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夏休み到来、そして合宿
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春の大会、そして中間も終わり、期末も誰も赤点者が出ずに無事に終わっていく。そして夏休み目前の部活日…
「集まれー」
その時田のひと言で部員は集まる。
「さて、二年三年はおなじみだが…夏休み合宿の予定を配るぞ?」
そうして唯をはじめとして何人かが手分けしてプリントを回していく。
「今年も三年は追い込み時期に入る為、参加は自由。ただ、これに出席したから受験ダメでしたは通用しないからな?一年二年は出来る限り参加してもらえると助かる。と言ってもそれは俺の意見だからら、家の都合とか、そういうのは優先してくれて構わない。」
「はーい、」
「今の所参加決めてるって二年は?」
そう言われてパラパラと手が上がる。その中に仁も入っている。しかし…ーーー
「住吉と夏目は二年じゃないだろ」
「でも行きますよ?」
「俺も」
「そうか、OK。でも決めていても一回はきちんと親御さんの了承、みんな受けろよ?それと、この合宿で毎度のことながら、次期部長と副部長の発表もあるからな?」
そう話しながらもざわつく中、一年生の質問等を受けつつ、練習に入っていく。
「…でも、これって、学校じゃないって事ですよね」
「あぁ、そうだな」
「…でも、そうすると…」
嬉しそうに話す面々も何人もいる。こうしてこの日はお開きになる。そして待ちに待った夏休み。宿題は持参するというもので、弓道部の合宿も始まった。
「ようこそ、今年もありがとうございます」
「いえいえ、お世話になります。」
「おや、…?二人は今年もですか?」
「はい!お世話になります!」
「また朝から夜まで打つんでしょう?」
「へへ…」
「立ち止まってんじゃねぇよ。じゃまだ」
「……クス…相変わらずですね」
「はい」
そう話しつつも中に入っていく。荷物を置いて、着替えてホールに集合な?と言われながらも大部屋に入っていく。
「あの、夏目先輩…」
「ん?どうかした?」
「受験とか…大丈夫ですか?」
そう声をかけてきたのは一年生だった。その言葉を聞いて、雅はフフッと笑うとありがとう!大丈夫!と返事をしている。それを聞いて、二年生の一人がその一年生に話していた。
「スポ推だから!夏目先輩」
「あ、ちょっと違うけどね?」
「え、でも…スポ推だって聞きましたけど…」
「んー、正確にはちょっと違うけど、そういうものかな…?」
首をかしげながらも雅は笑っていた。その日から二泊三日…打ちっぱなしと言わんばかりの日が続くのだった。筋トレの基礎練習から、弓うち、そして当然ながら宿題をする時間…それだけに時間を費やしていく面々。宿題の時間に割り当てられている中、紫音は後輩の勉強を教えながらも自身の勉強を解いていく。
「…てか、本当、贅沢な時間だよね…」
「本当…住吉先輩の私服見られるだけで最高…」
「あとは仁君ね!」
「そうそう、イケメン二人…!」
そんな会話をなされているとも知らずに本人たちは勉強をしていった。
「…打ちたい…」
「我慢しろ」
「……だって…勉強つまらなさ過ぎる…」
「のび太か、お前は」
「せめて女の子だからしずかちゃんにして」
「しずかちゃんはつまらないなんて言わねぇだろうが」
「…クスクス…」
「何がおかしい」
「紫音がしずかちゃん呼び、かわいい」
「いつか殺すぞ」
「…ひどくない?」
「三年の二人、うるさい」
「…紫音のせいで怒られた」
「お前が先に変な事言ってんだろうが」
「変じゃないじゃん…打ちたいって言っただけ…」
「お前ら、邪魔するなら道場いけ」
そう言われて雅の目はきらきらと光った。
「…行く!」
「俺はここにいる」
「OK!打てるなら!」
そう言って雅は嬉しそうに打ちに行った。しかしそれに対して誰も羨ましがることはない。よくもまぁあれだけ練習した後で打てるものだ…と逆に関心すらしているのだった。さすがの雅も、校外での合宿の時にスマホの音を漏れ流すことは出来ず、イヤフォンを付けるのだった。
「…これで良し…」
音をかけ、弓を引く。何度も打っては回収し、そしてまた打つ…それの繰り返しだった。そしてどれくらい経った頃か…イヤフォンを外してふと視線を上げればそこには腕組をして壁に凭れた仁がいた。
「ひゃ!…び、っくりした!」
「逆によく今まで気付かなかったっすよね」
「いつからいたの?」
「五分くらい前からっすかね」
「…声…ッ、かけてよ」
「集中してたみたいですし?」
「イヤフォンしてたからだよ…」
「へ?」
仁も少しばかり驚いていた。それでもスッと壁から体を離して雅の元に向っていく。正面に立てば上から見下ろしながらも話し出した。
「…俺さ、お願いがあるんですけど」
「何?」
「この合宿の最後に紅白戦、今年も組まれてるじゃないっすか、そこで俺個人の成績と住吉さんの成績、比べて俺のが高かったらこの夏休みの間にデートしてくれません?」
「…はい?」
「…だめっすか?」
ジッと見つめる仁の目から、雅は自身の目を逸らすことが出来なくなっていた。
「でも、それって紫音の許可っていうか…勝負するって事でしょ?」
「それならいいってさ。」
「…へ?」
「だから、住吉さんの許可っていうの?それはもらってる。」
「…あの、それで何か言ってました?」
「いや?好きにしろってさ」
「そっか…」
「どう?あとは夏目先輩の返事だけで俺のモチベが上がるんすけど」
「…デートって…」
「ん、行きたい場所は夏目先輩の行きたいところで構わないんで。」
「…解った…」
「サンキュ」
そう言って笑いかけた時だった。
「ねぇ、青木君…」
「んぁ?どうかしました?」
「その紅白戦、私が三本とも真ん中射たら、私も一つお願い聞いてもらってもいい?」
「…なんすか?」
「…それは秘密。」
「ずるくないっすか?」
「大丈夫。聞いてもらえるって解ってたら私はモチベ上がる」
「……一本も外せないって事っすよね?」
「ん」
「そんな高いリスクの願いってなんだろうなぁ…」
「それだけのことだよ…」
「んー、例えばハグとか?」
「大丈夫、違うから…」
「…クスクス…解りました。じゃぁ、お互いそういう事で」
そう言って雅も夕飯の為に戻っていくのだった。そして早くも二日目…朝イチで紅白戦のくじ引きが行われた。
「よし、んじゃぁ、くじ引けよ?」
「はーい!」
「まてまて、夏目は引くな」
「へ?」
「夏目と住吉は別グループな?」
「うっそ、」
「当然だろ、じゃんけんでもして紅白決めて?」
「……紫音どっちがいい?」
「どっちでもいい」
「じゃぁ、じゃんけんでかったら紅ね?」
「分かった。」
そうしてじゃんけん。雅が負けて白になる。
「二人決まったか?」
「私白」
「良し、じゃぁ、くじで白引いたら夏目、紅なら住吉のとこに行けよ?」
そう言われてワラワラと集まってくる。順番はくじの紙に書いてある為、順番でもめる事はなかった。当然ながら雅と紫音は最後に打つ。三年が他に参加者もいないと言う事もあって、簡単だった。
「…おい」
「何?」
「あのバカから聞いてるだろうが…」
「…バカって青木君?」
「他に誰がいる」
「……それで?」
「お前があいつとどこかに出かけるチャンスかもしれねぇが、俺は妥協はしねぇからな?」
「それでいいと思うよ?」
「そういう所だよな…ほんと…」
「何が?」
「本当なら好きな奴と出かけるチャンスだから手抜いてとかいうだろ」
「それで手抜かれても青木君はすぐに解るだろうし、それじゃ行っても楽しくない…」
「だろうな」
くじ引きも終わって、昼食後に始まると言う事も伝えられ、午前中は紅白のグループごとに練習をしていく。
「つか、コレどうかと思うけどなぁ…」
「文句言うな」
「…1/2の確率のはずだと思うのに…」
「少なくとも、負ける気しねぇけどな」
「それって俺との事?それとも紅白戦?」
「当然、どっちもだ。」
そう、紅に紫音と仁が揃っているのだ。
「…もう、負け決定ですよ…夏目先輩…」
「大丈夫だよ。紅白戦って言っても、楽しく打てば大丈夫!ね?」
「だって…」
「その弱気が弓と矢に移るからね?大丈夫。自分を信じて!」
にこりと笑う雅。メンツからしても確実に紅白戦の勝利は紅組の勝利だというのは、誰もが解っているようなほどの差があった。それでも楽しく打つというのを一番に話していた雅だった。昼食後に雅は白組のメンツを揃えて話を始めた。
「…大丈夫!一年生が多いけど、いい経験になるからね、で、待ってる間も必ず打ってる人の格好、姿勢をしっかりと見ていて?」
「それで何か変わりますか?」
「ん、さっきも言ったけど、こっちには一年生が多い。と言う事は紅組には?」
「先輩が多いって事ですよね?」
「ん、だから、盗める技術は格段に多いって事。あとは、必ず見るポイントっていうか、必ず見た方がいい人ね?五番の二年生の千景ちゃん。それと、十番の青木君。あとはラストは、私じゃなくて、ぜひとも紫音を見てあげて?」
「え、それって緊張するからって事ですか?」
「違う。私よりも真ん中を射る確率が高いのが紫音だから。それだけだよ」
そう話していた。時田の声と共に紅白戦が始まっていく。
「…よろしくお願いします。」
一人目、二人目…と進んでいく。静かすぎる時間と空間の中。そしてどんどんと進んでいって十番の仁の番がくる。
「…一本目…」
ぽつりとつぶやく雅。一本目、二本目…難なく真ん中を射ていく仁。
「三本目…」
グッと息をのみながらも見守るものの、わずかに中心から外れたその矢。的に一礼をして仁はその場を退く。
「最終番、住吉、夏目、前に…」
そう言われて二人は前に出る。誰もがぽつりとも話すことが無いままにゆっくりと引いていく弓。
…シュ…ーーータンッ…シュ…・・タン…
二人ともが真ん中に寄せてくる。どちらも譲ることが無いままにゆっくりと最後の一本を引いていく。
「…ッ…」
シュ…ーーーー・・・タン…ッ!
最後の一本も二人揃って真ん中を得た。大きく息を吐けばゆっくりと一礼して戻っていく。
「…さすがだよね…あの二人…」
「本当に…すごいしか言えない…」
「どうなってるの?二人の集中力…」
しかしどちらかといえばきれいに丸に収まっているのは紫音の方。雅も円の中とは言え、次点の丸にほど近いものだったため、試合でいけば紫音が一位となる。
「…にしても、だいぶ姿勢変わったな」
「…そう?!」
「あぁ。後ろから見てたらよくわかる」
「…変態…」
「ぁあ?何か言ったか」
「別に?…でもありがと」
そう返事をしつつも、紅白戦はダントツで紅組の圧勝となった。そして続いて新部長の発表が始まる。
「諸々の事を考えてこちらで今回も決めさせてもらった。新部長には青木仁。それと副部長には桜井千景。よろしく頼む。」
「…は?」
「異議あるか?」
「…あるっつぅか…なんで俺?」
「実力的にも、申し分ないだろ」
「……マジか…」
そうして新部長に任命された仁と千景。拍手とともにその日の練習も終えていく。しかし、雅は少し残ると伝えた。
「…もう少しだけ打ちたい…」
「ダメだ」
「…でもセンセ、どうしてもだめ?」
「無理だ。戻るぞ?」
そう説得されて雅も戻ることにした。夕飯の前に勉強会も始まる。雅もこの日は一心に机に向かう。そしてその後の夕飯、入浴時間、どこを取っても仁との話の時間を取ることは出来なかった。部屋に戻り、同室の二年生が少し力を貸してほしいと言ってきた。
「…力って…」
「一時間とかでもいいんです、私、彼と一緒に過ごしたくて…」
「彼…って…二年生だよね」
「そうなんですけど…」
「あ、その、二年だからダメとかではなく、部員の誰かって意味ね?」
「はい…あの、楓真君なんですけど…」
相手も二人部屋に入っていたという。部屋割りもくじ引きで行きのバスの中で決めていた。
「…で、もしかしてその梶原君の同室の人がここに来るって事?」
「それは解らなくて…向こうで一緒に交代にするか、それとも一時間向こうはどこかで過ごすか…とか…」
「誰だっけ…梶原君の同室…」
「青木君って言ってましたけど…だから多分他の所で時間潰すのかなとかって思うけど…」
そう聞いた雅は少しばかり緊張した面持ちになった。
「…住吉先輩だったら夏目先輩も一緒でもいいと思うんですけど…」
「いやいや、それもどうかと思うけど…」
「でも、いいですか?一時間位…」
「いいよ、行っといで?」
ありがとうございます!と感謝されて雅は部屋を出ていく白川を見送った。それから十分くらいした時だ。ノックされて雅は出ていく。
「はい?どうかした?忘れ物?……って…」
そこには仁が立っていた。
「…一時間位、お邪魔していいっすか?」
「あ、…うん…」
そうして一人残っていた部屋に仁を招き入れた。
「…あー、っと…付き合ってたんだね、あの二人…」
「そうみたいっすね」
「……もしかしたら青木君、どこかで時間潰すかもって言ってたから…」
「それも考えたんすけど…、ほら、先輩の願い聞くいいチャンスだなって思って」
「へ?」
「約束したでしょ?三本全部真ん中だったらお願い聞くって」
「……ッ…」
「なんすか?って思って、聞きに来たっすよ」
「……あれ、か…」
畳の上に座り、雅は仁の所作にジッと見入っていた。
「…何、クスクス…そんなにみられるとなんか話しにくいんすけど…」
「あ、ごめん…」
「それで?」
ジッと見つめてくる仁の目を見ながら、少し俯きながら雅は話し出す。
「…あの、本当に嫌だったら言ってね?」
「なんすか、逆に怖いっす」
「…その…どっちかすごく迷ってて…」
「は?」
どっちをお願いしようか迷っていたという雅の言葉に仁は小さく笑って雅ふっと視線を外して胡坐をかいた。
「いいっすよ、二つでも三つでも」
「…でも…」
「聞いてみないと分かんないっす」
「…あの…じゃぁ、一つ目…」
「はい」
「…その…言葉…」
「言葉?」
「私が先輩だからだと思う…でも、敬語は嫌だ…」
「…解った。あとは?」
雅が言ってすぐに言葉が砕ける仁。そしてジッと見つめ直した。
「…後は…その…」
「言って?先輩」
「…ッ…これは…嫌かも知れなくて…」
「いいから。」
「…青木君って呼んでるでしょ…?」
「ん、」
「それを…その…名前で呼んでもいいですかっていうお願いでして…」
「…クス…名前でって…?呼び捨て?」
「それはさすがに!…あの…仁君って…」
「…別に呼び捨てでもいいけど?」
「…ッッ…仁君でいい…」
「そ?じゃぁ、俺も名前で呼んでいいって事?」
「…え?」
「ん?だってそうでしょ?」
「そうでしょって…ッ…」
「だめ?雅先輩」
「…ッ…ちょ、待って…」
じりっと距離を取る雅。顔が真っ赤になっているその表情を悟られない様に手で顔を隠すものの、仁にそれは通用しなかった。
「…取って食おうってわけでも無いんだから…」
「それはそうかもしれないけど…」
「もしかして先輩、彼氏いなかったりします?」
「一年の時にはいた…」
「…へぇ、それ以降はいないって事か…それもそっか、あれだけ住吉さんがずっと一緒に居るんじゃ」
「…それは関係ないと思うけど…」
「そう?」
「それはそうと…」
不意に話題を変えようとした雅。それに小さく笑う仁だった。
「…あの…仁君の…大会の四位のお祝い…まだできてないから…」
「ぁあ?別になんてことない」
「…大それたことできないけど…遠出とかも出来ないけど…どこか行く?」
「デートって事でいい?」
「それは違うと思う。」
「…マジ?」
「…ん、デートではない。けど…あ、でもバイトあるか…」
「確かにそうだな…」
ふと考えるそぶりを見せている仁に、そうだよね…と俯いた雅。少しの沈黙の中で、仁はよっと立ち上がる。
「…まだ時間あるけど…」
「どこか出てくるわ。」
「…そか…」
雅も立ち上がり、見送ろうとした時だった。『そうだ…』と思い出したかの様に仁は振り返り、顔を上げた雅の肩を抱き寄せてぽすっと腕の中に抱きいれた。
「…だったら、四位のお祝い、これでいいよ」
「…ッッ」
「クスクス…でさ?先輩?」
「な、に…?」
「嫌なら振り払わねぇと、男って勘違いするぜ?」
「…それ、は…」
しかしきゅっと服を握ってしまっている雅の肩をそっと押し戻す様に離した仁だった。
「…それじゃ、お休み」
「ん…おやすみなさい…」
そして仁は部屋をするりと出ていった。残された雅は布団を引いて居た。
「…もぉ…やばい…」
まだ肩口に残る熱に侵されるように膝を抱えた。
「集まれー」
その時田のひと言で部員は集まる。
「さて、二年三年はおなじみだが…夏休み合宿の予定を配るぞ?」
そうして唯をはじめとして何人かが手分けしてプリントを回していく。
「今年も三年は追い込み時期に入る為、参加は自由。ただ、これに出席したから受験ダメでしたは通用しないからな?一年二年は出来る限り参加してもらえると助かる。と言ってもそれは俺の意見だからら、家の都合とか、そういうのは優先してくれて構わない。」
「はーい、」
「今の所参加決めてるって二年は?」
そう言われてパラパラと手が上がる。その中に仁も入っている。しかし…ーーー
「住吉と夏目は二年じゃないだろ」
「でも行きますよ?」
「俺も」
「そうか、OK。でも決めていても一回はきちんと親御さんの了承、みんな受けろよ?それと、この合宿で毎度のことながら、次期部長と副部長の発表もあるからな?」
そう話しながらもざわつく中、一年生の質問等を受けつつ、練習に入っていく。
「…でも、これって、学校じゃないって事ですよね」
「あぁ、そうだな」
「…でも、そうすると…」
嬉しそうに話す面々も何人もいる。こうしてこの日はお開きになる。そして待ちに待った夏休み。宿題は持参するというもので、弓道部の合宿も始まった。
「ようこそ、今年もありがとうございます」
「いえいえ、お世話になります。」
「おや、…?二人は今年もですか?」
「はい!お世話になります!」
「また朝から夜まで打つんでしょう?」
「へへ…」
「立ち止まってんじゃねぇよ。じゃまだ」
「……クス…相変わらずですね」
「はい」
そう話しつつも中に入っていく。荷物を置いて、着替えてホールに集合な?と言われながらも大部屋に入っていく。
「あの、夏目先輩…」
「ん?どうかした?」
「受験とか…大丈夫ですか?」
そう声をかけてきたのは一年生だった。その言葉を聞いて、雅はフフッと笑うとありがとう!大丈夫!と返事をしている。それを聞いて、二年生の一人がその一年生に話していた。
「スポ推だから!夏目先輩」
「あ、ちょっと違うけどね?」
「え、でも…スポ推だって聞きましたけど…」
「んー、正確にはちょっと違うけど、そういうものかな…?」
首をかしげながらも雅は笑っていた。その日から二泊三日…打ちっぱなしと言わんばかりの日が続くのだった。筋トレの基礎練習から、弓うち、そして当然ながら宿題をする時間…それだけに時間を費やしていく面々。宿題の時間に割り当てられている中、紫音は後輩の勉強を教えながらも自身の勉強を解いていく。
「…てか、本当、贅沢な時間だよね…」
「本当…住吉先輩の私服見られるだけで最高…」
「あとは仁君ね!」
「そうそう、イケメン二人…!」
そんな会話をなされているとも知らずに本人たちは勉強をしていった。
「…打ちたい…」
「我慢しろ」
「……だって…勉強つまらなさ過ぎる…」
「のび太か、お前は」
「せめて女の子だからしずかちゃんにして」
「しずかちゃんはつまらないなんて言わねぇだろうが」
「…クスクス…」
「何がおかしい」
「紫音がしずかちゃん呼び、かわいい」
「いつか殺すぞ」
「…ひどくない?」
「三年の二人、うるさい」
「…紫音のせいで怒られた」
「お前が先に変な事言ってんだろうが」
「変じゃないじゃん…打ちたいって言っただけ…」
「お前ら、邪魔するなら道場いけ」
そう言われて雅の目はきらきらと光った。
「…行く!」
「俺はここにいる」
「OK!打てるなら!」
そう言って雅は嬉しそうに打ちに行った。しかしそれに対して誰も羨ましがることはない。よくもまぁあれだけ練習した後で打てるものだ…と逆に関心すらしているのだった。さすがの雅も、校外での合宿の時にスマホの音を漏れ流すことは出来ず、イヤフォンを付けるのだった。
「…これで良し…」
音をかけ、弓を引く。何度も打っては回収し、そしてまた打つ…それの繰り返しだった。そしてどれくらい経った頃か…イヤフォンを外してふと視線を上げればそこには腕組をして壁に凭れた仁がいた。
「ひゃ!…び、っくりした!」
「逆によく今まで気付かなかったっすよね」
「いつからいたの?」
「五分くらい前からっすかね」
「…声…ッ、かけてよ」
「集中してたみたいですし?」
「イヤフォンしてたからだよ…」
「へ?」
仁も少しばかり驚いていた。それでもスッと壁から体を離して雅の元に向っていく。正面に立てば上から見下ろしながらも話し出した。
「…俺さ、お願いがあるんですけど」
「何?」
「この合宿の最後に紅白戦、今年も組まれてるじゃないっすか、そこで俺個人の成績と住吉さんの成績、比べて俺のが高かったらこの夏休みの間にデートしてくれません?」
「…はい?」
「…だめっすか?」
ジッと見つめる仁の目から、雅は自身の目を逸らすことが出来なくなっていた。
「でも、それって紫音の許可っていうか…勝負するって事でしょ?」
「それならいいってさ。」
「…へ?」
「だから、住吉さんの許可っていうの?それはもらってる。」
「…あの、それで何か言ってました?」
「いや?好きにしろってさ」
「そっか…」
「どう?あとは夏目先輩の返事だけで俺のモチベが上がるんすけど」
「…デートって…」
「ん、行きたい場所は夏目先輩の行きたいところで構わないんで。」
「…解った…」
「サンキュ」
そう言って笑いかけた時だった。
「ねぇ、青木君…」
「んぁ?どうかしました?」
「その紅白戦、私が三本とも真ん中射たら、私も一つお願い聞いてもらってもいい?」
「…なんすか?」
「…それは秘密。」
「ずるくないっすか?」
「大丈夫。聞いてもらえるって解ってたら私はモチベ上がる」
「……一本も外せないって事っすよね?」
「ん」
「そんな高いリスクの願いってなんだろうなぁ…」
「それだけのことだよ…」
「んー、例えばハグとか?」
「大丈夫、違うから…」
「…クスクス…解りました。じゃぁ、お互いそういう事で」
そう言って雅も夕飯の為に戻っていくのだった。そして早くも二日目…朝イチで紅白戦のくじ引きが行われた。
「よし、んじゃぁ、くじ引けよ?」
「はーい!」
「まてまて、夏目は引くな」
「へ?」
「夏目と住吉は別グループな?」
「うっそ、」
「当然だろ、じゃんけんでもして紅白決めて?」
「……紫音どっちがいい?」
「どっちでもいい」
「じゃぁ、じゃんけんでかったら紅ね?」
「分かった。」
そうしてじゃんけん。雅が負けて白になる。
「二人決まったか?」
「私白」
「良し、じゃぁ、くじで白引いたら夏目、紅なら住吉のとこに行けよ?」
そう言われてワラワラと集まってくる。順番はくじの紙に書いてある為、順番でもめる事はなかった。当然ながら雅と紫音は最後に打つ。三年が他に参加者もいないと言う事もあって、簡単だった。
「…おい」
「何?」
「あのバカから聞いてるだろうが…」
「…バカって青木君?」
「他に誰がいる」
「……それで?」
「お前があいつとどこかに出かけるチャンスかもしれねぇが、俺は妥協はしねぇからな?」
「それでいいと思うよ?」
「そういう所だよな…ほんと…」
「何が?」
「本当なら好きな奴と出かけるチャンスだから手抜いてとかいうだろ」
「それで手抜かれても青木君はすぐに解るだろうし、それじゃ行っても楽しくない…」
「だろうな」
くじ引きも終わって、昼食後に始まると言う事も伝えられ、午前中は紅白のグループごとに練習をしていく。
「つか、コレどうかと思うけどなぁ…」
「文句言うな」
「…1/2の確率のはずだと思うのに…」
「少なくとも、負ける気しねぇけどな」
「それって俺との事?それとも紅白戦?」
「当然、どっちもだ。」
そう、紅に紫音と仁が揃っているのだ。
「…もう、負け決定ですよ…夏目先輩…」
「大丈夫だよ。紅白戦って言っても、楽しく打てば大丈夫!ね?」
「だって…」
「その弱気が弓と矢に移るからね?大丈夫。自分を信じて!」
にこりと笑う雅。メンツからしても確実に紅白戦の勝利は紅組の勝利だというのは、誰もが解っているようなほどの差があった。それでも楽しく打つというのを一番に話していた雅だった。昼食後に雅は白組のメンツを揃えて話を始めた。
「…大丈夫!一年生が多いけど、いい経験になるからね、で、待ってる間も必ず打ってる人の格好、姿勢をしっかりと見ていて?」
「それで何か変わりますか?」
「ん、さっきも言ったけど、こっちには一年生が多い。と言う事は紅組には?」
「先輩が多いって事ですよね?」
「ん、だから、盗める技術は格段に多いって事。あとは、必ず見るポイントっていうか、必ず見た方がいい人ね?五番の二年生の千景ちゃん。それと、十番の青木君。あとはラストは、私じゃなくて、ぜひとも紫音を見てあげて?」
「え、それって緊張するからって事ですか?」
「違う。私よりも真ん中を射る確率が高いのが紫音だから。それだけだよ」
そう話していた。時田の声と共に紅白戦が始まっていく。
「…よろしくお願いします。」
一人目、二人目…と進んでいく。静かすぎる時間と空間の中。そしてどんどんと進んでいって十番の仁の番がくる。
「…一本目…」
ぽつりとつぶやく雅。一本目、二本目…難なく真ん中を射ていく仁。
「三本目…」
グッと息をのみながらも見守るものの、わずかに中心から外れたその矢。的に一礼をして仁はその場を退く。
「最終番、住吉、夏目、前に…」
そう言われて二人は前に出る。誰もがぽつりとも話すことが無いままにゆっくりと引いていく弓。
…シュ…ーーータンッ…シュ…・・タン…
二人ともが真ん中に寄せてくる。どちらも譲ることが無いままにゆっくりと最後の一本を引いていく。
「…ッ…」
シュ…ーーーー・・・タン…ッ!
最後の一本も二人揃って真ん中を得た。大きく息を吐けばゆっくりと一礼して戻っていく。
「…さすがだよね…あの二人…」
「本当に…すごいしか言えない…」
「どうなってるの?二人の集中力…」
しかしどちらかといえばきれいに丸に収まっているのは紫音の方。雅も円の中とは言え、次点の丸にほど近いものだったため、試合でいけば紫音が一位となる。
「…にしても、だいぶ姿勢変わったな」
「…そう?!」
「あぁ。後ろから見てたらよくわかる」
「…変態…」
「ぁあ?何か言ったか」
「別に?…でもありがと」
そう返事をしつつも、紅白戦はダントツで紅組の圧勝となった。そして続いて新部長の発表が始まる。
「諸々の事を考えてこちらで今回も決めさせてもらった。新部長には青木仁。それと副部長には桜井千景。よろしく頼む。」
「…は?」
「異議あるか?」
「…あるっつぅか…なんで俺?」
「実力的にも、申し分ないだろ」
「……マジか…」
そうして新部長に任命された仁と千景。拍手とともにその日の練習も終えていく。しかし、雅は少し残ると伝えた。
「…もう少しだけ打ちたい…」
「ダメだ」
「…でもセンセ、どうしてもだめ?」
「無理だ。戻るぞ?」
そう説得されて雅も戻ることにした。夕飯の前に勉強会も始まる。雅もこの日は一心に机に向かう。そしてその後の夕飯、入浴時間、どこを取っても仁との話の時間を取ることは出来なかった。部屋に戻り、同室の二年生が少し力を貸してほしいと言ってきた。
「…力って…」
「一時間とかでもいいんです、私、彼と一緒に過ごしたくて…」
「彼…って…二年生だよね」
「そうなんですけど…」
「あ、その、二年だからダメとかではなく、部員の誰かって意味ね?」
「はい…あの、楓真君なんですけど…」
相手も二人部屋に入っていたという。部屋割りもくじ引きで行きのバスの中で決めていた。
「…で、もしかしてその梶原君の同室の人がここに来るって事?」
「それは解らなくて…向こうで一緒に交代にするか、それとも一時間向こうはどこかで過ごすか…とか…」
「誰だっけ…梶原君の同室…」
「青木君って言ってましたけど…だから多分他の所で時間潰すのかなとかって思うけど…」
そう聞いた雅は少しばかり緊張した面持ちになった。
「…住吉先輩だったら夏目先輩も一緒でもいいと思うんですけど…」
「いやいや、それもどうかと思うけど…」
「でも、いいですか?一時間位…」
「いいよ、行っといで?」
ありがとうございます!と感謝されて雅は部屋を出ていく白川を見送った。それから十分くらいした時だ。ノックされて雅は出ていく。
「はい?どうかした?忘れ物?……って…」
そこには仁が立っていた。
「…一時間位、お邪魔していいっすか?」
「あ、…うん…」
そうして一人残っていた部屋に仁を招き入れた。
「…あー、っと…付き合ってたんだね、あの二人…」
「そうみたいっすね」
「……もしかしたら青木君、どこかで時間潰すかもって言ってたから…」
「それも考えたんすけど…、ほら、先輩の願い聞くいいチャンスだなって思って」
「へ?」
「約束したでしょ?三本全部真ん中だったらお願い聞くって」
「……ッ…」
「なんすか?って思って、聞きに来たっすよ」
「……あれ、か…」
畳の上に座り、雅は仁の所作にジッと見入っていた。
「…何、クスクス…そんなにみられるとなんか話しにくいんすけど…」
「あ、ごめん…」
「それで?」
ジッと見つめてくる仁の目を見ながら、少し俯きながら雅は話し出す。
「…あの、本当に嫌だったら言ってね?」
「なんすか、逆に怖いっす」
「…その…どっちかすごく迷ってて…」
「は?」
どっちをお願いしようか迷っていたという雅の言葉に仁は小さく笑って雅ふっと視線を外して胡坐をかいた。
「いいっすよ、二つでも三つでも」
「…でも…」
「聞いてみないと分かんないっす」
「…あの…じゃぁ、一つ目…」
「はい」
「…その…言葉…」
「言葉?」
「私が先輩だからだと思う…でも、敬語は嫌だ…」
「…解った。あとは?」
雅が言ってすぐに言葉が砕ける仁。そしてジッと見つめ直した。
「…後は…その…」
「言って?先輩」
「…ッ…これは…嫌かも知れなくて…」
「いいから。」
「…青木君って呼んでるでしょ…?」
「ん、」
「それを…その…名前で呼んでもいいですかっていうお願いでして…」
「…クス…名前でって…?呼び捨て?」
「それはさすがに!…あの…仁君って…」
「…別に呼び捨てでもいいけど?」
「…ッッ…仁君でいい…」
「そ?じゃぁ、俺も名前で呼んでいいって事?」
「…え?」
「ん?だってそうでしょ?」
「そうでしょって…ッ…」
「だめ?雅先輩」
「…ッ…ちょ、待って…」
じりっと距離を取る雅。顔が真っ赤になっているその表情を悟られない様に手で顔を隠すものの、仁にそれは通用しなかった。
「…取って食おうってわけでも無いんだから…」
「それはそうかもしれないけど…」
「もしかして先輩、彼氏いなかったりします?」
「一年の時にはいた…」
「…へぇ、それ以降はいないって事か…それもそっか、あれだけ住吉さんがずっと一緒に居るんじゃ」
「…それは関係ないと思うけど…」
「そう?」
「それはそうと…」
不意に話題を変えようとした雅。それに小さく笑う仁だった。
「…あの…仁君の…大会の四位のお祝い…まだできてないから…」
「ぁあ?別になんてことない」
「…大それたことできないけど…遠出とかも出来ないけど…どこか行く?」
「デートって事でいい?」
「それは違うと思う。」
「…マジ?」
「…ん、デートではない。けど…あ、でもバイトあるか…」
「確かにそうだな…」
ふと考えるそぶりを見せている仁に、そうだよね…と俯いた雅。少しの沈黙の中で、仁はよっと立ち上がる。
「…まだ時間あるけど…」
「どこか出てくるわ。」
「…そか…」
雅も立ち上がり、見送ろうとした時だった。『そうだ…』と思い出したかの様に仁は振り返り、顔を上げた雅の肩を抱き寄せてぽすっと腕の中に抱きいれた。
「…だったら、四位のお祝い、これでいいよ」
「…ッッ」
「クスクス…でさ?先輩?」
「な、に…?」
「嫌なら振り払わねぇと、男って勘違いするぜ?」
「…それ、は…」
しかしきゅっと服を握ってしまっている雅の肩をそっと押し戻す様に離した仁だった。
「…それじゃ、お休み」
「ん…おやすみなさい…」
そして仁は部屋をするりと出ていった。残された雅は布団を引いて居た。
「…もぉ…やばい…」
まだ肩口に残る熱に侵されるように膝を抱えた。
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