水に愛された子

わかば

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夏休みの始まり

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 最近、夢を見るのだ。暗い暗い深海で、女の子が光ってる。水の守り神だ。そう思うほど、少女は美しかった。


「信二ー?起きなさーい!」
母さんの声で目がさめる。ジリジリと目覚ましが待っているにもかかわらず、起きることができなかったようだ。
「早く降りてらっしゃーい。ちこくするわよう!」
「はーい。すぐ行くー。」
のそのそと起き上がり、目覚まし時計のスイッチを止める。やっとうるさい音が止まり、着替えをしようとベッドから降りる。
シャツを取り出して思い出す。今日で学校は終わり。夏休みだ。けれど、特に予定もないし、嬉しくはない。中学三年だから、勉強もしなきゃだし。
 そうだ、着替えている間に自己紹介をしておこう。僕の名前は田端信二。名前から分かるとおり次男だ。長男の兄さんは敬一。母さんは美咲。父さんは光輝だ。四人家族、仲良く暮らしている。
よし、終わり。階段を降りてリビングに行くとジュウジュウと焼ける目玉焼きの匂いがした。
「おはよう、母さん。兄さんは?」
「おはよう。敬一ならクラブがあるからって、もうとっくに学校に向かったわよ。」
そうか。珍しいな。兄さんは美術部だから、朝練はない。何か時間がかかるものでも作っているのだろうか?
「さ、さっさと食べてあんたも行きなさい。」
「はーい。」
目玉焼きを頬張りながら返事をする。今の時間帯ならギリギリ間に合うだろう。


自分が通り過ぎたところで門が閉まった。本当にギリギリだったことに、緊張と安心を覚える。間に合ってよかった。やっと夏休みだというのに、最後の最後で遅刻したんじゃあ悲しすぎる。
「おい、信二。おせーよ。」
「東吾。悪いな。寝坊してしまって。」
「しゃーねーな。」
友人の山瀬東吾が門で待ってくれていたようだ。
「早く行こうぜ。授業が始まる。」
「おー。」

 今日は午前中だけで授業が終わった。いそいそと家に帰る。日差しが強い。冷たいジュースを腹一杯欲しくなる程、昼間は暑かった。
家に着くと、母さんが用意してくれていたナポリタンと冷たいお茶を貪るように食べた。
「ただいまー。」
そんな声を背景に聞きながら、僕は謎の睡魔に襲われていった。


ああ、またこの夢か。
深い深海で、女の子の夢を見る。長い髪を揺らしながら、寝ているんだ。綺麗な綺麗な女の子が。あれ?今日は。

目が、開いていた。口がかすかに動いている。
「ねえ、私を見に来てよ。」


「ーじ!しーんーじー!起きなさいっ!」
父さんの声で目をさます。はあ、進展があったのに、起こされてしまった。
「晩御飯の時間だよ、起きなさい。」
優しく起こされて、手を洗いに席を立つ。手を洗って、リビングに戻ると、母さんが僕に話しかけてきた。
「信二。せっかくの夏休み。行きたいところはない?」
行きたいところ…そんなことを言われても…あ。
「海!海に行きたい!」
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