冷酷な皇帝陛下の妃候補(身代わり)になったんだけど、男だってバレたら殺されるらしい。

濃子

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45.助かる

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 ……あれ?



 ーー腕が動かない、何でだよ!まさか、これも薬の影響なのかーーーッ!?冗談じゃない!砂が、もう砂が残り少ないーー、身体が異常に熱くなってきた……、喉が乾く!ヤバい!ヤバい!ヤバいーーー!



「……たす、けて……、ーーー……」
 頭の中がぐるぐるとまわって、俺の身体がほしいものを探してるみたいだ。ーー嫌なのに……、止めたいのに、俺のアレが俺の意思とは関係なくふくらんでくる……。

 ーーサージのヤツが見てるのに……。


「な、なんだ……?」
 涙で視界がにじむーー、そんな状態の俺の耳に、サージの何かに驚いた声がはいってきた。だけど、そんなことを気にしてる余裕なんかない、ーー身体が熱くなってくる……、インフルとかじゃない、変な熱さだ……。

「っん……ん……」
 口から勝手にでた声に、俺はショックを受けた。なんで?俺はこんなの望んでないーー、あんなヤツに身体を好き放題されるの?ーー嫌だ、嫌だよーー……、


「ルイリ………ッ」

 俺は、おまえに会えない人間になっちまうのかなーー……。汚くて目を背けたくなるようなーー……、そんなの、嫌だなぁ……。



「ーー苦しいのか?」
 身体が宙に浮いた。あまりにも突然すぎて、俺は目をパタパタと瞬いたまま何も言えない。
「熱いな」
 抱きあげられたから、顔がすごく近いーー。吐く息を感じる距離に彼がいるなんて、普通に考えればありえないことだけどーー。

 もしかして、これは夢なんじゃないのか?俺は恐怖のあまり、自分に都合のいい夢をみているのかもしれない……。

 そう思ったら、素直に甘えにいってしまって、全体重を預けるみたいに俺の身体から力が抜けた。あーー、夢にしては質感や匂いがリアルだよ。

「……」
 彼の肩に頭を乗せた俺の口に、見惚れるぐらい形のいい唇が近づいてくる。そしたら、「あっ」と思う間もなく彼が俺の唇にキスをした。

「ーーたちの悪い薬だ。いまは凍らすことしかできないが我慢しろ」
「ん……」
 唇が離れたときには俺の身体は軽くなってた。凍らす……、身体の中にある魔法薬を凍らせてくれたんだ……。だから、身体からだるさが消えて……、ーーーえ?さ、寒いーーー……。

 熱をもった身体じゃ気がつかなかったけど、まわりは寒いし、景色がすっかり氷景色だよ。部屋の全てが硬質な氷で蓋をしたみたいになっていて、鉄格子まで凍ってる。その中、青ざめたサージは自分を強く抱きしめ、ぶるぶると震えていた。ーーあいつはあえて氷にしてないのかなーー?

「ーールイリ……」
 名前を呼んだだけで、俺の胸がときめく。なんだ、これ……、すっごく恥ずかしいんだけど……。
「どうした?」
「ーーーありがとう……」
「見事な魔法だった。城の結界内に入るなど、宮廷魔導師のすることだな」

「………」
 ーーそっか……、どうやったかわからないけど、俺、無意識で魔法を使ってたのか。ーーきづいてくれて、……本当に感謝しかないよ……。


「ーーお、おい!なんだ、おまえは!どこからあらわれた!」
 さっきまでの勢いはどこにいったんだろうなーー、腰の引けたサージが、鼻をすすりながら喚いている。

「誰が発言を許した」
 ルイリがそう言うと、サージのまわりに氷でできた槍があらわれ、それはヤツの首に突き刺さるスレスレでとまった。

「ーーーーッ!!」
 驚きに目を剥いたまま、サージが気を失ったみたいだ。横に揺れてそのまま倒れていき、ドンッと床に落ちる音がしたら、もうヤツは動かなくなったよ。

「ツキリ、ーー城に戻るぞ」
「ーーあっ……、うん」
「解毒もしなければならないからなーー、ここは潰しておく」
「えっと、悪くないひともいるんじゃ……」
 薬を飲まされたひとは被害者だと思うけど。

「ーー自ら愚かなことをする人間は多い」
「え?」
「しっかりつかまれーー」
「!」

 ガキンッ!ーーと大きく何かが割れる音が響いた。割れたのは、俺の目に映っていたすべてだ。目の前で凍った部屋に次々とヒビがはいり、巨大なガラス細工が壊されたようなすごい音がして、建物は粉々に崩れ落ちていったーー。

「ーーあのひと達……」
 砕けた氷をかき分けるように、おじさん達がでてくる。その顔はあたりまえだけど、呆然としてて真っ青になっていた。
「ーーな、なんてことだ!」
「我がギルドがぁ~~~!」
 おじさん達すごく慌ててるけど、凍ってはいない。ひとは凍らさないんだ、ーー優しいんだな……。

「ーー魔法師ギルド『ファッロ』、直に兵が来る。見苦しい真似はするな」
「な、なんだと!」
「貴様!何の権利があってそんなことを!」
「黙れ」
 いや……、おじさん達、勇気あるな……。ルイリなんか見た目オーラ超バリバリで、楯突く勇気なんかもてないと思うけど、反論できるなんてーー……。


「…うっ……」
 ズクンッ、と急に身体の芯が疼いた。あーー、また身体が熱くなってくる……、嫌だ、この感覚ーー。
「ーーツキリ、行くぞ」
 小さく頷くと、ルイリは俺を抱えたままその場から飛んだ。

「!」
「逃げるなーーー!」

 怒鳴り声が聞こえるけど、ルイリはまったく意に介さないみたいで、意識が虚ろな俺を抱えたまますごい速さで移動した。走る、とか、飛ぶ、でもなく、イメージ的には瞬間移動みたいな感じだーー、といってもあくまで俺が思ったことだし、もちろん俺は瞬間移動なんかしたことはないよ。

 つまり、よくわからないけど、俺は一瞬の間に、ルイリの寝室に寝かされていたわけなんだ。

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