(完結)主人公の当て馬幼なじみの俺は、出番がなくなったので自分の領地でのんびりしたいと思います。

濃子

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当て馬にスパダリ(やや社畜)婚約者ができました。編

第11話 またね。

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 次の日、俺はキサラとボール作りに励んだ。あーでもない、こーでもない、と言いながら、蹴りやすいボールの誕生を目指す。

「ーー空気か……」
「そう、ボールのなかに空気が入ってるから、よく弾むんだよ」
「……丸、というのがなーー」

「あっ!こういう五角形が集まって縫い合わせてたよ!!」
「五角形ーー、ああ、そういうことか。布で見本を作ってみようーー」

 キサラがしっかりした白い布に五角形をたくさん描いた。
「黒にするのは、ここだなーー」
 と、並んだ五角形の一部分を黒く塗る。マルスにも手伝ってもらって(私忙しいんですがーー。byマルス)、布を継ぎ合わせ球体ができた。

「あっ、丸だ」
「32面体かーー」
 なかには羽毛をいれるらしいんだけどーー。これってあれだ、フェルトのボールだよ。



「ーーボールのなかには羊や豚の膀胱を膨らませたものが入っているそうですが」
「そんなのいれてるの!?」
 ぼ、膀胱!?
「それを破れないようにしっかり覆うので、どうしても重くなるのです」
 ボール、おまえって文明の利器だったんだなーー。
 
 俺は布ボールをアイゼに蹴って渡した。羽毛にしたからか、そこそこ蹴れるな。
「うわ!カッコいい!すっごい、うれしいッ!!」
 たしかに、こんなボールは、どこにもないもんね。雨がふったらヤバイけど。

「ーーアディが言いたいのは、薄く丈夫なゴムを球体に加工してそこに空気をいれる、というわけだなーー」
「うん。空気入れ、ってないよな」

「まずは加工だ。軽くて丈夫ーー。ラテックスで有名なのはへブリーズ領だがーー。加工までできるか、知り合いに聞いてみるかーー」
「そう?ごめんな……」
「どうした?」
「せっかくの休暇なのに、ゆっくりできないだろ?」

「ーーゆっくりなんか、してられるか」
「え?」
「しっかりおまえを補充しとかないとなーー」
 耳のすぐ横でささやかれ、俺の心臓は跳ねる。

「おいーー」
 ーー腰抜けたーー!!
 その場にへたり込んだ俺を見て、マルスが大笑いだ。

「休憩ですか?シーツの交換はすんでますよ」
「ーーすみません」
 真顔で謝る彼を見て、俺の顔はトマトよりも赤くなっただろうーー。


 ーーいやん、キサラったら~~~!もう、いやん~~♡
















「アディオン殿下!」
「ああ、サキナ殿。お元気そうでーー、マルス、先に行ってくれ」
「はい。坊っちゃまーー」
 ピシッとしたマルスが先に行くと、俺達は途端にくだけた態度になる。

「ごめんねー、子供達がお世話になっちゃってーー」
「いやいや、兄上のほうが面倒見てくれてーー」
「ーーあの方はできたひとよね……」
「兄上みたいなひと、好みですか?」
「自分で選べるならアタックしてたかも」
 サキナの本音に俺は吹きだした。

「ーー政略結婚はつらいっすね」
「そうよ。本当にーー」
 ぷーっと、サキナが頬を膨らませる。かわいいけど、このひと何歳だったっけ?

 しかし、今日は動く度にすごい匂いがするなーー。
「ーーなんか、サキナさん。今日は匂いきつくないですか?」
「あ、あら、そう?」
 慌てたように、サキナが口元を押さえた。

「ん?」
「ーーアザ花種ぐらいにしかわからないと思うんだけど、その~、えっちした後は匂いが強くなるでしょ?」
「………」
「まー、そういうこと……」
 結論、エロマスターとめちゃくちゃえっちをした。

 そういうわけですねーー。

「ーーちなみに、俺って、何の匂いに近いですか?サキナさんはラベンダーっぽいですよね?」
 マルスは教えてくれなかったけど、絶対、花の名前ど忘れしてんだぜ。

「う~ん。殿下はーー……、ああ、あれだわ」
「はいはい」
「沈丁花!春になったら香ってくる、あれに近いわーー。でも、あれより少し薄いのかしらーー」


 ブツブツ言うサキナの横で、俺の顔は真っ赤になっていった。


 え?沈丁花ーー。




『沈丁花のほうが好みだーー』







 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー、ーーーーーー、キサラ………ーー。




 ばひゃぁぁぁぁぁ~~~~~~~ッ!!



 あのひとは俺をどこまで惚れさせたら気がすむんだよ。『見に行かなくても側にある』、って言いたかったのかーー。

 まったくーー。

 俺じゃなきゃ、そんなのわかんないって。
 








 







 楽しかった1週間が終わりに近づく。
 そうなると俺はもう、キサラに抱きついたまま離れなくなっちゃうんだ。
 マルスやエリンなんか慣れたもので、顔色ひとつ変えないや。

「坊っちゃま。バックスベアで買われた商品を応接室に忘れていましたでしょ?」
「あー、そうだ」
 受け取って、飾り棚に紙袋を入れた。
「何だったんだ?」
「……自分のものだよ……、」

「……見たい」
「え?」
 キサラの言葉に俺は目を瞬かせた。そりゃ、紙袋なんか高級な店でしかもらえないけどさーー。キサラならよく知ってんじゃないのかな。

 包みをだして紙袋を渡すと、キサラの眉が寄った。
「ーー何でだ?」
「ん?あー、こっち……?」
「ーー何だよ、それ」

 不機嫌な声に、俺は観念する。
「えっと、キサラの、ブランケットーー……」
 もじもじしながら言うと、キサラの目がまるくなった。
「ーー俺の?」
「うん。ランゼちゃんにも貰っただろうから、これは洗い替えにでもしてくれたらーー」
 あれ?そういえば持ってこなかったなーー。何でだろ……。

「キサラ、ブランケットどうしたんだ?」
「アイゼが気に入って使ってる」

「ーーあ、……なんだ………」 
 俺は包みを急いで開けた。
 白のブランケットを広げて、自分とキサラをくるんじゃう。

「そっかーー。早く出せばよかったよ。キサラの匂い、いっぱいつけたかったのにーー」
「ーー変態だな」
 キサラがキスをくれる。
 
「ーーうん、変態だよ……」
 ボロボロと涙がこぼれてくる。いいんだ、今日は泣いたって。おまえが好きだから涙が勝手にでてくるんだよーー。
「……」
 涙をすくうようなキサラのキスに、俺の涙腺は壊れた。あー、さみしい。好きなひとと離れるだけなのに、なんでこんなにさみしいんだろ。

「ーー待ってろ」
 彼の言葉に俺はしっかり頷いた。
 キサラはもう、「待っててくれ」、とは言わない。俺も、彼の気持ちにしっかり応えないとなーー。

 

 また、無事に帰ってきてくれ。


 俺は、ずっと待ってるからなーー。キサラの好きな沈丁花の匂いと一緒に、さ……。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 いつも最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます😌

 たくさんの方に読んでもらえて、感謝にたえません。


 アディとキサラにも、挨拶させますので、もう少しお付き合いくださいませ。




アディオン
「チース!いつも応援ありがとうございます!与一こと、アディオンで~す!ん?アディオンこと、与一なのか?」

キサラ
「ーー礼を言う……」

アディオン
「何、カッコつけてるんだよ。カッコいいけどーー☆」

キサラ
「……いや、俺が言っても、な……」

アディオン
「ん?どうしたんだーー?」

キサラ
「……俺の評判は、よくない……、し……」

アディオン
「ウッソ~!気になるんだ!意外に繊細なんだなーー。さすがは真のおぼっちゃまだよ!」

キサラ
「………坊っちゃん、で悪かったな」

アディオン
「イヤだなーー、悪いなんて言ってないぞ~~。坊っちゃんでいいじゃないか!むしろ、坊っちゃんなのに仕事ができるってすごいよーーッ!!」

キサラ
「そうか」

アディオン
「その相手にするのをやめたみたいな態度、何なんだよ」

キサラ
「ーーそういうわけじゃない」

アディオン
「いいさ、絶対に俺のほうが好き度が高いんだから!!キサラは黙って俺に愛されてろ!!」

キサラ
「いや、おまえこそ黙って俺の愛を受けていろ」

アディオン
「ぎゃーーーーーッ!キサラが血迷ったぁッ!!」

キサラ
「(すぐそういうことを言うーー)」

アディオン
「もう、恥ずかしいのでこの辺でーー!また、お会いしましょうねーーッ!!」

キサラ
「……感謝している」

アディオン
「ありがとうございました~~~!」
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