社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa

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第2章・モフモフで可愛いケモノっ子

057:夢を語る者

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 俺はエルマーを殴り飛ばす事に成功し、戦況としてはエルマー有利のところから互角なところまで引き戻した。
 だが変わったところと言えば、エルマーは遊び半分でやっていたが怒りで本気になった。


「そのまま寝んねしてても良かったんだぜ? まぁ何度も立ち上がろうが、お前の金が全てっていう考え事、俺がブッ飛ばしてやるからよ」

「口が達者なのは、今のうちだって覚えておけよ。テメェの様な夢だの希望だのって語ってる野郎は大嫌いなんだよ!!」

「じゃあ世界は、お前の様な捻くれた人間で溢れろって? それこそ生き地獄になるじゃねぇか」


 俺とエルマーの戦いは、さしずめ夢を語る者と金を語る者の頂上決戦も言えるだろう。
 エルマーはたくさんの戦闘を経験している為に、戦闘のプロフェッショナルと言えるが、こっちとしても夢を語る人間としては絶対に負けられない戦いである。
 そんな言い合いをしてから少しの沈黙を果てに、俺はエルマーに向かって飛びかかっていく。


「テメェの様なガキに負けたら、俺の立つ瀬がねぇんだよ!!」

「世代ってのは、ドンドン若い人間に変わってんだよ!! お前の時代は、とうの昔に終わっちまってんだよ!!」

・高速移動魔法Level2
・筋力増強魔法Level2

――――スマッシュ・アタック高速肉弾――――


 俺は高速でエルマーとの距離を潰すと、一気に勢いと共に高威力のパンチを繰り出す。
 しかしエルマーも動かない代わりに、爆発力を使って俺のパンに力を殺して、逆に俺を爆風で後ろに下がらせる。
 そのまま逆にエルマーが俺に向かって突進してくるので、俺はスピードを止めさせたいと近くの石を爆弾に変えて投げる。


「そんな方法で、俺の直進を止められると思うなよ!!」

「爆発で、さらに加速したのか!! 無駄に使いこなしてるだけはあるな………」


 エルマーは足の裏を爆発させて加速すると、俺の爆弾を回避して俺の胸ぐらを掴んで地面に倒す。
 そのまま俺の体を上から押さえつけて、俺ごと地面を爆発させようとエルマーはしてくる。
 この距離では俺が爆発を使おうと思っても爆発に、俺も巻き込まれてオジャンになってしまう。


「夢や希望を語る人間ってのは大概、無惨な最後を迎えるって決まってんだよ。そのうちの1人が、テメェだってわけだ………あの世で、獣人の族の奴らによろしくな!!」

「こんなところで負けるわけにはいかねぇんだ!!」

「残念ながら、これが現実って奴なんだ………前世に期待するんだな!!」


 この距離では、魔法を放っても俺にもダメージがある為に、万事休すという言葉がちょうど良い状況だ。
 普通の人間ならば諦めるところだろうが、俺が希望を捨てる事なんてのはあり得ない事であり、今も頭をフル回転させて打開策を考えているところである。
 そんな風に俺が考えてエルマーがトドメを刺そうとしたタイミングで、エルマーの右胸を何やら眩しい光線の様なモノで貫かれた。


「うっ!? な なんだ!?」

「なんとか間に合ったみたい………急いできて良かった」

「イローナちゃん!? どうして、こんなところに!?」

「さっきの雷魔法のガキか!!」


 俺を助けてくれたのはイローナちゃんだった。
 こんなベストなタイミングで助けてくれるなんて、これからイローナちゃんの奴隷になっても良いなぁ。
 そんな事を考えながらもエルマーを蹴り飛ばして自分の上から退かすと、イローナちゃんのところまで離れる。


「どうしてイローナちゃんだけが、ここに居るんだ?」

「さっき3人で、エルマーとやったけど負けちゃって………色々あったカエデを、シュナが介護してる」

「そういう事だったのか。いやいや、こんな良いタイミングで来てくれるなんて嬉しくて泣いちゃうわぁ」

「そんな事よりも、先にエルマーを倒さなきゃ………」


 事の成り行きを聞いて俺は納得すると、イローナちゃんとの温度差を感じながらもカッとなった気持ちが冷静になる。
 それによって真っ向から戦うには、現在の戦闘スキルでは格が違うと考えられる様になった。


「イローナちゃんも手伝ってくれるかい?」

「ここまで来て、見学って方が辛い………」

「そうかそうか。それなら助かるよ………俺が前衛としてバリバリやるから、イローナちゃんは自分のタイミングで援護をしてくれ」

「分かった……」


 冷静に俺とイローナちゃんは作戦会議をしてから、役職を理解したところで俺は高速移動魔法で距離を潰す。


「助けが来たからって調子に乗るんじゃねぇぞ!!」

「お前の仲間ってのは金で繋がってるだけだから、容易く壊れるんだよ!!」


 真っ向からくる俺に対してエルマーは、爆発で撃退しようとしたが、俺はエルマーにやられた様に空中で爆発させて体の軌道を変えて真後ろに移動する。


「夢を語るから何度でも立ち上がれんだよ!! 夢のない人間は挫折したら、金があろうが立ち直れねぇんだよ!!」

「調子に乗るな!! 何度立ち上がろうが、何度でも地面に倒してや………ゔっ!? 体が痺れる!?」

「ミナトの邪魔をしないで………」

「イローナちゃん、ありがとう………これで終わりだ!!」

・オリジナルスキル『爆発人間ボマー
・高速移動魔法Level2
・筋力増強魔法Level2

―――肉体の手榴弾グレネード・スマッシュ―――


 俺が背後に回ったのに合わせて振り返りざまに、エルマーは攻撃をしようとしたがイローナちゃんの電撃で、一瞬動きを止められて俺の魔法発動の時間を作られる。
 そのままスマッシュアタックに、エルマーのオリジナルスキルを合わせた技をエルマーの顔面に打ち込む。
 強烈な打撃を喰らったエルマーは、吹き飛んでいき4軒どころか首都の端まで吹き飛んでいった。


「さ さすがに起き上がれねぇだろうな………だけど、カエデちゃんからすれば、こんなもんでも緩いよな」

「とてもショックを受けてた………その衝撃で、先祖返りして《獣神化》してた」

「獣神化っ!? あのだいぶ昔に退化したっていう………まぁそれだけの衝撃ではあるのは間違いないか」


 俺は、ここで初めてカエデちゃんが獣神化した事をする。
 しかし少しの驚きの後で、確かに家族が死んでいるのを知らされたら、覚醒の様なモノが起きてもおかしくはない。
 エルマーは倒したがカエデちゃんの心の中の穴は、こんなもんでは塞がるわけがない。



* * *



 俺とエルマーの戦いを少し遠くから見ている人間がいた。
 その人間の首には銀翼の刺青が入っていて、フードを深くまで被っているので側からは顔が見れない。


「おいおい。エルマーが負けちまったじゃねぇか………働きたくもねぇのに、余計な事をしやがってよぉ」

「スロウス様。アレは新人ながらに、Aランク冒険者になったルーキーです………」

「そうか。アイツが噂のルーキーか………ジャックやアランに続いて、まさかのエルマーもやるとは」

―銀翼の夜明け団・大幹部・スロウス―


 この男は銀翼の夜明け団が大幹部の《怠惰スロウス》だったのである。
 俺がエルマーに勝った事で、スロウスの仕事が増えたと溜息を吐きまくっている。


「まぁこれで元締めが居なくなったのはありがたい………良い鴨を逃したのだけはマイナスだがな」

「この事を、コリソンさんたちにも伝えますか?」

「アイツらには良いだろ。面倒だからな………それよりもグランドマスターに報告が先だ」


 面倒だ、が口癖のスロウスは俺とエルマーの戦いをボスに報告しに行こうと、この国を後にする。
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