10 / 23
二度目の親睦会
しおりを挟む
一週間後…
二度目となる親睦会の日がやって来た。電車を乗り継ぎ、桜は親睦会の会場に向かった。
「…誰も来ないんだよね…グラッドの人…」
はぁ…っと小さくため息を吐きながらも会場に入っていく。会場はスーパーの二階にあるパーティー会場を使用してのところだった。
「えーっと…」
「お、御門さん、お疲れ様」
「お疲れ様です。すみません、ホテルから私一人だけで…」
「いやいや、大丈夫だよ。」
「しかも知らない人ばかりで…草間さんと会長と…あと数人くらいしか…」
「大丈夫だよ。会長も時期に来るだろうし」
そう話している内に牧田もやって来る。そんな中で桜を見て手を振る人が居た。
「あー!!良かったー、きてくれたぁ!」
「あ、えと…」
そう、グラッドの最初の親睦会で一緒にいた人たちだった。
「やぁぁ、居てくれたんですね!」
「それこっちのセリフ!ホテル民一人だけって聞いてたから!」
「遠すぎると厳しいかもしれないけど…それでもここなら来れるし…ただ今回も最後までは入れないんだけど…」
「全然いいよ!また会えてよかったぁ!」
そう話を進めていく内に人も集まって来た。席に着席して、草間がまたもマイクを手に取った。
「…さて、お集まりいただきありがとうございます。開始の挨拶ですが、今回はくじ引きで挨拶する人を決めました。」
「…ねぇ、何?!くじ引きって…それにこっち見てない?!」
「ちょっと待って?!やばいって…めっちゃ草間さん見てるし…」
「じゃぁ、お願いします。北支部の周防さん」
「…えぇぇ、!何で私?!」
そう、それは桜と仲良くなっていた一人だった。
「行ってきます…」
「行ってらっしゃい!」
そうしてその二人の関係もあって他の同じテーブルになった人とも仲良くなってくる桜。そんな中で気付けば桜は牧田の事を目で追っていた。視線が合う事も無いままに食事会が始まった。
「ねぇ、御門さんって、変わり者って言われる?」
「んー、言われもしないですけど…でもきっと裏では言われてるのかもしれないです」
「そっかぁ…」
「あ!会長!」
「…ッッ」
ビュッフェタイプの食事の為、どこかで行きかうと思っていたものの、それでもなかなか会えずにいた為、突然その姿を認識すれば緊張もするものだった。
「お疲れ様」
「お疲れ様です!」
「御門さんも、最近なかなか会ってないから。」
「そうなんですよ、私が居ない時を狙ってきているみたいに…」
「そんな事はないけど…?」
「…どうでしょうか…」
「はいはい」
そういって牧田はその場を離れて行く。
「…うちの会長も相当変わり者だよね」
「変わり者って言うか…解りやすい?」
「…そうなんですか?」
「そうそう。」
くすくすと笑いながらも桜と一緒に食事を取り、席に着いて行く面々だった。
そうして二時間近く楽しむことが出来れば、桜はそろそろ…と席を立った。前回同様に席を一つずつ回っていく桜。ただ、最後のテーブルにつく頃には牧田がまたしてもいない。
「…さっきここに会長居ませんでした?」
「あれ、本当だ。」
「…お先に失礼します。もし戻りましたら伝えてください…」
「解りました!お疲れ様です!」
入り口近くにいる草間にも最後に声をかける。
「すみません、お先に失礼します!」
「うん、お疲れ様、楽しめた?」
「はい!とても!」
「じゃぁまた僕も行くと思うけど、よろしく!」
「はい!お願いします!」
そうして階段を下りていく。喫煙所で煙草を吸うスタッフにも頭を下げながらも桜は挨拶をして回り、店を後にした。
「…お疲れさん」
「え?」
「…どうした?」
「デジャヴですね、確実に」
「そう言うな、帰るんだろう?」
「なんでわかるんですか?夜風に辺りに来ただけかもしれないのに」
「うるさい、クスクスおいで」
「はい?」
「こっち」
駅とは反対に店舗の駐車場に入っていく牧田。その後を着いて行くしかない桜。
「あの…電車が…」
「心配いらないだろ」
「そうは言っても…」
「…送る」
そう言われなれない言葉を聞けば少しドクンと胸が高鳴った。
「…あの…会長…?」
「乗って?」
「あの…どこに…」
「こっち」
そう言って助手席を示す牧田に誘われる様に桜は、おずっと扉を開けた。
「…ほら。早く、寒い」
「ごめんなさい…」
「…クス…」
乗り込めばいつも停まっていたとみていた車と少し違う様に思えた桜は牧田に問うた。
「会長、車変えました?」
「変えてないよ、ずっとこれ」
「そっか…」
「どうかした?」
「ホテルに停まってる車と比べて大きさ違う様に思ったので…」
「一緒だよ。」
「それに…あれ…」
「今度は何?」
「…なんか…作業着じゃない会長…緊張する…」
「どういう事?いつも俺こんなんだけど?」
「違いますよ、いつも作業着で…」
「上着が、だろ?」
「…あ、そういう事…」
少し緊張も解けてきたのだろう。桜の表情も緩んでくる。
「…今日もまた、ありがとうございます。でも、グラッドからの人、私だけなら逆に来ない方がよかったのかなって思ってたから、嬉しかったです」
「来ない方がいいとか、言うなよ」
「…え?」
信号で止まった牧田の車の中で、ライトに時々照らされる牧田の横顔を盗み見る様に桜はちらりと見た。
「…どうかした?」
「…いえ…その…」
「何?」
「……こうして近くにいるの…無いなぁ…と思って…」
「そんなことないでしょ」
「え?」
「俺だってあんなことしたことないし。」
あんな事というのが何を指しているのか、しっかりと理解するまでに少しばかり時間がかかった桜。思い当たる事を探していれば追い打ちをかける様に牧田が話し出す。
「…あの時も泣かせるつもりはなかったし」
「…あ、…!の時…か…」
「思い出した?」
「…忘れては…無いですけど…」
「ならよかった。」
思いのままを口にする牧田。それと裏腹に桜はどこか言葉を選んでしまう。加えて自身の気持ちをうまく言葉にしにくかったのだ。
「…構わないから…」
「え?」
「言ってくれて。いろんな事。どう思うとか、こう思うとか。それを聞いて嫌ったりとか、そういうことはないと思うから」
「…はい…」
「何か今言いたい事は?」
「…えと、何か色々ありすぎて…」
「順番に聞くよ?」
「…あの、まず…」
「ん」
「いつもありがとうございます。何だかんだと気にかけてくれたりして…」
「別に?普通の事」
「後は…その…」
「ん?」
「正社員にしてくれてありがとうございます。」
「今更…クス…どう?やっていけそう?」
「はい!」
「良かった。あとは?」
「…あとは…その…」
「まだなんかあるんだ?」
そう聞く牧田の言葉に促される様に、少しずつ勇気を出そうとするものの、あと一歩の所で言葉を飲み込んだ。
「忘れちゃったので、また話します。」
「解った。その時には聞くな?」
「はい、お願いします」
そうして気付けばグラッドホテルの近くまで戻って来ていた。
二度目となる親睦会の日がやって来た。電車を乗り継ぎ、桜は親睦会の会場に向かった。
「…誰も来ないんだよね…グラッドの人…」
はぁ…っと小さくため息を吐きながらも会場に入っていく。会場はスーパーの二階にあるパーティー会場を使用してのところだった。
「えーっと…」
「お、御門さん、お疲れ様」
「お疲れ様です。すみません、ホテルから私一人だけで…」
「いやいや、大丈夫だよ。」
「しかも知らない人ばかりで…草間さんと会長と…あと数人くらいしか…」
「大丈夫だよ。会長も時期に来るだろうし」
そう話している内に牧田もやって来る。そんな中で桜を見て手を振る人が居た。
「あー!!良かったー、きてくれたぁ!」
「あ、えと…」
そう、グラッドの最初の親睦会で一緒にいた人たちだった。
「やぁぁ、居てくれたんですね!」
「それこっちのセリフ!ホテル民一人だけって聞いてたから!」
「遠すぎると厳しいかもしれないけど…それでもここなら来れるし…ただ今回も最後までは入れないんだけど…」
「全然いいよ!また会えてよかったぁ!」
そう話を進めていく内に人も集まって来た。席に着席して、草間がまたもマイクを手に取った。
「…さて、お集まりいただきありがとうございます。開始の挨拶ですが、今回はくじ引きで挨拶する人を決めました。」
「…ねぇ、何?!くじ引きって…それにこっち見てない?!」
「ちょっと待って?!やばいって…めっちゃ草間さん見てるし…」
「じゃぁ、お願いします。北支部の周防さん」
「…えぇぇ、!何で私?!」
そう、それは桜と仲良くなっていた一人だった。
「行ってきます…」
「行ってらっしゃい!」
そうしてその二人の関係もあって他の同じテーブルになった人とも仲良くなってくる桜。そんな中で気付けば桜は牧田の事を目で追っていた。視線が合う事も無いままに食事会が始まった。
「ねぇ、御門さんって、変わり者って言われる?」
「んー、言われもしないですけど…でもきっと裏では言われてるのかもしれないです」
「そっかぁ…」
「あ!会長!」
「…ッッ」
ビュッフェタイプの食事の為、どこかで行きかうと思っていたものの、それでもなかなか会えずにいた為、突然その姿を認識すれば緊張もするものだった。
「お疲れ様」
「お疲れ様です!」
「御門さんも、最近なかなか会ってないから。」
「そうなんですよ、私が居ない時を狙ってきているみたいに…」
「そんな事はないけど…?」
「…どうでしょうか…」
「はいはい」
そういって牧田はその場を離れて行く。
「…うちの会長も相当変わり者だよね」
「変わり者って言うか…解りやすい?」
「…そうなんですか?」
「そうそう。」
くすくすと笑いながらも桜と一緒に食事を取り、席に着いて行く面々だった。
そうして二時間近く楽しむことが出来れば、桜はそろそろ…と席を立った。前回同様に席を一つずつ回っていく桜。ただ、最後のテーブルにつく頃には牧田がまたしてもいない。
「…さっきここに会長居ませんでした?」
「あれ、本当だ。」
「…お先に失礼します。もし戻りましたら伝えてください…」
「解りました!お疲れ様です!」
入り口近くにいる草間にも最後に声をかける。
「すみません、お先に失礼します!」
「うん、お疲れ様、楽しめた?」
「はい!とても!」
「じゃぁまた僕も行くと思うけど、よろしく!」
「はい!お願いします!」
そうして階段を下りていく。喫煙所で煙草を吸うスタッフにも頭を下げながらも桜は挨拶をして回り、店を後にした。
「…お疲れさん」
「え?」
「…どうした?」
「デジャヴですね、確実に」
「そう言うな、帰るんだろう?」
「なんでわかるんですか?夜風に辺りに来ただけかもしれないのに」
「うるさい、クスクスおいで」
「はい?」
「こっち」
駅とは反対に店舗の駐車場に入っていく牧田。その後を着いて行くしかない桜。
「あの…電車が…」
「心配いらないだろ」
「そうは言っても…」
「…送る」
そう言われなれない言葉を聞けば少しドクンと胸が高鳴った。
「…あの…会長…?」
「乗って?」
「あの…どこに…」
「こっち」
そう言って助手席を示す牧田に誘われる様に桜は、おずっと扉を開けた。
「…ほら。早く、寒い」
「ごめんなさい…」
「…クス…」
乗り込めばいつも停まっていたとみていた車と少し違う様に思えた桜は牧田に問うた。
「会長、車変えました?」
「変えてないよ、ずっとこれ」
「そっか…」
「どうかした?」
「ホテルに停まってる車と比べて大きさ違う様に思ったので…」
「一緒だよ。」
「それに…あれ…」
「今度は何?」
「…なんか…作業着じゃない会長…緊張する…」
「どういう事?いつも俺こんなんだけど?」
「違いますよ、いつも作業着で…」
「上着が、だろ?」
「…あ、そういう事…」
少し緊張も解けてきたのだろう。桜の表情も緩んでくる。
「…今日もまた、ありがとうございます。でも、グラッドからの人、私だけなら逆に来ない方がよかったのかなって思ってたから、嬉しかったです」
「来ない方がいいとか、言うなよ」
「…え?」
信号で止まった牧田の車の中で、ライトに時々照らされる牧田の横顔を盗み見る様に桜はちらりと見た。
「…どうかした?」
「…いえ…その…」
「何?」
「……こうして近くにいるの…無いなぁ…と思って…」
「そんなことないでしょ」
「え?」
「俺だってあんなことしたことないし。」
あんな事というのが何を指しているのか、しっかりと理解するまでに少しばかり時間がかかった桜。思い当たる事を探していれば追い打ちをかける様に牧田が話し出す。
「…あの時も泣かせるつもりはなかったし」
「…あ、…!の時…か…」
「思い出した?」
「…忘れては…無いですけど…」
「ならよかった。」
思いのままを口にする牧田。それと裏腹に桜はどこか言葉を選んでしまう。加えて自身の気持ちをうまく言葉にしにくかったのだ。
「…構わないから…」
「え?」
「言ってくれて。いろんな事。どう思うとか、こう思うとか。それを聞いて嫌ったりとか、そういうことはないと思うから」
「…はい…」
「何か今言いたい事は?」
「…えと、何か色々ありすぎて…」
「順番に聞くよ?」
「…あの、まず…」
「ん」
「いつもありがとうございます。何だかんだと気にかけてくれたりして…」
「別に?普通の事」
「後は…その…」
「ん?」
「正社員にしてくれてありがとうございます。」
「今更…クス…どう?やっていけそう?」
「はい!」
「良かった。あとは?」
「…あとは…その…」
「まだなんかあるんだ?」
そう聞く牧田の言葉に促される様に、少しずつ勇気を出そうとするものの、あと一歩の所で言葉を飲み込んだ。
「忘れちゃったので、また話します。」
「解った。その時には聞くな?」
「はい、お願いします」
そうして気付けばグラッドホテルの近くまで戻って来ていた。
0
あなたにおすすめの小説
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
心のすきまに【社会人恋愛短編集】
山田森湖
恋愛
仕事に追われる毎日、でも心のすきまに、あの人の存在が忍び込む――。
偶然の出会い、初めての感情、すれ違いのもどかしさ。
大人の社会人恋愛を描いた短編集です。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる