9 / 57
9.月璃の決意
しおりを挟む
「ーーセラフィナ様!いい加減にしてください!」
俺がロウバイ宮殿に来て2週間がたった頃、カメリアが肩をいからせて宮殿に乗り込んできた。
「ーーいかがされましたか?」
もちろん対応するのはクラメンだ。俺は話せない設定だもんね。
「侍女殿、どうなっているのです?穢れが終わったと思ったら流行り病だなんて!ーー陛下はセラフィナ様の元に来ることを強くお望みなのですよ!」
ーー何でなんだよ……。
カメリアの発言に頭を抱えたくなってくる。勘弁してくれーー、男だとバレたら即斬られるのか?痛ったいんだろうなーー……。
「聞いておられますか!!」
うん、すごい怒られてるよ、俺。
「………申し訳ございません……。わたくしの体調管理がなっておらず、セラフィナ様のお身体をくずしてしまいましたーー」
「ニバリスのほうが、こちらより寒いはず。寒さには慣れておいででしょう?」
「ーーはい」
うん、セラフィナは冬に強かったかもしれないけど、俺はそこそこだよ。
「そもそも、なぜロウバイ宮殿にはあなたひとりしかいないのですか?」
「ーーー………」
口をつぐんだクラメンをカメリアが上から睨んでいる。クラメンも背が高いほうなのに、彼女はそれよりも高いーー。いや、俺が低いんだろう、外国の女性はみんな背が高いもんな。
「侍女殿?」
カメリアの詰問には答えず、クラメンは黙ってる。けど俺にはわかるよ、ーー秘密を知るヤツが少ないほうがいいからだろう?
「ーー侍女が足りないのなら、わたくしから陛下に申し上げておきます」
「それには及びません。ニバリスに要請しておりますので」
「ーーそうですか……。セラフィナ様、今晩は大丈夫ですか?」
美人に睨まれて俺は心が痛いーー、けれど承諾するわけにはいかないんだ!
『ケホッ、ゴボッ、ケホケホッーー』
声もださず、我ながら上手い咳払いだ。これは演劇部にはいるべきだったかな?
「ーー難しいのですね」
半ギレのカメリアの頬がひくひくしてる。超お怒りみたいだね。だけどさ、だけど俺だって必死なんだよ!
「失礼いたします!」
ドカドカと、靴をわざとらしく鳴らしたカメリアが、俺の顔を思いっきり睨んできた。ーー怖いんだけど、どうにもならないしさーー……。
「ーーあの……。陛下はなぜそこまでーー……」
言いかけて、クラメンは口を閉ざしてしまった。ドアの前で動きを止めたカメリアが、バッとこっちを向いたからだ。そのまま、つり上がった迫力満点の目をして、彼女は俺に詰め寄ってきた。
「ーー陛下におかれましては、やっとお好みの方があらわれたのです。いままでどこにも通われたことがなかったのに!」
「!?」
拳をかためて力説するカメリアを、クラメンが青ざめた顔で見てるよ。俺は意味がわからなくて、首をかしげそうになったけどさ。
「それをセラフィナ様は、何度断ったと思っているのです!」
「………」
ーーどこにも通われたことがない?嫁のとこへ?ーーだからなんだ?行きたいところに行けばいいじゃん。あんな美人の嫁候補が3人もいるのに、もったいない話だよなーー。
「ーーその咳がおさまれば、わかっていますね!」
「………」
「侍女殿!」
「ーーーはい」
「ではーーー!!」
ガチャッ!バタアアアーーーンッ!
ドアを乱暴に開け締めして、カメリアが去って行った。音の余韻が残る部屋で、俺達はただ呆然とするしかない。
「ーーどうすれば……」
いつもしゃんとしているクラメンが、胸にかけられたペンダントを握りしめる。その悲壮な顔を見て、俺は心を決めた。
「ーーよし、逃げよう」
「え?」
「どっちみち殺されるんだから、ちょっとは抵抗しようぜ。ほら、途中で本物の姫様とばったり出会うかもしれないじゃん」
そしたらバトンタッチだよーー、と暗くなる気持ちをなんとか励まして、俺はクラメンに告げる。
「ーー大聖堂の開放日、わかるーー?」
「ーーはい。明後日にございます……」
「よし、国民の皆さんにまぎれて外にでよう」
「ーー見つかれば、ーー殺されますよ?」
「どのみちここにいてもバレるさ。だって皇帝はもう怪しんでいるから俺のところに来たいんだよ」
俺が確信を込めて言うと、クラメンの目は大きく見開かれた。
「あっ……」
「だろ?」
そう、おかしいと思ってるから確かめたいんだろうな。
「大聖堂まで行くのは問題ない?」
「はい、妃候補も参拝できます」
「ーーそこで変装して外にでたいけど、着替える場所があるかな……?」
「それでしたらーー、明日、空いている使用人部屋を確認しておきますーー」
覚悟を決めたクラメンが、俺に提案する。
「ーーじゃあ、それでいこう」
俺がロウバイ宮殿に来て2週間がたった頃、カメリアが肩をいからせて宮殿に乗り込んできた。
「ーーいかがされましたか?」
もちろん対応するのはクラメンだ。俺は話せない設定だもんね。
「侍女殿、どうなっているのです?穢れが終わったと思ったら流行り病だなんて!ーー陛下はセラフィナ様の元に来ることを強くお望みなのですよ!」
ーー何でなんだよ……。
カメリアの発言に頭を抱えたくなってくる。勘弁してくれーー、男だとバレたら即斬られるのか?痛ったいんだろうなーー……。
「聞いておられますか!!」
うん、すごい怒られてるよ、俺。
「………申し訳ございません……。わたくしの体調管理がなっておらず、セラフィナ様のお身体をくずしてしまいましたーー」
「ニバリスのほうが、こちらより寒いはず。寒さには慣れておいででしょう?」
「ーーはい」
うん、セラフィナは冬に強かったかもしれないけど、俺はそこそこだよ。
「そもそも、なぜロウバイ宮殿にはあなたひとりしかいないのですか?」
「ーーー………」
口をつぐんだクラメンをカメリアが上から睨んでいる。クラメンも背が高いほうなのに、彼女はそれよりも高いーー。いや、俺が低いんだろう、外国の女性はみんな背が高いもんな。
「侍女殿?」
カメリアの詰問には答えず、クラメンは黙ってる。けど俺にはわかるよ、ーー秘密を知るヤツが少ないほうがいいからだろう?
「ーー侍女が足りないのなら、わたくしから陛下に申し上げておきます」
「それには及びません。ニバリスに要請しておりますので」
「ーーそうですか……。セラフィナ様、今晩は大丈夫ですか?」
美人に睨まれて俺は心が痛いーー、けれど承諾するわけにはいかないんだ!
『ケホッ、ゴボッ、ケホケホッーー』
声もださず、我ながら上手い咳払いだ。これは演劇部にはいるべきだったかな?
「ーー難しいのですね」
半ギレのカメリアの頬がひくひくしてる。超お怒りみたいだね。だけどさ、だけど俺だって必死なんだよ!
「失礼いたします!」
ドカドカと、靴をわざとらしく鳴らしたカメリアが、俺の顔を思いっきり睨んできた。ーー怖いんだけど、どうにもならないしさーー……。
「ーーあの……。陛下はなぜそこまでーー……」
言いかけて、クラメンは口を閉ざしてしまった。ドアの前で動きを止めたカメリアが、バッとこっちを向いたからだ。そのまま、つり上がった迫力満点の目をして、彼女は俺に詰め寄ってきた。
「ーー陛下におかれましては、やっとお好みの方があらわれたのです。いままでどこにも通われたことがなかったのに!」
「!?」
拳をかためて力説するカメリアを、クラメンが青ざめた顔で見てるよ。俺は意味がわからなくて、首をかしげそうになったけどさ。
「それをセラフィナ様は、何度断ったと思っているのです!」
「………」
ーーどこにも通われたことがない?嫁のとこへ?ーーだからなんだ?行きたいところに行けばいいじゃん。あんな美人の嫁候補が3人もいるのに、もったいない話だよなーー。
「ーーその咳がおさまれば、わかっていますね!」
「………」
「侍女殿!」
「ーーーはい」
「ではーーー!!」
ガチャッ!バタアアアーーーンッ!
ドアを乱暴に開け締めして、カメリアが去って行った。音の余韻が残る部屋で、俺達はただ呆然とするしかない。
「ーーどうすれば……」
いつもしゃんとしているクラメンが、胸にかけられたペンダントを握りしめる。その悲壮な顔を見て、俺は心を決めた。
「ーーよし、逃げよう」
「え?」
「どっちみち殺されるんだから、ちょっとは抵抗しようぜ。ほら、途中で本物の姫様とばったり出会うかもしれないじゃん」
そしたらバトンタッチだよーー、と暗くなる気持ちをなんとか励まして、俺はクラメンに告げる。
「ーー大聖堂の開放日、わかるーー?」
「ーーはい。明後日にございます……」
「よし、国民の皆さんにまぎれて外にでよう」
「ーー見つかれば、ーー殺されますよ?」
「どのみちここにいてもバレるさ。だって皇帝はもう怪しんでいるから俺のところに来たいんだよ」
俺が確信を込めて言うと、クラメンの目は大きく見開かれた。
「あっ……」
「だろ?」
そう、おかしいと思ってるから確かめたいんだろうな。
「大聖堂まで行くのは問題ない?」
「はい、妃候補も参拝できます」
「ーーそこで変装して外にでたいけど、着替える場所があるかな……?」
「それでしたらーー、明日、空いている使用人部屋を確認しておきますーー」
覚悟を決めたクラメンが、俺に提案する。
「ーーじゃあ、それでいこう」
75
あなたにおすすめの小説
30歳まで独身だったので男と結婚することになった
あかべこ
BL
※未完
4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。
キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
【完結】お義父さんが、だいすきです
* ゆるゆ
BL
闇の髪に闇の瞳で、悪魔の子と生まれてすぐ捨てられた僕を拾ってくれたのは、月の精霊でした。
種族が違っても、僕は、おとうさんが、だいすきです。
ぜったいハッピーエンド保証な本編、おまけのお話、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
トェルとリィフェルの動画つくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのWebサイトから、どちらにも飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりました。
これからもどうぞよろしくお願い致します!
表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。校正も自力です!(笑)
白熊皇帝と伝説の妃
沖田弥子
BL
調理師の結羽は失職してしまい、途方に暮れて家へ帰宅する途中、車に轢かれそうになった子犬を救う。意識が戻るとそこは見知らぬ豪奢な寝台。現れた美貌の皇帝、レオニートにここはアスカロノヴァ皇国で、結羽は伝説の妃だと告げられる。けれど、伝説の妃が携えているはずの氷の花を結羽は持っていなかった。怪我の治療のためアスカロノヴァ皇国に滞在することになった結羽は、神獣の血を受け継ぐ白熊一族であるレオニートと心を通わせていくが……。◆第19回角川ルビー小説大賞・最終選考作品。本文は投稿時のまま掲載しています。
悪役令嬢と呼ばれた侯爵家三男は、隣国皇子に愛される
木月月
BL
貴族学園に通う主人公、シリル。ある日、ローズピンクな髪が特徴的な令嬢にいきなりぶつかられ「悪役令嬢」と指を指されたが、シリルはれっきとした男。令嬢ではないため無視していたら、学園のエントランスの踊り場の階段から突き落とされる。骨折や打撲を覚悟してたシリルを抱き抱え助けたのは、隣国からの留学生で同じクラスに居る第2皇子殿下、ルシアン。シリルの家の侯爵家にホームステイしている友人でもある。シリルを突き落とした令嬢は「その人、悪役令嬢です!離れて殿下!」と叫び、ルシアンはシリルを「護るべきものだから、守った」といい始めーー
※この話は小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる