LOZ:彼は無感情で理性的だけど不器用な愛をくれる

meishino

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誰も止められない愛情狂編

213 雲と雷

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「ますます興味が湧きました。この分野において、あなたと共に知識を深めていきたい、どんなことにも挑戦したい。特に、一番最後の画像が気に入りました。あれはあなたも、出来ますか?」

「え?え?……んな!」

 げほっと私はむせてしまった。ジェーンが慌てて、私の背中をさすってくれた。なんでこうなる、なんでこうなるんだ……!誰かこいつを解雇してくれ……ああ、その権限持ってるの私だった。辛い……!

「ジェーン、あれはおかしいよ!あんなこと、痛いに決まってる!」

「私は人体の仕組みには詳しい。あれは意味があって、あのような姿勢なのですよ。あなたはそれを知らないまま、私に行ってほしい。私がどうなるか、本当に痛がるのか、知りたいでしょう?」

「……ああされたいの?」

 ジェーンが妖美に笑いながら、眼鏡をまたテーブルに置いた。

「したいですし、されたいです。いけませんか?最初から、両方します。」

「あ、ああ!」私は慌てて立ち上がった。「そしてその最初っていうのは、絶対に今日じゃないからね!言っとくけどね!」

「おやおや、まだ虚勢を張るおつもりか?」と、ジェーンも立ち上がった。私は本棚の方へと逃げた。ジェーンは思案顔になり、それから何かを閃いたのか、髪を解きながら言った。

「そうですね、ではキルディア、私を逮捕してください。元騎士であるあなたを誘惑している私は、とてつもない犯罪者でしょう?」

「ええ、なんで!?」困惑した。

「だって今日、私の研究室で、あなたが私を取り押さえた時、私はなんとも言えない気持ちになりました。もう一度やって頂きたいのです。」

 私と同じ気持ちになってたのかよ……うえええん。もう泣きたい。そう思って震えて立っていると、私に急接近したジェーンが、いきなり私の頬を軽く、ベシッと叩いてきた。

「痛っ、何するの!?急にビンタしないでよ……!」

 するとジェーンが小走りでピアノの方に向かいながら、ふざけたことを言った。

「ほらほら、私が逃げてしまいますよ?傷害罪と、もしあなたが騎士だったら、公務執行妨害に該当する犯人が、逃げてしまいますよ?いいのでしょうか?ふふっ。」

 おのれえええ、確かにそうされると放って置けない。こうしてやる!

 私はジェーンを追い掛けて、彼の手首を掴んで、犯人確保の姿勢で彼をピアノに押さえつけた。するとあろうことか、あの時の体勢になってしまった。ぬかった!堪えろ!キルディア!

「貴様ぁぁぁ……謀ったな!」

 私は呻いた。ジェーンはピアノに押し付けられて、潰された顔のまま、私を見て答えた。

「あなたの動かし方を、段々と把握出来てきました。これ程までに、私の脳みそが便利だと思ったことはありませんね、ふふっ。」

「……。」

 まじで、手強い。そしてこれが、他の人に向かないようにしたい。だけど、ああ、だけど、ああ!私は揺れた。知ってか知らずか、ジェーンは私に聞いた。

「キルディア、私は一体、あなたにとって、どのような関係ですか?」

「……私の考えだと、親友、ではないんだけれど、友情を超えた、その先にあるパラダイスに一歩踏み入れてしまって、更にはそのせいで離れ離れになれなくなった、何か、何かこう……例えるなら、雲と雷。」

 なんでもいいから答えた。私の答えに幻滅したら、きっと彼も諦めるはず。だからありきたりのロマンチックワード、太陽と月、と言うのをやめて、雲と雷と言った。

 しかしジェーンは「ああっ……」と変なため息を漏らした。ビビった私は彼から離れて、後退りした。ジェーンは乱れた髪型、パジャマのまま、獲物を発見したネコ科の猛獣のような目で、私を見ている。

「最後に聞きたい……キルディア。どちらが雲で、どちらが雷ですか?この答えによっては、私はもう、我慢出来ません!」

 ええ!?なんでそうなる!なんで、その例えがツボに入ってるんだ!彼はハアハアと荒い呼吸で、私の答えを待っている。二択だ、二択は得意ははずだ。多分!

「んおおお!……私の考えでは……ジェーンが雲で、私が雷!」

「キルディア。」

 な、なんだ?何が起こる?終わった?それでいいけど、終わった?
 そしてジェーンは、静かな声で言った。

「あなたは最高です。」

 だから何故なのか。なんで!?と聞こうとしたが、ジェーンがものすごい勢いで突撃してきた。そして私のことを抱っこして、持ち上げたのだ。

「ど、どこにこんな力が!?」

「お忘れか?私は男性です!」

 そして私を抱っこしたまま、寝室のドアを開けた彼は、私のことをベッドにおろして、私の上に乗っかってきた。ま、ま、ま!?

「待って、何してる!?あまり強引に進めるなら、抵抗するぞ!」

「あなたの為に、この身体をとっておきました。それがそんなに悪いことですか!?」

 隕石の衝突のような、衝撃を受けた言葉だった。脳に直撃を喰らった私は、歯を食いしばりながら、静かに目を閉じた。そんな、全然色っぽくない顔なのに、ジェーンは私にキスをしてきた。

 これは世界の終わり。いや、始まりなのだ。胸の中で、その鼓動の奥底で、何か凶暴なものが、激しく私の意識を揺さぶっている。

 二人の息が荒く、キスは激しい。その状態の中で、ジェーンが言った。

「ねえ、私と言う雲の中で、激しく擦れて、あなたは堪えきれずに、地表を焦がす。なんて、魅惑的な言葉でしょう!ああ、やはりあなたは、運命の人です!」

「そこまで考えてな……んんんん!」

 ジェーンが私の前歯を舐めている。やめろ、本当にやめてください。私は食いしばった。

「ちょっと、歯を開けてください。」

「ういういうい!うーいいあ!(無理無理無理!殺す気か!)」

「……仕方ありません、ならば視界を攻めます。」

 するとジェーンは私の上に跨ったまま、艶っぽい視線を私に向けたまま、パジャマのボタンを一つ、また一つ、と取り始めたのだ。ぬああああ!

「ジェーン、降参した、降参だ……!」

「ふふ、降参したのなら、罰ゲームです。これからですよ?」

「でもやり方知ってるの……?」

「……身体の仕組みは理解しています。自己流でいきます。」

 だめだ、だめだ!抗え!キルディアお前は騎士だ!ルミネラの……!と、私は絶句した。ジェーンが上のパジャマを、さらりと脱いでしまった。白く細い肌、少し割れた腹筋、桃色のてんてん……!私は小刻みに首を振った。

「だ、だめ……。」

 ジェーンは私の肩を押して、また上に覆いかぶさって来た。そして耳元で言った。

「キルディア、大好きです。あなたのことを、二千年前から愛していました。ふふ。」

 ああ、本当なら「二千年前、確かにね」って笑って過ごすところだが、苦しい。苦しくて熱い。こんな気持ちは初めてだった。私から、自然に言葉が溢れた。

「ジェーン……私も、大好きだよ。いつもいつも、あなたのことばかり、考えている。」

「ああ、キルディア!」

 ジェーンが私の事を抱きしめた。私も彼の背中に腕を回して、ギュッと力を入れた。何かが、当たっている。太腿に当たっている。

「な、何か当たってる!太腿に!」

「ああ、これはあなたの太ももでしたか。すみません、もう下着では、面積が足りませんでした。」

 ……このまま、突き放すのは、どうも可哀想だ。少しぐらいなら、流されてみようか。そう思った時に、私のウォッフォンにメールが届いた。

 助け舟が来た!すぐに私はそれを確認しようとしたが、ジェーンは私の腕を掴んで、阻止してきた。

「何をするの!やめて!」

「今は放っておきなさい!私だけに構う時間です!」

「だってほら、あ!クラースさんだ!クラースさんからメールがきてる!」

「え!?」

 ジェーンが何故か急いで自分のウォッフォンを確認し始めた隙に、私はウォッフォンを開いて、メール画面を出した。タイトルは無題だった。内容は、

『いいか、男たるもの、力強くいけ。どうせ愛の言葉とか囁き合っているんだろ?そんなのは最初の十分ぐらいにして、もう強引に接吻しろ!俺たちは生物だ!生物と生物の間に、御託はいらない!まあ、俺からはそう言う事だ。KRAUSE ELEANOR ASHFIELD』

 ……???

「なんかすごい文章が、クラースさんから来た。なんか、急にアドバイスが来たけど、監視されてるのかな。あと署名が、めちゃくちゃでかい。全部大文字だよ、ふふっ!」

「ええ!?あの男、宛先を間違……!?いや、どれどれ。」と、ジェーンがメールを覗いてきた。そしてジェーンは、力無い様子で、呟いた。「何だか、彼の文章は野生的すぎて、気分が下がりました。今日はもう、寝ましょう。キルディア。」

「あ、ああ……。」

 私はジェーンと一緒に、大人しく寝る準備をし始めた。クラースさん、本当にグッジョブ!さすがクラースさんだ!私の頼りにしているクラースさんだ!

 ジェーンは静かにパジャマを着て、ベッドに入った。私も髪の毛を解いて、ゴムをサイドテーブルに置いた。それをジェーンが見ていた。

「あなたが髪の毛を解くのを、初めて見ました……いつも、風呂あがりでさえも、あなたは髪を結んでいますし、このベッドで、こうして同時に寝るのは初めてですし、寝ているあなたを見ても、上の方を結んでおりますから。」

「うん、一度横になってから、いつも上の方を結んでる。どうして?」

 私は布団に入った。するとジェーンがくっついて来た。

「ゴム、結ばないでください。あと、その姿、よく見たい。」

「だめ、今日はもう終わり。」

「……。」

 私は予定通りに、髪の毛を上の方で結んだ。そして自動で点灯していた寝室のランプを消した。開きっぱなしのドアから、リビングのピンクの照明が漏れて、寝室もほんのり桃色だ。今から消しに行く気力もないので、そのまま寝ることにした。

 ジェーンが頭を私の肩に寄せて、こう言った。

「因みに、これは毎晩行われます。おやすみなさい。」

「もうダメだ、ちょっとリンと暮らしてくる。」

「却下します。おやすみなさい。」

「……おやすみ。」

 私は目を閉じた。毎晩はキツいよ……そう思いながら眠ってしまった。温かい、布団だった。
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