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10.ひとはそれを寵愛と呼ぶ
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その日、俺とクラメンは、朝早くから大聖堂を目指してひっそりと歩きだした。今日が開放日だからか、兵士達とすれ違ってもとめられることもなく、俺達は大聖堂前まで楽に来れたよ。
計算外だったのは、城の中の移動距離が長いこと。自分の宮殿から大聖堂まで来るのに、30分は歩いてるんじゃないか?ーーここ時間が曖昧な時計しかないから正確とは言えないけどさ。
「広いな……」
フリーギドゥム城の豪華な装飾や、気品ある内装に見惚れている暇はない。だけど、修学旅行とかで見学に来たいレベルの建築物だよ。なんでこんなに立派な建物が、クレーン車も油圧ショベルもないのに建つんだろ?
「お疲れでございますか?」
元気だよ、でも、女装には疲れている。下が頼りない、っていうのかな……、足にスカートがまとわりつくのも嫌だしさ。
「大丈夫だよ……。うわぁーー」
すごいーー……。
クラメンが荘厳というだけあって、震えてくるほどすごい建物だ。天井なんか、トーキョードームの天井より高いんじゃないか?アーチになってる天井を支える円柱といい、壁一面に広がるステンドグラスといい、ここが特別だということが、ありありとわかる神秘的な別空間だ。
ーーなんていうか、ーー神様がいるんだな……、って場所だ。
「セラフィナ様?」
黙ってしまった俺を見て、クラメンが声をかけてきた。ああ、お祈りをするんだよな。俺は心配ないよ、とクラメンに頷いて見せた。
上段に行くことができるのは皇帝と皇妃だけらしく、妃候補や貴族はその一段さがったところまでだって。
壁にかけられた神様は、想像通りイエス・キリストじゃなかった。漫画で見るような竜みたいな生き物の彫刻だ。
「ーーこの国の神、雪竜様です。フリーギドゥム王族の祖先だと言われております」
ん?それって……、皇帝はひとじゃないのか?人間離れしたイケメンだとは思ったけど、なるほどだ。
ーーしかし、ヤバいな、この威厳ってやつかな?それがぐっと伝わってくるよーー、これを造ったひとは神様への畏敬の念とか、信仰心が厚かったんだろうな……。
ふと、遠くのほうから、規則正しい靴音が響いてきた。それも複数だ。
「ーーーセラフィナ様、頭をお下げください」
急にクラメンの声が低くなる。緊張しているのか?
「………!」
待てよ……、ーー身代わりとはいえ俺は妃候補だ。それが頭を下げる相手なんてーー……。
あっ、と気づいた瞬間だった。室内の空気が一気に冷えてくる。ちらっと顔をあげると、皇帝と目が合ってしまった。うぎゃあーー、だよ!
「ーーー」
大聖堂に衛兵達の靴音が、乱れることなく鳴り響いた。しゃべっていた国民達も、一斉に動きをとめて頭をさげる。
その中、俺は動揺を抑えるのに必死だった。ーー皇帝は何かを勘づいたのか?たまたま同じ時間になっただけかーー?もしかして、ロウバイ宮殿に見張りをつけられているのなら、俺達が出るのを知らされた……?
ーーヤバい、絶対にマークされてるよ。あーー、俺の命乞いに意味があるかなーー?
「ーー皇帝陛下のお姿を拝謁できるなんて………」
「ーー今日はすごい日だな……」
後ろから声が聞こえた。やっぱり普段は来ないんだ……。
「ーーセラフィナ」
「!」
おい!直球かよ!ま、まさか大聖堂でばっさり斬られないだろうなーー……。こうなったら、ーーこうなったらーー!
「……」
俺は顔をあげてにっこりと笑った。絶対に口の端がぷるぷる震えてるだろうな。そして、自分から皇帝に近づいて上段の前で止まり、クラメンに教えてもらったお辞儀を披露する。
「………」
うわっ、めっちゃ見てくるし!あんたと違って平凡な顔だよ、面白くもないだろーー?マズイなーー、変な動きはできないぞ、う~ん。ーーよし、ーー本当に俺に好意があるなら、この方法を使ってやる!
「ーーどうした?」
俺は自分を指差した。それを見て、皇帝が優美に口を開く(何やってもイケメンなヤツだな、口開けただけなのに)。それから、その指を皇帝に向ける。
まるで、皇帝を指差すような仕草に、衛兵達がざわざわしだした。特に横目に見えるカメリアの表情が、鬼のようになってしまってるよ。
「………」
だけど、俺はその人差し指を、そのまま大聖堂の入り口へと向ける。ーーこれで伝わらないなら次はーー……。
「外に行きたいのか?」
切れ長の目を細めて、皇帝が言った。
「!」
ナイスだ、皇帝!その通りだよーー!
俺がしっかりと頷くと、衛兵達のざわざわがピークになる。なんでだよ、嫁が旦那を外出に誘って何の問題があるんだよな?
「いいだろう」
皇帝が俺を促すように腕を動かす。
「護衛は数人でよい」
「陛下!妃候補は外にはーー!」
「よい」
悲鳴のような声をだしたカメリアを気にせずに、皇帝がゆっくりと歩きだした。おっと、待ってくれよーー!
ぎゅっ。
「………」
俺は皇帝の肘に腕を通して、しっかりと腕をつかんだ。ーーなぜかって?ーーそれは胸にパッドをいれているから、ちょっとでも俺を女だと思ってもらえるようにだよ!
ほら、どうだ!ぎゅっ!ぎゅっ!と腕に当たってるだろ?(そんなたいしたパッドじゃありませんよ。byクラメン)、俺は完全に女だぁーー!!
ざわざわざわ…………。
なんか、外野が騒がしいぜーー。皇帝も男なんだから、腕ぐらい組むはずだ。俺の前に嫁が3人もいるんだしさ。ーーうん、振りはらわれないから大丈夫ってことだよな。
ふわっ。
「!」
大聖堂の門をくぐると、俺の肩に黒いマントがかけられた。あれーー、自分のマントを俺にもかけてくれるなんて、紳士なヤツだなーー。
うすうす感じてはいたけど、やっぱりこの国って寒いから、出かけるときに防寒着をもってこないといけないみたいだ。
「何を見たい?」
聞かれてもわかんねえよ。逆にここからの見どころはなんなんだよーー?、と目をパタパタさせながら首をかしげた俺に皇帝が言った。
「ーーユニコーンの仔を見たくないか?」
「?」
ん?ユニコーン……?なんだっけ、それは?ガ◯ダムかな?
よくわからないけど、俺は首を縦に振る。問題はそれがどこにあるかなんだけどさーー。
計算外だったのは、城の中の移動距離が長いこと。自分の宮殿から大聖堂まで来るのに、30分は歩いてるんじゃないか?ーーここ時間が曖昧な時計しかないから正確とは言えないけどさ。
「広いな……」
フリーギドゥム城の豪華な装飾や、気品ある内装に見惚れている暇はない。だけど、修学旅行とかで見学に来たいレベルの建築物だよ。なんでこんなに立派な建物が、クレーン車も油圧ショベルもないのに建つんだろ?
「お疲れでございますか?」
元気だよ、でも、女装には疲れている。下が頼りない、っていうのかな……、足にスカートがまとわりつくのも嫌だしさ。
「大丈夫だよ……。うわぁーー」
すごいーー……。
クラメンが荘厳というだけあって、震えてくるほどすごい建物だ。天井なんか、トーキョードームの天井より高いんじゃないか?アーチになってる天井を支える円柱といい、壁一面に広がるステンドグラスといい、ここが特別だということが、ありありとわかる神秘的な別空間だ。
ーーなんていうか、ーー神様がいるんだな……、って場所だ。
「セラフィナ様?」
黙ってしまった俺を見て、クラメンが声をかけてきた。ああ、お祈りをするんだよな。俺は心配ないよ、とクラメンに頷いて見せた。
上段に行くことができるのは皇帝と皇妃だけらしく、妃候補や貴族はその一段さがったところまでだって。
壁にかけられた神様は、想像通りイエス・キリストじゃなかった。漫画で見るような竜みたいな生き物の彫刻だ。
「ーーこの国の神、雪竜様です。フリーギドゥム王族の祖先だと言われております」
ん?それって……、皇帝はひとじゃないのか?人間離れしたイケメンだとは思ったけど、なるほどだ。
ーーしかし、ヤバいな、この威厳ってやつかな?それがぐっと伝わってくるよーー、これを造ったひとは神様への畏敬の念とか、信仰心が厚かったんだろうな……。
ふと、遠くのほうから、規則正しい靴音が響いてきた。それも複数だ。
「ーーーセラフィナ様、頭をお下げください」
急にクラメンの声が低くなる。緊張しているのか?
「………!」
待てよ……、ーー身代わりとはいえ俺は妃候補だ。それが頭を下げる相手なんてーー……。
あっ、と気づいた瞬間だった。室内の空気が一気に冷えてくる。ちらっと顔をあげると、皇帝と目が合ってしまった。うぎゃあーー、だよ!
「ーーー」
大聖堂に衛兵達の靴音が、乱れることなく鳴り響いた。しゃべっていた国民達も、一斉に動きをとめて頭をさげる。
その中、俺は動揺を抑えるのに必死だった。ーー皇帝は何かを勘づいたのか?たまたま同じ時間になっただけかーー?もしかして、ロウバイ宮殿に見張りをつけられているのなら、俺達が出るのを知らされた……?
ーーヤバい、絶対にマークされてるよ。あーー、俺の命乞いに意味があるかなーー?
「ーー皇帝陛下のお姿を拝謁できるなんて………」
「ーー今日はすごい日だな……」
後ろから声が聞こえた。やっぱり普段は来ないんだ……。
「ーーセラフィナ」
「!」
おい!直球かよ!ま、まさか大聖堂でばっさり斬られないだろうなーー……。こうなったら、ーーこうなったらーー!
「……」
俺は顔をあげてにっこりと笑った。絶対に口の端がぷるぷる震えてるだろうな。そして、自分から皇帝に近づいて上段の前で止まり、クラメンに教えてもらったお辞儀を披露する。
「………」
うわっ、めっちゃ見てくるし!あんたと違って平凡な顔だよ、面白くもないだろーー?マズイなーー、変な動きはできないぞ、う~ん。ーーよし、ーー本当に俺に好意があるなら、この方法を使ってやる!
「ーーどうした?」
俺は自分を指差した。それを見て、皇帝が優美に口を開く(何やってもイケメンなヤツだな、口開けただけなのに)。それから、その指を皇帝に向ける。
まるで、皇帝を指差すような仕草に、衛兵達がざわざわしだした。特に横目に見えるカメリアの表情が、鬼のようになってしまってるよ。
「………」
だけど、俺はその人差し指を、そのまま大聖堂の入り口へと向ける。ーーこれで伝わらないなら次はーー……。
「外に行きたいのか?」
切れ長の目を細めて、皇帝が言った。
「!」
ナイスだ、皇帝!その通りだよーー!
俺がしっかりと頷くと、衛兵達のざわざわがピークになる。なんでだよ、嫁が旦那を外出に誘って何の問題があるんだよな?
「いいだろう」
皇帝が俺を促すように腕を動かす。
「護衛は数人でよい」
「陛下!妃候補は外にはーー!」
「よい」
悲鳴のような声をだしたカメリアを気にせずに、皇帝がゆっくりと歩きだした。おっと、待ってくれよーー!
ぎゅっ。
「………」
俺は皇帝の肘に腕を通して、しっかりと腕をつかんだ。ーーなぜかって?ーーそれは胸にパッドをいれているから、ちょっとでも俺を女だと思ってもらえるようにだよ!
ほら、どうだ!ぎゅっ!ぎゅっ!と腕に当たってるだろ?(そんなたいしたパッドじゃありませんよ。byクラメン)、俺は完全に女だぁーー!!
ざわざわざわ…………。
なんか、外野が騒がしいぜーー。皇帝も男なんだから、腕ぐらい組むはずだ。俺の前に嫁が3人もいるんだしさ。ーーうん、振りはらわれないから大丈夫ってことだよな。
ふわっ。
「!」
大聖堂の門をくぐると、俺の肩に黒いマントがかけられた。あれーー、自分のマントを俺にもかけてくれるなんて、紳士なヤツだなーー。
うすうす感じてはいたけど、やっぱりこの国って寒いから、出かけるときに防寒着をもってこないといけないみたいだ。
「何を見たい?」
聞かれてもわかんねえよ。逆にここからの見どころはなんなんだよーー?、と目をパタパタさせながら首をかしげた俺に皇帝が言った。
「ーーユニコーンの仔を見たくないか?」
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