(完結)主人公の当て馬幼なじみの俺は、出番がなくなったので自分の領地でのんびりしたいと思います。

濃子

文字の大きさ
54 / 194
当て馬にスパダリ(やや社畜)婚約者ができました。編

第3話 とんだ、お邪魔むしがきたぜ。

「ーー失礼致します。ラース大公令息、ラース閣下とお呼びしてもよろしいですか?」
 声をかけてきたのは、埃にまみれていてもキラキラしている男、ルーカスだ。

 ちょい、おまえ。その挑んでいくような空気はなんなんだよ。会うのはじめてだろ?アートレも睨みっぱなしだし、感じ悪いな。

「ーー好きに呼べ」
「では、ラース閣下。私は、ルーカスと申します。以前アディオン殿下には魔ドラゴン討伐の旅にお付き合いいただき、格別のお慈悲をいただきました。そのことにつきまして、殿下にお礼の言葉を申し上げたいと思いますが、よろしいですか?」

 何だか毒が含まれるようなルーカスの言葉だ。まわりの騎士達がはらはらした顔をして見ているよ。
 けど、キサラの表情は変わらない、物珍しいものを見る目でルーカスをみている。

「ーー許す」
 なんだろね。
 キサラの身体が心配で、俺それどころじゃないんだけどーー。

「ーー殿下」
「あ、ああ」
「あのときは、本当に生命を救っていただきありがとうございます」
 そんなキラキラした顔で言われてもさーー。
「ーーどのときだ?」
 何かあったか?

 俺の言葉に、ルーカスがふと泣きそうな顔になった。いや、でもそんなことあったか?セクハラされたことしか覚えてないぞ(あれはひどすぎだよ、おまえ)。

「ーーおい、こいつに治癒をかけた挙げ句に、生命エネルギーぶち込んだんだろーー」
 呆れたようなキサラの声に、俺はハッと思い出した。

「ああ。人命救助は当然のことだ」
 そうだ、そうだ、無事でよかったよなーー、と思った俺に、離れたところにいたエドアルドが吹きだす。


「ーー私の愛弟子が、そんな手にのるかーー」
 くくっ、と笑いながら、エドアルドがこっちに来た。

「さて、1週間ほどへブリーズ領へ帰らねばならない。おまえは?」
「ムサが次の準備中だ」
「そうか、ならサキナ達はまかせたぞ」
「あれは連れて行け。子供達はみてやる」
「やれやれ、もう少し慕ってやれ」
「エド兄でも冗談を言うんだな」
 嫌そうな顔をしながらキサラが言った。エドアルドと話すときは、ちょっと子供っぽいんだ。

 激、かわいいーー。我、眼福なりーー。


「まあ、いい。サキナとリンゼは連れて行こう」
「ああ」
 訓練場から出ていくエドアルドに、全員で敬礼だ。ほんと、カリスマ力しかないよな、あのひと。

「ーーおい」
 キサラが俺に声をかけた。
「ああ、行こうか。ケレイブーー」
「はい。後はおまかせください。しかし、ラース閣下は強いですなーー」
 感動で鼻息も荒くなるケレイブに、キサラが言った。

「ーーキサラでいい」
 おっ、とケレイブが目を丸くする。
「いやいや、そんなわけにはーー」
「隣接大陸の大公など、こちらでは意味もない」
「そっ、そんな、ご冗談をーー。ラース大公家といえば、あちらの大陸の主でおられるのでしょう?」

「ーー祖父の時代は、だ……」
「いまは、違うのですか?ラース閣下はあちらに戻る気はないのですか?」
 口をはさんだルーカスを俺は睨んだ。戻るって言ったら、おまえしばきだからな。

「ーーそうだな。領地返還の手続きには行かないと」
「領地返還?」
「ああ。将来はエトルカーナ領で世話になるからな」
 ごく自然にキサラが言葉を続けた。

 うん?

 エトルカーナ領……、俺の領地で世話になるーーーーー…………。


 !

 ーーそれって、それって、、、それってまさかぁ!!あかん~~~っ!!平常心、平常心、平常心、平常し~~~んーーーーッ!!

 落ち着け、与一。よかったな、与一。おいおい、与一。どっかにレコーダーねえの?誰か発明してくれよ。

 ーーもう、あんなのプロポーズじゃないか、うん。プロポーズだよ。なんであんなさらっと言うんだよ。もっとロマンティックなところで、『将来はふたりでエトルカーナに住もう』、って言ってくれよ。

「では、失礼する。フルロンティ卿」
 キサラがそう言うと、ルーカスは驚いたように目を見開いた。
「ーーよくご存知で……」
「婚約者の部下の名を知っていることがか?ずいぶんと舐められたものだな」
 
 いやーー!キサラが、婚約者、のとこ強めに言ったよ。そうだぞ、俺はキサラの婚約者なんだぁーー!
「ははっ、さすがにうちの騎士団すべては無理でしょう?」
 笑うケレイブに、キサラが言った。

「そうだな。……レルズム砦常駐のカムリとカウリが混ざる」
「へ?」
「邪魔したな。シュラルティ卿ーー」
 さっと歩きだしたキサラの後を俺は追う。キサラの歩幅は一定で、いつもは俺を気づかうような歩き方をしてくれるんだけどーー、いまはすたこら行ってしまうぞ。
 あれれ?











 ※※※

 引くぐらい幸せオーラがでているアディオンと、冷静さをくずさないキサラが去った後、ケレイブが副団長オーフェンに尋ねた。
「……レルズム砦に、カムリとカウリという兵士がいるのか?」
「いや、レルズム砦の常駐隊長の名は知っているが、隊員の名までは覚えていないなーー」

「失礼します!私の同期にカムリとカウリがいます!」
 そのとき、ベルスターという新人の騎士が手をあげた。
「ーーいるのか!」
「はい。学院でも、ややこしいと言われていたやつらです。国境警備部隊に入ったとは聞きましたが、一番遠いところだったんだ……」
 
 その話を聞いて、アートレが顔を曇らせる。
「ーー嫌味な野郎だぜ……」
「ーー本当に……」
 ルーカスも同じ気持ちなのか、唇を噛み締めた。
「おまえがいらん喧嘩をふっかけるからだろ!」
「はっ、殿下に冷たくされても、あのひとが怖くて何も言えなかったくせにーー!?ビビったんですか??」

「はあ!誰がビビってんだ!」
「あなたですよ!!」
 お互いにつかみかかろうとするふたりの間に、師団長リコルスが入った。
「おまえ達、いい加減にしろ!アートレも警備詰所に帰れ!」

「また来ます!」
 やべー、とアートレが逃げ出す。
「時間外にしろ!殿下がお怒りだったぞ!!」
「冗談でしょ!アディはオレには格別優しいんですよ!!」


「ーーいつまでそうだと思っているのやら」
 呆れたようにオーフェンが言った。
「まったくーー。さっさと諦めればいいものをーー」
 リコルスのぼやきをひろったルーカスが、独り言をもらす。
「諦められませんよ。あの方だけは……」




 ※※※
















「ーーおい、キサラーー」
 俺の呼びかけに振り向くこともなく、キサラは歩き続け、脇道から中庭に出ていった。そこには見事に手入れされた季節の花々が美しく咲いていて、目と鼻を楽しませてくれる。
 
 花の側に立つキサラは、まるで絵本からでてきた王子様のようだ、カッコいいにもほどがあるぜーー。

「キサラ…」
 近寄った俺の顔をじっと見たキサラが、突然、キスをしてきた。
「ん……」
 どうしたんだ、キサラ!?キスは大歓迎ですけど~!

「……あ、…んっ~~」
 きつく唇を吸われて、俺はもはや夢見心地だよ。
「ーーキサラ…、俺、ずっとこうしてたい……」
 唇が離れるのが、さみしい~。
 硬い胸に頭を預けると、優しく抱きとめてくれる。こんなん、もう、幸せのフルコースや~~~!


「ーーダサいな……」
 ボソッと、キサラが言った。胸に耳が当たっているから言葉が俺の身体に響いてくる。
「え?」
 言われた意味がわからず、俺はキサラの顔を見た。
「ーーあいつらのいるところに、おまえを行かせたくないーー」


 ふぇっ!



 ほっ!!



 ーーまさか、キサラってば、焼いたおもち状態なのか~~~ッ!

「キサラ……」
「ーーいや、いまのは、忘れろ」
「嫉妬か?」
「……」
 キサラの無表情な美貌に、少しだけ動揺が走った。

「嫉妬なんだなーー。俺があいつらに会うのが、嫌なんだな?」
 確認するように言うと、キサラは顔を背けた。その顔を俺は両手ではさんで自分に向かせる。

「ーー俺はキサラだけだ」
「ーーーーーなぜだ?」

 ん?なぜだ?

「え?」
「ーーあいつらのほうが、、、格好いいと思う……」
「うん?キサラは目が悪いのか?」
「ーーいや、遠くまでよく見えるほうだ」
「じゃあ、遠視なのかもな。あいつらよりおまえのほうがカッコいいに決まってるだろ?月と雑草、比べものにもならないよ」
 ほんとにこのひとは何を言い出すのやら。

「……」
「それよりも、エドアルド殿のお子さんを預かるのか?」
「ああ」
「キサラは子守りができるのか?」
「問題児の弟がふたりもいるからな」
「そっか」
 たしかに、最強(最悪)の弟さんがいたぜ。






 ーーガサッ。

「あっ、キサラ!ここにいたの!?」
 突然、薔薇の花の間から、愛らしい顔がでてきた。
「アイゼ……」
「お父様にきいたよ。キサラのとこでせわになれって」
「ああ」

「んでね、ぼくいまこまってるんだけどね、どうしたらいい?」
「だろうな……」
 ため息をついたキサラが、アイゼの顔のまわりにある薔薇の枝を、左右に分けた。トゲ刺さってたのか?すり傷になってるぞ。

「早くでろ」
「ありがと~」
 ピョン、と小さな少年が跳ねる。兄貴の婚約者のテレゼも美少年だけど、この子もかなりの美形だよ。さすがはあの両親の子だな。髪は銀色で、目はサキナと同じ緑色だ。

 ほんとに感心するぐらい、美形一族だよな~~~。

「ーーでね、キサラ。ランゼがないてるの」
「はあ?」
「マムがね、ランゼのしろのブランケットにコーヒーこぼしたの」
「鈍臭いやつだな」
 ん?マム?ーーああ、ママのことか。ママ呼びとは、さてはサキナさんセレブだったな?


「で、わんわんないてるのーー。ランゼはなきやまないし、お父様はイライラしてるから、ぼくにげてきたんだ」
「ーー行くぞ」
「うん!」
 キサラが屈むと小さな少年はその背中に飛びついた。アイゼをおぶって、恋人が歩き出す。

 ーーおんぶかーー、うらやましいな……。

「ーー俺も行っていいか?」
「ああ……」
「えーー。いいけど、ぼくとキサラのじゃまはしないでね」
「……」
 なんだ?こ、これはライバル登場か!生意気なガキンチョがいっちょまえに!!



  兄貴とテレゼのこともあるからな、どんな年齢のやつでも俺は油断しないぜ!






ーーーーーーーーーーーーーーー

 いつも最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
 いちゃいちゃなふたりに、アイゼくん乱入です。
 さあ、どうなんでしょう~~~😄
感想 237

あなたにおすすめの小説

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
【完結/番外編準備中】 目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです! ---------- 追記:読んでくださった皆さま、本当にどうもありがとうございました!! 完結しましたが回収しきれていないエピソードが私の中でいくつかあるので笑、後日番外編をアップしたいなと現在準備中です。 詳しい更新日まだ未定ですが、もしよろしかったらゼヒまた覗いてやってくださいねー!

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。

めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。 その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。 ⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる ⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない ※全四話、予約投稿済み。 本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。 ※後日談を3/25に投稿予定←しました。Rを書くかはまだ悩み中

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。