冷酷な皇帝陛下の妃候補(身代わり)になったんだけど、男だってバレたら殺されるらしい。

濃子

文字の大きさ
11 / 57

11.月璃の推理

しおりを挟む
 ぐるりと城を囲むような壁の中にある門をくぐると、そこはまた城の中だった。でも、建物が明らかに違う。俺の目の前に広がるのは、工事現場によくあるプレハブ小屋みたいな家だ。遠くには、いま通った壁よりもさらに高い壁が見える。

 あんな壁よく造ったよなーー。石をひとつひとつ乗せてるんだろうけど、色が全体的に白色で、さらに寒さを感じてしまうよ。



「ここからは、兵舎や使用人達のエリアだ」
 従業員用部屋、ってやつかな。ーーそういう建物もすべて含めて城っていうのか?

 まあ、城の出口に近くなったのはありがたい話だよ。クラメンの調べてくれた使用人部屋に行くのは、たぶん無理だからね。なら、別のルートを確保しないと……。
 
 
 小屋の近くで仕事をしていたひと達が、驚いた顔で俺達を見た。慌てて頭を下げようとするひと達を無視するように、皇帝は歩き続ける。まるで、「気にするな」、とでも言ってるみたいだ。



「あれが、ユニコーンの舎だ」
「ーーー!」
 しばらく歩くと、日当たりのいい広場に、白い馬が何頭もいた。けど、よく見ると馬じゃない、額から角が生えているからだ。ああ、そうだ、ユニコーンて、小学校のときの手提げカバンの柄だよ。女物なんか嫌だって、泣きまくったやつだ。
 
「ーー仔を」
「はっ!」
 皇帝の命令に衛兵のおじさんが、小さなユニコーンを広場と隣接されてる馬舎からだしてきた。それを俺の目の前に連れてきてくれる。

「ーーー!」
 白い仔馬みたいなのに、額にはちょこんと角がある。仔ユニコーンは広場におろされ、不安そうに左右に首を振った。無理やり連れてきてないか?

 けど、ちっちゃくてカワイイ!ーーすごい、目の中が虹みたいだ……。こんなのが見られるなんて、ラッキーだな。きっとパンダより貴重だろうぜ。

 キラキラときれいな色に、俺はじっと魅入ってしまう。皇帝から腕をはずし、いろんな角度から仔ユニコーンを見る。

「さわっても大丈夫だ」
「………」
 ちょっと怖いけど、噛みつかないよなーー?屈んでおそるおそる手を伸ばすと、ユニコーンのほうから身体を擦り付けてきてくれた。思ったより硬くて、とっても温かい身体だよ。

 ーーカワイイ。すごくカワイイな……。

 自然に笑ってしまうような愛らしさに、俺は黙ったままその背中を撫で続けた。
「ーー陛下、ラダマンテ城代からの書簡が届いております」
「ーー少し離れる。好きなだけ見るがいい」
 皇帝が俺から離れた場所へと移動していく。衛兵達も皇帝と一緒にユニコーンの馬舎から動いた。



 ーーおっと、これはチャンスだ。あっちに森みたいな場所があるから、自然にあそこに行けないだろうかーー……。

「ーークラメン……」
 側に控えてくれていたクラメンを、口を動かして呼ぶ。クラメンは俺の口の動きが読めるように、努力してくれてるんだ。
「はいーー」
「これからあそこの森にはいって、そのまま城から出るーー……」
「はいーー」
「おまえだけなら、なんとかなるだろ?」
 俺の言葉にクラメンが顔色を変えた。

「何をおっしゃいます!」
「帰りたいんだろ?ーーニバリスにーー」
「ですが、セラフィナ様は!」
「会いたいひとがいるんだろう?」
 クラメンの胸にかかるペンダントに触れると、彼女の眉がきゅっと寄せられる。こんな可愛い顔をするなんて、これは恋だな。


 それだけ言うと、俺はユニコーンの仔のお尻を叩いた。ユニコーンの仔が飛び跳ね、広場の奥の森のほうに走っていく。大人のユニコーンが一瞬だけ仔を見たけど、またそのまま首を戻した。どうやら牝のユニコーンを口説くのに、忙しいらしい。なかなか薄情なやつらだな。

「………行くぞ」

 ーーよし、でもこれで自然に追いかけられるーー。


 待ってよ~~~、とばかりにスカートを持ち上げてユニコーンの仔の後を追う。もちろんクラメンもついてくる。さあさあ、森に入れば猛ダッシュだ。がんばれ、俺。がんばるんだ、クラメン!


「ーー意外に暗いな」
 木々が密集しているそこは、道らしいものはなかった。散歩用の森じゃあないんだろうな、こんな暗い森での猛ダッシュは危ないぞ。
「足元にお気をつけくださいーー」
「クラメン、もういいから行けよ」
「………」
「あの遠くの城門からしか抜けられないんじゃ、早めに行かないと参拝客はみんな出てしまうだろーー?」
「ですがーー。あなたはどうなりますかーー?」
 彼女の目は俺への心配でいっぱいだよ。けど、俺だってそうだ。クラメンのこれからが心配で仕方がない。

「ーークラメン。クラメンはわかってるんだろ?」
 はー、はー、確実に運動不足だ。試合中、コートの中を走り切るぐらいの体力はあるはずなのにーー。
「何をですか?」
「セラフィナ様は戻ってこないって……」
 俺の言葉を聞きながら、クラメンが悲しそうに顔を伏せた。

「………」
「セチアが言ってた意味を考えてたんだけどさ、ニバリスが冬で鎖国になるってことは、すげー冬が厳しいってことだよな?」
 後ろを見ても誰も来ていない、これはうまくやったんじゃないか?

「ーーーはい」
「なら、セラフィナ様が皇帝の不興をかっても、兵を出すだけ無駄だし、国が攻められることはないーー。セチアはクラメンを犠牲にして、早くニバリスに戻って、国を封鎖することにしたんだよな?」
 そのために、俺に時間稼ぎをお願いした。自分が国に戻るまで、俺が皇帝を引きつけりゃ完璧だもん。そんで、冬が終わる頃には次の妃候補が選ばれて、皇帝の怒りもおさまってるーー、そんなとこだろ?

 ーー向こうの歴史でもあったなーー。ナチス・ドイツ軍がノルウェー北部を侵攻した際、厳しい寒さのために苦戦した、とかーー……。よっぽどほしいものがないと、極寒の地にちょっかいなんかかけたくないだろ。


「ーーニバリスのためなら、私の生命など……」
「うん。クラメンの生命を大事なひともいるんだろ?そいつのためにも、いきなよーー」
 俺の言葉にクラメンの目に涙が浮かんだ。大事なひとがいるひとは、ちゃんと生きなきゃダメだ。ーー大丈夫だよ、クラメン、何があってもおまえは国に返してやるさーー。

「おっ、ユニコーンちゃん。ごめんよーー。さあ、早く行け!クラメン!」
 走るのをやめたユニコーンの仔が、くるくるとその場でまわっている。トイレかな?

「ほら、クラメンーー」
 買い出しとか言って、うまい具合に門を抜けてくれ……、俺は動かないクラメンの背中を強く押す。
「セラフィナ様……」
 眉根をギュッと寄せた顔をしながら、クラメンが走ろうとして、………ーーーーーッ!!
 
 クラメンのすぐ近くに、黒く動くものが見えた。
「あっ!」
 ヘビだ!あのヘビ、クラメンの足を狙ってるーー!

 俺は走った。スカートをぐしゃぐしゃにして、見た目なんか気にせずに走ったよ!

「ひゅ~ん」
 ユニコーンの仔がいななく。
「クラメン!」
 スカートが邪魔で足が出せないーー、クソッ!


しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

30歳まで独身だったので男と結婚することになった

あかべこ
BL
※未完 4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。 キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者

ひとりも、ふたりも

鈴川真白
BL
ひとりで落ち着く時間も、ふたりでいる楽しい時間も両方ほしい 1人を謳歌するマイペース × 1人になりたいエセ陽キャ

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

【完結】お義父さんが、だいすきです

  *  ゆるゆ
BL
闇の髪に闇の瞳で、悪魔の子と生まれてすぐ捨てられた僕を拾ってくれたのは、月の精霊でした。 種族が違っても、僕は、おとうさんが、だいすきです。 ぜったいハッピーエンド保証な本編、おまけのお話、完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! トェルとリィフェルの動画つくりました!  インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのWebサイトから、どちらにも飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。校正も自力です!(笑)

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

白熊皇帝と伝説の妃

沖田弥子
BL
調理師の結羽は失職してしまい、途方に暮れて家へ帰宅する途中、車に轢かれそうになった子犬を救う。意識が戻るとそこは見知らぬ豪奢な寝台。現れた美貌の皇帝、レオニートにここはアスカロノヴァ皇国で、結羽は伝説の妃だと告げられる。けれど、伝説の妃が携えているはずの氷の花を結羽は持っていなかった。怪我の治療のためアスカロノヴァ皇国に滞在することになった結羽は、神獣の血を受け継ぐ白熊一族であるレオニートと心を通わせていくが……。◆第19回角川ルビー小説大賞・最終選考作品。本文は投稿時のまま掲載しています。

悪役令嬢と呼ばれた侯爵家三男は、隣国皇子に愛される

木月月
BL
貴族学園に通う主人公、シリル。ある日、ローズピンクな髪が特徴的な令嬢にいきなりぶつかられ「悪役令嬢」と指を指されたが、シリルはれっきとした男。令嬢ではないため無視していたら、学園のエントランスの踊り場の階段から突き落とされる。骨折や打撲を覚悟してたシリルを抱き抱え助けたのは、隣国からの留学生で同じクラスに居る第2皇子殿下、ルシアン。シリルの家の侯爵家にホームステイしている友人でもある。シリルを突き落とした令嬢は「その人、悪役令嬢です!離れて殿下!」と叫び、ルシアンはシリルを「護るべきものだから、守った」といい始めーー ※この話は小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...