水に愛された子

わかば

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今日もまた

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 翌日。朝早くから僕だけ先にホテルを出て、海に向かった。はやくミオに会いたくて、走って砂浜に向かった。朝といえど、日は登っているから、全然寒くはなかった。
海面に向かって話しかける。
「ミオ。いる?」 
「うん、いるよ。」
海からそっと静かに顔を出したミオが笑いながら返事をする。
「今日はなにするの?」
「うーん、そうだなあ。とりあえず、お話しようか?」
「うんっ!」
まるで魚のようにくるりと後ろに一回転してミオが喜ぶ。それでもはね上がらずにしんとする海水が、ミオもその一部なのだと実感させる。
そんなことを思っているのを気付かれたのか、ミオが
「なんの話をしようか?」
と聞いて来た。
「なんでもいいよ。」
と、答えたのだが、それはちょっと間違いだったかもしれない。
「じゃあ、信二のお話聞かせて!」
「えっ。」
自分の話なんて、恥ずかしくてあまりしたものではないが、昨日ミオのことを聞いたのに自分のことを話さないのは不公平だと思い直し、覚悟を決めた。
「いいよ。どんなことが聞きたい?」「えーっとね、黒歴史!」
「…ねえ、そういう言葉どこで覚えて来てるの?」
ミオって昔の人じゃないの?!現代の言葉なんでしってんだよ?
「私はね、世界中にいるの。」
「?」
「私はね、世界中の水の中にいるの。私が水なの。」
あー、なるほど。僕が考えていた水の精霊みたいなものか。ミオは僕にわかりやすくするために人の形を取っているだけで、本当は水で、それはこの海にとけて。だからミオは世界中にいるんだ。…よくわからないけど。
「ミオは水そのものなんだね。綺麗。」
そう言うと、ミオは顔を曇らせて
「う、うん。ありがと。」
といった。自分でもしまったと思った。自分だって、急に水になったら嫌だ。なのに、それを褒めるなんて。
「そ、そろそろ泳ごうか。」
ミオの提案に、僕は心底救われた。

「今日はどこを案内してくれるの?」
「今日はね、泳ぎかたを教えてあげようと思って。」
泳ぎか…。確かに泳ぐのは苦手だ。体育でも友人に馬鹿にされてばかりだったから、教えてくれるというならすごく助かる。
「溺れたら助けられないから、浅瀬でやろう。」
ミオは水だから僕にさわれない。よくわかってるつもりだ。
「じゃ、行こうか。」
手を重ねるふりをして。手をつなぐふりをして。そしたら、ミオは嬉しそうに笑ってくれた。
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