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116 最愛の炎
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ピンク缶の山から出ようとした時に、イオリのノアフォンが鳴った。イオリはスピーカーで出た。
『言われた通り、ペンキ倉庫に来たけど。』
「サラか……」
それだけ呟いて、イオリは通話を切った。あとは直接探そうと思ったのだろう、彼がドラム缶の山から顔を覗かせて、彼女の姿を探した。
私もひょいと飛び出して、サラを探した。ブルーの缶、オレンジの缶、グリーンの缶……その隙間を通り過ぎると、広いスペースがあった。
真ん中にポツンと、オレンジのフォークリフトが置いてあった。ここの授業員はそれを使って普段重たいペンキを運んでるんだと思った。
そのフォークリフトの影に、人影があった。てか、白い帽子が結構目立っている。よくあの状態でここまで来たもんだ……。
私は振り返った。グリーンのペンキ缶の山のところに、イオリとレイヴがしゃがんでいて、イオリと目が合った。
「サラがいたよ。」
「本当か、」と、彼が立ち上がろうとしたので、私は首を振って、彼を止めた。そして彼に言った。
「本当に本人なのか、話しかけてくる。」
「俺が話しかける。」
「いい。話しかけてくる。」
私はスタスタと広いスペースを歩いて、フォークリフトに近づいた。私の足音を聞いたのか、彼女が車の影から顔を覗かせて、私と目が合うと、微笑みながら、飛び出してきた。
「アリシア!」
私の名前を呼んで、両手を広げて、彼女がこちらに向かって走ってきた。笑顔だけど、あれからとても泣いたのか、アイライナーが崩れて目が黒く滲んでいた。
ちょっと怖い。でも良かった、敵意はなさそうだった。でも何故か、後ろからこちらに向かってイオリの革靴の音が近づいていることに気づいた。しかも彼は、走っている。
私は彼女に聞いた。
「銃は捨てた?そうじゃないと合流できないよ。」
「うん、捨てたよ、今。ほらね。」
彼女は帽子を放り投げた。帽子には彼女のいつものピンクの銃が入っていて、一緒に地面に落ちた。
ならば安心だ。私はサラのことを捕まえようと近づいた。サラは我々と合流できて安心したのか、涙を流した。
彼女が私から離れると、両手を胸に当てて、微笑みながら私を見た。涙をポロポロとこぼして。
「アリシア、私ね、幸せだった。バリーといて、でもイオリが本当は好きなんだって、いつも思ってた。」
「そ、そっか。でも婚約……そっか。」
もうバリーはいないから、色々と考えることはあるよね。私は頭をかいた。サラが胸から手を離した。しかし彼女の手には、胸元の襟から抜き出した別の銃が握られていた。
油断した。サラは私を撃った。瞬間的に、銃口から出た弾は、銀色に光っているのを見た。これはもうだめだ。
私は目をギュッと瞑って、床に倒れた。でも私はまだ、意識があった。しかも、何故か、温かい。床に倒れた感覚も、何かに支えられて、痛くなかった。
目を開けると、イオリが私の前で倒れていた。眉間に力を入れて、苦しそうに息をしている。ああ、私は彼が私の盾になってくれたことに今気がついた。イオリが私を庇い、私を抱きしめたまま、床に倒れた。
「イオリ!イオリ!」
私は叫んだ。彼の胸から、どくどくと鮮血が溢れている。近くの床には、彼が持っていたスナイパーが落ちていた。
「おい!?おいっ!兄ちゃん!」レイヴが叫んだ。彼の方から、銃を構えた時になる、かちゃっという音がした。「サラ!お前、よくも兄貴を撃ったな!」
「私じゃない!私はイオリを撃ちたかったんじゃない……あああああっ!」
サラを見ると、涙を流し震えながら、レイヴに銃を構えていた。そんなことよりも、私はイオリの傷を手で押さえた。彼が、咳き込み、掠れた声で言った。
「ぐっ……アリシア、俺は、平気だ。」
「平気なわけない!」
私はスナイパーを持って、サラを撃とうと思った。しかしイオリがギュッと私を抱きしめて、離さなかった。
「イオリ離して!」
「だめだ!……俺の、腕の中から、出るな!俺はいずれ回復する……でも、お前は、この銀を、体の中に、入れてはいけないっ……ぐっ、があっ!」
イオリが吐血した。まずい。でも彼は私を抱きしめて、離そうとしない。力が、あり得ないぐらいに強い。
「だめ、イオリ、私、どうしよう!」
「絶対に、ここから出るな。お前が盾になろうと、するなら……俺がまた、お前の間に立つ……俺が、守るから、俺が……。」
彼の目線が定まらなくなってきた。私は涙を流した。
「イオリ、だめ、イオリ!」
「……俺は、やはり、長くない、運命だった。知っていたんだ……ヤギが、そう思っていた……彼は、俺が終幕へ向かっているのを、知っていたから……俺をお前と、リンクさせなかった……。」
「なんで!?なんで!!なんでそれも黙ってたの!?どうしていつも黙っているの!」
「言えば……アリシア、消えるまで……幸せに、過ごせないだろう?……でも、俺の方が、終わるのが早いのは、予想外……だっ……た……。」
彼が急に、激しく呼吸をし始めた。私は彼の背中を摩った。意味無いのに、ただ摩った。彼は震える手で私を更に抱き寄せて、私の耳元で、振り絞るような声で、「ずっと、愛していた。」と言った。
そして一気に、彼の力が抜けた。彼の体はまだ温かい。彼から流れる血も、まだ温かい。
でも彼の夜空の瞳は、もう動かなかった。
私は叫んだ。倉庫内に、私の叫びがずっと響いた。
『言われた通り、ペンキ倉庫に来たけど。』
「サラか……」
それだけ呟いて、イオリは通話を切った。あとは直接探そうと思ったのだろう、彼がドラム缶の山から顔を覗かせて、彼女の姿を探した。
私もひょいと飛び出して、サラを探した。ブルーの缶、オレンジの缶、グリーンの缶……その隙間を通り過ぎると、広いスペースがあった。
真ん中にポツンと、オレンジのフォークリフトが置いてあった。ここの授業員はそれを使って普段重たいペンキを運んでるんだと思った。
そのフォークリフトの影に、人影があった。てか、白い帽子が結構目立っている。よくあの状態でここまで来たもんだ……。
私は振り返った。グリーンのペンキ缶の山のところに、イオリとレイヴがしゃがんでいて、イオリと目が合った。
「サラがいたよ。」
「本当か、」と、彼が立ち上がろうとしたので、私は首を振って、彼を止めた。そして彼に言った。
「本当に本人なのか、話しかけてくる。」
「俺が話しかける。」
「いい。話しかけてくる。」
私はスタスタと広いスペースを歩いて、フォークリフトに近づいた。私の足音を聞いたのか、彼女が車の影から顔を覗かせて、私と目が合うと、微笑みながら、飛び出してきた。
「アリシア!」
私の名前を呼んで、両手を広げて、彼女がこちらに向かって走ってきた。笑顔だけど、あれからとても泣いたのか、アイライナーが崩れて目が黒く滲んでいた。
ちょっと怖い。でも良かった、敵意はなさそうだった。でも何故か、後ろからこちらに向かってイオリの革靴の音が近づいていることに気づいた。しかも彼は、走っている。
私は彼女に聞いた。
「銃は捨てた?そうじゃないと合流できないよ。」
「うん、捨てたよ、今。ほらね。」
彼女は帽子を放り投げた。帽子には彼女のいつものピンクの銃が入っていて、一緒に地面に落ちた。
ならば安心だ。私はサラのことを捕まえようと近づいた。サラは我々と合流できて安心したのか、涙を流した。
彼女が私から離れると、両手を胸に当てて、微笑みながら私を見た。涙をポロポロとこぼして。
「アリシア、私ね、幸せだった。バリーといて、でもイオリが本当は好きなんだって、いつも思ってた。」
「そ、そっか。でも婚約……そっか。」
もうバリーはいないから、色々と考えることはあるよね。私は頭をかいた。サラが胸から手を離した。しかし彼女の手には、胸元の襟から抜き出した別の銃が握られていた。
油断した。サラは私を撃った。瞬間的に、銃口から出た弾は、銀色に光っているのを見た。これはもうだめだ。
私は目をギュッと瞑って、床に倒れた。でも私はまだ、意識があった。しかも、何故か、温かい。床に倒れた感覚も、何かに支えられて、痛くなかった。
目を開けると、イオリが私の前で倒れていた。眉間に力を入れて、苦しそうに息をしている。ああ、私は彼が私の盾になってくれたことに今気がついた。イオリが私を庇い、私を抱きしめたまま、床に倒れた。
「イオリ!イオリ!」
私は叫んだ。彼の胸から、どくどくと鮮血が溢れている。近くの床には、彼が持っていたスナイパーが落ちていた。
「おい!?おいっ!兄ちゃん!」レイヴが叫んだ。彼の方から、銃を構えた時になる、かちゃっという音がした。「サラ!お前、よくも兄貴を撃ったな!」
「私じゃない!私はイオリを撃ちたかったんじゃない……あああああっ!」
サラを見ると、涙を流し震えながら、レイヴに銃を構えていた。そんなことよりも、私はイオリの傷を手で押さえた。彼が、咳き込み、掠れた声で言った。
「ぐっ……アリシア、俺は、平気だ。」
「平気なわけない!」
私はスナイパーを持って、サラを撃とうと思った。しかしイオリがギュッと私を抱きしめて、離さなかった。
「イオリ離して!」
「だめだ!……俺の、腕の中から、出るな!俺はいずれ回復する……でも、お前は、この銀を、体の中に、入れてはいけないっ……ぐっ、があっ!」
イオリが吐血した。まずい。でも彼は私を抱きしめて、離そうとしない。力が、あり得ないぐらいに強い。
「だめ、イオリ、私、どうしよう!」
「絶対に、ここから出るな。お前が盾になろうと、するなら……俺がまた、お前の間に立つ……俺が、守るから、俺が……。」
彼の目線が定まらなくなってきた。私は涙を流した。
「イオリ、だめ、イオリ!」
「……俺は、やはり、長くない、運命だった。知っていたんだ……ヤギが、そう思っていた……彼は、俺が終幕へ向かっているのを、知っていたから……俺をお前と、リンクさせなかった……。」
「なんで!?なんで!!なんでそれも黙ってたの!?どうしていつも黙っているの!」
「言えば……アリシア、消えるまで……幸せに、過ごせないだろう?……でも、俺の方が、終わるのが早いのは、予想外……だっ……た……。」
彼が急に、激しく呼吸をし始めた。私は彼の背中を摩った。意味無いのに、ただ摩った。彼は震える手で私を更に抱き寄せて、私の耳元で、振り絞るような声で、「ずっと、愛していた。」と言った。
そして一気に、彼の力が抜けた。彼の体はまだ温かい。彼から流れる血も、まだ温かい。
でも彼の夜空の瞳は、もう動かなかった。
私は叫んだ。倉庫内に、私の叫びがずっと響いた。
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