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ー11ー ピアスの持ち主
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「そうだっ。倉内くん、元気にしてた?」
「ーーああ、チャラかった」
景君の言葉に詩さんが大声で笑い出す。
「ドラムで渡米してたのよ!チャラいですんでよかったじゃない!」
「ちゃんとやってたのか怪しいもんだけどな」
「アメリカに行ってそんな真面目なこと言うの、きっと景だけよーー」
ん?倉内、って……?
笑いが治まらない詩さんを見ながら、その名前を考える。ぼくには、会話にでてきた名前の人物に、心当たりがあった。
「あら、景。……ミノちゃんに言ってないの?」
表情を見て悟られるなんて、ぼくってそんなに顔にでるの?
「ん?ーーああ、倉内はわかるだろ?今日はあいつが帰国するから、戸隠と深山を乗せて空港まで迎えに行ったんだよ」
「あーー、バンド仲間だった……」
今でてきた名前は、景君のバンド『ハウモン(ハウスモンスター)』のメンバー、ドラムの倉内真吾さん、ベースの戸隠弦さんと、ボーカルだった深山音々さん(このひとだけ女性)だ。
「そうそう。倉内はアメリカにドラムの修行に行くって渡米してたけど、遊んでただけだろうな」
「倉内くん、お金持ちだから~」
「息子がバンドをするって言ったら、スタジオをつくる親ってどうなんだ?」
「あら、スタジオ代浮いてラッキーだったんでしょ?」
「俺はきちんと倉内に払ってたよ。プイプイで返ってきてたけど……」
景君がむすっとして言うと、詩さんが吹きだして、さらに笑い声が大きくなった。明るい詩さんの笑い声が響く中、ぼくはポツリと言葉をもらす。
「ーーデートじゃなかったんだ……」
「え?」
「ーーあっ!な、なんでもないから!」
無意識にでちゃったよ……、もう、油断しちゃダメだってーー。
「そうだ!景、アタシこの前あんたの部屋に行ったとき、ピアス落としてなかった?」
!
思い出したように話す詩さんを、ぼくは目をひんむいてガン見した。あ、あ、あれって、詩さんのピアスだったの!?
「ーー机の上にあったな」
チラッと一瞬ぼくの顔を見た景君が、なんでもないことのような口調で答える。
「よかった!お気に入りのやつなのよ!」
「そうか……。深山に聞いても違うって言うから、ホラーだと思っていたんだが……詩のだったのか」
「あら、アタシにも聞いてよ」
「盲点だった」
「景は家には呼ばないものね」
「ーー何の話だよ」
嫌そうな顔で景君が手を振る。これは、『これ以上この話はするな』、っていう合図だ。
「この前……」
そこも気になるところだけど、それよりもいまは詩さんの話を聞きたい。興味しんしんで景君を見るぼくに、詩さんが笑いながら答えてくれた。
「戸隠くんと深山ちゃん、春に結婚することになったから、余興の打ち合わせを景の部屋でしたのよ。深山ちゃん、戸隠くんのためにバンドを再結成して、動画を作りたいんですって。愛よね~~~」
「え?まさか倉内さん……」
そのために帰国したの?嘘でしょ?ーーお金持ちならありうる話なのかな……。
「どっちみち年内までだったのよ」
「あっ、でも、ベースが……」
戸隠さんに内緒だなんて、誰が代わりに弾くんだろ?
「アタシが弾くのよ♡」
「詩さん、弾けるんだ」
なんでもできるひとなんだ、すごいな……。
「ううん。超初心者よ♡」
「………」
「動画は弾く真似をしてもらって、音撮りは戸隠に頼んでるんだ。何の曲かは秘密にしてるけど、うちのバンドはあいつのベースじゃないと気持ちが悪いって、深山はわかるとして、倉内までそんなことを言い出すからーー……」
ぼくのなんとも言えない表情を気にしてか、景君が会話に入ってくる。
「道場を使って動画を撮るのよ。24日の昼からなら深山ちゃん以外は半休が取れるっていうから、案だししようってなったの」
ーーもしかして景君、仕事は前からおやすみをもらってたのかな?バンドの件は後から入った予定だったりして……。ーーいや…、クリスマス会のために、わざわざ休みをとるわけないか……。
「ーー楽しそうですね……」
「でしょ?あの幼なじみカップルがとうとうゴールインなんて、いまから泣きそうになってきたわーー」
涙ぐむ詩さんの側で、ぼくはその言葉を繰り返していた。
ーー幼なじみカップル、ーーか………。
ーーほんとにいるんだ……、幼なじみで結婚するひと達って………。
「ーーああ、チャラかった」
景君の言葉に詩さんが大声で笑い出す。
「ドラムで渡米してたのよ!チャラいですんでよかったじゃない!」
「ちゃんとやってたのか怪しいもんだけどな」
「アメリカに行ってそんな真面目なこと言うの、きっと景だけよーー」
ん?倉内、って……?
笑いが治まらない詩さんを見ながら、その名前を考える。ぼくには、会話にでてきた名前の人物に、心当たりがあった。
「あら、景。……ミノちゃんに言ってないの?」
表情を見て悟られるなんて、ぼくってそんなに顔にでるの?
「ん?ーーああ、倉内はわかるだろ?今日はあいつが帰国するから、戸隠と深山を乗せて空港まで迎えに行ったんだよ」
「あーー、バンド仲間だった……」
今でてきた名前は、景君のバンド『ハウモン(ハウスモンスター)』のメンバー、ドラムの倉内真吾さん、ベースの戸隠弦さんと、ボーカルだった深山音々さん(このひとだけ女性)だ。
「そうそう。倉内はアメリカにドラムの修行に行くって渡米してたけど、遊んでただけだろうな」
「倉内くん、お金持ちだから~」
「息子がバンドをするって言ったら、スタジオをつくる親ってどうなんだ?」
「あら、スタジオ代浮いてラッキーだったんでしょ?」
「俺はきちんと倉内に払ってたよ。プイプイで返ってきてたけど……」
景君がむすっとして言うと、詩さんが吹きだして、さらに笑い声が大きくなった。明るい詩さんの笑い声が響く中、ぼくはポツリと言葉をもらす。
「ーーデートじゃなかったんだ……」
「え?」
「ーーあっ!な、なんでもないから!」
無意識にでちゃったよ……、もう、油断しちゃダメだってーー。
「そうだ!景、アタシこの前あんたの部屋に行ったとき、ピアス落としてなかった?」
!
思い出したように話す詩さんを、ぼくは目をひんむいてガン見した。あ、あ、あれって、詩さんのピアスだったの!?
「ーー机の上にあったな」
チラッと一瞬ぼくの顔を見た景君が、なんでもないことのような口調で答える。
「よかった!お気に入りのやつなのよ!」
「そうか……。深山に聞いても違うって言うから、ホラーだと思っていたんだが……詩のだったのか」
「あら、アタシにも聞いてよ」
「盲点だった」
「景は家には呼ばないものね」
「ーー何の話だよ」
嫌そうな顔で景君が手を振る。これは、『これ以上この話はするな』、っていう合図だ。
「この前……」
そこも気になるところだけど、それよりもいまは詩さんの話を聞きたい。興味しんしんで景君を見るぼくに、詩さんが笑いながら答えてくれた。
「戸隠くんと深山ちゃん、春に結婚することになったから、余興の打ち合わせを景の部屋でしたのよ。深山ちゃん、戸隠くんのためにバンドを再結成して、動画を作りたいんですって。愛よね~~~」
「え?まさか倉内さん……」
そのために帰国したの?嘘でしょ?ーーお金持ちならありうる話なのかな……。
「どっちみち年内までだったのよ」
「あっ、でも、ベースが……」
戸隠さんに内緒だなんて、誰が代わりに弾くんだろ?
「アタシが弾くのよ♡」
「詩さん、弾けるんだ」
なんでもできるひとなんだ、すごいな……。
「ううん。超初心者よ♡」
「………」
「動画は弾く真似をしてもらって、音撮りは戸隠に頼んでるんだ。何の曲かは秘密にしてるけど、うちのバンドはあいつのベースじゃないと気持ちが悪いって、深山はわかるとして、倉内までそんなことを言い出すからーー……」
ぼくのなんとも言えない表情を気にしてか、景君が会話に入ってくる。
「道場を使って動画を撮るのよ。24日の昼からなら深山ちゃん以外は半休が取れるっていうから、案だししようってなったの」
ーーもしかして景君、仕事は前からおやすみをもらってたのかな?バンドの件は後から入った予定だったりして……。ーーいや…、クリスマス会のために、わざわざ休みをとるわけないか……。
「ーー楽しそうですね……」
「でしょ?あの幼なじみカップルがとうとうゴールインなんて、いまから泣きそうになってきたわーー」
涙ぐむ詩さんの側で、ぼくはその言葉を繰り返していた。
ーー幼なじみカップル、ーーか………。
ーーほんとにいるんだ……、幼なじみで結婚するひと達って………。
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