社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa

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第4章・ロリっ子な吸血鬼の女の子

172:イカれた治療法

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 俺はスマイリーから大きな傷を貰ってしまったが、何とかフラフラになりながら立ち上がる。しかし既に深傷すぎて、立ち上がったところで戦えないだろうとスマイリーに相手にされていない。


「ちょっと待てって言ってんだよ!!」

・炎魔法Level1:ファイヤーボール
・風魔法Level2:ストーム
――炎龍の吐息ドラゴニック・ブレス――

「なにっ……ほぉそんな傷を負っても、まだ高威力の魔法を放てるのか」

「舐めんじゃねぇよ。まだ勝負は始まったばっかりじゃねぇかよ………勝手にテメェの領分で終わらせるな」


 振り向かせる為に俺は、スマイリーに向かってドラゴン・ブレスを放って振り向かせようとした。それを背中から感じて、ギリギリのところで避けると、この威力の魔法を打てるのかと驚いている。
 このままスマイリーを向かわせてしまったら、他の人のところに行って被害が大きくなってしまう。それなら俺が、ここで死んでも食い止める必要がある。
 スマイリーは1度は勝負は終わったと思ったが、これは完膚なきまでに殺さなければ、俺は絶対に諦めないなと目を見て判断する。何よりも傷の深さを見れば、オリジナルスキルを使って対処すれば、数分と持たずに息の根を止める事はできるだろうと考えている。


「良いだろう、そう来なくっちゃ楽しくないもんな。つまんない事なら僕はしないからさ………やるからには、それなりに喜ばせてくれよ。そうでないと、跡形もなく消しちゃうかもしれないからさ」

「随分と、テメェも大きな口を叩くじゃねぇかよ。そんな影の動物なんて使う事でしか、俺に傷をつけられなかった奴が、そんな大口を叩くなんてな」

「そんな口車に乗せられると思ってるのか? 僕のシャドー・アニマルは、俺のオリジナルスキルだ。つまりは僕の実力と同じってわけだ………僕は最大限の実力を持って、お前を叩きのめしてやるよ」


 俺はスマイリーのオリジナルスキルであるシャドー・アニマルを使われては面倒なので、どうにか挑発して使わせないようにしようとしたが、スマイリーは比較的冷静なタイプで挑発には乗って来なかった。
 スマイリーは普通の人間だったら、クラスの委員長になるようなタイプの人間なんだろうと思った。しかし現状でシャドー・アニマルを使われてしまったら、さすがの俺でも傷の影響で、シャドー・アニマルに対応するのに必死になってしまう。そうなれば単体でも十分な強さを持っているスマイリーには勝てない。
 こうなってしまったら、確かに死んだふりをして生き延びた方が良かったかもしれない。下手したら今日この日に死ぬかもしれないが、男である以上は目の前の敵からは目を逸らして逃げたくない。


「なぁこれは、お前への率直な疑問ではあるんだが、いつから自分が普通の人間じゃないと思った?」

「自分が普通の人間じゃないって? そんなの思った事ねぇよ………俺たちは、どれだけ強くなろうが人間は人間を超えられねぇんだよ」

「全くもってつまらない回答だな。僕が自分自身を、普通の人間じゃないと思った瞬間はな………自分の父親と母親を、この手で殺めた時だよ」


 スマイリーは立ち上がった俺に対して、才能はあるなと認めて質問してきたのである。その質問に対して、俺は人間が人間を越えようとするのは不可能であり、それをやってきた人間は歴史上に、悪の人間として名前を残していくだけだ。
 しかしスマイリーは自分自身が普通の人間ではなく、心を失った人間なんだと言ってきた。そんな事を言われたら厨二病なのかと思ってしまうところだが、実際にスマイリーは両親を自分の手で殺めているらしい。


「自分の手で両親を殺めただって? 別にテメェの人生に、全くもって興味は無いが………自分の事を良いように言うんじゃねぇよ。人間が人間を超越する瞬間なんてないし、テメェがやった行為は人間の欲に負けたんだ」

「僕が人間の欲求に負けた? そんなわけないだろ。この僕は、普通の人間なわけがない………それにギルド・ボガードは、人類を超越する為に作られた組織だ。それを否定しようって言うのなら、お前を徹底的に殺す」

「だから自分たちを良いように言うんじゃねぇよ。ただの快楽殺人鬼が、調子に乗ってるんじゃねぇよ………さっさと終わらせようじゃねぇか」


 俺はスマイリーが特別で人間を超越した人間なわけではなく、ただ単に人間の汚い欲に心が負けて両親を殺しただけで、スマイリーが特別なわけじゃないし、人間を超越した存在というわけじゃない。
 それを俺はまざまざとスマイリーに言うと、仮面をつけて表情が見えないはずだが、仮面の奥で怒りが込み上がっているような感じがする。


「僕の事を快楽殺人鬼と言ったな? 僕たちの事情も知らずに、よくも貶してくれたな………この挑発には乗ってやるから覚悟しろよ」

「良いじゃねぇか。この状態から逆転勝利して、お前に現実って奴を教えてやるよ」


 スマイリーは自分たちの事を快楽殺人鬼だと貶された事によって、それは自分に対しての挑発だと分かっていながらも乗る事を決めた。俺は本気の人間を倒してこその戦いだと思って、ニヤッと笑ってから構える。
 スマイリーは剣を鞘から抜いて、俺に向けて構えると俺とスマイリーの間に緊張感が流れる。どちらが先に動く事によって、確実に殺し合いに発展する。
 そして俺の血がポタッと落ちた瞬間に、スマイリーの方から動いて斬りかかってくる。このままでは普通に斬られてトドメを刺されるので、全身に力を込めて何とか避けてからスマイリーの顔面を殴り飛ばした。


「マジか。そこから避けてパンチを出せるのか………ちょっと僕を楽しませてくれるじゃないか」

「こんな俺にカウンターを入れられて悔しくは無いのかよ? 随分とぬるま湯に浸かってるみたいだな」

「言ってくれるじゃないか。たった1回避けて攻撃を入れただけで、鬼の首を取ったように喜ぶんだな」


 何を言われて良いが、これからがヤバいのは確実だろう。ここからさらに強くなって、シャドー・アニマルも出てくると考えたら、とてもじゃないが避けきれない。
 動く為には、とにかく出血を止める必要がある。どうやって出血を止めた方が良いのだろうか、何か良いアイデアは無いだろうかと必死に頭を働かせる。そしてある手段しか無いだろうと結論付けた。


「こうなったら、やっぱりコレしか無いな………」

「何か浅知恵でも思いついたのか?」

「見てろよ。コレが男って事だ!!」


 俺は炎魔法を使って傷口を焼いた。想像を絶するような痛みで意識が飛びそうになりながらも、俺は何とか歯を食いしばって耐える。
 そんな俺の気合いを見て、スマイリーは正常な思考と思っている。それでも俺は最後の最後まで耐え抜いて、傷口を完璧に塞ぐ事に成功した。俺の真下の床には、血の他にも尋常じゃない量の汗が落ちている。


「イカれてる治し方をしたな。そんな方法で出血を止めるなんてあり得ない………」

「関係ないね。これで出血を気にしないで、お前と戦えるな!!」


 俺の出血の止め方にスマイリーは引いているが、それでも俺は血が止まれば問題ないと思っている。
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