冷酷な皇帝陛下の妃候補(身代わり)になったんだけど、男だってバレたら殺されるらしい。

濃子

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53.クラメンとの再会

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「ーー失礼致します」
 微かに震えている声が聞こえ、俺は目を見開いた。まさか、この声は!
「クラメン!」
 文字の練習をしていた俺は、インクのフタも閉めずに立ちあがったよ。

「ツキリ様!?」
 ウッソ!ルイリってばクラメンを呼んでくれたの!ーー駆け寄ってきてくれてるクラメンの顔がとてもうれしそうで、俺はじーんときちゃうよ。

「ご無事で、……何よりです……」
 俺の前に跪いて、ボロボロ泣いてくれる。もう、クラメンたらーー……。
「そんな泣かないでよ~」
 美人に泣かれるとは、俺も立派な色男だな。

「元気にしてた?」
「ーーーはい」
 いまの間は気になる間だね。なんか、クラメン顔が暗いんだけど、何かあったのか?

「ーー侍女、私がいない間、ツキリの世話をせよ」
「はい。これ以上の栄誉はございません……」
「少し耳にいれておかねばならないことがある」
「ーーはい」
 ルイリが俺から離れてクラメンと何かを話している。なんだろ?俺の注意事項ならクラメンのほうが詳しいのに。

「心得ました」
「……ツキリ」
 頭を深く下げるクラメンを見ずにルイリが俺を呼ぶ。
「なに?」
「朝議に行く」
「あーー、お仕事ごくろうさまです」
「この部屋からでないように。用事は侍女に言え」
「あーー、わかった」
 クラメンへの態度は相変わらずだな……。かなり冷たいんじゃないか?失礼だね。

「ーー本当に、ご無事でよかったです……」
「ははっ、こう見えても男の子だよ?危険なんかないってーー」
 まあ、例外はあったか……。ちょっぴり悲しい事実だ。

「クラメンが来てくれたら俺はうれしいけど、ロウバイ宮殿は大丈夫なのか?」
「わたくしがおらずとも、問題はありません……」
「ん?」
 何か気になる言い方だな……。クラメンたら、何を隠しているのやら。

「………セラフィナ姫様は、普段何をしてるの?」
「は、はーーはい……。その……、ーー散歩を……」
「へーー、アクティブな姫様だね」
 クラメン、どう考えても何かを隠してるな……、困ったひとだね。


「ツキリ様?」
「前にいるのは近衛兵?」
「ーーはい、お部屋の前におひとり、階段下におふたり……。いないときもありますが……」
 ほうほう、いないときもあるんだな。

「そこからは?」
「ーーツキリ様、……外に行くことは禁じられておられますがーー」
「ちょっとだけだよ。セラフィナ姫様を遠くから見るだけだってーー」
 困った問題児の俺は、ルイリの部屋の扉をそっと開けて外を覗いてみた。氷のようなタイルの廊下にはひとの姿は見えず、見張りがいないときなんだろう。

「ーー階段下にはおられますよ……」
「裏口ってないの?使用人と皇帝の階段が一緒なわけないんじゃない?」
「………」
 鋭いーー、って目をしたクラメンに俺は笑ってみせる。

「そりゃ俺だって、陛下がどれだけ尊い御方かぐらい学んではいるさ」
 俺なんか向こうに望まれなきゃ、近くに来ることもできないーー……、そんな頼りない関係って嫌だけどさ……。

「お部屋をでて右側からは裏口がございます」
「よし、行こう」
 ワクワクしてすぐにでも外にでようとする俺を、クラメンが苦い表情になる。
「ですが……」
「ちらっと見るだけだよ」
「その……、服をどうしましょうか……」
 言いにくそうにいわれ、俺は気づいた。たしかに、そこ問題だよな。

「あっ…、そうだよ。セラフィナ様の格好はもうできないじゃん!」
「はい……」
「じゃあ、クラメンの格好でいいや」
「侍女の服を着られるのですか?」
「銀髪はニバリスには多いの?」
 セラフィナもそうだけど、クラメンも銀髪だしね。

「はい、ニバリス国の特徴でございますね」
「ルイリの衣装部屋にないかな……」
「ーーそこも、入室可能ですか?」
「ん?ああ、そうなんだよ。好きな服を着ろって、いろいろ用意してくれたんだ」
「まあ……」
 素直に喜んでいいのか、難しいような顔のクラメンに、俺は言う。

「ーー元カノについては、『思い出さない、比べてない、おまえのほうがいい』、って言ってるけどさ、ーーまあ嘘だろな」
「ツキリ様……」
「まっ、しょうがないよ。運が悪かったみたいだ……」
 元カノと似てるなんて、自分で地雷をつくってるようなもんだよな……。あーー、最悪。



 
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