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ー18ー クリスマス会、前日
しおりを挟むポンッ
ピカチュ『よぉ!明日のクリスマス会は18時からだからな!時間厳守だぜ!』
2限で終わったクリスマス会前日、ぼくは家の片付けをしていた。15時になって、一息つこうと電気ケトルのスイッチをいれる。さて、何を飲もうかなーー、と思ったとき、光からライツが来たんだ。
イロハス『はいはい』
ピカチュ『プレゼント交換するから忘れるなよ!』
イロハス『マジかよー。いまからどこに買いに行けってんだーーー?』
ポン、ポン、ふたりのテンポのいいやり取りが続く。仲が良いときは、いつもくっついてるふたりなんだよね。
「ーープレゼント、交換……」
するんだーー。あっ、そうか、いつもは景君と両親達からプレゼントをもらうんだけど、今年はいないもんね……。いや、ぼくとしては、大学生になってまでクリスマスにプレゼントをもらう気はないんだよーー?
「交換か……」
何がいいのかな……、あのふたりが持ってないものなんか、ないと思うんだけど……。
牛ミノ『わかった。何円までとかある?』
ポンッ
ピカチュ『特にない!』
イロハス『5,000円ぐらいにしとこう。今月はおれ金欠だし』
ピカチュ『はあ!最低でも10,000円だ!』
イロハス『あほか!ーー年末にスキー行くのに、そんなに出せるか!』
ピカチュ『ーーオレも行くけど、景兄にもらったし』
イロハス『兄貴はおまえに甘い!カテキョぐらいしろ!働け!』
ピカチュ『働いたら、負け♡』
イロハス『こんな弟いらねーーー!』
「はははっ、もうふたりはーー」
蓮は家庭教師のバイトをしているけど、ぼくと光は誘われて行った単発バイトぐらいしかしたことがない。うちは母さんが遅い分、家のことしてくれたらいい、って感じだからね。
ーーう~ん、プレゼントか……、後でエヂィオンにでも行ってこよう。前に光がBluetoothがほしいって言ってたし、それでいいかな……。
「10,000円か……」
ぼくはでかける方じゃないから、使っていないお小遣いで出せる額だけどーー……、
「ーーやっぱり本格的にバイトをはじめよう……。詩さんのカフェとかで働いてみたいな……」
今度空きがあるか聞いてみよう。ーーほら、景君に……誘われても、お金がないと行きにくいでしょ?う、うん…、デ、デ、デート……、とか……。
ポンッ
ひかる『景兄!明日は18時からだからな!間に合わなくてもプレゼントとケーキはもってこいよ!』
「ーー光……」
なんて迷惑な……、景君仕事中だから絶対に見ないだろうけど、何言ってんの?弟だからってね、言っていいことと悪いことがーー……、
ポンッ。
ひかる『ミノはお泊りグッズをもってこいよ~。次の日はわかってんだろうな!?』
「あーーっ!」
ちょっと待ってよ、光!なんで景君が入ってるグループで、そんなライツするの!
「既読はーー…、ふたりだからぼくと蓮かなーー」
焦るぼくは必死で送信を取り消してもらうように、文を打つんだけど、そういうときに限って変なところを触ったりするんだよ!
「フリック~~~!」
反応してよ!ぼくのスマホ!ーーちょっと早く早く!本当に早くーー……。
トゥルルルーーー、トゥルルルーーー。
突然の着信音、そして電話の相手はーー…、
「!」
嘘!景君だ!な、なんで!?まさかーーッ!光のライツを見たの?
ぼくは震えそうになる手をべしっと叩き、スマホを口元まであげる。あーー、口までプルプルしてくるんだけど…。
「は、はい……」
緊張で倒れそうになってくる。深呼吸、深呼吸してーー。
『ーー実律。今電話、大丈夫?』
「うん……、大丈夫だよ」
ちょっと景君、声が怖いんだけど……。
『光は何を言ってるんだ?』
ーーはい、そこですよね……、ごめん、言おうかどうしようか迷ってました。
「あの……」
『次の日、光と約束があるのかーー?』
「………う、うん……」
『何の?』
一気に不機嫌になる景君の声。ーーこれって、これってもしかして、……ぼくってばビッチっていわれることをしてるんじゃないのーー?
「あ、あのね………」
……すべてを話してしまった後、ぼくとしては隠し事がなくなってホッとしたいところなんだけどーー……、そういうわけにはいかないよね?
『ーーなるほど』
「ごめん」
『いや、悪いのは恐喝のような真似をした光だ』
「恐喝……」
ひどい罪状がついた。
「断る機会を逃しちゃってて……」
言い訳だ。ライツより直接会って話そうと思ってたら、会えないまますぐに今日が来てしまった。
『ーー断りにくい気持ちはわかるよ。それで、クリスマス会が険悪なムードになったら嫌だろうし』
「景君……」
すごいーー、ぼくの考えてることなんか、全部わかっちゃうんだ……。やだな、景君……、そんなのますます好きになっちゃうよーー。
『ーーとりあえず、実律は普通にしていて』
「え?」
『大丈夫、俺が横から割り込めばいいだけだから』
「でも、それじゃ景君が悪者みたいになるし……、光とケンカにならない?」
『なってもいい』
「……」
『実律が他のやつとデートに行くほうが、絶対に嫌だ』
ーーッ!
「ーー景君て、そんなこと言う?……ってことをよく言うよね……」
『実律限定な』
「~~~~ッ!もう、恥ずかしい……」
背中がゾクゾクしてくる。なんだろう、この変な感じ。景君がカッコよすぎて震えがきてるのかな…?
このまま話しをしていたいけれど、電話の向こうから、『成瀬!ミーティング!』、って男性の声が聞こえてきた。
『はい!すぐ行きます!ーーーじゃ、また……』
「ーーうん」
通話が終わったのに、まだスマホをおろせないぼくは、ーー景君の、『はい!すぐ行きます!』、を脳内で繰り返していた。
「さわやか……、ーーあぁ!録音しとけばよかった!」
貴重な景君の新入社員声……、カッコよすぎ!ーーもっと聞きたかったなぁー、……同じ職場のひとが、うらやましいよ……。
「ーー今度やってくれないかな……」
お願いしてみよう……、とくだらないことを考えながら、ぼくの12月23日は終わっていく。ーーもちろん、買い物をしたり、明日の料理用にお肉を仕込んだり、することはちゃんとしたよ。
でも、夜にひとり冷蔵庫の残り物でご飯をすましているときに、いろいろと考えてしまったんだ。
例えば……景君家の給湯器が今日直らなければいいのに、とかーー。……残念ながら、いつまでたっても、「今日も風呂貸して」、って連絡は来なかったけど……。
スマホの画面を見ながら、ぼくは顔も知らない業者の方を思い浮かべて、頬をふくらませる。ーーぷぅ……、クリスマス前にごくろう様ですねー、だー……。
「ーーうちのお風呂が詩さん家ぐらい広ければ……、」
ーー景君を誘ったりして……。
「ぎゃあ!ぼくって、なんてやらしいんだろっ!こんなの、ーー景君が聞いたらあきれちゃうよぉ!」
いつもよりはしゃぐぼくは、家にひとりだってことが、けっこうさみしかったのかもしれない。ーーだって、気がつけば、昨日の景君のことばかり考えてしまっている……。
「……景君、好き……」
少しドキドキしながらスマホの検索機能を開く。ポチポチ……、と打ちかけてーー……、
「ーーやっぱり無理!」
さすがに早い、早い!早すぎるってーーー!……けど、ちょっとぐらい……。
『男同士 えっ……』
「~~~!だめだ!ぼくっ!しっかりしろ!ーーいや、でもーーー!ぼくだって成人してるんだし!」
ーー深夜のテンションって怖いよね……。
こんな感じでかなり夜更かししてしまって、気がついたらソファーで寝落ちしていた。
ーーでも、ぼくはこのとき、クリスマス会があんなことになるなんてーー、少しも考えていなかったんだ。のんきに景君との……、恋人っぽい行動を想像したりして……とっても楽しくしていたんだからーー………。
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