スキしかいらない

みやび

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小さな想い

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それから時は過ぎて二月…バレンタインも近付いて来ていた。

「どうしよう…あげる人、居ないし…」

そんな中で一緒にシフトに入っていた金本かねもとと話をしていた。

「ねぇ?金本さん?」
「ん?何?」
「バレンタインってどうしてます?」
「仕事だよ」
「ですよね、ちなみに私も仕事です」
「はぁ、だよね?」
「チョコ持ってきますね?」
「くれんの?」
「夜勤疲れの後に甘い物食べてください」
「ありがと」
「……で、ここからが本題なんですが…」
「ん?」
「金本さんがって言うよりも、基本的に男性って…バレンタインのチョコ貰ったら嬉しいものですか?」
「嬉しいと思うよ?」
「……どんなでも?」
「それって手作りって事?」
「いえ、買うんですけど…値段とかって言うよりも、もらったら引くとかあるのかなって思って…」
「引くことは…無いと思うよ?そりゃめちゃくちゃ豪華すぎる!とか、明らかにド本命過ぎる位に値段が張るとか、手作り苦手な人だったら手作りものを彼女じゃない人からもらうとさすがにちょっとって人は居るかもしれないけど…」
「なるほど…」
「で、本命あげる人いる訳ね?」
「ほ、……んめいとかでなくて…その…」
「うん、ド本命ね?」
「……だから…!」

そんな会話をしながらも諦めたかの様に金本に伝える。

「…会長に、いつも色々とあるから…と思って…」
「あー、なるほど。別にいいと思うけど?てか、当日来るの?」
「解んないですよ?だから、当日に来なくてもいい様に手作りはもってのほかだし。」
「なるほど、端からその選択肢は無かったって事か…」
「はい」
「食われんように…」
「誰か人あてのもの食べます?」
「食べるかもしれんじゃん?」

そんな話をしていた。それから色々とひねり、探すもののどれなら喜んでもらえるのだろう…そう思いながらも本命と思われない位の大きさで、でもちょっとかわいい感じのものに決めた。

「金本さんは…」

男のくせに!と言われた事もあったらしいのだがかわいいキャラクターものが好きなのだ。それに合わせてかわいいものに即決で決まった桜。

「良し…」

しかし、決まったのはあと二日で当日になるという位に切羽詰まっているものだった。

「…間に合ってよかったよ……」

そうして小さくもメッセージカードを書き上げて用意を済ませた。

***

そして当日。金本には直接渡せたものの、牧田はこの日、やって来る事は無く桜はずっとドキドキする心を持て余す様に、仕事をこなしていくのだった。翌日は桜も休みの為、来たかどうかは不明だった。。。

~side 牧田~

はぁ…全く…ここ最近ここに来ることも週二位になったか…。大分片付けも終わって来たし、言っても本業の本社仕事もある。週二で来れる様になっていればいい方か…

ガチャ…

扉を開けて事務所に入っていく。…ん?何だこれ…

『会長へ』

この付箋…てかこの字…御門さんか…?

袋を開けてみれば小さな箱と一緒にカードが入っている。

『会長へ
 いつもお疲れ様です。
 甘いものでも食べて、たまには体休めてくださいね
                  御門 桜』

「…バレンタインか…?」

確かに…言われてみれば今日は二月十五日…昨日か…
預かっているシフトを確認すれば、御門さんは今日出勤無い、か…昨日持ってきてくれたんだろうな。にしても…

「律儀だな…本当に…」

年甲斐にも無く嬉しかった。昨日もらえなかったからとか、バツイチで祝ってくれる人が居ないからとか…そんな事は二の次で、ただ御門さんが用意してくれたって事が嬉しかった。避けられてるかもと思った時もあって…だけどそれも勘違いに終わったり…だからと言ってもスタッフに手を出すのはいかがなものかなとも思っていた。

「ここで食べるのはもったいないな…」

そうして俺は鞄にしまい込んだ。

「あ、会長、おはようございます」
「おはようございます」
「…」
「どうかしましたか?」
「いえ、特に…」
「僕に何か用があるなら言ってくれて構わないけど…何?」
「いえ、何かそこに置いてあったのに…と思って…」

そういう瀬戸さんにありがとうと伝えたら、不思議そうな顔をして瀬戸さんは部屋を出ていく。

「何かあったのか…?」

それでも何もないというなら何もないのだろう。それとも、何かあると思ったのか…撤去するなら今のうち…とか思ったのかもしれないけど。俺が見逃すと思ってくれるなよ…

十七日…

「…ない…」

ロッカーの中に受け取ったとのメモも無ければ、一昨日に置いておいたモノも無くなっている。という事は…

「会長来たのかもしれない…けど…そうでないなら捨てられたか…誰かが持っていったのか…まぁ…仕方ないのか…縁が無かった…それだけ、か…」

そう呟いて桜は仕事の前にと少し時間がある中で温かいお茶を一口飲み込んだ。時間の五分前になり、フロントに入って行けば引継ぎの所に1枚の紙がある。

「…コレ…」
「あー、昨日会長が来て置いて行ったよ。」
「新年会…遅いけど…」
「あぁ、二月何だけどね」
「でも、場所は…」

少し離れた所だったものの、それでも桜は参加の欄に名前を記入した。

「…え、行くの?」
「はい」
「仕事は?」
「休みで」
「…あー、どっちにしても金曜日か。なら…いいのか……」

そう話しながらも桜は嬉しそうに仕事をしていく。

***

それから何日かして牧田と顔を合わせてもチョコレートの事には一切触れられることも無かった。

「やっぱり…不発だったか…」
「何が?」
「あ、ごめん、何でも無いです…」

この日も瀬戸と一緒にタッグを組んでいた為、のんびりとした時間の中でこなす仕事はこなしていく桜。その間にも相も変わらずネットサーフィンで時間を潰す瀬戸。そんな時だ。ガチャッと扉を開ける音がして、そのまま横に牧田が姿を現した。

「おはようございます」
「おはよう」
「おはようございます、」
「あー、今日あと十分位かな、取引先の人がここに来るから、きたら僕呼んでくれる?」
「わかりましたぁ、」
「はい、」
「後ろにいるんで…よろしく。」

それだけ言って牧田は、事務所に向かって行った。

「…会長ってさ?」
「はい?」
「一人称僕だよね。」
「ですね」
「男の人って俺とかっていう人が多いから新鮮だなぁと思って…」

そういう瀬戸の言葉を聞きながらも桜は少しだけ疑問符が頭を舞った。

「(…でも…僕……??ん?…俺って言う事も多くない?)…」

しかしそれを言うのは違うような気がしたのもあった。その為、それを口にすることはあえてしなかったものの、思い当たる事があった。

「…(…でも…確かに誰か一緒に居る時には…『』だよな……)なんで?」
「え?どうかしましたか?」
「あ、何でも無いです。」

そうして仕事に没頭するようにしていた。それから時期に牧田が言っていた相手が訪問してきた。瀬戸が自ら『呼びに行きます』と言って、案内を桜がしていた。

「後方の席、どちらでも結構なのでおかけください。牧田時期に来ると思いますので。」
「ありがとうございます」

案内して時期に牧田が出てくるとそのままストンと瀬戸は座りまたしてもネットサーフィンに走る。

「お茶って要らないって?」
「あ、聞いてないです」
「解りました、」

小さく答えると桜は二つ用意してすぐに出しに行く。

「失礼します。」
「あ、ありがとうございます。」

牧田に目配せすれば小さく首を振られた。その為牧田の分は持ち戻る事にした桜。一礼してその場を去る事にした。

「…いりますかね、お茶。」
「まぁ、寒いしね?」
「でも入れるなら二つじゃないですか?」
「あー、会長は要らないって…」
「何も言ってませんでしたよね?!」
「まぁ、なんとなく察した、的な?」
「ふぅん…なるほど…」

そうして待つ事三十分。話し合いがまとまったのか、終わりを告げる様子が見えた。書類を纏め、立ち上がる時に桜はフロントを出る。

「では、よろしくお願いします。」

そのタイミングにしっかりと併せて入り口付近に立てば、一礼を交わす。そのまま湯呑を下げに向かって行く。

「…ありがとう。」
「いえ、すみません。居るか確認すればよかったのですけど」
「大丈夫。」
「会長?」
「何?」
「…いえ、お疲れ様です。」
「疲れてないさ」

そう話しながらも牧田は事務所に、桜はフロントに戻っていくのだった。
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