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ー2ー 幼なじみじゃないと気づいたぼく
しおりを挟む「――ぐすっ」
よく、耐えた。涙くん、キミはエライな……。我慢強くて、本当にエライよ………。
「ぐすっ、ぐ……」
こんなとき、家が近いから泣き止む時間もない。――すぐに我が家に着いてしまう。
「……」
玄関のドアノブに手をかけたけれど、鍵がしまっていた。ポケットから鍵を取り出し、ドアを開ける。
「母さん、残業かな……」
防犯対策で暗くなるとキッチンには灯りがつくようになっているから、外から見てもひとがいるように見えるんだ。母さんも帰りが遅いときが多いから、防犯対策は大事だよね。
「……」
ひんやりした部屋に入ると、すぐに電気ストーブをつける。そのまま冷たい床にごろんと転がり、ぼんやりと天井を見た。
「………女物のピアス……、新しい…彼女、……かな……」
いて当たり前だ。景君はとってもカッコいいんだから――。顔もモデルみたいなイケメンだし、中身も優しくて頼りになる――。それに、こんなひといるの?ってぐらい芯の強いひとなんだ。
「………泣くな、……泣くなよ………」
何にもしてないのに期待だけして、勝手に落ち込んで――、はあ――、ぼくって気持ちが悪いやつだな……。
眼鏡をはずして、近くにあったティッシュを取り出し、目を拭く。先にお風呂に入ろうーー、ぼくは重たい身体をなんとか持ち上げる。
景君が好きだから、何ーー?ぼくなんかがこんな気持ちをもっているなんて、おかしいことなのに………。
「はあ………、片想い何年目なんだろ……」
ぼくが景君のことを特別だと気づいたのは、たぶん幼少期。その頃から『好き』を意識してたのかは覚えてない。けれど、景君が女の子と遊んでいたり、囲まれていたりすると、すねてむくれていた記憶がある。
「ぼくのケーくんにさわるな!ってその集団にわりこみに行ってたわ」、って母さんが言うぐらいだから、かなり迷惑なことをしてたんだね。
いまのぼくの性格からしたら考えられないけど、小さい頃は蓮や光より身体が大きかったから、いっちょまえに兄貴風ふかしてたのかな……。いまじゃ、ふたりとも180センチ越えなんてーー、双子は小さいって恵さん心配してたけど、大人になると関係ないんだろうな……。
そして、大きくなるにつれ、生きていく知識が増えていく。その中で、世の中の多くのひとは、同性とは一緒にならないってことを知った。
ーーそうなんだ……、ぼくは景君のことを想ってちゃだめなんだ。
そこに気づいたぼくは、落ち込みに落ち込んだよ。普通のひととは違うってことより、景君とずっといられないんだってことがわかって、それが何より悲しくつらかった。
ぼくは景君を諦めるための理由を探しだした。——でも、高校のときの初カノとか、大学に入って無断外泊が増えたこととか、はっきりした答えがあるのに、ぼくはまだ理由を探し続けている。
目の前の事実を受け入れられないんじゃない、その度に泣いてる、——泣いているけど、まだ好きだって、まだ想っていよう、って諦められないんだ。
なんで——?ぼくの気持ちなんか迷惑でしかないよ……?お互いの両親や、何より景君に失望されるのがわかりきっているのに——。
「俺をそんな目で見ていたのか……、気持ち悪い……」
景君からそう言われる夢を見たことがある。起きたとき、現実か夢かわからなくて号泣するしかなかった、あの夢——。きっとぼくの気持ちがバレてしまったら、夢のとおりになってしまうんだろうね。
それは、景君だけじゃない、蓮や光、両親達……、ぼくのワガママでいろんなひとを巻き込むことになるんだ。……そうだよ、あのひと達を困らせたくはない……、だからぼくは諦めなきゃだめなんだ。
景君も社会人になったんだから、いつ結婚したっておかしくない……。救いがあるとすれば、いくら両親の仲が良くても親戚じゃないこと……。
だって、ーー景君の結婚式になんかに出席しちゃったら、その場で気絶して二度と目覚めないと思うからーー。
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