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魔法とアザ花種 編
第15話 アディオンとイリス
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「アディ!」
馴染みの声がしたので俺は目を開けた。
「ーーイリス!大丈夫か!?」
跳ねるように身体を起こして、その顔をみる。
「平気、平気。僕、君がピンチのときに寝てたんだってね。ごめんね……」
よせやい。
おまえにそんなしおらしい顔をされると照れちまうぜ。
「いや、何事もなくてよかったよ……」
ふと、部屋の中に目をやると、扉の前にルカルドがいるのが見えた。俺の姿が視界にはいったのか、慌てたように下を向く。
「ーー何のよう?」
イリスに聞くと、難しい顔で「う~ん」、と唸った。
「悪い人じゃないよ」
って、おまえはあっさり言うけど、判断材料はなんなのさ。昨日知り合ったばかりの人間の本性なんかわかるのかいーー?
ーーいや、本能の直感はバカにできない。俺はそれを身をもって知ってる。
なぜなら、俺はキサラをはじめて見たとき、盗賊の格好をしたあいつを、悪いやつじゃない、って脳ミソもだけど、心でも感じたんだよ(あのままホントに盗賊でも、俺は一緒になった自信はある)。
よくあるじゃん、脳ミソで「こいつはいいヤツだ」、とか思ってても、心の中じゃ「なんかヤダなー」、ってモヤモヤするとかさーー。
脳ミソと感情が一致するってなかなかないと思うんだけど、キサラは完全に一致したんだよ。まっ、これも一目惚れの一言で片付くからどうでもいい話なんだけどさ。
「ーーおまえがいうならそうなんだろうけど、俺に何を言う気なんだ?」
ロンドスタットの人間は近づかないようにしてもらってるから、誰も部屋には来ない。
何かあれば、エウローペーはロンドスタットとの国交をやめるとまで言った。これぐらいしないと安心できないなんて、どんなとこだよな?
「謝りたいんだって」
「あのひとは関係ないんだろ?従兄弟の暴走を止められなかったことを苦にしているのか?」
薄く笑うとイリスの眉根が寄った。
「アディ……、ちょっと意地が悪いよ」
「そうか?キサラが気づいてくれなかったら、俺もだけど、おまえも危ない目にあってたかもしれないのに?」
甘いだろ。
早く用事をすませてずらかりたい。ただし、泊めてもらってベッドを好き放題使った身ですから、おとなしくはしときますよ。
「……敗戦で捕虜になったわけでもないのに、ひどい扱いだ」
「ーーアディって、わりと現実的なんだね」
「何がだ?」
「戦になったらエウローペーが負ける可能性も考えてるんでしょ?」
「それはな。ーー王族だったら考えることだよ。生きる方がいいのか、死んだほうがマシなのか、とかなーー」
エドアルドがいるとはいえ、他国の領なんかにホイホイくるんじゃなかった。このまま人質になったら、父上にも兄上にも迷惑がかかる、ってのにな……。
「ーーいや、俺が舐められやすいのがだめだったんだろうな……」
「アディ……」
「おまえはルカルドさんを信じているみたいだが、何をもって信じることにしたんだ?俺達は演技なんか得意じゃないかーー」
彼のほうを見ると、そこにはもう姿がなかった。気まずくなって出ていったのかもな。
「………」
イリスが無言のまま俺を見た。
何だろうーー、ずいぶんと真剣な顔だよな……。
………ん?
ーーうんっ??なんだ、イリスから発せられるこの甘ったるい感情は………………??
ーーって、まさかっ!?
「ーーお、おまえ…、る、ルカルドさんのこと……」
「やだぁ!」
バシンッ、と頬をはたかれる。何でだよ。
「じょ、冗談、だよな……?」
「えーー、まだ、イイな~、ってぐらいだけど」
人差し指をツンツンするな!
もじもじするおまえはカワイイよ。かなり、ぐっとくるんだけどさーー……。
ーーいや、おかしいだろ。
「ーーあのひと、ネコ側じゃないのか……?」
「どっちでもいけるんだって~」
何を聞いてるんだ。もう、そこまで会話が進んでるの?
「いくら何でも、やめときなさい」
アディオンも号泣しているぞ。
「なんで?アザ花種にとっては、直感こそ一番信用できるものでしょ?」
「ーーそうか?」
「うん。直感的に『このひとの子を産みたい』、って思うのが正解の種だもん。運命の相手じゃなくても、近いものを選択するようにできてるんだよ」
さすが、アザ花種の先輩は言うことに実があるよ。けどね、けどさーー……。
「ーールーカスは?」
「初恋だったから。美化してたんじゃない?」
いやいやいや……、おまえひどすぎないかーー?そんな調子でバンバン相手を変えそうだな……。
んーー、けど、恋愛ってそういうもんか……。結婚とは違うんだから、いくらでもやり直せるんだよなーー。ダチでも、3ヶ月ぐらいで違う人と付き合うやつ多かったわ……。
別れる理由はそれぞれだけどさ、一番聞いたのは、『思ったのと違う』、だ。一度違和感を感じたら、それを拭うのって難しいもんな。
ーーそれにこいつ、なんといってもBLゲームの主人公だし、相手はたくさん用意されてるんだ、もしかするとそういうふうになってるのかも……。
「ーーおまえが幸せだと思うほうを選んでくれ」
俺はもう、知らん。ほんと、イリスといいアートレといい、アディオンにはろくな幼なじみがいないーー。
いや、相手をひょいひょい変えるのと、好きなひとを手に入れるためなら犯罪にも手に染めるのと、どっちがいいかっていったら、ひょいひょいのほうが害はなさそうだけど……。
ーールーカス、あいつほんとにイリスのこと、好きじゃないのかな……。なんか、それもどうなのよーー。俺が優しくしたから、キュンときただけだろ?あいつ、チョロすぎないーー?
あれか?日本人は勤勉で真面目、みたいなキャッチコピーがあるように、エウローペー人は無計画で変人が多い、ってやつなのかーー?
パピーも兄貴もアレだし、案外そうなのかもなーー。
「ーーと、いうわけで朝食を一緒にとろうよ」
「ーー何が、『と、いうわけ』、だ。ルカルドさんだって、腹の中じゃ俺とキサラが別れたらいいとか思ってるんだ」
「そんなひとじゃないよ……」
「あきらか俺に嫌がらせしてたじゃないか。なんだよあの、自分のほうが知ってますアピール、あれは婚約者の前でやっちゃダメなやつだろ」
「アディのくせに、一理あるね」
言い方がひどいな。
「向こうだって俺のこと敵だと思ってるし、キサラが戻ってきたら国に帰る」
「え?魔法は?覚えるんでしょーー?」
「習得の可能性が限りなくゼロになった」
カッコつけて言うと、イリスが笑い出した。
「なんでーー?話だけでも聞こうよ」
「聞いても無駄だよ。俺、知らない間に2番目の魔法を習得しちゃったから。3番目はありえないんだーー」
きーー、悔しいわ~。
「2番目?」
「キサラが怪我したんだ。俺はそれを無意識で感じとって、精神体になって怪我を治しに行ってたんだよ。んで、キサラも昨日俺が怪我をしたのがわかったみたいでさーー」
「怪我したの?」
「まあな。逃げるために、ちょっとなーー」
「ふうん。でも、医療院でも聞くよ、パートナーの怪我がわかる話」
「え?」
「それ、魔法じゃなくて、拘束力が働いているんじゃない?」
「え……?」
拘束力ーー?なんだよそれ、物騒なこと言うな……。
「アディは知らないかもしれないけど、アザ花種のなかには匂いで相手を魅了して、奴隷みたいにできるひともいるらしいよ」
「ーーあっ、」
もしかして、マキラみたいなやつのことかーー。
「けど、アザ花種同士ぐらいじゃないと匂いがわからないのに、どうやってーー」
「敏感なひともだけど、自分がマーキングしたひとなら普通のひとでもわかるって聞く。それによりお互いの状態を感じたり、アディの場合は治癒魔法の応用ができた、って感じじゃないの?」
ーー敏感…、マーキングした……。それって……。
「アディって、キサラさんに一目惚れしたんだよね?」
ーーちょっと、待ってくれよ……。俺、ーー。
「で、どうしたんだった?」
「ーーいや、ちょっと体当たりをーー」
「色じかけでしょ」
ぐさりっ。
……なんか刺さったな。
「そのときに、キサラさんにマーキングしたんじゃないの?自分のことを好きになるようにーー………」
『ーーおまえの匂いが、好きだ……』
「………、」
「ーーアディ……、顔色が真っ青だよ……」
「ーーーウソだろ……?じゃあ、まさか、キサラは……、俺の匂いに騙されてるのかーー?」
頬が引きつる。
動揺しすぎて喉の渇きがヤバい。
「敏感なひとは影響を受けやすいし、相性がいいのもたしかだと思う。たまに匂いが好きになれない、ってひとも聞くけど」
「だとしても……」
「キサラさんには恋人はいなかったの?ルカルドさんは違うだろうけどーー」
「いないってーー」
ーー俺に恋人はいない、ってはっきり言ってたぞ。浮気もする暇がないって……、あれ?暇があればするのか?
「婚約者はいなかったの?アディのために、別れたんじゃないのーー?」
「………」
俺は、イリスの顔を見た。ただ、見るしかできなかった。
ーーほんとにそうだったら?それは、俺が無意識とはいえ、匂いで拘束したことになるのかーー?
いや、だって、俺のこと好きだって、愛してる、って、何回も何十回も言ってくれてるよーー。
ーーそれが、アザ花種の匂いのせいなのか?知らないうちに、マーキングしてるの?俺がーー?
「ーーアディ…」
「うるさいーー」
俺は椅子から立ちあがり、テラスの柵を飛び越えた。
「ちょっと!どこ行くのーー?」
ーーうるさいーー!!おまえの声が聞こえないところだよーーッ!
馴染みの声がしたので俺は目を開けた。
「ーーイリス!大丈夫か!?」
跳ねるように身体を起こして、その顔をみる。
「平気、平気。僕、君がピンチのときに寝てたんだってね。ごめんね……」
よせやい。
おまえにそんなしおらしい顔をされると照れちまうぜ。
「いや、何事もなくてよかったよ……」
ふと、部屋の中に目をやると、扉の前にルカルドがいるのが見えた。俺の姿が視界にはいったのか、慌てたように下を向く。
「ーー何のよう?」
イリスに聞くと、難しい顔で「う~ん」、と唸った。
「悪い人じゃないよ」
って、おまえはあっさり言うけど、判断材料はなんなのさ。昨日知り合ったばかりの人間の本性なんかわかるのかいーー?
ーーいや、本能の直感はバカにできない。俺はそれを身をもって知ってる。
なぜなら、俺はキサラをはじめて見たとき、盗賊の格好をしたあいつを、悪いやつじゃない、って脳ミソもだけど、心でも感じたんだよ(あのままホントに盗賊でも、俺は一緒になった自信はある)。
よくあるじゃん、脳ミソで「こいつはいいヤツだ」、とか思ってても、心の中じゃ「なんかヤダなー」、ってモヤモヤするとかさーー。
脳ミソと感情が一致するってなかなかないと思うんだけど、キサラは完全に一致したんだよ。まっ、これも一目惚れの一言で片付くからどうでもいい話なんだけどさ。
「ーーおまえがいうならそうなんだろうけど、俺に何を言う気なんだ?」
ロンドスタットの人間は近づかないようにしてもらってるから、誰も部屋には来ない。
何かあれば、エウローペーはロンドスタットとの国交をやめるとまで言った。これぐらいしないと安心できないなんて、どんなとこだよな?
「謝りたいんだって」
「あのひとは関係ないんだろ?従兄弟の暴走を止められなかったことを苦にしているのか?」
薄く笑うとイリスの眉根が寄った。
「アディ……、ちょっと意地が悪いよ」
「そうか?キサラが気づいてくれなかったら、俺もだけど、おまえも危ない目にあってたかもしれないのに?」
甘いだろ。
早く用事をすませてずらかりたい。ただし、泊めてもらってベッドを好き放題使った身ですから、おとなしくはしときますよ。
「……敗戦で捕虜になったわけでもないのに、ひどい扱いだ」
「ーーアディって、わりと現実的なんだね」
「何がだ?」
「戦になったらエウローペーが負ける可能性も考えてるんでしょ?」
「それはな。ーー王族だったら考えることだよ。生きる方がいいのか、死んだほうがマシなのか、とかなーー」
エドアルドがいるとはいえ、他国の領なんかにホイホイくるんじゃなかった。このまま人質になったら、父上にも兄上にも迷惑がかかる、ってのにな……。
「ーーいや、俺が舐められやすいのがだめだったんだろうな……」
「アディ……」
「おまえはルカルドさんを信じているみたいだが、何をもって信じることにしたんだ?俺達は演技なんか得意じゃないかーー」
彼のほうを見ると、そこにはもう姿がなかった。気まずくなって出ていったのかもな。
「………」
イリスが無言のまま俺を見た。
何だろうーー、ずいぶんと真剣な顔だよな……。
………ん?
ーーうんっ??なんだ、イリスから発せられるこの甘ったるい感情は………………??
ーーって、まさかっ!?
「ーーお、おまえ…、る、ルカルドさんのこと……」
「やだぁ!」
バシンッ、と頬をはたかれる。何でだよ。
「じょ、冗談、だよな……?」
「えーー、まだ、イイな~、ってぐらいだけど」
人差し指をツンツンするな!
もじもじするおまえはカワイイよ。かなり、ぐっとくるんだけどさーー……。
ーーいや、おかしいだろ。
「ーーあのひと、ネコ側じゃないのか……?」
「どっちでもいけるんだって~」
何を聞いてるんだ。もう、そこまで会話が進んでるの?
「いくら何でも、やめときなさい」
アディオンも号泣しているぞ。
「なんで?アザ花種にとっては、直感こそ一番信用できるものでしょ?」
「ーーそうか?」
「うん。直感的に『このひとの子を産みたい』、って思うのが正解の種だもん。運命の相手じゃなくても、近いものを選択するようにできてるんだよ」
さすが、アザ花種の先輩は言うことに実があるよ。けどね、けどさーー……。
「ーールーカスは?」
「初恋だったから。美化してたんじゃない?」
いやいやいや……、おまえひどすぎないかーー?そんな調子でバンバン相手を変えそうだな……。
んーー、けど、恋愛ってそういうもんか……。結婚とは違うんだから、いくらでもやり直せるんだよなーー。ダチでも、3ヶ月ぐらいで違う人と付き合うやつ多かったわ……。
別れる理由はそれぞれだけどさ、一番聞いたのは、『思ったのと違う』、だ。一度違和感を感じたら、それを拭うのって難しいもんな。
ーーそれにこいつ、なんといってもBLゲームの主人公だし、相手はたくさん用意されてるんだ、もしかするとそういうふうになってるのかも……。
「ーーおまえが幸せだと思うほうを選んでくれ」
俺はもう、知らん。ほんと、イリスといいアートレといい、アディオンにはろくな幼なじみがいないーー。
いや、相手をひょいひょい変えるのと、好きなひとを手に入れるためなら犯罪にも手に染めるのと、どっちがいいかっていったら、ひょいひょいのほうが害はなさそうだけど……。
ーールーカス、あいつほんとにイリスのこと、好きじゃないのかな……。なんか、それもどうなのよーー。俺が優しくしたから、キュンときただけだろ?あいつ、チョロすぎないーー?
あれか?日本人は勤勉で真面目、みたいなキャッチコピーがあるように、エウローペー人は無計画で変人が多い、ってやつなのかーー?
パピーも兄貴もアレだし、案外そうなのかもなーー。
「ーーと、いうわけで朝食を一緒にとろうよ」
「ーー何が、『と、いうわけ』、だ。ルカルドさんだって、腹の中じゃ俺とキサラが別れたらいいとか思ってるんだ」
「そんなひとじゃないよ……」
「あきらか俺に嫌がらせしてたじゃないか。なんだよあの、自分のほうが知ってますアピール、あれは婚約者の前でやっちゃダメなやつだろ」
「アディのくせに、一理あるね」
言い方がひどいな。
「向こうだって俺のこと敵だと思ってるし、キサラが戻ってきたら国に帰る」
「え?魔法は?覚えるんでしょーー?」
「習得の可能性が限りなくゼロになった」
カッコつけて言うと、イリスが笑い出した。
「なんでーー?話だけでも聞こうよ」
「聞いても無駄だよ。俺、知らない間に2番目の魔法を習得しちゃったから。3番目はありえないんだーー」
きーー、悔しいわ~。
「2番目?」
「キサラが怪我したんだ。俺はそれを無意識で感じとって、精神体になって怪我を治しに行ってたんだよ。んで、キサラも昨日俺が怪我をしたのがわかったみたいでさーー」
「怪我したの?」
「まあな。逃げるために、ちょっとなーー」
「ふうん。でも、医療院でも聞くよ、パートナーの怪我がわかる話」
「え?」
「それ、魔法じゃなくて、拘束力が働いているんじゃない?」
「え……?」
拘束力ーー?なんだよそれ、物騒なこと言うな……。
「アディは知らないかもしれないけど、アザ花種のなかには匂いで相手を魅了して、奴隷みたいにできるひともいるらしいよ」
「ーーあっ、」
もしかして、マキラみたいなやつのことかーー。
「けど、アザ花種同士ぐらいじゃないと匂いがわからないのに、どうやってーー」
「敏感なひともだけど、自分がマーキングしたひとなら普通のひとでもわかるって聞く。それによりお互いの状態を感じたり、アディの場合は治癒魔法の応用ができた、って感じじゃないの?」
ーー敏感…、マーキングした……。それって……。
「アディって、キサラさんに一目惚れしたんだよね?」
ーーちょっと、待ってくれよ……。俺、ーー。
「で、どうしたんだった?」
「ーーいや、ちょっと体当たりをーー」
「色じかけでしょ」
ぐさりっ。
……なんか刺さったな。
「そのときに、キサラさんにマーキングしたんじゃないの?自分のことを好きになるようにーー………」
『ーーおまえの匂いが、好きだ……』
「………、」
「ーーアディ……、顔色が真っ青だよ……」
「ーーーウソだろ……?じゃあ、まさか、キサラは……、俺の匂いに騙されてるのかーー?」
頬が引きつる。
動揺しすぎて喉の渇きがヤバい。
「敏感なひとは影響を受けやすいし、相性がいいのもたしかだと思う。たまに匂いが好きになれない、ってひとも聞くけど」
「だとしても……」
「キサラさんには恋人はいなかったの?ルカルドさんは違うだろうけどーー」
「いないってーー」
ーー俺に恋人はいない、ってはっきり言ってたぞ。浮気もする暇がないって……、あれ?暇があればするのか?
「婚約者はいなかったの?アディのために、別れたんじゃないのーー?」
「………」
俺は、イリスの顔を見た。ただ、見るしかできなかった。
ーーほんとにそうだったら?それは、俺が無意識とはいえ、匂いで拘束したことになるのかーー?
いや、だって、俺のこと好きだって、愛してる、って、何回も何十回も言ってくれてるよーー。
ーーそれが、アザ花種の匂いのせいなのか?知らないうちに、マーキングしてるの?俺がーー?
「ーーアディ…」
「うるさいーー」
俺は椅子から立ちあがり、テラスの柵を飛び越えた。
「ちょっと!どこ行くのーー?」
ーーうるさいーー!!おまえの声が聞こえないところだよーーッ!
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