日本大戦〜日本が大変な事になりました〜

湯崎noa

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第1章・王弟の反乱 編

005:上回る覚悟

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 王子と俺の前に現れた男は、柏岡らが王子を暗殺する為に送り込んできた刺客である。
 全身から溢れる負のオーラは異常だ。
 俺はそこまで実践経験があるわけじゃないが、それなりに鍛えてきたので強い弱いは分かるつもりだ。


「ガキ、そこの人間を俺の方に渡せ。さもないと、お前の命も奪わなければいけなくなるぞ」

「王子を渡せだと? そんなふざけた頼みを受ける国民がどこにいるんだよ」

「そうかそうか………それじゃあ不本意ながら君の命も一緒に奪わせていただこうか」


 俺が男の要求を真っ向から拒否した。
 すると男は面倒だからと俺を殺してから、ゆっくりと王子を殺す事にしたのである。
 さっそく俺は王子から貸して貰った刀をスッと抜く。
 それに対して男は、ゆっくりと刀をヌッと抜いた。
 少しの睨み合いがある。
 独特の間合いがあって、ピューッと風が吹いている。
 そして一気に動き出す。

 先に手を出したのは俺の方だ。
 大きい動きながらカウンターを喰らわないように、脇を締めて刀を振り下ろす。
 それに男は上手く反応して防ぐ。
 カチンッと鍔迫り合いになる。


「ほぉガキにしては良い動きをするじゃないか。しかし実戦は初めてと見た………殺し合いってのは、そんな簡単なものじゃないって事を教えてやる!」


 そういうと男は俺の腹を蹴り飛ばす。
 俺は「うっ!?」と腹に力を入れている間に、一気に距離を潰していて刀を振り上げていた。

 ヤバい、このまま振り下ろされたら死ぬ!
 でも、この相手に後ろに下がったとて距離を詰めてきて懐に入られる。
 ここは覚悟を決めるしかない。

 俺は後ろに下がっても男が懐に入ってくるし、この場で剣を受けても押し切られる。
 それならば覚悟を決めて俺の方から距離を詰める。
 これで男は剣を振り下ろす事ができず、なんとか不利な状況をゼロに戻す事ができる。
 そう考えて肩を縦にして男の胸にぶつかる。
 読み通り男は剣を振り下ろせない。
 逆に俺の方がチャンスとなって、ガードをしていない男の腹を剣の柄で腹を殴り、顎に頭をぶつける。


「うっ!? くそ、痛いじゃね……おっと!? 油断も隙もない野郎だな」


 綺麗にコンボが入って男は後ろに蹌踉めく。
 男が痛みに苦しんでいるタイミングで、俺は逃すわけにはいかないと追撃の攻撃をする。
 しかしさすがは暗殺者だ。
 俺の殺気を感じ取って攻撃が当たる前に、バックステップを踏んで剣を構えながら避けた。


「お前は本当に実戦は初めてか? 殺気を隠しきれていないが………まぁ実践を重ねてると言われても信じるレベルくらいには強いな」

「素直に褒めてくれるのは嬉しいわな。だけどよ、俺は夢の為や守りたい物の為だったら、どんな人間だろうと真っ向から斬り捨ててやるよ」

「殺気を隠すつもりは無さそうだな。良いぞ、そこまで譲る気が無いなら本当に殺してやるよ………実戦の恐怖ってのを、その身に教え込んでやるよ!」


 そういうと俺に向かって走り出す。
 やはり戦闘慣れしているのだろう。
 小さく最大限の隙の無い動きで、身の毛がゾッとするくらいの振りをしてくる。
 俺は思わず顔をクシャッとさせながら受け流す。
 腕や顔にギリギリで切り傷が付く。

 しかし体勢が悪いままだと、いつかは捕まってしまうと生存本能が告げるのである。
 そこでわざと大振りをして、男を俺から切り離す。
 男は一旦距離を取るが、また俺に突っ込んでくる。
 そこから怒涛の攻撃が止む事は無い。
 このまま攻撃の波が止まる事がなければ、俺と男の経験の差で押し切られる形になってしまう。
 それだけは絶対に避けなければいけない。
 俺は男のリズムを少しでもズラそうと、父ちゃんが昔から履いていた特注のシューズで男の剣を蹴る。

 男の剣は外に弾ける。
 これで男のリズムに雑音を入れる事に成功した。
 男は直ぐに剣を正面に持って来ようとするが、俺は男の足の甲を強く踏み抜くのである。
 そして剣の柄で鼻頭を殴る。
 鼻血が出て、さすがの男も涙目になった。
 これだけで済ませるわけもなく、瞬時に腕を上げて上段の構えをして力を溜める。
 そのまま男に向かって刀を振り下ろした。
 完全に貰ったと確信する。

 しかし男は左腕を剣の方にガードする。
 そのまま突っ込んでくる。
 男は左腕を犠牲にして俺に襲いかかってくる。
 まさか腕を犠牲にして距離を潰してくるようなやり方があるなんて、俺は想定していなかった。
 完全に討ち取ったと思っているので、剣を振り下ろしてしまって大きな隙を作ってしまった。

 あぁこれは完全に気合い負けだな。
 父ちゃんに顔向けできない死に方をするんだ………。
 もっと負けないように、この男よりも遥かに気合と覚悟をすれば良かった。
 あぁ短い人生だったなぁ………。


「なんて諦めるわけねぇだろ!」


 この男にできて俺にできないわけが無い。
 差し違えても目の前の敵を、ぶった斬るんだ。
 その覚悟で俺は剣を上に振り上げる。
 すると男の剣を俺の剣が弾いた。
 向こうも完璧に俺の命を取ったと思って、剣を弾かれた事で体勢が崩れた。
 まだ完璧な隙とはいえない。
 俺は頭を後ろに振り上げて、男の鼻っ柱にヘッドバッドを決め込むのである。

 男は鼻血と涙を流しながら後ろに蹌踉めく。
 綺麗にヘッドバットが決まった事で、男の意識を虚虚させる事に成功した。
 俺は「切り捨てごめん」と呟いた。
 そして男に向かって走る。
 男は「待っ……子供が……」と言っていたが、俺は無視して男の首を綺麗に跳ねた。
 男の首は空中をクルクルッと宙を舞い、体は両膝を着いてからバタンッと地面に倒れた。


「ふぅ……強かったぁ! 腹立つくらい強かったぁ!」


 その場に尻餅を着いて、戦った男の強さを振り返る。
 というよりも疲れて地面に座り込んだ方が正しいか。


「お疲れ様、君って凄く強いんだな」

「いえいえ! 自分なんて本物の兵士に比べたら、ヒヨッコもヒヨッコなので!」

「いやいや、あれだけの戦闘力があったら軍隊に入っても直ぐに活躍できるだろうな」


 まさか王子に褒められる人生だとは思わなかった。
 それにしても不思議だ。
 さっきまでは疲れのあまり、立ち上がりたく無いと思ってしまっていた。
 しかし王子に褒められると直ぐに力が湧いてくる。
 これが力を持つ人で、これが国のトップに立つ人か。


「それよりも、これからはどうするんですか? この感じだと、何人も刺客を送ってくる可能性がありますよ」

「もう船が出る時間だ。それに乗って早く応援を出してくれるところに逃げ込むぞ」

「了解しました! そこまで俺が責任持って護衛させて貰うので、よろしくお願いします!」


 ここに居ても新たな刺客が来るかもしれないからと、直ぐに船に乗って津軽外浜県に渡る事にした。
 男の遺体に関しては、少し一目に付かないところに隠してから船乗り場に走って行く。
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