君と、僕と、キミたちと…

みやび

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新部員対面と選手選抜

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それから最後位は…と選手枠を取りたい三年も何人もいた。二年も今年こそは…と頑張って打っている。

「…相変わらずだな」
「へ?」
「その癖、しっかりと直さねぇと足をすくわれるぞ?」
「…癖って…」
「若干構えの時の右肩が内側に向いてる」
「…うそ…」
「んな事嘘言ってどうすんだ」
「…え、待って…」

二人が話している時に雅の打つ番が回ってくる。

「待って…紫音、写真撮って…!」
「は?なんで俺が」
「いいじゃん、お願い」

そう言われてスマホを渡す雅。

「ハァ…てか、袴に入れてんなって…」
「たまたまよ」

渡されてロック画面に入る。さらりとロック画面を解除し、そのまま写真と言わずに動画を撮り続ける紫音。

「…ハァ…めんどくせぇ」

そう呟きながらも二本目を構えた時にしっかりと画面に向きなおす紫音は右肩が内側を向く時に少しばかり声を入れていく。

「…ここ、ブレやすくなってる」

打ち終えた時、スマホを返す紫音。それを後で見返してみるから…と礼を言う雅だった。部活の時間も終わり、皆早々に道場を出ていく中で雅は一人スマホを開き、動画を見返している。

「…なんか…きれいじゃない…」

そう動画の中の自分の姿勢を見つめていた。時田に話をして、少しだけ居残りを頼んだ雅。三十分だけな?と言われて動画を見直し、矢を構える。

「…内側にって…だってこうなるでしょ?」

しかしその姿勢がきれいではない事、癖ついていることは動画を見て一目瞭然だった。そんな中で打ってもやはり真ん中に向かうものの、少しずれていく。

「ハァ…」
「構えて見ろ」
「へ?…紫音…帰ったんじゃないの?」
「残るだろうと思ってな」
「…やっさし」
「うるせぇよ」

不器用なりの優しい声掛けに雅は安心したのだろう。弓をくっと握り、引いた。

「…止まってろ」
「ち、ちょっと…」

背後に立ってグッと右肩と背中に手を回し、開くように押し広げていく紫音。

「…これでいい」
「結構しんどいんですけど…」
「だろうな」

すっと離れてそのまま矢を放つ雅。途方もない所に飛んでいく。

「…信じらんない…的に当たらない…」
「力の入れ方が違ってんだって…」
「紫音打ってみて?」
「…は?」
「紫音の型、きれいだから…見たい」
「…ったく…」

そう言われれば弓をはいっと渡す雅。

「…人のじゃ打てねぇよ」
「そう?」
「簡単に貸すんじゃねぇって」
「紫音ならいいかなって…」
「…貸せ」

とんっと受け取れば二、三度引き強さを確認してぐいっと引いていく。

「待って?!」
「なんだよ」
「もう一回最初から!」
「なんで」
「動画撮る!」
「は?」
「お願い」
「……わかったよ」

スマホを構えて雅はじっと紫音をフィルター越しに見つめている。シュ…タン…と軽い音と同時に真ん中を射抜いていくその矢を見て雅はため息しか出なかった。

「…なんでこんなに違うの?」
「無駄に打っても意味ねぇよ」
「無駄って…」
「確かに、やらねぇよりは数打つのは大事だけどな?それでも正しい姿勢で、しっかりと見据えた打ち方しなけりゃ意味ねぇってことだ。」
「…わかった。」

小さく返事をして最後に三本だけ打つ…と返事をすれば紫音が後ろから見ていた。最後の最後で真ん中を射止める雅。

「…やっと…出来た。」
「今まで何回も真ん中は射てるんだろうが。」
「そりゃそうだけど…」
「筋は問題ねぇんだ。あとはちょっとした癖の修正だろ」
「…ん、ありがと」
「ぁあ?」
「だって紫音そんなにいつも褒めてくれないから」
「…知らねぇよ」

そう言って笑い合えば矢を片付けて着替えをし、それぞれ帰っていくのだった。

***

それから数日経ち、部活見学も始まっていく中で感覚がぶれ始める部員も何人もいた。そんな中で群を抜いて安定しているのは雅、紫音、部長の芹沢と副部長、そして仁だった。
入部見学は公正を期すために、部員が順番に相手をすることになっている。
そんな中で今日は雅と仁をはじめとして五人が対応することになっていた。

「…えっと、よろしくお願いします!」
「はーい」
「あ、すみません、中って入れたりしますか?」
「えーっと順番になるので待ってくださいね?」
「えー、ずっと入れないの?」
「弓道っていうのをまず初めにお話しさせていただきたくて…」
「そういうのいいです!」
「そうそう、なんか、ぐって引っ張って打つだけでしょ?誰でも出来るって!」
「それよりもイケメン見たいって!」

ほとほと苛立ちを少し隠し切れなくなってきている雅。それを察知してだろう。少し遅れて仁が後ろから声をかけた。

「…悪いな、皆集中してっからよ?」
「えー?!本当にいた!」
「え、もう一人のイケメンさんは?!」
「ほら!生徒会長の!」
「それ以上うるさくすると部活の邪魔になりますので弓道を見に来られてない人は他の部活を当たっていただけると嬉しいんですが…」
「えー?!いくら先輩だからってそんな言い方あります?」
「そうそう!どの部活をどんな理由で選ぼうと私たちの勝手じゃんかぁ?」

さすがに我慢の限界になった雅。

「…いい加減にしてくれませんか?」
「え?」
「弓道ってのは集中力が大事なんです。それをたかがイケメンが見たいからって…それだけの理由で選ばれたらたまったもんじゃないわ?!」
「…え、っと…」
「確かに青木君も紫音もかっこいいかもしれないけど、それって見た目だけでしょ?!弓打つ人ってのは誰だってかっこいいの!きれいなの!たかが見た目だけで選ばれたらそんな一年生に教える時間だって私たちから奪われてくの。真面目に弓道やりたいって人だけにしてくれませんか?」
「……行こ行こ…?」
「ほんとしらける…」
「こんな先輩の居る部活、やめよ?」

そう言って半数以上がその場を去っていく。そんな状況を見て雅の後ろから芹沢が声をかける。

「夏目?一旦変わる」
「…ッッ…ごめんなさい…」
「いや、大丈夫」

そう言われてニコッと笑いかけてくれる芹沢だったものの、道場の中に入っていく雅だった。そんなところに的前で待機している紫音が声をかけてくる。

「…ばかだろ」
「…ですよね…」
「意外とお前の声が響いてほとんど打ててねぇっての」
「…マジかぁ…」

そう呟けば雅は部員に声をかけた。

「…邪魔してごめんなさい」
「え?あ、大丈夫ですよ!」
「そうそう!夏目が言ってくれなかったらやばかったわ」
「でも…打つ邪魔して…」
「大丈夫!」
「それよりもはっきりと言ってくれてありがとうございます!先輩!」
「…優しすぎる…」
「フッ…」

少し気落ちした雅だったものの、他の部員たちはようやく打ち始める事が出来てきた。そして日も過ぎていき、水曜日がやってきた。

「んじゃ、二年から打つか」
「…はい…!」

緊張した表情の中、三人ずつ打っていく。記録係は別の学年で受け持つことになっていた。不正がない様にと記録も二名体制、各場所に部長と副部長、そして紫音が付くことになっていた。
どんどん進んでいくものの、やはり二年生、まだしっかりと結果が出せる状態でもなかった。そんな中…

「うぇー、俺の採点立ち合い紫音チャンとはねぇ…」
「いいからさっさと打て。そしてさっさと終わらせろ」
「んなこと今まで誰にも言ってなかっただろうが」
「いいから静かにしてさっさと打て」

そう言われながらも仁は一旦目を閉じ、すぅ…と息を吸い込んでゆっくりと吐き出せばスッと立ち上がり、構える。

シュ……・・・タン…

一本、二本と終えていく。そして最後の一本を打ち終えた所でほぼ確定的に結果を残していく。

「…退け、次の奴が控えてる。」
「解ってるよ。」

そうして二年も終わり、三年が入ることになる。順番半ばで副部長が打ち、最後の組で芹沢、紫音、雅が並ぶことになる。

「…え、待って、何で私この二人と打つのよ…」
「別に誰と打っても一緒だろうが」
「…圧が半端ないんですけど…」
「さっさとしろ、」
「はーい…」

しかし一旦正座をして、ふと目を開け、立ち上がって弓を構える瞬間だった。今までざわついていた空気が一瞬にして…・・ーーー変わった。

シュン…・・タン……   シュ……・・タン…

見ている間に三本を打ち終える三人。的に向かって一礼をすれば一気に歓声が沸き起こる。それも仕方のない事。芹沢もほぼ中央付近に、雅も三本の内一本は中央、紫音に至っては全部が中央の丸を射ていたのだ。

「…決まったな」

フッと笑う時田と、ふっと息を吐く雅。紫音は相変わらずなんて事ない表情のまま後ろに下がる。

「…んじゃ、少し待ってもらって…」

そうして時田は一覧表を手に取りつつも数枚を分けていく。

「…よし、じゃぁ発表するぞ?」

時田の声掛けにメンバーは一斉に集まってくる。

「…まず人数だけど、男子三人、女子三人での選抜になる。」

その言葉を聞いた時点で男性陣ははぁ…とうなだれていた。そう、結果は見えていたからだ。

「まずは男子からな?住吉紫音、芹沢貴也、そして青木仁。よくやったな」
「やっぱり…」
「あの三人だよね…」
「おーい、次女子な?夏目雅、福田ふくだ雪乃ゆきの小幡おばた千佳ちか。以上の六名だな。」

六名は名前を呼ばれれば前に出る。

「ちょっとこの六名は別枠のレーン使う事になるかもしれないが、そこだけ留意頼むな?」
「はい、」

パチパチと拍手も起こる中、練習に入っていく。しかし、一人、小幡が足がすくんでいた。

「…どうかした?」
「だって…私初めてで…こんな風に打てたのだってもしかしたら偶然かもしれないし…」
「偶然でもそれでも、ずっと千佳ちゃんが頑張ってたって事でしょ?大丈夫!一緒にがんばろ!」
「はい、でも…」
「嫌ならやめろ。今からでも次点に変わってもらえばいい」
「…ッッ」
「紫音、言い方」
「だってそうだろうが。実力で勝ち取ったのに自身が持てねぇならやめろってだけだ。」
「…ッ私だって頑張って…」
「ならそれがすべてだろうが。」
「……」
「まぁまぁ、あぁ言ってるけど紫音も悪い奴じゃねぇしさ」
「少しストイックってだけで」
「それ雅ちゃんが言っても意味ないかもよ?」
「え、そう?」
「まぁ、これから六人でいい結果出せるように頑張りましょっか!」
「そうだなぁ」

そう話していた。
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