日本大戦〜日本が大変な事になりました〜

湯崎noa

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第1章・王弟の反乱 編

010:声たかだかに

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 王子は北星王国全土に王位継承を宣言する。
 それと同時に新たな人事についても通達した。
 選ばれた人間たちは陸軍大臣に前国王時代からの続投である《河辺 聡明かわべ さとあき》、参謀総長には経験豊富な《大黒屋 耕平だいこくや こうへい》、裏切った山澄に変わって新たな教育総監には《門西 実知雄かどにし みちお》が選ばれて、これが新たな陸軍三長官である。


「瀧澤殿には特別陸軍顧問として帯同して貰いたいのだが、一緒に来てくれないか?」

「引退した身ですが、こんな私で殿下をお助けできるのならば、もちろん手伝わせていただきます!」


 三長官の他に瀧澤さんには、陸軍の特別顧問として復帰して貰えないかと王子は聞いた。
 すると立ち上がって自分で良いならと快諾した。
 あとは応援を要請した将軍たちが、どれだけ手を貸してくれるかというところまで来た。
 今できる準備は、王都に向かう準備だけだ。
 それをしながら将軍たちの返事を待つ。

 すると次の日の早朝に屋敷に来客が来た。
 その人間とは要請していた将軍の1人である老将《谷村 祐武》大将だったのである。
 谷村大将は話が来た瞬間、屋敷を飛び出したらしい。


「こんな老耄ではありますが、坊ちゃんの為でしたら命を投げ出しても構いません! どうぞ、私にも王都奪還を、お手伝いさせていただけませんでしょうか!」

「もちろんだ。貴殿が手を貸してくれるというのならば百人力……いや、千人力だっ!」


 谷村大将は膝を地面に着けて頭を下げ、自分のような年寄りで良いならと手伝いたいと言ってくれた。
 それに王子は千人力だと返した。
 ここには急いで来たものだからと、谷村大将は部下に兵士を連れてくるように指示を出した。
 それくらいに急いで駆け抜けてくれたのだ。
 王子は凛々しい顔をしている。

 この谷村将軍を皮切りに、人が駆けつけてきた。
 その人間たちは将軍の《下野 敬彦しもの たかひこ》少将・《荒俣 鉄矢あらまた てつや》少将・《千部 数雪せんぶ かずゆき》少将に、士族の《伽耶本 志門かやもと しもん》・《四田 巌夫よつだ いわお》・《花密 登世雪はなみつ とよゆき》・《譜久村 眞崎ふくむら まさき》だ。


「殿下、この人数がいれば問題ないのでは?」

「まだ油断はできない。向こうは数枚上手だと思った方が良い………大いに越した事は無い」

「それは確かにそうですね」

「お前たちには、もう少し俺の護衛をやって貰う」


 大人数になってきたが、それでも王子は安心する事なく徹底的にやる姿勢を見せている。
 さすがは一国の王だと思い知らされる。
 すると遂に牛丸大将からの返事がやってくるのだが、その手紙には簡単に言えば「中立の立場を保つ」という風に書かれていたのである。
 どういう意図があるのかは、分からないが今回の内戦に関しては手を出さないという風な姿勢をとった。

 俺たちは準備が整ったところで、集まった全軍で王都に向かって進軍を始める。
 王子は俺と水城が、側を離れずに護衛をする。
 もしもなんてあってはならないので、俺たちは気を引き締めて周りを警戒しながら進軍する。
 するとそこに馬に乗った谷村大将がやってくる。


「殿下っ! 殿下っ! 馬上から失礼致します」

「よい、どうかしたのか? 貴殿が、そこまで焦っているのは珍しいな?」

「実は早馬で来たのですが、牛丸大将が数騎の護衛を付けて王都に向かったとの事です!」


 どういう事だ。
 牛丸大将は今回の内戦に関しては、中立の立場を守って傍観するのでは無いのか。
 それなのに何で王都に向かって出発したんだ。
 まさか王子と呂久が共倒れになって、自分が新たな王になろうと思っているのだろうか。
 そんな人には思えないが………。
 この行動に関しては理解ができない。


「その情報を瀧澤殿にも伝えてきてくれ。数騎という事は、挙兵したわけでは無いのだろう」

「という事は、このまま続行というわけでしょうか?」

「あぁそうだ。俺たちは、このまま王都に流れ込んで、呂久たちと決着をつける!」


 何を考えているのか、分からないので仕切り直した方が良いかと思っていたが、王子は気にせずに進軍を続けると発言したのである。
 その意思の強さに谷村大将は「はい!」と返事をしてから、今の話について瀧澤さんに伝えに行く。


「俺が言うような事では無いと思うのですが………」

「どうかしたのか? そんなの気にせずに言ってみろ」

「それじゃあ失礼します。牛丸大将が動いたという事は何かを考えられてると思います。なので、ここは仕切り直した方が良いと思うのですが」


 俺は牛丸大将の怖さを王子に伝える。
 王子は俺の意見を真っ向から否定する事も、馬鹿にする事も無く意見としてキチンと聞いてくれた。
 そして口を開くのである。


「確かに葵の考えも理解できる。しかし向こうも体勢ができていないのは事実であり、そこを突かない手は全くもって無いと思っている」

「確かにそうですね………余計なお世話を言ってしまって申し訳ありませんでした」

「良いんだ! その意見をくれること自体が嬉しい。この先も何かあったら、俺に意見してくれ」


 王子のいう通りだ。
 今すぐに軍が動いたわけじゃ無いので、この時点で撤退したら王子の評判が悪くなる。
 そうなら進軍して様子を見た方が良い。
 俺は余計なお世話を言って申し訳ないと謝罪する。
 それに対して王子は優しく諭してくれた。



~~~~~~~~~~



 俺たちが出発したのと同時くらいに、呂久は王都に入って反対派の兵士たちを集めた。
 呂久たちは既に、どれだけ残酷な戦いになったとしても戦うという思考になっている。
 その為、遂に呂久が王都にやってきたのである。
 反対派の人間たちを、1つにまとめられるのは柏岡ではなく呂久だと全員が気づいているからだ。


「殿下、既に兵士たちの準備は整っております」


 兵士たちの準備が整っている報告を受けてから、呂久は椅子を立ち上がり兵士たちが待っている広場に出る。
 ゆっくりと兵士たちの前に出ると、兵士たちは初めて呂久を見て歓声を上げるのである。
 呂久は集まっている兵士たちをグルッと見渡す。
 そしてスーッと息を吸ってから演説を始める。


「ここにいる人間ならば分かっているだろう。これから俺たちは、王を殺し新たな北星王国を作る」

『うぉおおおお!!!!!』

「負ければ己が死ぬ、勝てば生き残る。負ければ家族が死ぬ、勝てば家族が生き残る」


 この発言に兵士たちは、自然と冷や汗が出て固唾をゴクンッと呑んで緊張する。
 ある程度は理解していたはず。
 しかしこの時になって初めて負けたら、自分だけじゃなく家族も巻き添いで死ぬと本当の意味で理解した。


「己を守りたければ戦えっ! 家族を守りたければ戦えっ! そして………死ぬ気で勝てっ!」

『うぉおおおおお!!!!!』


 覚悟を決めた兵士たちは、自分を家族を守る為に剣を持って戦うと覚悟するのである。
 そして己を奮い立たせる為に雄叫びをあげる。
 こうして良くも悪くも呂久軍は士気が高まった。
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