(完結)主人公の当て馬幼なじみの俺は、出番がなくなったので自分の領地でのんびりしたいと思います。

濃子

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当て馬王子 アディオン 編

第29話 与一、兄弟の確執を見る

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 少し休んだ後、キサラからシャツとズボンを受け取り、着替えを済ます。いままで着ていた平民の服より、シャツが上等のものだ。
「体調は?」
「問題ない」



「なら、サキナのところに連れて行ってやる」
「ありがとう」
 そう言った俺にキサラが苦笑した。
「礼を言うことじゃない。こっちは人さらいなんだからな」

 あー、それもそうですね。



 廊下を歩きながら、窓から見える景色を目にいれる。塀がないから、土地全体を見渡せるんだけど、この屋敷の近くには家らしき建物はない。花か麦畑しかないな。

 ーー結構な田舎だ。

 隣領だが政治的なことを知っていても、生活的なことは知らない。弟が大公子と婚約してるのに、ロンドスタットがどんな領地なのか、いままで興味もなかったからーー。

「アディオン殿下!」
 名を呼ばれて廊下の先を見る。サキナが不安気な顔で俺を見ていた。
「サキナ殿!お身体は?」 

「大丈夫。殿下には申し訳ありませんーー」
「いや、私が勝手についていただけだ」
 うん、そうなんだよね、結果的には。

「それよりも、こちらの方はサキナ殿のーー」
「ーーはい。弟なのですが、私も会ったのが久しぶりで」
 サキナが言いにくそうな顔でキサラを見た。

「え?」
「まさか、盗賊になっているとはーー」
 知らなかったのかーー。

「ーーこっちに来い」
 兄と会話をする気がないのか、キサラは奥の部屋を指差し歩いて行く。

 俺はサキナが何かされていないか、しっかりと彼を見た。顔とか腕とか、見えるところは大丈夫だけどーー、とその視線に気づいたのか、サキナが笑う。
「ーー大丈夫ですよ。何もされていません」
 本当?ならよかった。


  
 キサラがドアを開け、俺達に合図をだした。部屋の中にいる人物に、サキナが盛大なため息をつく。
「ーーそうだと思ったけど、やっぱりそうか……」

「久しぶりだね、お兄様。期待通りだった?それは面白味がなくてごめんね」

 ほえーー、またきれいな男だなーー。

 部屋には2人ひとがいたが、主はこいつで間違いないだろう。ふわっとした金髪にクリアな緑色の目。サキナと同じ色をもち、よく似た顔立ちの超がつくぐらいの美青年。美少年、でもいけそうだな。

 彼が黒色のリボンタイをいじりながら、楽しそうな顔でこっちを見ている。

「マキラーー」
「ーーまた、お腹にいるんだ。父親はエドアルドでしょ?よく飽きないね」
「そういう問題じゃない」
「愛してるんだ」
「……」

 キサラが用意してくれた椅子に腰をかけ、サキナが息をつく。話し方変えてんだなーー、男にしては言葉が柔らかい、つうかオカマみたいだもんな(失礼ね。byサキナ)。

「ーー元気にしてた?」
「黄色王のこと?お兄様が思っているより良いひとだったよ。さすがはお祖父様のお眼鏡にかなったひとだよね~」

 くすくすとひとを馬鹿にするような笑い方に、俺は眉を寄せる。なんか、危ない感じのひとだな。

「そう。でも、どうして?」
「何が?」
「いつからなの?」
「やっぱりわかるんだね……」  

 ふふっ、とあやしくマキラが笑う。
 ふたりが何を言っているのかはわからないけど、兄弟だし共通の話題があるんだろうな。

「ーーアザ花種になるかならないかって、差は紙一重みたいなものらしくってね、最近の研究じゃ、アザがなくても中身はアザ花種のようになっている人間もいるらしいんだーー」

 マキラの説明を聞きながら、サキナは頷いた。でも、俺は話の内容に追いついていない。

 ん?それってどういうことなの?中身がアザ花種って、ようは子供ができる器官があるかないかってことだよな。
 

「それが何かのきっかけで、後からアザがでてくるーー、後天性アザ花種」
 後天性ーー、成長してからわかるってやつ?

「知ってたんだ」
 前髪をかき分けるとマキラが額を見せた。彼の額には3つの花びらのようなアザがあった。

「お気に召した?」
「もちろん。なりたくて仕方のなかったアザ花種。うれしいに決まってるーー、生まれたときからアザ花種だった、お兄様やセリ、サシャラなんかにはこの気持ちはわからないよね」

 うっとりとマキラが笑う。いかにも幸せそうな表情に、サキナが眉を寄せた。

「後から?」
「そう、生まれたときにはわからず、成長途中でアザ花種になるのです」
「なぜ?」
「それは簡単です。誰もがお腹にいるときにアザ花種になる薬をおはらが飲むから、生まれた後になって薬が効いてくるのでしょうね」

 そうなんだーー。
「逆、なのか」
「そういうことです。誰もがアザ花種になる要素はあるが、ならない場合もある、というのが魔法科学の話ですね」

 ふ~ん。極端なこと言えば、俺でもアザ花種になる可能性があるんだ。


 けど、
「ーーならずに済むのならなりたくはないな」
 産めるからって、それを期待されるのも嫌な話だよ。

「ええ。それが普通の感覚ですーー」
「何言ってんの?お兄様なんてアザ花種だったから、お祖父様からの溺愛を受けてたんでしょ?」
「ーー望んだことじゃないよ」

「よく言うよ。ぼくやキサラなんか、お祖父様はいないもののように扱ってた。他の従兄弟達もすぐに寄宿学校に追いやられたじゃない。
 お祖父様にとってはアザ花種の孫だけがいればよかったんだもんねーー」
「そんなに道具になりたかったんだ」
「無視よりましだよ」



 ……ーーはーー、大変な家だな。
 聞いてると、サキナ達の親より爺さんが一番偉くて、爺さん中心なおいえなんだろうな。そんでもって爺さんはアザ花種の孫だけ可愛がってきた。

 ひどい爺さんだなーー、孫は平等に可愛がれよ~~~。
 きっと母ちゃんが言ってた、自分の娘の子はかわいくて、息子の嫁の子はどうでもいい、ってやつだ。


 ん?じゃあ俺に子供ができても可愛がってくれないのかーー?母ちゃん、それはひどいぜ。姉貴なんか母ちゃんに用事頼まれても、何にもせずに腐ってただけだろ?

 兄弟で差別はほんと、よくないよなーー。
 そりゃ、小さい頃から差をつけられて育てば、こんな風にひねてもしょうがない話かーー。

 でも、アザ花種を大事にするのって、結局政治的なことに利用できるからだろ?それもなんか嫌な話だなーー……。





「マキラ、いままでどうしてたの?」
「気になる?ーー黄色王陛下が崩御されて、ラース領に帰ったんだ。アザ花種になったって知ったときのーー、ふふっ、あのときのお祖父様のうれしそうな顔、たまらなかったよ」

 マキラが大きな声で笑いだす。その病んだような笑い方、精神大丈夫だろうな?

「テレゼがいなくなった穴埋めで、リッチ国の王子と結婚するように言われたんだけど、話がまとまる前に、お祖父様が病気になっちゃったんだよね。
 父様は好きにしたらいいって言うし、だったらサキナお兄様に会いに行こう、と思ってここまで来たんだ」
「キサラはいつ来たの?」


「話しかけるな」
 冷たくキサラが言い放つ。彼も爺さんの偏った溺愛には思うところがあったのかもな。

 でも、つらそうなサキナさんを見ていると、俺もつらい。なんとか仲良くできないものかな……。

「ーー私にどうして欲しい?」
「ぼくの隣りにいるひと、人買いのプロなんだ」





ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 いつも最後まで読んでいただきありがとうございます😊

 前作にでてきたサキナの弟、マキラの登場です😔いろいろありそうです。
 実は、キサラは名前だけでています。どんな作品でも、前作の登場人物とかがでてくる、ってちょっとうれしいな~、と思います🙂
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