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第10話 部活動対抗リレー
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校長先生や体育科主任の先生による挨拶、体育委員長による選手宣誓、そして生徒会長による開会宣言を経て、体育祭は始まった。
私はともちゃんと二人で青ブロック席の隅に陣取り、競技を眺めつつお喋りに興じることにする。玉入れは午後一番のプログラムなので、午前中いっぱいは、言ってみれば暇なのだった。
「──えっ、じゃあ美術部からも何人か走るってこと?」
ともちゃんの話に私はのけぞった。帰宅部の私には当然無縁なのだけど、どうやら体育祭には「部活動対抗リレー」なる種目があるらしいのだ。で、それには運動部だけでなく文化部もエントリーさせられるらしい。
「そ。でも美術部が運動部に敵うわけないじゃん?」
「あー、うーん……」
素直にうなずくのもなんだか失礼な気がして曖昧に唸ってしまった。けれどともちゃんはそれを肯定の意にとらえたようだ。
「たとえばほら、野球部とかサッカー部とか、あとはバスケ部とかさ。あの辺の人たちはきっと『打倒陸上部!』みたいな感じで燃えてるんだろうけど。こちとら美術部ですからねえ」
そう言ってともちゃんは肩をすくめた。
「さすがに運動部にはかなわないよねえ」
私も同調する。
「でも宣伝代わりにって、毎年放送部と最下位争いだけど棄権はしないんだってさ」
ということは、棄権するクラブもあるということなのだろうか。そう尋ねるとともちゃんはうなずいた。
「理科部なんかは毎年棄権してるらしいよ。部員が足りないからって」
「へええ」
聞けば部活動対抗リレーは一チーム六人構成らしい。
「でも先輩に言わせれば言い訳なんだって。仮に部員が五人以下だったって、一人が二周走ればいいもんね」
たしかにそうなのだろう。でもそんな大変な思いをするくらいなら棄権してしまおうという気持ちはよくわかる。ともちゃんの先輩には悪いけど、リレーに出たからといって部の宣伝になるとは限らないのだ。
「ともちゃんはリレーメンバーに入らなくて済んだの?」
一番気になっていたことを尋ねると、ともちゃんは「うん、ぎりぎりね」と再び肩をすくめた。
「ぎりぎり?」
「進んでリレーに出たがる人間なんて美術部にはいないからさ、毎年新体力テストの五十メートル走の記録で早い順に六人が走ることになってるみたいで。私、七位だった」
なるほど、それはたしかに「ぎりぎり」だ。
「危なかったね」
私がしみじみ言うと、ともちゃんは真剣な顔でうなずいた。
「危なかった。でも上位三人が三年生だったから、来年は覚悟しないとだね……」
今年七位だったのなら、ともちゃんが来年、リレーメンバーに駆り出される可能性は高い。いや、一定以上の足の速さを誇る一年生が複数入ってこない限りそうなるだろう。
「大丈夫、その時は私が全力で応援するから」
何が大丈夫なのか、と内心突っ込みながら口にする。
でもともちゃんは「あはは、ありがと」と笑ってくれた。
私はともちゃんと二人で青ブロック席の隅に陣取り、競技を眺めつつお喋りに興じることにする。玉入れは午後一番のプログラムなので、午前中いっぱいは、言ってみれば暇なのだった。
「──えっ、じゃあ美術部からも何人か走るってこと?」
ともちゃんの話に私はのけぞった。帰宅部の私には当然無縁なのだけど、どうやら体育祭には「部活動対抗リレー」なる種目があるらしいのだ。で、それには運動部だけでなく文化部もエントリーさせられるらしい。
「そ。でも美術部が運動部に敵うわけないじゃん?」
「あー、うーん……」
素直にうなずくのもなんだか失礼な気がして曖昧に唸ってしまった。けれどともちゃんはそれを肯定の意にとらえたようだ。
「たとえばほら、野球部とかサッカー部とか、あとはバスケ部とかさ。あの辺の人たちはきっと『打倒陸上部!』みたいな感じで燃えてるんだろうけど。こちとら美術部ですからねえ」
そう言ってともちゃんは肩をすくめた。
「さすがに運動部にはかなわないよねえ」
私も同調する。
「でも宣伝代わりにって、毎年放送部と最下位争いだけど棄権はしないんだってさ」
ということは、棄権するクラブもあるということなのだろうか。そう尋ねるとともちゃんはうなずいた。
「理科部なんかは毎年棄権してるらしいよ。部員が足りないからって」
「へええ」
聞けば部活動対抗リレーは一チーム六人構成らしい。
「でも先輩に言わせれば言い訳なんだって。仮に部員が五人以下だったって、一人が二周走ればいいもんね」
たしかにそうなのだろう。でもそんな大変な思いをするくらいなら棄権してしまおうという気持ちはよくわかる。ともちゃんの先輩には悪いけど、リレーに出たからといって部の宣伝になるとは限らないのだ。
「ともちゃんはリレーメンバーに入らなくて済んだの?」
一番気になっていたことを尋ねると、ともちゃんは「うん、ぎりぎりね」と再び肩をすくめた。
「ぎりぎり?」
「進んでリレーに出たがる人間なんて美術部にはいないからさ、毎年新体力テストの五十メートル走の記録で早い順に六人が走ることになってるみたいで。私、七位だった」
なるほど、それはたしかに「ぎりぎり」だ。
「危なかったね」
私がしみじみ言うと、ともちゃんは真剣な顔でうなずいた。
「危なかった。でも上位三人が三年生だったから、来年は覚悟しないとだね……」
今年七位だったのなら、ともちゃんが来年、リレーメンバーに駆り出される可能性は高い。いや、一定以上の足の速さを誇る一年生が複数入ってこない限りそうなるだろう。
「大丈夫、その時は私が全力で応援するから」
何が大丈夫なのか、と内心突っ込みながら口にする。
でもともちゃんは「あはは、ありがと」と笑ってくれた。
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