クリスマスには✖✖✖のプレゼントを♡

濃子

文字の大きさ
18 / 29

ー18ー クリスマス会、前日

しおりを挟む
 
 ポンッ

ピカチュ『よぉ!明日のクリスマス会は18時からだからな!時間厳守だぜ!』


 2限で終わったクリスマス会前日、ぼくは家の片付けをしていた。15時になって、一息つこうと電気ケトルのスイッチをいれる。さて、何を飲もうかなーー、と思ったとき、光からライツが来たんだ。


イロハス『はいはい』

ピカチュ『プレゼント交換するから忘れるなよ!』

イロハス『マジかよー。いまからどこに買いに行けってんだーーー?』

 ポン、ポン、ふたりのテンポのいいやり取りが続く。仲が良いときは、いつもくっついてるふたりなんだよね。

「ーープレゼント、交換……」
 するんだーー。あっ、そうか、いつもは景君と両親達からプレゼントをもらうんだけど、今年はいないもんね……。いや、ぼくとしては、大学生になってまでクリスマスにプレゼントをもらう気はないんだよーー?

「交換か……」
 何がいいのかな……、あのふたりが持ってないものなんか、ないと思うんだけど……。


牛ミノ『わかった。何円までとかある?』

 ポンッ

ピカチュ『特にない!』

イロハス『5,000円ぐらいにしとこう。今月はおれ金欠だし』

ピカチュ『はあ!最低でも10,000円だ!』

イロハス『あほか!ーー年末にスキー行くのに、そんなに出せるか!』

ピカチュ『ーーオレも行くけど、景兄にもらったし』

イロハス『兄貴はおまえに甘い!カテキョぐらいしろ!働け!』

ピカチュ『働いたら、負け♡』

イロハス『こんな弟いらねーーー!』


「はははっ、もうふたりはーー」
 蓮は家庭教師のバイトをしているけど、ぼくと光は誘われて行った単発バイトぐらいしかしたことがない。うちは母さんが遅い分、家のことしてくれたらいい、って感じだからね。

 ーーう~ん、プレゼントか……、後でエヂィオンにでも行ってこよう。前に光がBluetoothがほしいって言ってたし、それでいいかな……。

「10,000円か……」
 ぼくはでかける方じゃないから、使っていないお小遣いで出せる額だけどーー……、

「ーーやっぱり本格的にバイトをはじめよう……。詩さんのカフェとかで働いてみたいな……」
 今度空きがあるか聞いてみよう。ーーほら、景君に……誘われても、お金がないと行きにくいでしょ?う、うん…、デ、デ、デート……、とか……。



 ポンッ

ひかる『景兄!明日は18時からだからな!間に合わなくてもプレゼントとケーキはもってこいよ!』


「ーー光……」
 なんて迷惑な……、景君仕事中だから絶対に見ないだろうけど、何言ってんの?弟だからってね、言っていいことと悪いことがーー……、


 ポンッ。

ひかる『ミノはお泊りグッズをもってこいよ~。次の日はわかってんだろうな!?』

「あーーっ!」
 ちょっと待ってよ、光!なんで景君が入ってるグループで、そんなライツするの!

「既読はーー…、ふたりだからぼくと蓮かなーー」
 焦るぼくは必死で送信を取り消してもらうように、文を打つんだけど、そういうときに限って変なところを触ったりするんだよ!

「フリック~~~!」
 反応してよ!ぼくのスマホ!ーーちょっと早く早く!本当に早くーー……。



 トゥルルルーーー、トゥルルルーーー。


 突然の着信音、そして電話の相手はーー…、

「!」
 嘘!景君だ!な、なんで!?まさかーーッ!光のライツを見たの?

 ぼくは震えそうになる手をべしっと叩き、スマホを口元まであげる。あーー、口までプルプルしてくるんだけど…。

「は、はい……」
 緊張で倒れそうになってくる。深呼吸、深呼吸してーー。
『ーー実律。今電話、大丈夫?』
「うん……、大丈夫だよ」
 ちょっと景君、声が怖いんだけど……。

『光は何を言ってるんだ?』
 ーーはい、そこですよね……、ごめん、言おうかどうしようか迷ってました。

「あの……」
『次の日、光と約束があるのかーー?』
「………う、うん……」
『何の?』
 一気に不機嫌になる景君の声。ーーこれって、これってもしかして、……ぼくってばビッチっていわれることをしてるんじゃないのーー?

「あ、あのね………」

 
 ……すべてを話してしまった後、ぼくとしては隠し事がなくなってホッとしたいところなんだけどーー……、そういうわけにはいかないよね?


『ーーなるほど』
「ごめん」
『いや、悪いのは恐喝のような真似をした光だ』
「恐喝……」
 ひどい罪状がついた。
 
「断る機会を逃しちゃってて……」
 言い訳だ。ライツより直接会って話そうと思ってたら、会えないまますぐに今日が来てしまった。
『ーー断りにくい気持ちはわかるよ。それで、クリスマス会が険悪なムードになったら嫌だろうし』
「景君……」
 すごいーー、ぼくの考えてることなんか、全部わかっちゃうんだ……。やだな、景君……、そんなのますます好きになっちゃうよーー。

『ーーとりあえず、実律は普通にしていて』
「え?」
『大丈夫、俺が横から割り込めばいいだけだから』
「でも、それじゃ景君が悪者みたいになるし……、光とケンカにならない?」
『なってもいい』
「……」
『実律が他のやつとデートに行くほうが、絶対に嫌だ』

 ーーッ!



「ーー景君て、そんなこと言う?……ってことをよく言うよね……」
『実律限定な』
「~~~~ッ!もう、恥ずかしい……」
 背中がゾクゾクしてくる。なんだろう、この変な感じ。景君がカッコよすぎて震えがきてるのかな…?

 このまま話しをしていたいけれど、電話の向こうから、『成瀬!ミーティング!』、って男性の声が聞こえてきた。
『はい!すぐ行きます!ーーーじゃ、また……』
「ーーうん」
 通話が終わったのに、まだスマホをおろせないぼくは、ーー景君の、『はい!すぐ行きます!』、を脳内で繰り返していた。

「さわやか……、ーーあぁ!録音しとけばよかった!」
 貴重な景君の新入社員声……、カッコよすぎ!ーーもっと聞きたかったなぁー、……同じ職場のひとが、うらやましいよ……。

「ーー今度やってくれないかな……」
 お願いしてみよう……、とくだらないことを考えながら、ぼくの12月23日は終わっていく。ーーもちろん、買い物をしたり、明日の料理用にお肉を仕込んだり、することはちゃんとしたよ。


 でも、夜にひとり冷蔵庫の残り物でご飯をすましているときに、いろいろと考えてしまったんだ。

 例えば……景君家の給湯器が今日直らなければいいのに、とかーー。……残念ながら、いつまでたっても、「今日も風呂貸して」、って連絡は来なかったけど……。
 スマホの画面を見ながら、ぼくは顔も知らない業者の方を思い浮かべて、頬をふくらませる。ーーぷぅ……、クリスマス前にごくろう様ですねー、だー……。

「ーーうちのお風呂が詩さん家ぐらい広ければ……、」

 ーー景君を誘ったりして……。

「ぎゃあ!ぼくって、なんてやらしいんだろっ!こんなの、ーー景君が聞いたらあきれちゃうよぉ!」
 いつもよりはしゃぐぼくは、家にひとりだってことが、けっこうさみしかったのかもしれない。ーーだって、気がつけば、昨日の景君のことばかり考えてしまっている……。

「……景君、好き……」
 少しドキドキしながらスマホの検索機能を開く。ポチポチ……、と打ちかけてーー……、

「ーーやっぱり無理!」
 さすがに早い、早い!早すぎるってーーー!……けど、ちょっとぐらい……。

『男同士 えっ……』

「~~~!だめだ!ぼくっ!しっかりしろ!ーーいや、でもーーー!ぼくだって成人してるんだし!」

 ーー深夜のテンションって怖いよね……。


 こんな感じでかなり夜更かししてしまって、気がついたらソファーで寝落ちしていた。

 ーーでも、ぼくはこのとき、クリスマス会があんなことになるなんてーー、少しも考えていなかったんだ。のんきに景君との……、恋人っぽい行動を想像したりして……とっても楽しくしていたんだからーー………。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

六年目の恋、もう一度手をつなぐ

高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。 順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。 「もう、おればっかりが好きなんやろか?」 馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。 そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。 嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き…… 「そっちがその気なら、もういい!」 堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……? 倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡

推しのために自分磨きしていたら、いつの間にか婚約者!

木月月
BL
異世界転生したモブが、前世の推し(アプリゲームの攻略対象者)の幼馴染な側近候補に同担拒否されたので、ファンとして自分磨きしたら推しの婚約者にされる話。 この話は小説家になろうにも投稿しています。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

もう一度、その腕に

結衣可
BL
もう一度、その腕に

夫には好きな相手がいるようです。愛されない僕は針と糸で未来を縫い直します。

伊織
BL
裕福な呉服屋の三男・桐生千尋(きりゅう ちひろ)は、行商人の家の次男・相馬誠一(そうま せいいち)と結婚した。 子どもの頃に憧れていた相手との結婚だったけれど、誠一はほとんど笑わず、冷たい態度ばかり。 ある日、千尋は誠一宛てに届いた女性からの恋文を見つけてしまう。 ――自分はただ、家からの援助目当てで選ばれただけなのか? 失望と涙の中で、千尋は気づく。 「誠一に頼らず、自分の力で生きてみたい」 針と糸を手に、幼い頃から得意だった裁縫を活かして、少しずつ自分の居場所を築き始める。 やがて町の人々に必要とされ、笑顔を取り戻していく千尋。 そんな千尋を見て、誠一の心もまた揺れ始めて――。 涙から始まる、すれ違い夫婦の再生と恋の物語。 ※本作は明治時代初期~中期をイメージしていますが、BL作品としての物語性を重視し、史実とは異なる設定や表現があります。 ※誤字脱字などお気づきの点があるかもしれませんが、温かい目で読んでいただければ嬉しいです。

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

処理中です...