺めたいのなら、研究所のロビーから海を眺めればいい。あなたはお気づきではないかも知れませんが、研究所は断崖絶壁の中に建てられていて、ロビーの窓の景色は最高で……』
ああ、この人、自身の得意分野である位置測定機能を使って、私の居場所を正確に把握してくるのだ。先週、早速彼に、位置測定機の改良研究を許可してしまった自分を、結構殴りたい。
ため息をつきつつ、ただ無感情で青空を見つめて、彼に返事をした。そう、彼を雇ったのは、私なのである。
「落ちやしませんよ……もう二年以上も調査部として体を鍛えていたんです。それに、もし落ちたとしても体術を習得していますから大丈夫ですって。」
『ふむ、そういった慢心が大きな事故につながるのです。あなたがいなくなれば、この研究所はどうなりますか?研究開発部の皆の話を聞けば、あなたがこの組織を引っ張っているから、業務に励むことが出来ていると、口を揃えております。あなたがいなくなれば、誰がこの組織を纏めるのでしょうか?』
「そ、そうなの?研究開発の皆が、そう思ってくれてるなら良かったけど……でも、もし私がいなくなったらシードロヴァ博士が、この組織を纏めればいいじゃないですか。」
私は草むらに寝っ転がりながら、雲ひとつない空を眺めた。ふわっと生暖かい草の匂いの風が、体の上を通っていった。そしてため息をついた。このため息も、さっきのため息も、ウォッフォンの向こう側の相手に聞こえているだろうに、どうしてこうも彼はめげずに話し続けるのだろうか。
『言ったはずです。私はもうトップには立ちたくないと。それにあなたが所長であるから、私は付き従っているのです。何かあっては困りますから早く帰ってきなさい。』
何故だろう。どうして私に命令をしてくるのだろう。いつから歯車は狂い出したのだろう。このお母さん的な発言をする絶世のイケメンに、何故彼女がいないのか、理解した気さえする。
『まだ後二十分程、休憩時間があります。あなたがいるその場所からこの研究所まで、十二分もあれば戻れます。』
確かに博士の言う通り、この場所から研究所までは、リゾート観光地でもあるユークアイランドの街を通り抜けて、海岸の崖上まで登って行けば、小さな物置のような建物がある。その中に入ると、断崖絶壁の洞窟の形を利用した作りである、研究所の入口へ繋がっているエスカレーターがあるが……それは壊れていて動かないので階段と化していて、時折、研究所に来た依頼者を困惑させている。立地のおかげで、晴れの日、ロビーの窓一面からは、キラキラと輝く青い海が一望出来るし(ジェーンが先程それを見ればいいと言っていたが)、夕方になれば、サンセットに染まる美しい風景を見ることが出来る。
因みに、ロビーの真ん中にある円形のカウンターに、いつもあの総務部の二人が作業をしていて、入って右の通路は訓練場や調査部のオフィスに繋がっていて、左の通路は研究開発部の博士たちの研究室が何部屋かある。そしてその奥に医務室があり、二つの通路の真ん中に私のオフィスのドアがある。彼の言った通り、オフィスには十二分もあれば、余裕で辿り着けるだろう。
しかし、この従業員が十人程しかいない、本当にこじんまりとした研究所だ。緊急を要して呼ばれることなど、流星群を見ることが出来ること以上に稀なことだし、何も休憩時間ぐらい……ちょっと散歩したっていいじゃないか。大体、研究所にいる時は、ずっと私のそばにいる。秘書業務の時は当たり前だが、それ以外の研究している時だって、私のそばにいるようになったのだ……私のオフィスで研究するから。
一体彼が何故、私のオフィスで研究の作業をするようになったのか。それは今、研究室は満室で、アドラー博士……彼女はまだ十四歳だが立派に大学院を卒業して、研究開発部でも活躍をしている……彼女の研究室に、比較的スペースが空いていたので、ジェーンは共同で、そこを使うようにしてもらった。しかし彼は、その研究室に機械や設計図などの物を置くだけで、基本的な研究は何故か、私のオフィスでするようになったのだ。最初は秘書の業務もあるから利便性を考えて許可していたが、今となってはその頃の自分のことも、結構殴りたい。
『無言ですか。まあ仕方ありませんか。いえ実は、折り入って話したいことがあります。』
「話したいこと?」
いつになく真剣な声に、思わず体を起こしてウォッフォンに耳を傾けた。
『ええ、なるべく二人で、直接お話ししたいのです。あなただけに。』
「な、何それ。」
最近たまにジェーンが私を揶揄うようになったのは、親しいと思い始めてくれたからなのか、それとも舐められているのか定かではない。また、今日のこの発言だって、私をからかっているに違いない。そんな、二人だけと限定してくるのも。
『あ、そう言う意味ではありませんよ。嫌ですね、色めき立っちゃって。ふふ。』
「うん。後十分したら帰るし、それで間に合うでしょ?話だったら業務中に聞くからまたね。」
『あ』ピッ
これくらいの扱いが彼にとっては丁度良いのかもしれない。青空を眺めて、酸素を胸いっぱいに吸い込んでから、まあ、五分前には帰ってやろうと思った。
お気に入りの崖っぷちから研究所のロビーに戻って来ると、カウンターのところでキハシ君とリン、それに研究開発部のアドラー博士、名をアリスという女の子が立っていた。アリスは医務室勤務の医師、ケイト先生の年の離れた妹で、小さい頃はよく、ケイト先生が忙しい時なんかにお世話をしていたこともあり、家族のように親しい。姉に似てかなりの才女で、十歳の頃には魔工学の論文を出して、それが帝都でも話題になっていた。
立派だ。この歳で、もう立派に研究所で勤務出来ているのも納得出来る。お姉さんとお揃いの、くりっとした灰色の目と、セミロングで癖っ毛の銀色の髪を持ち、背は小さい方で、性格は昔から天真爛漫で明るい部分と、ずる賢い部分の両方がある。
そして何やら三人は、アリスの手にするファイルを見て、興奮した様子で盛り上がっていた。何があったのだろうと近づいているうちに、アリスに気づかれて手招かれ、私は小走りで向かうと、彼女がファイルを私に見せてくれた。アリスが持っていたのは、新聞の記事のスクラップファイルだった。アリスが指差した先には『謎の巨大隕石 七つの孤島に落下する』と書かれていた。ちょっと前に発生した、隕石落下事件の記事だ。
「ああ、この事件ね。それがどうしたの?」
アリスはくねくねと、おねだりのような仕草をしながら答えた。
「ふふーん。ねえキリー、この隕石の正体を調べてみたいの!私は魔工学専門だから、この件に関しては専門外だけど、やけに気になっちゃって……依頼書を私が書くから、調査部を七つの孤島に派遣しようよ~お願い!」
私はアリスの集めた新聞の記事をよく見ることにした。三年前の事件で、未だにその謎は解明出来ていない。それもそのはず、隕石が衝突した痕跡はあったが、肝心の隕石がまるっと消えてしまっていたらしく、正体が掴めないままなのだ。孤島の調査を担当した、帝国研究所の結論もまだ出ていない。あの帝国研究所が、そんなにもたつくなんて珍しいことだし、この話題はニュースだけでなく、よく番組でも未解決事件として特集が組まれているのを見たことがあるから、この事件はよく知っている。
「アリス、これが気になるんだ。この事件を調べたいの?」
「はいはい!だって帝国研究所でも、正体が分からなかったんだよ?だったら 私たちで解明して、ソーライ研究所この帝国にあり!ってことを世に知らめようよ~!そうすれば依頼も増えて、利益だって増える。そしたら給料だって……フフッ。」
たまに、このアリスという子が恐ろしく感じる時がある。前の所長が消えた時も、彼女が大きく関わっていたというのを風の噂で聞いたことがあってから、私は彼女を刺激しないように努めている。まあ、帝国研究所が、この件を正式に保留にしたのなら、我々にも調査権が発生しているだろう。研究所の名声の為に、許可しようかなと考えながらファイルを見ていると、後ろから、例の声が聞こえてきた。
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