水に愛された子

わかば

文字の大きさ
5 / 7

しおりを挟む
3時間ほど泳いだだろうか。昨日は楽しみで眠れなかったので、あくびが続く。
「ねえ、信二、もう帰った方がいいよ。」
「え、どうして?まだ遊び足りないよ。」
そう答えると、彼女は初めて真剣な顔を見せて。
「…嵐が来るわ。」
「えっ、天気予報ではそんなこと…。」
「今発生して、とんでもないスピードでこっちに向かってる。今日はもう帰りなさい。」
その口調は、長年生きて来たことを実感させるほど、大人びたものなのだ。深刻な事態になる。心が警報を鳴らしている。と、いうことは。
「他の人を避難させた方がいい?」
「ううん。大丈夫。もうキショウチョウが気づいて報道してるはずだから。」
辺りを見渡すと、続々人が海から去っていくのが見えた。
「そっか。わかった。ミオは大丈夫なの?」
「私は…大丈夫。入り組んだところにいたら流されたりしないから。」
その声はどこか悲しそうで、それだけがどうしても心配だった。

その後はおとなしく止まっていたホテルに戻った。家族は嵐、台風が迫っているのに気づき、僕を心配していたそうだ。僕が戻った途端、安堵の顔を見せて泣いていた。それほど酷い台風ではないらしいが、海にいたとなると話は別だからだ。そろそろ探しに出ようとしていたところらしい。ミオの忠告に従ってよかった。
けれどミオのことがどうしても心配だった。探しに行こうかと思ったが、両親に止められて身動きが取れなかった。ミオは水の精霊のようなものなのだから、きっと大丈夫。そう思い込んで、無理矢理心を落ち着かせた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

何故、わたくしだけが貴方の事を特別視していると思われるのですか?

ラララキヲ
ファンタジー
王家主催の夜会で婚約者以外の令嬢をエスコートした侯爵令息は、突然自分の婚約者である伯爵令嬢に婚約破棄を宣言した。 それを受けて婚約者の伯爵令嬢は自分の婚約者に聞き返す。 「返事……ですか?わたくしは何を言えばいいのでしょうか?」 侯爵令息の胸に抱かれる子爵令嬢も一緒になって婚約破棄を告げられた令嬢を責め立てる。しかし伯爵令嬢は首を傾げて問返す。 「何故わたくしが嫉妬すると思われるのですか?」 ※この世界の貴族は『完全なピラミッド型』だと思って下さい…… ◇テンプレ婚約破棄モノ。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。 〔2026/02・大幅加筆修正〕

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

『伯爵令嬢 爆死する』

三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。 その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。 カクヨムでも公開しています。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

道化たちの末路

希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と愛人母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...