日本大戦〜日本が大変な事になりました〜

湯崎noa

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第1章・王弟の反乱 編

013:五大天魔将

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 ここからさらに戦いが白熱すると思ったら、天幕に男の部下である兵士がやって来る。
 そして「そろそろ撤退を!」と言った。
 どういう事なのかと思ったら、どうやら男たちは少数で奇襲をかけて来ただけらしい。
 その為、囲まれる前に脱出を試みようとしている。
 ここで逃すわけにはいかないと、俺は斬りかかって行くが腹に鋭い蹴りを腹に入れられて吹き飛ぶ。


「良いか? 次の機会まで死ぬんじゃないぞ。お前のような世間知らずのガキを殺すのは俺だ」

「望むところじゃねぇか。次まで、その首は体に付けておくんだぞ!」

「ふんっ。へらず口を叩く奴だな」


 そういうと男は天幕を後にして撤退して行く。
 俺は男が居なくなるのを見ると、直ぐに王子のところに駆け寄って怪我は無いかと聞いた。
 そこまで怪我は無いみたいだが、頬に少し切り傷が付いている事に気がついた。
 俺は天幕の外に行って救護班を呼ぼうとする。
 しかし王子は「ちょっと待て! 救護はいらない!」と言って俺を呼び止めるのである。
 どうしたのかと振り返る。


「こんな傷、他の兵士たちに比べたら怪我にすらならないんだ。俺なんかに時間を使うのならば、他の兵士たちの方に救護班を回してやれ!」

「わ 分かりました。救護班を呼ばないにしても殿下の手当はしなきゃダメです。これから新たな王になられる殿下の体は大切なのですから」


 王子の意向を尊重して救護班は呼びに行かないが、さすがに手当はしないと面倒な事になるので、救護班の代わりに俺が王子の手当てを行う。



~~~~~~~~~~



 現在は空位となっている王座には、蝦夷領北都県富黄町(富良野市)から上洛した呂久が座っている。
 そしてその視線の先には牛丸大将の姿があった。
 牛丸大将の後ろには、数人の部下が座っていて余裕の様子を見せている。
 この牛丸大将に、何かをしたら一瞬にして返り討ちに合うのでは無いのかと冷や汗ダラダラだ。
 さすがは死戦を乗り越えてきた事だけはある。


「さすがは他国から畏怖と敬意の意味を込めて〈五大天魔将〉と呼ばれていただけはあるな。全身から溢れ出すオーラが、中将や少将とは比べ物にならない」

「それほどではありませんよ。その証拠に第5天魔将は私を除いて1人も居りませんからな」


 そう他国の人間たちは、牛丸大将たちを畏怖した上で敬意を表する呼び名を付けた。
 それは牛丸大将を含めた5人の総称である〈五大天魔将〉という名前である。
 しかし戦死したり、病死したりで現在は牛丸大将しか第五天魔将は残っていない。


「この朕からオファーさせてもらおうじゃないか。貴殿の力を使って愚兄である尚人の首を取って来い」

「尚人陛下の首ですか? 兄弟喧嘩……いや、内乱を起こしているのは知っていましたが、そこまで思い詰めていたんですか? 残念ながら私は、今回の内乱に関しては中立な立場を保たせていただきます」

「本当に良いのか? 朕に手を貸せば、貴殿の名声や富や力は、今とは比べ物にならないんだぞ?」


 呂久からの正式なオファーを、牛丸大将はニコニコしながら真っ向から拒否するのである。
 その言葉に呂久は眉をピクッとさせて驚く。
 まさか即答で断られるとは思っていなかったからだ。
 こうなったら邪魔になるかもしれないから殺すしか無いかと、呂久は思ったのだが、その考えは間違いだと直ぐに理解させられるのである。


「なにを考えているかは知りませんが、変な事は考えない方が良いですよ? 俺に手を出すという事は、それなりの軍を相手にするという事………今の殿下たちに、俺の軍と尚人殿下の軍を同時に相手するだけの力があるとお考えなのですか?」


 呂久の考えを見抜いているかのように、余計な事をしたら王子たち以外に自分たちとも戦争になるという。
 つまり呂久を脅しているのである。
 ここで呂久たちは、王子の軍と戦いながら牛丸大将の軍と戦うのは不可能だと判断した。
 なので、この場での暗殺は諦める事にする。


「分かっているのか? 朕が王になったら、この国は今以上に繁栄する事は約束されているんだぞ? そうなったら貴殿は、自由に戦争をして欲しいものが全て手に入る事になるんだぞ?」

「お言葉ですが、殿下が見据えているのは尚人陛下との内乱では無いのでしょう? 殿下が見据えているのは、外務卿である《駒井 隆慶こまい たかよし》との戦いなんじゃ無いんですか?」


 現在の北星王国は3つの派閥に分かれている。
 それは王太子派と呂久派と、外務卿の駒井が取り仕切っている派閥の3つである。
 呂久が見据えているのは王子との戦争ではなく、その後の駒井外務卿との戦争だ。
 それを牛丸大将は見破っていた。
 言い当てられた呂久は、ドキッとするのである。


「私の見立ては間違っていましたか? 殿下が見据えているものは、それはそれは無謀なものですぞ。もう既に大軍を連れて王太子殿下たちは進軍している」

「それを真っ向から打ち滅ぼし、駒井との戦いにも終止符を打ってやるのだ。それで朕が北星王国の絶対的な王に名乗りをあげるのだ!」

「それはそれは素晴らしい野望ですな。志だけながら王太子殿下に引を取りませんな………しかし現実というのは、そう簡単なものではありません。どれだけ高い志があったとしても人望がなければ兵士はついて来ない。それは日本時代に証明されています」


 牛丸大将は全身からオーラを出しながら、呂久に対して現実をツラツラと述べるのである。
 それに対して呂久の臣下たちは冷や汗を垂らしながら黙って牛丸大将の話を聞いている。
 しかし唯一余裕をこいている人間がいた。
 それは呂久自身である。


「それがどうしたというのだ? ついて来ないと言うのならば、無理矢理にでも連れて行けば良いのだ。貴殿は我々が王族である事を忘れておるのか?」

「はっはっはっ聞く耳を持たないんですねぇ………まぁそれもそれで才能と言えば才能ですな。私は協力する事はできませんが、王太子殿下と呂久殿下の無事を心より願っております」

「ふんっそんな心にも無い事を言いよって、朕に与しなかった事を後悔させてやるわ」


 呂久と牛丸大将の会談は終了した。
 そして牛丸大将は帰るべく立ち上がるのだが、その時に王の間の扉がドンッと開いた。
 汗だくの兵士が息を切らしながらやってきた。
 関戸内務卿は「どうしたのだ!」と声をかける。


「王太子軍が函館県を出発して、北都県内に侵攻を開始しました! 明後日には、こちら側の先頭とぶつかる可能性があります!」

「もう向かってきているのか。覚悟を決めるしか無い」


 俺たちが函館県を出発して、王都である北都県に侵攻してきた事についての報告だった。
 ここから本格的に内戦がスタートする。
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