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真夜中のバレンタインデー【掌編】
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給湯室で淹れたコーヒーを持って席に戻ると、デスクにコンビニのものらしいビニール袋が置いてあった。
(なんだこれ?)
心当たりがない。
訝しく思っていると、隣の席の後輩・住田が声をかけてきた。
「あ、それ。さっき、佐藤さんが置いていきましたよ」
それを聞いて斜め後ろを振り返ってみたが、佐藤の姿はなかった。
「……なんか言ってたか?」
俺は住田に尋ねた。
「いや、何も。なんかすげえ忙しそうでした。走ってました」
住田の言葉に思わず笑いながら、あいつらしいな、と思う。
同期の佐藤は仕事ができるわりに要領があまり良くない。要領で能力をカバーしている俺とは逆のタイプだ。
きっと昼休み返上で文字通り走り回っているのだろう。
俺は席に着いて、件のビニール袋を覗いてみた。
走り書きでメモが入っている。
金曜はありがとう
ほんのお礼です
Sato
〈佐藤〉と書くのが面倒だったのか、署名はローマ字になっている。
メモをわきに置いて袋を広げてみると、フレーバーチキンとオレンジジュースが入っていた。オレンジジュースは果汁100%だ。
「……わかってんなあ、あいつ」
思わずそんな声が漏れる。
正直、プリンやクッキーなど甘いものはあまり好きではない。
まだ温かいチキンを機嫌よく頬張っていると、香ばしい匂いを嗅ぎつけたらしい住田がうらやましそうな声を上げた。
「……吉村さんそれ! 新発売のやつじゃないっすか! フレーバーチキンデラックスでしょ! いいなあ……」
俺はふふん、と笑って見せる。
「お前も同期とは仲良くしとけよ」
調子に乗って先輩風を吹かせる。
羨望のまなざしを受けながら食べるチキンは格別に美味かった。
-END-
(なんだこれ?)
心当たりがない。
訝しく思っていると、隣の席の後輩・住田が声をかけてきた。
「あ、それ。さっき、佐藤さんが置いていきましたよ」
それを聞いて斜め後ろを振り返ってみたが、佐藤の姿はなかった。
「……なんか言ってたか?」
俺は住田に尋ねた。
「いや、何も。なんかすげえ忙しそうでした。走ってました」
住田の言葉に思わず笑いながら、あいつらしいな、と思う。
同期の佐藤は仕事ができるわりに要領があまり良くない。要領で能力をカバーしている俺とは逆のタイプだ。
きっと昼休み返上で文字通り走り回っているのだろう。
俺は席に着いて、件のビニール袋を覗いてみた。
走り書きでメモが入っている。
金曜はありがとう
ほんのお礼です
Sato
〈佐藤〉と書くのが面倒だったのか、署名はローマ字になっている。
メモをわきに置いて袋を広げてみると、フレーバーチキンとオレンジジュースが入っていた。オレンジジュースは果汁100%だ。
「……わかってんなあ、あいつ」
思わずそんな声が漏れる。
正直、プリンやクッキーなど甘いものはあまり好きではない。
まだ温かいチキンを機嫌よく頬張っていると、香ばしい匂いを嗅ぎつけたらしい住田がうらやましそうな声を上げた。
「……吉村さんそれ! 新発売のやつじゃないっすか! フレーバーチキンデラックスでしょ! いいなあ……」
俺はふふん、と笑って見せる。
「お前も同期とは仲良くしとけよ」
調子に乗って先輩風を吹かせる。
羨望のまなざしを受けながら食べるチキンは格別に美味かった。
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