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12.月璃、唇を奪われる
しおりを挟む俺はその辺に落ちていた棒でヘビをはらった。でも、棒にヘビがからんできて、勢いよく俺の腕に噛みついてきたんだ!
「ッ゙!!」
イッテーー!激痛いじゃん!
「セラフィナ様!」
「ーーいいから……、行ってくれ……」
「馬鹿なことをおっしゃらないでください!ーー誰か!誰か助けてくださいーー!!」
「~~~~~ッ!」
ーー放して、ヘビさん~~~!!痛いよ~~~!
ヘビに噛みつかれたまま動けない俺は、突然後ろから誰かに抱きあげられた。
「ーーカメリア、ヘビを始末しろ」
「はい!ーーなぜこんなところにーー、魔黒蛇がーー……」
何、その厨二病ネーミング……?
「ッ~~~!」
うわ、腕痺れてきた。
「セラフィナ様!」
クラメン、おまえは無事だったかーー、よかった……。あーー、腕全体がし・び・れ・て・く・る………。
「ーーッ!」
クラメンの無事を安堵したそのとき、俺の口はいきなり塞がれた。なんてこったい、皇帝がその魅力的な形の良い唇で、俺のちっちゃい口を塞いできたんだよーーー!
ーーな、な、何をするんだよーーーッ!俺のファーストキスだぞーー!うっ、空気がーー、さ、酸素がなくなるーー!う~~~、皇帝の二酸化炭素なんか、いらないよぉぉぉ~~~!
……けど、なんだか次第に俺の身体がぽかぽかと温かくなって、すぅ~、って感じに腕の痛みが引いていく。
「ーー解毒だ」
唇を舐めてから皇帝が俺から離れた。その行動に俺は呆然とするしかない。ーーい、いや、これが、『魔法』、ってやつなんだな。それで使って俺を助けてくれたんだ。さすがは皇帝!二酸化炭素を俺にやる、ってわけじゃなかったんだな!
「っ、………」
俺は口を開きかけて慌てて閉じる。こんなときでもお礼も言えないのか……。ひたすら頭を下げたけど、治してもらったのに申し訳ないなぁーー……。
腕の痛みがなくなり、俺は皇帝に噛まれた腕を見せて頭を深く下げる。もう噛み跡もなくなってたよ、すごいな……。皇帝ってジョブは魔法使いなのか?皇帝は皇帝の家に生まれたから皇帝なんだろ?職業も皇帝なのかーー?
俺がくだらないことで頭を悩ませていると、俺を抱えたまま、皇帝が歩き出しちゃった。ヤバい、ヤバい、降りなきゃ、って身体を動かそうとしたんだけど、皇帝の腕が自由を許してくれない。俺、男だから結構重いのにーー、細く見えて、馬力のあるタイプなんだな。
ーーあ……。それにしてもヘビがでなきゃクラメンは城から出られたかもしれないのにーー……、運が悪かったとしか言いようがないーー。もっと大聖堂で神様に祈ればよかったよ……。
皇帝が俺を抱えたまま、城内を静かに歩く。長距離なのに、息も切らさないんだ。本当に人間か?あーー、神様の子孫だから人間じゃないのか?
「………」
俺、歩けるんだけどーー……、まわりからの視線が、すっごい勢いで飛んでくる。俺達を見ていないひとなんかいないぐらいだーー。
どこを見ていたらいいのか、視線の方向に困った俺は、冷たい月のような端正な横顔をじっと見た。どこからどう見てもイケメンだ……、でもつくりものに見えないから天然なんだろうなーー。
目は青いっていうか、アイスブルー系のキラキラした目で、肌もツヤツヤしてるし、鼻も高いし、唇もきれいだし、欠点が何ひとつないやーー……。
唇、か………。
ーーさっき俺は、この口とキスしたんだ……………。
……キス、ってあんな感じなんだ……。やわらかくて弾力のある肉っていうのかーー、ちょっと湿ってるのがエロいっていうのかーー……、それがくっついてきてーー、ぷるってして………。
はじめてしたけど、不思議な感触だったなーー……。
「ーーセラフィナ」
「ッ!」
ーーおっどろいた。よけいなことを考え過ぎだぜ。
「今日は泊まりだ」
「………」
心臓がひっくり返りそうになる。意識があさってにいってたから、あやうく声がでるところだったよ。いやーー、しかし、これは決定事項なのか………。
「……」
悪あがきに、俺は自分を指差した。皇帝からの返事はないーー、けれど、その目が「あたりまえだ」、って言ってるんだよ………。
ーーヤバイ………、こりゃもしかすると、ヘビの毒で死んだほうが、よかったのかもな……?
「………」
クラメンがロウバイ宮殿のドアの鍵を開けた。いつもより時間がかかったのは、俺の心情をわかっているからだろう。
しかし、目立ってたなーー。途中で会った3姫様なんか、目を見開いてその場に立ち尽くしてしまったんだ。ーーあのひと達の旦那なのに、あの光景を思い出すと、ものすっごく俺の心が痛むーー……。自分の旦那が新入りの妃候補にばっかりかまってるなんて、考えたくもない事実だよな……。
あーー、しかもクラメンと話せないじゃん。打ち合わせもできないまま、俺達は死ぬのかーー?
「寝室は?」
「ーーこちらでございます……」
最後はベッドの上か、ありがたいことだ。ばあちゃんもよく言ってた。「最後は布団の上で死にたい」ってーー、いや、たとえ布団の上でも血まみれとかはどうなんだろ?
皇帝が俺をベッドの上に横たえた。うっわーー、何、このひと俺のことどうするつもりだ?
警戒を緩めずに俺は皇帝の顔を見あげた。イケメンは無表情のまま、俺の頬をさらりと撫でる。
「………」
いっそ、ひと思いに殺してくれーー……。緊張感に耐えきれず、俺の口元がぷるぷる震えてくる。とまれよ、不自然すぎるだろーー?
「ーー災難だったな」
「!?」
「城内に魔黒蛇がいるとは思わなかった。もう、痛みはないか?」
「………」
俺は目を見開いて、皇帝の顔を穴が空くほど見た。普通はだめなんだろうけど、それぐらい驚いちゃったんだよ。
「解毒はしたが、熱があがるかもしれん。今日はここにいて、おまえの様子をみよう」
「!」
な、な、な、何こいつーーー……。ーーすげー、イイヤツじゃんっ!!超、激ヤバスイートイケメンだな!
「ーー恐れながら申し上げますーー」
「発言を許した覚えはない」
クラメンの言葉は途中でとめられる。ーーなんだ?クラメンにはあたりがきつくないか?やっぱり冷酷な皇帝なのか?
「……」
俺が皇帝の服をつかむと、彼の手がまた俺の頬をつぅー、と撫でた。手というより、指先かな……。すごく硬いのに、優しい指をしてる。なんでそんなことをするのかは、わからないけどさ……。
「ーーなんだ?」
俺の意見は聞いてくれるんだ。不思議なひとだね。
「……」
クラメンがいる方に指を差すと、皇帝が視線を横に向けた。ーーその目、男なのにエロいな……。
「侍女ーー」
「ーーは、はいっ。ーー陛下のお食事はいかがいたしましょう?」
「ここに用意しろ」
「ーーその……」
「下がれ」
「………」
ちょっと、なんでクラメンにはそんななんだよ~~~!態度悪すぎじゃねえかーーー!
くっそ、口さえ聞ければマジ説教してやるのにな!
あーー、怒ってたら、頭が熱くなってきたーー、マジで熱がでてくるのかよ……。
ーーあっ、そうか、皇帝の手って冷たいから、冷えピタん代わりに使ってくれってことか!やっぱり良いヤツじゃん。ありがたく使わせてもらいますよーー……。
俺は皇帝の手をつかんで首の後ろにつけた。熱のときって首冷やすとマジ気持ちいいんだよなーー。俺、デコよりこっち派。
「ーーー」
皇帝黙ってるけど、「無礼者!」、とか言いながら斬ってくる様子はないな。ーーすみません、俺ちょっと寝ますから……。いっぱい歩いたし、ヘビに噛まれたし、ーーいろいろあったんでーー……。
ぐ~~~~~っ………。
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